891 :2006/06/08(木) 23:34:29.07 ID:ROHrgxMF0
【第3話】

<ヽ`∀´>「ウェーハッハッ!!セレブな人妻の観光旅行バスジャック作戦大成功ニダ!!」

採石場でニダーが嬉しそうに高笑いしていた。ニダーの横には怪人であるガラガラヘビ男がいた。

( ゚∀゚)「老人が駄目ならセレブかよ。」

( ^ω^)「人妻を狙うってのがまたなんとも微妙だお・・・。」

今日、僕達は【セレブな人妻の観光旅行バスジャック作戦】に参加している。
セレブな人妻の観光バスをバスジャックして採石場に連れてきて金目のものを奪う。
前の老人会のバスジャックとほとんど同じ作戦だった。
ニダーはセレブな人妻に宝石などを入れさせた黒い布袋を嬉しそうに眺めている。

( ゚∀゚)「ドクオファイアーが来る前にさっさと帰った方がいいと思うんだけどなー。」

ジョルジュが呟いた。その時、採石場の砂利が高くなっているところに人影が現れた。

('A`)「この世に悪がいる限り、正義の炎が焼き尽くす!!灼熱の戦士!!ドクオファイアー!!」

ドクオファイアーがいつもの決め台詞を言うとドクオファイアーの後ろで爆発が起こる。

 
921 :2006/06/08(木) 23:35:23.24 ID:ROHrgxMF0
<ヽ`∀´>「ここであったが百年目!今日こそおまえをやっつけるニダ!行け戦闘員!」

ニダーの掛け声と共に僕は猛ダッシュでドクオファイアーに突っ込んでいった。
例によって両手を水平にして1番に戦いを挑む。
いきなり大技がくるかもしれないが、それでも楽そうなので1番手は譲れない。
今度はドクオファイアーの攻撃をよく見てかわすのだ。

( ^ω^)「ドクオファイアー覚悟!!!」

僕はやる気のある台詞を吐くと広げた両手でドクオファイアーにラリアットをする。

ドクオファイアーはいつものように僕のラリアットをかわす。

( ^ω^)(ここで油断せずにドクオファイアーの攻撃を見切るお!)

しかし、ドクオファイアーは僕の視界にはいなかった。

( ^ω^)「あれ?」

( ゚∀゚)「ブーン!後ろだ!!」

ジョルジュの声を聞いて後ろを見る。

 
931 :2006/06/08(木) 23:37:22.48 ID:ROHrgxMF0
僕の後ろに回りこんだドクオはヒーロー特有のタメを作っていた。
これは必殺技を出す前兆を意味する。怪人ですら一撃の大ダメージの攻撃。
当然、戦闘員にとっても、必殺技をくらう=死、である。

(;^ω^)(グランドヤバス!!!!)

僕の背中から大量の汗が流れる。

('A`)「俺の両足、真っ赤に燃えるッ!勝利を掴めと轟き叫ぶッ!」

決め台詞を言ったドクオが空中に高くジャンプする。

('A`)「ばぁぁぁぁく熱ッ!・・ドクオォォ!バアアアアニィィング!!!キイイィィーークッッッ!!!」

(;^ω^)(ハ、ハヒィィ!!!!)

僕は両手を頭に抱えてしゃがみこんだ。
しかし、ドクオファイアーは僕の遥か上を通過し、
向こうの方でボーッと突っ立って戦闘員の闘いが終わるのを待っていたガラガラヘビ男に向かって飛んでいった。

ガラガラヘビ男「えっ!?俺狙ってたの!?戦闘員と戦わないの?!」

それがガラガラヘビ男の最後の言葉だった。
ドクオバーニングキックの一撃を受けたガラガラヘビ男は大爆発し、木っ端微塵に砕け散った。

 
941 :2006/06/08(木) 23:39:00.69 ID:ROHrgxMF0
ガラガラヘビ男の大爆発による爆風でマフラーをなびかせながらドクオは呟く。

('A`)「戦闘員と戦うのなしでいきなり怪人にドクオバーニングキックを当てるのもカッコイイな。」

<ヽ`∀´>「ク、クソーニダ!!今日は引き上げるニダ!!ドクオファイアー覚えてろニダ!!!」

ニダーは捨て台詞を残すと僕達の乗ってきた黒いワゴン車に乗る。
僕も置いていかれないように急いで黒いワゴンの元に走ろうとした。
その時、地面に何か落ちているのに気がついた。

( ^ω^)「あれ?何だお?」

僕は落ちているものを拾った。

( ^ω^)「真っ黒なカードだお・・・何も書いてないお。」

( ゚∀゚)「おーい、ブーン!車出ちまうぞ!」

( ^ω^)「ああっ!ちょっと待ってお!!」

僕はポケットに黒いカードを入れるとみんなの待つ黒いワゴン車へ走っていった。

 
951 :2006/06/08(木) 23:40:31.02 ID:ROHrgxMF0
悪の秘密組織【ブラックシャドー】に戻った僕達は会議室で反省会をしてから解散になった。
ロッカールームでマスクと全身タイツを脱いで私服に着替える。

( ゚∀゚)「いやー、今日は楽だったなー。いきなり怪人倒してくれて助かったぜ。
これからもこの調子でやってくれりゃあ、すげー楽なんだけどなー。」

( ^ω^)「確かにそれは言えてるお。」

僕は脱いだ全身タイツのポケットに入っている黒いカードのことを思い出し取り出した。

( ゚∀゚)「お?何だそのカード?」

( ^ω^)「採石場に落ちてたんだけど何かわからないんだお。」

ジョルジュに黒いカードを渡す。裏表をジロジロと見るジョルジュ。

( ゚∀゚)「何だこりゃ?どっちも真っ黒で何も書いてないぜ。」

( ^ω^)「ジョルジュもわからないのかお・・・。」

( ゚∀゚)「まあ、警察にでも届けといたらいいんじゃねーか?
セレブな人妻の秘密の会員カードとかだったりしてな。」

とりあえず、カードの話はそこで終わり僕とジョルジュはブラックシャドーを出た。

 
961 :2006/06/08(木) 23:42:06.00 ID:ROHrgxMF0
( ゚∀゚)「じゃあ、俺はワカパイちゃんとこ行ってくるから。またな。」

ジョルジュはニコニコしながらスキップして街中へ消えていった。
僕は黒いカードのことが気になったので家のインターネットで調べることにした。
すぐにはわからないだろうなと思っていたが、驚くほどあっさりと黒いカードの正体がわかった。

( ^ω^)「これはヒーロー免許証だったのかお。」

【ヒーロー免許証】それはヒーローに認められたものだけが持つことができるヒーローの証明書のようなものだ。
名前などの情報をカードの表面に書くと盗まれたときに悪用されるので真っ黒になっているらしい。
情報は全てカードの中にデータとして入っているらしく、ヒーロー協会の機械などで読み取ることができるそうだ。

( ^ω^)「ってことはこれはドクオファイアーのヒーロー免許証なのかお?」

ドクオバーニングキックでもしたときに落としたのだろうか。

( ^ω^)「まあ、明日バイト休みだし、ヒーロー免許証ないとたぶんドクオさんも大変だろうから、
ヒーロー協会に直接持って行こうだお。」

悪の組織の戦闘員がヒーロー協会にヒーローの落し物を届けるいうのも変な話だ。
だが、ヒーロー免許証を落として困っている人を見過ごすこともできない。
まあ、普段は全身真っ黒でマスクもしてるからブラックシャドーの戦闘員とバレやしないだろう。

 
971 :2006/06/08(木) 23:43:03.26 ID:ROHrgxMF0
次の日の朝。ヒーロー協会に行くのに緊張しているのか僕はあまり眠れなかった。
ただの落し物を届けに行くだけということなのだが。

( ^ω^)「まあ、カードを受付にでも渡したらさっさと帰るお。」

僕は電車に揺られながらヒーロー協会へと向かう。

( ^ω^)「ここがヒーロー協会かお。」

僕はヒーロー協会の前にいた。白を基調としたそのビルは妙な威圧感があった。
僕が悪の組織にいるからだけかもしれないけど。

( ^ω^)「ま、まあさっさと用事すませて帰るお。」

僕は思い切ってヒーロー協会のビルの中へと足を運んだ。
入ってすぐにある受付で事情を説明する。

( ^ω^)「えーと、このカード拾ったんで届けに来たんですお。」

受付の人にカードを渡すと確認を始めた。そして、電話をして誰かと話をしている。
電話を切った受付の人が僕にしばらくここで待っているようにと言った。

 
981 :2006/06/08(木) 23:43:40.27 ID:ROHrgxMF0
( ^ω^)(うーん、さっさと帰りたいお。)

と、思っても口に出せるわけもなく僕は入り口のそばにある椅子に座って待っていた。
しばらく待っているとドクオがやってきた。

('A`)「おー、わりぃわりぃ、待たせたな。」

( ^ω^)「あ、ドクオさん。」

('A`)「わざわざ俺のヒーロー免許証を届けてくれてありがとう。
今、新しいの申請しようとしてたんだよ。」

( ^ω^)「それはよかったですお。」

('A`)「よく落とすからさっき注意されてたんだよな。助かったぜ。」

( ^ω^)「これからは落とさないように気をつけた方がいいですお。」

('A`)「ああ、そうだな。おまえみたいにわざわざ届けてくれる奴もそうそういないしな。」

( ^ω^)「じゃあ、僕はそろそろ行きますお。」

 
991 :2006/06/08(木) 23:44:09.70 ID:ROHrgxMF0
('A`)「あ、ちょっと待てよ。今暇か?」

( ^ω^)「今日はバイト休みですから暇と言えば暇ですお。」

('A`)「そうか。じゃあ、お礼に奢らせてくれよ。」

(;^ω^)「い、いや、いいですお。」

('A`)「まあ、そういうなって。落し物拾ってくれたんだからお礼くらいしないとヒーローの名が廃るぜ。」

( ^ω^)「はぁ。」

('A`)「じゃあ、バイク出すから表で待っててくれ。」

( ^ω^)「わかりましたお。」

ドクオはドクオサイクロン号に僕を乗せると高架線下のおでん屋台に連れて行った。

 
1001 :2006/06/08(木) 23:45:10.06 ID:ROHrgxMF0
おでん屋台の小さい椅子に座った僕達。ドクオは生中2つをおやっさんに頼んだ。
ジョッキに入ったビールを受け取ると僕達は乾杯をした。
ドクオはゴクゴクと一気にビールを飲み干す。

('A`)「カーッ!うめぇ!!」

( ^ω^)「それにしても真昼間から酒飲むとはですお。」

('A`)「まあ、戦士にも休息は必要だ。それは昼とか夜とか関係ない。」

僕達は世間話などの雑談をする。
そして、ある程度会話が盛り上がってきたところである疑問をドクオに聞いてみた。

( ^ω^)「ドクオさんって普段着もドクオファイアーの変身スーツなのですかお?」

('A`)「ああ、あれは朝起きてコンビニ行くのに着替えるのがめんどくさい時とかたまに変身して行くんだよ。
普段はちゃんと服着てるよ。今もそうだろ?」

( ^ω^)「そうですかお。」

('A`)「そう言えば俺もおまえに聞きたいことがあったんだ。」

 
1011 :2006/06/08(木) 23:46:38.47 ID:ROHrgxMF0
( ^ω^)「何ですかお?」

('A`)「おまえさ、闘うとき両手を広げてるよな?」

( ^ω^)「はいですお。」

('A`)「じゃあ、いつも真っ先に俺に突っ込んでくるのおまえだよな。あれは何でだ?」

(;^ω^)「うっ。」

ヒーローはたいていスロースターターだから、
やられたフリをするためには真っ先に突っ込むのが1番だとは言えなかった。

(;^ω^)「あ、えーと、バイトではありますが悪の組織の戦闘員としては、
やっぱりヒーローを真っ先にやっつけたいっていう気持ちがありまして・・・。」

適当に言い訳したが、言葉の最後はモゴモゴと消えていった。
その言葉を聞いてドクオは真剣な顔になった。

(;^ω^)(ヤバイ!ヒーローやっつけたいとか言ったから怒らせちゃったかお?)

 
1051 :2006/06/08(木) 23:49:14.70 ID:ROHrgxMF0
ドクオは手に持っていたジョッキをテーブルに置くと僕の顔を見た。
いや、僕の目を見ていた。そして、口を開く。

('A`)「おまえ、ヒーローやってみないか?」

(;^ω^)「ハヘ?」

僕には一瞬意味がわからなかった。あっけにとられている僕をよそに僕にドクオは話を続ける。

('A`)「いくら戦闘員と言えども毎回ヒーローに真っ先に突っ込んでくるなんて中々できないぜ。
それは勇気のある者だと俺は思う。そして、今日は俺にヒーロー免許証を持ってきてくれた。
警察に届けりゃいいのにわざわざヒーロー協会まで持ってきてくれるなんてこれまた中々出来ないぜ。
これは人を思いやるやさしさのある者だと俺は思う。」

(;^ω^)「は、はぁ。」

なんで悪の戦闘員がヒーローにスカウトされてるんだ。

('A`)「ヒーロー協会では今結構深刻な人材不足の問題があるんだ。
この前から薄々感じてたんだがおまえにはヒーローの素質のようなものがある。
俺が鍛えてやるからやってみないか?」

(;^ω^)「あ、いや、はぁ・・・。」

僕は自分でも何をしゃべっているのかよくわからなくなった。
僕がヒーロー?ありえない。
でも、伝説のヒーロービッグバンガイの息子が僕を認めてくれている・・・のか?

 
1081 :2006/06/08(木) 23:51:06.30 ID:ROHrgxMF0
('A`)「まあ、今すぐ結論を出せとは言わない。じっくり考えてみてくれ。」

そう言うとドクオはジョッキの中のビールを一気飲みした。
そして、おやっさんに2杯目のビールをおかわりした。
その後は、他愛のない世間話で終わった。だけど僕の頭の中には会話の内容など残っていなかった。
それほどヒーローへの勧誘の話が大きかったのだ。

('A`)「じゃ、今日はおひらきにするか。今日は俺に奢らせてくれ。」

今日もドクオに奢ってもらってしまった。おでん屋台を出るともうあたりは真っ暗だった。
僕はバイクを押すドクオとくだらない世間話などをしながら歩く。

('A`)「じゃあ、俺こっちだから行くわ。」

ドクオが交差点で僕と反対側へとバイクを押していく。
だが、視界から消えるまでドクオの大きくて力強い背中から僕は目を離せなかった。

( ^ω^)(僕の背中はあんなに大きいのだろうか?ヒーローになるってどういうことなんだろう?)

僕は酒が残った頭を振りながら街灯に照らされた夜道をゆっくりと歩いた。


【第3話おわり】

 
1091 :2006/06/08(木) 23:51:36.44 ID:ROHrgxMF0
投下はおしまいです。次はまた明日の夜になると思います。

 
1161 :2006/06/09(金) 00:05:01.39 ID:eHUYCgDU0
【次回予告】

ニダーの不甲斐ない作戦結果に業を煮やした悪の組織ブラックシャドーは、
とうとう副首領を送り込んできた。しかし、その副首領は華麗な女性だった!!
ヒーローと副首領の指令の間に挟まれるブーンの運命やいかに?
次回【男はつらいよ・翔んでるブーン】の巻。

 
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