112 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水)
21:59:28.24 ID:qGAYtTP90
- 午前八時。
( ^ω^)「徹夜明けのコーヒーはシミますお」
川 ゚ -゚)「ここのコーヒーは美味いな」
( ^ω^)「ハムサンドうめぇ」
ブーンがハムの切れ端を飛ばしながらハムサンドの感想を述べた。
川 ゚ -゚)「食べるか喋るかどちらかにした方がいいぞ」
クーは自分のコーヒーとホットケーキを避難させる。
刑事局前にあるカフェの一角で二人は朝食をとっていた。
ブーンがハムサンドをがっつき、クーはホットケーキを食べている。
ホットケーキを一口飲み込んでからクーは言った。
118 名前: ◆K/ms5.N0fc [] 投稿日:2007/03/07(水)
22:03:27.95 ID:qGAYtTP90
- 川 ゚ -゚)「これで私達のコンビも解消だな。
やっとブーンと離れられると思うとホッとする」
( ^ω^)「それは酷いですお。僕だって結構活躍しましたお」
川 ゚ -゚)「覚えが無いなぁ」
クーがとぼけた素振りを見せたとき、恐怖はブーンに襲い掛かった。
ξ゚听)ξ「おはよう、ブーン。
全然連絡が無いと思ったら、こんな美人を連れて優雅に朝食ですか。
十秒以内に全ての言い訳をしないとぶちころす」
このカフェで働いているツンが仁王立ちしていた。
( ^ω^)「ちょ、待つおツン!これは、この人は何でもないただのパートナーだお。
昨日は事件が立てこんで、しかも調書や報告書をまとめてたから・・・」
ξ゚听)ξ「一二三四五六七八九十。ハイ死刑」
119 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:07: 27.84 ID:qGAYtTP90
- ツンは持っていた木製のトレイを振りかぶった。
クーが目線をそらす。
ゴン、という鈍い音がカフェに響いた。
ツンはトレイの角で殴ったらしく、ブーンはハムサンドの上に突っ伏した。
ξ゚听)ξ「死ね。氏ねじゃなくて死ね」
流石に見かねたクーが口をはさんだ。
川゚ -゚)「えー、ツンさんでしたね。私は刑事局少年課のクーと言います。
ブーンとは昨日知り合ったばかりでツンさんの疑うような仲ではありません。
ある事件の捜査の手伝いで昨日一日お借りしました。
折角のデートを潰してしまって申し訳ない」
ξ゚听)ξ「え、そうなんですか・・・って、デートなんかじゃありません。
時間が空いていたから一日ボランティアのつもりで、
ブーンと付き合ってやろうかと思っただけですよ」
123 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:11:28.25 ID:qGAYtTP90
- ( ^ω^)「それなんてツンデレ?」
復活したブーンがちゃちゃを入れた瞬間、
ゴン、と再び鈍い音。
川 ゚ -゚)「ま、まぁ、私とブーンのコンビは今日限りで解散です。
だから安心してください」
ξ゚听)ξ「べ、べつに私はブーンと付き合ってるわけじゃないんですよ」
川 ゚ -゚)「そうですか(わかりやすい娘だな)」
クーはツンに気付かれないほど僅かに微笑み、この二人なら馬が合いそうだと思った。
邪魔者は消えたほうが良さそうだ。
川 ゚ -゚)「それじゃブーン。最後のお別れだ。
一日だけだったが、君は優秀な相棒だったよ」
127 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:14:28.79 ID:qGAYtTP90
- ブーンはハムサンドの残骸を顔に付けながら笑った。
( ^ω^)「こちらこそありがとうございますだお」
クーも笑った。
ツンもつられて笑った。
笑っていると昨日の騒動が嘘のようだ。
何も無かったのかもしれないという錯覚すら覚える。
しかし、現実は容赦しない。
事件は笑っているブーンとクーに間違いなく影を落とした。
それでも二人は変わらない日常を過ごす力と心を手に入れた。
川 ゚ -゚)「では、私は少年課に出勤するとしよう。じゃぁな、ブーン」
( ^ω^)「クーさんおげんきでだお。何かあったらまたよろしくだお」
クーはカフェの入り口で振り返り、軽く手を振った。
ブーンも手を振り返す。
ツンは会釈した
131 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:16:28.15 ID:qGAYtTP90
- こうしてブーンとクーの奇妙なコンビは解散した。
残されたブーンがツンに言う。
( ^ω^)「今度の休みこそ美術館に行くお。僕が休みを調整するお」
ξ゚听)ξ「そ、そこまで言うんなら仕方が無いわね。
いいわよ。一緒に行ってあげるわよ」
( ^ω^)「おっおっお。ツンは素直じゃないお」
ξ゚听)ξ「う、うるさい」
ゴン。
三度目の音が鳴り響いた。
138 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:18:27.81 ID:qGAYtTP90
- その扉には「国家刑事局組織犯罪対応課特別分室」と、
ホワイトボードにサインペンで書かれている表札が貼り付けてあった。
从'ー'从「ふぅ、これで最後ですね。なんとか報告できる形に纏まりましたね」
渡辺は独り言を零しながら事件の書類をまとめるため、パソコンに向かっていた。
ブーンとクーが徹夜で仕上げた報告書のまとめである
一連の事件は新型キャンディ事件と呼称され、現在も捜査継続中になっている。
新たに新型キャンディが流出したという報告は無いが、
かと言って解決できそうな気配も無い。
しかし、渡辺はこのままでもいいのではないかと思い始めている。
残った荒巻達が事件を起こすとは限らない。
クローンであっても意志は統一されていないと思われるからだ。
二人目が暴走したのに比較して、三人目は常に冷静だった。
もっとも、正気を欠いていたのは事実だが。
从'ー'从「あの人達は精一杯生きようとして、狂ってしまったのかもしれませんねぇ」
141 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:20:27.83 ID:qGAYtTP90
- ため息混じりに独り言を呟く。
誰もが良く生きる事ができる世の中になればいいと思った。
奇麗事だけでは生きていけないのが現実だが、
そういう世界があってもいいと渡辺は思っている。
ただ生きる為に生きる。
そんな世界があってもいい。
完成した報告書を局長当てにメールで送った。
分室の仕事はこれで一旦終了する。
事件の緊急性が薄れた事と、少年課の捜査にも一段落ついた為である。
残りの捜査は麻薬班がやるのだろう。
そして、分室は再び資料の山と向かい合う事になる。
ブーンには申し訳ないが。
从'ー'从(ブーン君だけでもここから出してあげたいのだけれども)
143 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:22:28.33 ID:qGAYtTP90
- その時、ドアをノックする音が聞こえた。
扉を開けて入ってきたのは、局長のシャキンだった。
(`・ω・´)「やぁ、おはよう。報告書はまとまったかい?」
从'ー'从「はい、丁度今、局長にメールを送りました」
(`・ω・´)「そうかい、それなら良し」
シャキンの歯切れが悪い。
从'ー'从「何か御用ですか?」
(`・ω・´)「その、なんだ、二人だけの時はその馬鹿丁寧な物言いは止めてくれないか」
从'ー'从「公私混同は許されませんから」
(`・ω・´)「やっぱり、まだ怒っているのか」
148 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:24:27.91 ID:qGAYtTP90
- 从'ー'从「怒ってなんていませんよ」
(`・ω・´)「今回の件ではかなり無理を通したと思ってるんだが・・・」
从'ー'从「それに関してはお礼の言葉もありません。ありがとうございました。
ですが、それとこれとは別の話ではないのですか」
(`・ω・´)「いや、まぁ・・・そうだな。アレだ、母さんは元気か?」
从'ー'从「おかげさまで息災です。結婚していた時より元気ですよ」
シャキンは苦笑いを見せた。
(`・ω・´)「そうか、それなら良し」
从'ー'从「それだけですか?」
153 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:26:27.82 ID:qGAYtTP90
- (`・ω・´)「いや、今回の件なんだが、私を頼ってくれて嬉しかったよ。
やはり娘のワガママを聞けるのは幸せだ」
从'ー'从「ですから、公私混同はやめてください。
今回は局長が私の父親でなくても直訴しましたよ」
(`・ω・´)「そうか、それなら良し」
从'ー'从「そればっかり」
渡辺は少し笑った。
(`・ω・´)「それでだ、お前はこの分室が気に入っているか?」
从'ー'从「今回の件で私は初めて刑事の仕事に生きがいを感じました。
資料とにらめっこはもう十分ではないでしょうか。
いくら娘が大切でも、檻に閉じ込めておくのはいただけません」
158 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:28:27.95 ID:qGAYtTP90
- (`・ω・´)「そうか、大切な娘を危険な目に遭わせたくないからここを作ったんだがなぁ」
从'ー'从「それは杞憂と言う物ですよ」
(`・ω・´)「わかった。では今年度末で特別分室は廃止しよう。
君も一人の刑事となりなさい。
それからお前の部下のブーンも、春には転属させよう」
从'ー'从「はい」
再び少し笑った。
(`・ω・´)「そうそう、昨晩荒巻とね、少し喋ったよ。
確保された時の話をしてくれたよ。
アレは可哀相な人間かもしれないなぁ・・・」
シャキンがそう小さく言った。
160 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:30:27.81 ID:qGAYtTP90
- ―――昨晩。
荒巻が自らの行いに終止符を打とうとした時、ブーンが動いた。
上着のポケットには別荘地で勝手に借りた拳銃が、安全装置もかけられずに入っていた。
ブーンはとっさに銃を引き抜き、荒巻を撃ったのだ。
日頃の射撃訓練の結果からは信じられないほど正確な射撃で、
弾は銃を持つ荒巻の腕を貫いた。
銃を落とし、膝をつく荒巻にクーが駆け寄る。
( ^ω^)「当たったお・・・」
川 ゚ -゚)「荒巻スカルチノフ。殺人教唆、殺人未遂、麻薬取締法違反、年少者売春禁止法違反、
公務執行妨害、とにかく確保だ」
クーが荒巻に手錠をかけた。
一方、ブーンは銃を撃った体勢のまま固まっていた。
初めて人を撃ったのである。
クーが近付き、ブーンの腕に手をかけ、優しくその腕を下ろす。
ブーンは銃の安全装置をかけた。
165 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:32:27.96 ID:qGAYtTP90
- 川 ゚ -゚)「終ったぞ」
( ^ω^)「終わりましたお」
部屋の外が騒がしくなった。
どうやら重犯罪課の増派チームが来たらしい。
ジョルジュやモララーは無事だろうか。
ブーンがそんな事をぼんやり考えていると、荒巻が声を発した。
/ ,' 3「ワシを捕まえても残りのワシがなにか仕出かすかも知れんぞ。
それを止めるにはワシ等の苦痛を知らねばならない。
お前にワシ等の痛みがわかるかの」
( ^ω^)「・・・・・・
人は・・・他人の心を理解する事は出来ないお。
だから、お互い歩み寄らなければならないんだお。
それが人間らしく生きるという事なんだお・・・きっと」
168 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:34:27.96 ID:qGAYtTP90
- / ,' 3「・・・・・・」
( ^ω^)「僕は残りの荒巻たちにも――残された時間が少なくても――
人間らしく生きて欲しいお」
/ ,' 3「・・・青い解答だの」
( ^ω^)「青くて結構だお。人の生き方に解答なんてないと思うお」
追加チームとそのメンバーに肩を借りたモララーが部屋に入ってきた。
部屋の状況を見てモララーが言う。
( ・∀・)「やるじゃないかお前達。よく逃がさなかったな」
( ^ω^)「荒巻は逃げるつもりは無かったですお」
( ・∀・)「そうなのか?しかしコイツはウチの部下のカタキだからな。
よく確保してくれた。礼を言うぞ」
169 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:36:28.24 ID:qGAYtTP90
- ( ^ω^)「まぐれみたいなもんですお」
川 ゚ -゚)「モララーさん。荒巻の出血が結構あるので、早々に連行したいのですが」
( ・∀・)「あぁ、ぶっ殺してやりたいが、ここは我慢するよ。さぁ、連れて行ってくれ」
ブーンとクーは荒巻を連れてホテルを出た。
玄関には救急車が何台か止まっている。
怪我人が慌しく搬送されているのだ。
荒巻を救急車に乗せ、麻薬班に身柄を引き渡した時、荒巻が最後の言葉をブーンに放った。
/ ,' 3「坊主!お前さんのその生き方、貫けるものなら貫いてみせろ!」
( ^ω^)「・・・・・・」
川 ゚ -゚)「ブーンなら大丈夫だ」
クーは静かに言った。
170 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:38:34.71 ID:qGAYtTP90
- (`・ω・´)「しかし、お前の部下のブーンは最後に良い仕事をしたな。
クローン人間に人間の生き方を説いた」
从'ー'从「あの子はちょっと頼りないですけど、心に大きなものを秘めています。
自慢の部下ですよ」
渡辺は嬉しそうに答えた。
春にはブーンも分室から卒業できるだろう。
麻薬班に戻るのか、それとも他の部署にまわるのか。
勿論、自分の配属先も重要だ。
( ^ω^)「ブーンただいま到着しましたお」
ブーンが大きな声を出しながら、分室に入ってきた。
春は忙しくなりそうだと渡辺は思った。
( ^ω^)ブーンは麻薬捜査官のようです おしまい。
179 名前:愛のVIP戦士[]
投稿日:2007/03/07(水) 22:40:33.40 ID:vGN0yGUC0
- / ,' 3「俺の新巻は後108匹居るぞ」
187 名前: ◆K/ms5.N0fc []
投稿日:2007/03/07(水) 22:42:56.00 ID:qGAYtTP90
- ようやく投下完了です。
さるさんに苛められながらも、皆さんのおかげで終了する事が出来ました。
Wktk、保守、支援、乙、全て嬉しかったです。
本当にありがとうございました。
このお話についてなんですけど、
ドラマの「相棒」からインスパイアを受けました。
冷静なのと馬鹿なののコンビで何かできれば、と思いました。
いろいろ適当にやっつけた所がありますが、その辺は見なかったことに・・・サーセンw
それでは最後にもう一度。
皆様、ありがとうございました。
あと、>>179はそのネタで一本書いてくださいw
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