5 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:24:35.80 ID:xjANTQAb0
【第8話】

ドクオファイアーに惨敗した僕達はブラックシャドーに帰ってきた。
作戦会議室でお葬式のような反省会を終えると、
戦闘員のリーダーである僕とツンだけが残って戦闘プログラムの会議をすることになった。
ツンもかなりのショックを受けているようで口数が少なく、元気もなかった。
しかし、懸命に会議を進行しようとしていた。

ξ゚听)ξ「・・・では、今回の作戦の問題点などがあれば上げてください。」

( ^ω^)「・・・ドクオファイアーの強さを完全に見誤っていたですお。」

僕は力なく答える。

ξ゚听)ξ「私も実際に目の当たりにしましたが、かなり強いですね・・・。」

ツンが悲しい顔をしてため息を吐く。

( ^ω^)「・・・。」

ξ゚听)ξ「・・・。」

作戦会議室に沈黙が降りる。僕はツンの悲しい顔を見るのが辛かった。しかし、どうしようもない。
あれほど練習して完敗した僕達はこれ以上何をすればいいんだ。
あんな化け物じみた強さを持っているドクオファイアーに僕達は勝てるのか。

 
6 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:24:52.50 ID:xjANTQAb0
会議室の沈黙に耐えきれず僕は適当に話をする。

( ^ω^)「・・・と、とりあえず先ほどの戦闘記録でも見ましょうかお。」

ドクオファイアーとの戦闘は毎回戦闘員の誰かがデジタルビデオカメラで録画しているのだ。
僕は作戦会議室にあるTVにデジタルビデオカメラを繋いで再生ボタンを押した。
先ほど闘ったドクオファイアーとの戦闘がTVに映し出される。
僕達はその映像をぼーっと眺めていた。戦闘員が次々とやられていく。

(;^ω^)(見れば見るほど情けなくなるお・・・。)

ξ゚听)ξ「・・・。」

そして、スズメバチ男がドクオバーニングキックで大爆発した映像が流れる。
一緒に見ていたツンの肩が震えていた。

( ^ω^)(ん?)

僕はツンの顔を見た。すると、ツンは下を向いて泣いてた。

ξ;凵G)ξ「うっうっうっ・・・。」

(;^ω^)「ツ、ツンさん!どうしたんですかお!」

僕はびっくりしてツンに話しかける。

 
7 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:25:09.99 ID:xjANTQAb0
ξ;凵G)ξ「ごめんなさい。ブーン達戦闘員があんなにがんばったのに・・・。
私が不甲斐ないばかりにこんな結果になってしまって・・・。」

(;^ω^)「い、いや、僕達が弱かっただけですお!!ツンさんは何も悪くないですお!」

僕は必死でツンを慰めた。ポケットからハンカチを取り出してツンに渡す。

(;^ω^)「こ、これで涙を拭いてくださいですお。」

ξ;凵G)ξ「あ、ありがとう・・・。」

ツンはハンカチで涙を拭く。
僕はこの状況に耐え切れずにとりあえず戦闘記録をもう1度最初から再生させた。

(;^ω^)(ツンさん泣いちゃったお・・・。ど、どうしようかお。)

僕はこの状況をどうやって収めようか必死になって考えていた。
しかし、何も思い浮かばなかった。僕達戦闘員が何か結果を残さない限り何も変わりはしないのだ。
TVからはドクオファイアーが戦闘員を次々と倒していく映像が流れている。

 
9 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:25:35.61 ID:xjANTQAb0
TVをボンヤリと眺めている僕はあることに気がついた。

( ^ω^)「あれ?」

僕は声を上げた。映像は戦闘員を全員倒してドクオファイアーがスズメバチ男に向かっていくところだ。

ξ゚听)ξ「ど、どうかしましたか?」

涙を拭いて少し落ち着いたツンが僕に声をかける。

( ^ω^)「ちょっと気になるところがありましたお。」

僕は巻き戻してもう一度再生する。やはり思ったとおりだ。僕はツンの方を向いて話す。

( ^ω^)「よく見てくださいですお。
戦闘員を全員倒したあとにほんの少しだけですけどドクオファイアーが疲れていますお。」

ξ゚听)ξ「えっ?!」

デジタルビデオカメラを再び巻き戻して再生する。
よく見ないとわからないけど戦闘員を全員倒した後にドクオファイアーが息を整えているシーンがあった。

ξ゚听)ξ「・・・確かに微妙に疲れている感じがしますね。」

 
10 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:25:50.89 ID:xjANTQAb0
( ^ω^)「僕達の練習の成果はあったんですお。
スリーマンセルのフォーメーションは確実にドクオファイアーの体力を削っているんですお。」

ξ゚听)ξ「・・・そ、そうですね。」

ツンの顔が少しだけ元気になった。

( ^ω^)「こ、この調子でいけばいつかはドクオファイアーをやっつけられますお。」

僕は口からでまかせを言った。これでツンの顔に笑顔が戻るなら何でも言ってやる。

ξ゚听)ξ「ブ、ブーンがそう言うならそうですよね。」

( ^ω^)「ま、任せてくださいですお!!
僕がリーダーである以上ドクオファイアーなんてやっつけちゃいますお!!」

僕は空元気だったがツンに向かって力強く言い切った。

ξ゚听)ξ「ブーン、ありがとう・・・。」

ツンが僕に微笑んだ。そうだ。僕はこの笑顔が見たかったのだ。

 
11 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:26:12.74 ID:xjANTQAb0
( ^ω^)「まあ、今日はいろいろあったんでそろそろ会議は終わりにしましょうですお。
今後のことはいろいろと僕も考えておきますお。」

ξ゚听)ξ「はい、わかりました。今日は終わりにしましょう。」

僕とツンはパイプ椅子から立ち上がる。その時、ツンのおなかがグーと鳴った。

ξ////)ξ「あっ。」

僕はこのままツンを放っておくのが少し心配になったので思い切って言ってみた。

( ^ω^)「そう言えばまだ何も食べてなかったですお。よかったら何か食べに行きませんかお?」

ξ゚听)ξ「えっ?」

ツンが驚いた顔をした。まずい、嫌なのかもしれない。すかさずフォローを入れる。

(;^ω^)「あ、いや、何と言うかツンさんがよければでいいですお。結構いい屋台を知ってるんですお。」

ξ////)ξ「あっ、い、行きます。よろしくお願いします。」

(;^ω^)(ホッ。別に嫌じゃなさそうだお。)

僕はホッと胸をなでおろす。それから、僕とツンはブラックシャドーを出ると、
ドクオといつも飲んでいた高架線下のおでん屋台に向かった。

 
13 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:26:49.70 ID:xjANTQAb0
おでん屋台の小さい椅子に座った僕達。

ξ゚听)ξ「私、屋台って初めてですよ。」

( ^ω^)「そうですかお。ここはお酒も食べ物もおいしいですお。」

僕は生中、ツンは芋焼酎を頼んだ。2人で乾杯する。

( ^ω^)「まあ今日はいろんなことありましたけど、
今だけは忘れてパーっと飲みましょうですお。」

ξ゚听)ξ「そ、そうですね。」

僕は生中をグッと一気に飲み干す。
やはり女の人と一緒にいると緊張するので酒の力を借りて緊張をほぐすのだ。

ξ゚听)ξ「ブーンってすごいですよね。」

( ^ω^)「え、何がですかお?」

ξ゚听)ξ「スリーマンセルのフォーメーション考えたり、この前の運動会も1位でしたし。」

 
14 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:27:36.01 ID:xjANTQAb0
(;^ω^)「いえいえ、あれは全部まぐれというか運が良いというかですお・・・。」

ξ゚听)ξ「そうやって自分の活躍を自慢することもなく控えめなところもすごいです。」

(;^ω^)「あうあう。」

なんだかわからないけど過大評価されているようだ。
僕自身は楽したいだけなんだけど、ツンの真面目さに引っ張られてこーなっている部分もあるわけで。

( ^ω^)「ツンさんもすごいですお。」

ξ゚听)ξ「えっ、私ですか?」

( ^ω^)「戦闘プログラムで戦闘員を強化するとか、洗濯機の購入で経費削減を考えたり、
ブラックシャドーをより強化しようという姿勢はすごいなと思いますお。」

ξ////)ξ「そ、それほどでもないですよ。」

その後は他愛もない世間話などをしながらおでんを食べる僕達。
その時、1人の男がおでん屋台にやってきた。

 
16 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:28:26.51 ID:xjANTQAb0
('A`)「おやっさん、こんばんはー。」

(;^ω^)(げっ!)

僕は素早く椅子から立ち上がるとツンにドクオが見つからないように、
急いでドクオを屋台から連れ出した。

('A`)「ちょ。なんだよ?」

ξ゚听)ξ「あ、ブーン?」

(;^ω^)「ちょ、ちょっとトイレに行ってきますお。」

なんとかツンにはばれていないようだ。
おでん屋台なのでトイレはそばにある公園に行くことになっている。
とりあえずこの行動は不自然ではないだろう。僕は公園までドクオを連れて行った。

(;^ω^)(ふー、危なかったお・・・。)

ツンはドクオファイアーの変身状態しか知らないからドクオの素顔は知らないと思うんだけど、
声とか体格でバレたりしたら大変だ。

 
18 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:28:48.88 ID:xjANTQAb0
('A`)「いきなり公園に連れてきてどうしたんだよ。」

(;^ω^)「あ、いえ、その・・・。」

どう説明していいものやら僕は困っていた。

('A`)「そーいえば今おまえが一緒に飲んでた女の子ってこの前採石場にいなかったか?」

(;^ω^)(ヤバス!!!)

困っている僕の顔を見ているドクオがニヤリと笑った。

('A`)「・・・ははーん。そういうことか・・・わかったぞ。」

(;^ω^)「えっ?」

まずい。ツンがブラックシャドーの副首領ってことがばれたのかもしれない。

 
19 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:29:47.58 ID:xjANTQAb0
('A`)「あれか。あの女の子はブラックシャドーの事務とか経理の新しいバイトで、
採石場には見学とかで来てたんだろ。」

(;^ω^)「へっ?」

('A`)「で、あの子を気に入ったおまえが飲み屋に連れて来たわけだな。どーだ!当たりだろ!」

ドクオは嬉しそうに話している。

(;^ω^)「あ、えーと・・・。」

僕はどう返答していいのか困ってしまった。
まあ、普通に考えたらツンがブラックシャドーの副首領とは思わないか。
と、なると何か勝手に勘違いしてるしこのままでいいかな。

(;^ω^)「そ、そうなんですお。
新しいアルバイトの女の子でちょっと飲みに行こうって誘ったんですお。

('A`)「いつの間にかうまいことやりやがって。」

ドクオは僕の頭を小突いた。

 
20 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:30:14.08 ID:xjANTQAb0
('A`)「じゃあ、今日は俺はお邪魔みたいだから帰るわ。うまいことやれよ。」

ドクオはニヤニヤしながら僕の前から立ち去る。
しかし、途中で何かを思い出したようで立ち止まり、僕の方を振り返った。

('A`)「ああ、そうだ。ヒーロースカウトの件考えといてくれよな。」

(;^ω^)「あっ、はいですお。」

ドクオは僕に背中を向けて去っていった。ドクオの広くて大きな背中を僕はずっと眺める。

( ^ω^)(あれがヒーローの背中。全てを破壊する暴力的な強さを秘めた背中・・・。)

やがて僕の視界からドクオが消えた。

( ^ω^)(ヒーロースカウトの件かお・・・。すっかり忘れていたお・・・。)

 
22 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:30:40.25 ID:xjANTQAb0
スリーマンセルのフォーメーションの練習に夢中になっているうちに、
ヒーローにスカウトされたことをすっかり忘れていた。
それほど充実した毎日だったんだろう。なぜあれほど一生懸命になれたのか。
あれほど楽したいと思っていた僕がなぜ必死になっていたんだろう。

( ^ω^)(だけどあれだけ練習してもドクオファイアーに対してほとんど結果を出せなかったお・・・。)

冷静になって考えれば考えるほどドクオファイアーの強さが身にしみる。
もう戦闘員は諦めてヒーローになった方がいいのか?
僕の心は激しく揺れ動いていた。

(;^ω^)「あっ、ツンを待たせたままだったお!」

1人で思い悩んでいた僕は急いでおでん屋台に戻った。

(;^ω^)「ごめんですお。ちょっとトイレが長引いちゃったですお。」

ξ--)ξ「・・・。」

( ^ω^)「あれ?」

ツンはカウンターにうつ伏せになって眠っていた。

 
23 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:31:17.10 ID:xjANTQAb0
どうしようかと思っていると眠っているツンがもぞもぞと動き、寝顔を僕の方に向けた。
無邪気でかわいらしい顔だった。普段は美人だけどこんな一面もあるんだなと思った。
その時、僕はわかってしまった。

( ^ω^)(・・・僕はこの人の笑顔を見るために一生懸命だったのかお。)

ツンと出会って彼女の一生懸命さに引っ張られているうちに自分も一生懸命に物事を行うようになった。
そして、それはいつしか彼女の笑顔が見たいからに変わっていったのだろう。
彼女がいたから僕はここまでこれたのだ。

( ^ω^)(僕はもう迷わないお。)

僕はツンの肩をゆっくり揺らして起こした。

ξ゚听)ξ「あ、すみません。寝ちゃってたみたいですね。」

( ^ω^)「いえいえ、今日はいろいろあって疲れてたからしょうがないですお。
そろそろ行きましょうかお。」

ξ゚听)ξ「はい。」

僕はツンと一緒に電車の駅まで歩いていく。

 
24 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:31:43.08 ID:xjANTQAb0
( ^ω^)「ドクオファイアーと闘うために1つ作戦というか考えが浮かびましたお。」

ξ゚听)ξ「そうですか。」

ツンが嬉しそうに言う。

( ^ω^)「詳しいことはまた今度言いますお。今日はゆっくり休んでくださいですお。」

ξ゚听)ξ「はい、今日はおいしい屋台に連れて行ってくださってありがとうございました。」

僕は勇気を振り絞って言葉を紡ぐ。

(;^ω^)「よ、よかったらまた一緒に行きましょうですお。」

ξ////)ξ「は、はい。ブーンがよければいつでも。」

(*^ω^)(よかったお。)

僕は心の中でガッツポーズをした。そして、駅に着いた。
それぞれ電車のホームが違うので改札に入ったところで僕とツンは別れた。
ツンの小さな背中を眺めながら僕は誓った。ドクオファイアーに勝つためなら何でもすると。
そして、僕はヒーローではなく、戦闘員として戦っていくんだと。


【第8話おわり】

 
25 ◆0UBHj9d5Uc :2006/06/15(木) 22:32:40.39 ID:xjANTQAb0
【次回予告】

ブーンは新たな決意で戦闘員への道を歩みだす。
そして、迎えるドクオファイアーとの戦い・・・。
ブーンの運命やいかに?!


次回、最終回『戦闘員よ!永遠に!』→次々回が最終回になりました。

※都合により次回予告の内容が本編と異なる場合があります。ご了承ください。

 
inserted by FC2 system