201 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 22:50:39.54 ID:iyOe289Y0
- 午後四時半。
再び高岡の家に向かう車中。
クーがステアリングを握っている。
自ら率先して運転を買って出たのだ。
川 ゚ -゚)「そろそろ電話してみたらどうだ?」
( ^ω^)「電話?どこにかけるんですかお?」
川 ゚ -゚)「今朝の痴話喧嘩の相手。ツンとか言ったな」
( ^ω^)「あー・・・いやいや今かける勇気は無いですお」
川 ゚ -゚)「仲直りしなくていいのか?ブーンの特別なのだろう?」
( ^ω^)「今は事件に集中した方が良いですお。もう失敗はできませんお」
川 ゚ -゚)「そうか。それならいいんだ。だったら運転を任せればよかった」
( ^ω^)「もしかしてその為に運転を代わってくれたんですかお?」
川 ゚ -゚)「ああ。その方が時間の都合がいいかと思ってな・・・」
203 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 22:54:37.64 ID:iyOe289Y0
- 最後までよく聞き取れない発声だった。
クーにしては珍しく言葉に感情がこもる。
照れていた。
( ^ω^)「クーさんが照れるとは・・・記念になりますお」
川 ゚ -゚)「別に照れてなどはいないぞ」
クーの口調は既にいつも通りに戻っている。
たった一言だけだったが、その言葉でブーンは心のわだかまりが少し消えていく気がした。
一方クーは照れ隠しに無理やり話題を変えようと、あらぬ方向に話を振った。
川 ゚ -゚)「と、ところで、ブーンは何故分室に所属しているんだ?」
( ^ω^)「それを話すと長くなりますお・・・」
川 ゚ -゚)「よければ聞かせて欲しいものだな」
( ^ω^)「・・・あれは一年程前のことですお」
205 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 22:58:49.75 ID:iyOe289Y0
- ―――【一年前】
ブーンは麻薬班の新入りとして活動していた。
任務内容はやはりただの使い走りだったが。
そんなブーンに初めて麻薬取引の現場を押さえる任務が与えられた。
ニダーという男を中心にした、麻薬密売組織の摘発という任務内容だった。
その日、ブーンは高揚し、通常の状態ではなかった。
現場に踏み込むといってもブーンは後衛要員であり、
突入部隊が取りこぼした犯人を押さえればいいという、比較的気が楽な役割である。
突入開始直前、ブーンは取引が行われる建物の裏口に配備された。
( ^ω^)「緊張するお・・・。何がなんだかわからなくなってきたお」
やがて、突入開始の無線が入ってきた。
数秒後、建物内から怒号が響き渡った。
何かがぶつかり合う音、何かが割れる音、
そんな中、裏口から突然何者かが飛び出してきた。
206 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:02:41.28 ID:iyOe289Y0
- ( ^ω^)「チェストーッ」
ブーンは飛び出してきた陰に思いきり体当たりを喰らわせた。
もつれ合うブーンと影。
影の持っていたバッグからビニール袋に入った白い粉が散乱する。
( ^ω^)「こ、これは!?」
<ヽ`∀´>「こ、これは小麦粉か何かニダ!」
頬骨が張り、吊り上がった目が特徴的な男だった。
( ^ω^)「なんだ、小麦粉でしたかお」
<ヽ`∀´>「ウリは小麦粉の行商でこのビルに来たニダ。麻薬取引とは関係ないニダ」
( ^ω^)「そうでしたかお。それじゃお気をつけてですお」
<ヽ`∀´>「お役目ご苦労様ニダ。(刑事が馬鹿で助かったニダ)」
209 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:06:36.08 ID:iyOe289Y0
- 男はそう言って、散らばった袋をかき集めて鞄に詰め、逃げるように去って行った。
――五分後。
( ><)「馬鹿もーんなんです!!そいつがニダーなんです!!」
( ^ω^)「な、なんだってー!?」
( ><)「お前みたいな馬鹿は見たことが無いんです!二度と使ってやらないんです!」
それがブーンの最初で最後の麻薬捜査だった。
次の日、麻薬班の掲示板には異動の知らせが張り付いていた。
「組織犯罪対策課麻薬班ブーン、この者、組織犯罪対策課特別分室に異動とする」
211 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:11:17.53 ID:iyOe289Y0
- ( ゚ω゚)「・・・島ながしだお・・・」
('A`)「おい、ブーン。これは洒落にならないぞ」
( ´ω`)「これはもうだめかもしれんね」
ブーンは少ない机の中身を整理し、特別分室に向かった。
その扉には「国家刑事局組織犯罪対応課特別分室」と、
ホワイトボードにサインペンで書かれている表札が貼り付けてあった。
ブーンが扉を開けると、満面の笑顔で分室の主が出迎えた。
从'ー'从「ようこそ分室へ、いらっしゃい〜」
特大の笑顔だったことは覚えている。
213 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:15:38.99 ID:iyOe289Y0
- ( ^ω^)「と、言う訳で、僕は分室に配属になったんですお」
川 ゚ -゚)「お前は・・・・(馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが・・・)」
( ^ω^)「馬鹿と言っても構いませんお。
この話を聞いて笑わなかったのは渡辺室長くらいですお」
川 ゚ -゚)「いや、まぁ・・・」
ブーンの回想はクーの予想の遥か斜め上を飛んでいた。
だからこそ分室に送られるというものである。
原因があるからこそ結果があるのだ。
クーは聞かなかった事にして、更に話題を振った
215 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:19:15.54 ID:iyOe289Y0
- 川 ゚ -゚)「渡辺室長はどうして分室にいるんだろう。ブーンは知っているか?」
( ^ω^)「室長は昔の事は一切話しませんお。
詮索するのも気が引けるので、昔の事は聞いてませんお」
川 ゚ -゚)「そうか。ま、人それぞれだな・・・」
それきり車内は沈黙した。
不思議な事にこの沈黙は苦痛ではない。どこか自然な沈黙だった。
その沈黙を保ったまま、車は高岡の家に到着した。
216 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:23:33.16 ID:iyOe289Y0
- 高岡の母は今朝とほとんど変わらぬ様子で二人を居間にむかえた。
ただ、疲労は確実に溜まっているらしい。
その目からは生気がほとんど感じられなかった。
( ^ω^)「なんどもお邪魔して申し訳ありませんですお」
J( '-`)し「今しがたも刑事さんたちがお帰りになったところですけど・・・」
( ^ω^)「本隊に先を越されましたお」
川 ゚ -゚)「ご面倒をおかけしますが、もう少しお付き合い願えませんでしょうか」
J( '-`)し「今更何も隠し立てする物はありませんよ。
私達親子の夜の顔もしられているのですから」
( ^ω^)「麻薬班の連中はそんな事も追及したんですかお」
J( '-`)し「私にはもう何にも残ってはいませんよ。お好きな事をお聞きください」
218 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:27:19.28 ID:iyOe289Y0
- 川 ゚ -゚)「では、単刀直入に覗います。荒巻と言う男はご存知ですね」
J( '-`)し「存じ上げております。私達親子を地獄から救い上げてくださった人です。」
( ^ω^)「荒巻はあなた方親子を苦しめたりはしなかったんですかお」
J( '-`)し「あの人は最初こそ娘を買ったものの、娘から私達親子の実情を聞くと、
その後は惜しみなく私達に援助を差し出してくださいました。
私の治療費まで捻出してくださって・・・」
川 ゚ -゚)「では、荒巻は貴方方へは何も見返りを求めなかったと?」
J( '-`)し「はい。あの人が何を考えていたのかはわかりませんが、
私達に無償の援助をしてくださった事だけは事実です」
( ^ω^)「その・・・荒巻の本当の顔については、既に麻薬班に聞きましたかお?」
J( '-`)し「ええ。先ほど全て刑事さんたちから聞きました。
娘を使って薬を子供達の間に蔓延させようとしたとか・・・」
220 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:31:34.87 ID:iyOe289Y0
- 川 ゚ -゚)「結局荒巻は娘さんを利用しただけかもしれないのですよ」
J( '-`)し「そうかもしれません。ですが・・・
私達を一度は助けてくださったと言う事実は事実です。
私はもう長くありません。娘も失いました。何も残ってはいません」
( ^ω^)「・・・・(また何も残っていないって言ったお)」
J( '-`)し「荒巻さんの住んでいる場所は、先ほど刑事さんたちにお話しました。
もう、私から聞き出すことはありませんよ」
高岡の母はそう言うと虚空に目をやり、大きくため息をついた。
川 ゚ -゚)「では、娘さんの事を少し聞きたいのですが、よろしいですか?」
J( '-`)し「ええ。もう何も残っていませんから構いませんよ」
( ^ω^)(また・・・)
222 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:35:51.07 ID:iyOe289Y0
- 川 ゚ -゚)「娘さんの同級生のしぃさんの事なのですが、今日局内で自殺しました」
J( '-`)し「先ほど伺いました。何故そんな・・・」
川 ゚ -゚)「理由はわかりませんが、何か思い当たる事は無いでしょうか」
J( '-`)し「・・・娘は、しぃさんと特別な関係にあると、常々話しておりました」
川 ゚ -゚)「特別な関係・・・とは一体?」
J( '-`)し「私にもよくわかりませんが・・・
しぃさんは娘と強い精神的な絆を持っていたのかもしれません。
娘はしぃさんを家に呼んで、まじないごとめいた事をよくやっていました」
( ^ω^)(まじない・・・高岡の大量の写真は偏執?執着?・・・今朝のテレビ?・・・
何か引っかかるお・・・)
ブーンは足りない頭をフル回転させる。
すると奇跡的にこれらが符号する物を高岡の部屋で見た事を思い出した。
224 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:39:05.08 ID:iyOe289Y0
- ( ^ω^)「そうだお!オカルト雑誌だお!」
ブーンが突然声を張り上げた。
彼は思い出した。オカルト雑誌が数冊高岡の部屋にあった事を。
川 ゚ -゚)「オカルト雑誌?」
J( '-`)し「確かに・・・。娘としぃさんはオカルト雑誌をよく読んでいたように思います」
( ^ω^)「もう一度娘さんの部屋を観せていただけませんかお?」
J( '-`)し「ええ、構いません。どうぞ」
227 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:43:40.11 ID:iyOe289Y0
- ブーンとクーは高岡の部屋に入った。
ベッドの上には今朝見たオカルト雑誌が無造作に置かれている。
ブーンはそれを取り、目次に目を通す。
川 ゚ -゚)「ブーン。オカルト雑誌が何か関係あるのか?」
( ^ω^)「ひょっとしたら、しぃの自殺と繋がるかもしれませんお」
川 ゚ -゚)「?どういうことだ」
ブーンは目次から目的の項目を見つけ出し、その頁を開いた。
( ^ω^)「これですお」
そこには「特集!ソウルメイト!」という見出しが書かれている。
ブーンには今朝聞いたばかりの言葉だった。
230 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/05(月) 23:47:32.84 ID:iyOe289Y0
- 川 ゚ -゚)「ソウルメイト?・・・なんだそれは?」
J( '-`)し「そういえば娘は先日、『しぃさんとは<何とかメイト>』だと話していました。
今思えばこれの事でしょうか」
( ^ω^)「ひょっとしたらしぃさんにとって高岡さんは、
親友を超えて崇拝に近い対象である存在だったのかもしれませんお。
文武に秀でた高岡さんと自分を同化したかったのかもしれませんお」
川 ゚ -゚)「話がみえてこないな・・・」
( ^ω^) 「しぃさんの部屋から見つかった大量の高岡さんの写真も符合しますお。
崇拝している絶対者が死んでしまった場合、
同化した自らも存在していてはいけない・・・と考えるかもしれませんお」
川 ゚ -゚)「そんな馬鹿な話・・・」
( ^ω^)「今朝テレビでソウルメイトって言葉を話しているのを観たんですお。
前世で繋がっていたとか、魂が惹き合っている人間同士とか、
ソウルメイトっていうのはそういう人たちの事を言うんですお」
236 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:00:36.94 ID:Qlj1M9gg0
- 川 ゚ -゚)「そんなものは妄想だろう?」
( ^ω^)「その通りただの妄想ですお。でも思春期の女の子の場合は・・・
その辺は少年課のクーさんの方が明るいですお」
川 ゚ -゚)「うーん、確かに年頃の少女というものは、極端に走る例があるかもしれないな」
( ^ω^)「それにしぃさんはキャンディを服用していましたお。
精神高揚作用が祟って勢い自殺したのかもしれませんお」
J( '-`)し「では、しぃさんが自殺したのは娘の所為なのでしょうか」
( ^ω^)「娘さんに責任は無いですお。と言うより、誰も悪くは無いですお。
敢えて言うなら、ありもしない事をこれ見よがしに商売にする、
卑劣な大人が悪いんですお」
J( '-`)し「でも、そんな思い込みだけで後追い自殺なんてするものでしょうか」
川 ゚ -゚)「それはなんとも言えませんね・・・・
しかし、あり得ない可能性ではないかもしれません」
J( '-`)し「そういうものなのでしょうか・・・」
( ^ω^)「本当のところは亡くなったしぃさんにしかわからないかも知れませんお」
239 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:05:35.89 ID:Qlj1M9gg0
- これがしぃの自殺の理由なのだろうか。
ブーンは自分で話していても、これは都合のいい詭弁かもしれないと考えていた。
しかし、この結論が関係者を一番傷付けないものだと、心のどこかで思っている。
ブーンが少し思索に耽っていると、携帯が鳴り出した。
携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」
( ^ω^)「もしもしブーンですお。室長、なんですかお?」
从'―'从『今、対策本部に緊急召集がかけられましたよ。
荒巻の生存が確認された上に、潜伏先が判明しましたよ。
高岡さんのお母さんの証言から判明したようです』
( ^ω^)「それは一大事ですお。すぐに戻りますお」
ブーンは携帯を切って、渡辺から告げられた内容をクーに話した。
240 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:08:28.97 ID:Qlj1M9gg0
- 川 ゚ -゚)「急転直下というやつか。急いで戻ろうブーン」
( ^ω^)「そういう訳で僕らは帰りますお。ご協力ありがとうございましたお」
J( '-`)し「協力するも何も、私には何もありませんから、お役に立たなかったでしょう」
( ^ω^)「それは言わない方がいいですお」
J( '-`)し「え?」
( ^ω^)「『私には何もありません』っていうのは言わない方がいいですお。
貴方にはまだ貴方の人生がありますお。
病気に犯されていても、まだまだ生きなくてはいけませんお。
娘さんのためにも・・・」
J( '-`)し「あの子の為に・・・」
244 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:11:41.46 ID:Qlj1M9gg0
- しばらくの沈黙の後、高岡の母は言った。
J( '-`)し「こんな若い人からお説教されるなんて情けないですね」
( ^ω^)「あ、お説教なんてつもりで言ったんじゃないですお。僕はただ・・・」
J( '-`)し「わかっていますよ刑事さん。」
―――なげやりに生きるのにはまだ残された時間が多すぎますね
そう言って高岡の母はブーンに微笑んだ。
ブーンの他愛も無い言葉に救われるものがあったのだろうか。
ブーンにその答えはわからなかったし、誰にわかるようなものでもなかったが、
初めて高岡の母と本当の言葉のやり取りが出来たと思った。
246 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:15:20.61 ID:Qlj1M9gg0
- 二人は高岡の家を辞して、刑事局へと車を走らせた。
車内でブーンは高岡の母と最後に交わした言葉を思い返す。
―――なげやりに生きるのにはまだ残された時間が多すぎますね
これでよかったのだろうか。
いや、よかったのだ。そうでなければ救いが無さ過ぎる。
いくら荒んだ社会だと言えども、全てを無くした人が希望を持つ事くらい許されるべきだ。
( ^ω^)「クーさんは絶望した事がありますかお?」
川 ゚ -゚)「唐突だな。勿論あるさ。絶望した事が無い人間なんて居ないんじゃないか」
( ^ω^)「人は絶望するから希望が持てるのかもしれませんお」
川 ゚ -゚)「どうしたんだ一体。何か悟ったか?」
( ^ω^)「それ程の事ではないですお」
248 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:19:22.62 ID:Qlj1M9gg0
- クーには何故突然ブーンがそんな事を言い出したのか皆目見当がつかなかった。
しかし、何故か自分の心の内を覗き見られたような気がして、少しきまりが悪かった。
そこで話題を強引に変えた。
川 ゚ -゚)「ところで、ブーンは何故刑事局に入ったんだ?」
( ^ω^)「これはまたえらく唐突ですお」
川 ゚ -゚)「おかえしだ。なんとなく聞きたくなったんだ。
ブーンの性格からして向いている職業とは思えないのでな」
( ^ω^)「確かに僕の性格はこんな仕事にはむいてませんお。
でも、刑事になると決意した切欠はありますお」
川 ゚ -゚)「是非知りたいものだな」
クーは咄嗟に振った話題に乗ってきたブーンの言葉を受けて、
こんなお人好しが刑事になった切欠を本気で知りたくなってきていた。
251 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:24:12.37 ID:Qlj1M9gg0
- ( ^ω^)「あれは、二年前のキャンディ騒ぎの時ですお・・・。
僕が妹と二人で買い物に行った帰りの事ですお。
僕と妹は偶々強盗事件の現場に居合わせてしまいましたお。
犯人はキャンディによる身体強化者でしたお。そして・・・」
―――妹は犯人に殴られて死んでしまいましたお。―――
ブーンのあまりにもショッキングな告白にクーは言葉を失った。
この呑気で感情的な青年の過去にそんな深い傷があろうとは。
しかも、トラウマをさらりと語ってのけた事にもクーは驚愕した。
川 ゚ -゚)「思い出させて悪かったな・・・」
( ^ω^)「毎日思い起こしていますから問題ないですお」
何でも無い事のよう、さらりと言ってのけたブーンに、クーは少し動揺した。
川 ゚ -゚)「しかし、お前はそんな大きな傷をよくさらりと他人に喋れるな。
普通は言いたくないはずだぞ」
クーが直球を投げる。
254 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:28:13.09 ID:Qlj1M9gg0
- ( ^ω^)「感情を込めて話していないから大丈夫ですお。
この件に関して感情を込めると・・・心がもたないですお。
もっとも、感情を込めないで話せるようになるまでには結構苦労しましたお」
クーは隣に座っている青年が、見た目以上にタフなのだと認識した。
過去の傷が、彼の甘さとも言える優しさの根源かもしれない。
( ^ω^)「『しっかりしていなかったら生きていられない。
優しくなれなかったら生きている資格が無い』
探偵フィリップ・マーロウの名台詞ですお」
優しくなれない自分は生きている資格が無いのだろうか。クーは思った。
( ^ω^)「渡辺室長もクーさんもしっかりしていて優しいですお。
僕は全然しっかりしていないので、まだまだですお」
256 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:31:36.70 ID:Qlj1M9gg0
- 川 ゚ -゚)「私が、優しい?」
( ^ω^)「今朝会った時はおっかない人だと思ってましたお。
一緒に行動してもっとおっかない人だと確信しましたお
だけど、僕の島流しの話を聞いて馬鹿にしなかったのは、
室長とクーさんだけですお」
川 ゚ -゚)(馬鹿だとは思ったのだが・・・言わないで良かった。しかし、私が優しい?)
―――優しい
クーは心の中でそのことばを繰り返していた。
ブーンには嫌われているとばかり思っていたのだが。
クーが思索に耽っていると、ブーンが聞いた。
257 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 00:33:37.20 ID:Qlj1M9gg0
- ( ^ω^)「クーさんはどうして少年課なんですかお?」
川 ゚ -゚)「え、わ、私は特に深い理由は無いな。
ただ、子供の頃から人類を守る正義の味方になりたかった。
子供達は人類の未来だろう?だから子供達を守ろうと思ったんだ」
( ^ω^)「クーさんらしいですお」
川 ゚ -゚)「そうかな・・・」
何故かそれきり声は生まれなかった。
クーはまだ心の中で同じ言葉を反復している。
黙り込んだ二人を乗せた車は、刑事局の駐車場に滑り込んだ。
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