2 名前: プロローグ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:11:53.86 ID:bOXNNog4O

この世界は『運営』というブロックが管理している。
そして各ブロックが広がり、その形を成している。

この世界には、数年に一度、不定期に無差別格闘大会が行われていた。
無差別格闘大会で優勝した参加者には、何でも願いが叶う権利が与えられる。
夢のような話だが、この世界ではそれが当然といったように存在していた。
当然として存在していれば、叶えてほしい願いも千差万別。
壮大な願いもあれば、些細な願いもある。

チームは最大三名まで組むことができ、開催日の何日か前には、
参加代表者の元に三枚の招待状を兼ねた参加証と、
互いの参加者の位置がわかるレーダーが一個が送られてくる。
レーダーは開催日に起動するようあらかじめセットされており、
当日まで誰が参加者なのかわからないようになっている。
大会といっても会場はなく、戦いは各ブロックの様々な場所で開始される。


4 名前: プロローグ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:12:53.96 ID:bOXNNog4O

大会終了までに多く参加証を集めることがこの大会の目的であり、
大会が開催している間は暴力行為も参加者同士なら許可されるのだ。
(ただし相手の傷の具合が酷い場合や死亡させた
場合は殺人未遂罪または殺人罪で逮捕されてしまう)
大会終了時、参加証を最も多く手にしていた参加者には、
願いを叶える権利が与えられる。
どんなに大きな願いでも、どんなに小さな願いでも。

この世界に生きる者達は願いを叶えるために、大会に挑んだ。


6 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:17:09.69 ID:bOXNNog4O

大会開催日の前日。

『ヒッキー』ブロックのとある民家。
カーテンが締め切ったきりの薄暗い部屋。
そこに三人の男がいる。

( ^ω^)「大会に向けて対策を練るお……」

この男の名は内藤ホライゾン。
通称ブーン。生粋のニートだ。

('A`)「俺達は素人だし、実力も格下だろうからな。作戦はいるぜ」

ブーンの隣にいるこの男は、ドクオ。
彼女いない歴=年齢の寂しい男だ。

(-_-)「……」

そして部屋の隅で体育座りをしているこの男はヒッキー。
引きこもりのエリートである。
三人はそれぞれの叶えたい願いのため、チームとして参加する。

('A`)「聞いた話、レーダーは俺達じゃなくこの参加証に反応するらしい」


7 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:17:59.09 ID:bOXNNog4O

( ^ω^)「じゃあ多く持ってる奴を探してそいつから奪う作戦がいいと思うお」

(;'A`)「いや、多く持ってる奴=強い奴だろ……常識的に考えて」

ブーンは馬鹿だった。
この男、ニートになった理由も「空を飛びたい」からという、なんとも馬鹿な男なのである。
今回大会に参加したのも、優勝して空を飛べるようになりたいからという……
なんとも馬鹿な(#^ω^)「うるせえお」
ただ、ブーンには、そこまでしたいという強い思いがあった。
だからこそ、夢を叶えるためにここにいるのである。

('A`)「しかも三人が有利だと思ってチームを組むことにしたが、
最終的に三人チームは参加証を集めた数÷3で計算されちまう」

( ^ω^)「逆に一人参加の方が有利ってことかお」

('A`)「まぁな。一人でも強ければ集め放題だろ」


9 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:22:15.49 ID:bOXNNog4O

まだ始まってもいないというのに諦めムードぷんぷんなこの男、
ついさっきまで優勝したら「理想の彼女を作る」と意気込んでいたのだ。
恋愛も成就してないのに、ショートカットで彼女を作るとは、とんだ非モテ男である。
そんなことだから彼女だってできないし、
隣人のカップルのセクースの音が聞こえて鬱だ死のうとか(#'A`)「ウルセエヨ」

('A`)「とにかく俺等は、雑魚を倒して参加証を集めまくるしかない」

( ^ω^)「集めまくりマクリスティだお!」

('A`)「あぁ集めまくりマクリスティだ!」

(-_-)「ぼくは外に出ないよ」

(;^ω^)「ちょっ……いきなり何を言い出すんだお」

(;'A`)「おいおい……」


10 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:22:57.36 ID:bOXNNog4O

それっきりだんまりを決め込むヒッキー。
このブロックで最も多いヒッキー族の直系にあたる由緒正しい引きこもりである。
ヒッキーは特に夢もない。
強いて言うなら「一生家から出ないで楽に暮らす」とか抜かすぐらいの堕落っぷり。
だから参加意欲もなく、ネットで知り合ったドクオに勧誘されたからいるようなものなのだ。

(;'A`)「わざわざ『ヒッキー』まで来たのになぁ……」

落胆するドクオ。
始まってもいないのに、落ち込むのはどうだろう。

('A`)「……前向きに考えよう。民家で戦うのは禁止されてるし、
ヒッキーの家は参加証の保管庫にさせてもらおうぜ」

( ^ω^)「ブーンとドクオはたくさん修行したお。
強くないかもしれないけど、弱くはないはずだお」


12 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:28:01.09 ID:bOXNNog4O

('A`)「やるっきゃないんだな」

( ^ω^)「そうだお」

( ^ω^)('A`)「やるっきゃない!!」

意味のないかけ声が、むなしく響いた。



('A`)「あ〜ぁ、往復で金かかった……」

( ^ω^)「ブーンの分も払ってもらってすまんお」

('A`)「ニート金なし俺彼女なしってな」

ここは『VIP』ブロック。ブーンの暮らすブロックだ。
夕日が沈む住宅街をブーンとドクオはとぼとぼ歩いている。
後ろ姿は哀愁を漂わせるが、なんか自業自得っぽくて情けない。

( ^ω^)「ドクオ、明日から大会だお。オナニーは控えるんだお」

(#'A`)「その言葉そっくりそのまま返すぜ」

そんな会話を最後に、二人は別れた。
ドクオは自分の住む『独身男性』ブロックへと帰っていく。


13 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:29:05.14 ID:bOXNNog4O

ブーンが振り返ると、そこには見慣れた顔があった。

ξ#゚听)ξ「な〜にがオナニーよ。この変態ッ!」

(;^ω^)「ツ、ツン……いたのかお」

ロールのかかったツインテールが可愛いセーラー服姿の少女が、ブーンを睨んでいる。
彼女はツン。ブーンの幼なじみだ。

( ^ω^)「今帰りかお?」

ξ゚听)ξ「そうよ!文句あるわけ!?」

( ^ω^)「別にないお……」

ξ゚听)ξ「あんたと話してたらあたしまでクーちゃんに変態扱いされるわ!」

ツンはぷいっとそっぽを向いた。
ブーンはツンの隣を見る。そこにはツンとは別に少女がいた。

川 ゚ -゚)「どうも」

( ^ω^)「あ、どうもですお」

クーはずっとブーンを見ている。
なにやら気まずい。
そんな気がしたブーンは、そそくさとその場を後にしようとする。


14 名前: ヒキニート彼女なし同盟 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:30:02.15 ID:bOXNNog4O

(;^ω^)「じゃ、じゃあツン、気をつけて帰るんだお〜!」

そう言ってブーンは両腕を広げて走り出した。
明日から、大会が始まる。
ブーンは自分の夢のため、まだ飛べぬ翼を羽ばたかせる。

⊂二二二( ^ω^)二⊃「ブーンの戦いは、これからだお!」

ご愛読ありがとうございました。
>>1先生の次回作にご期待ください。

 


 

17 名前: 戦う女子高生チーム(新ジャンルヒロインズ) 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:35:11.73 ID:bOXNNog4O

両腕を広げて走っていく男の背中を見ながら、ツンは長い長い息をつく。

ξ゚听)ξ「あの馬鹿……ほんっっっとに恥ずかしい」

川 ゚ -゚)「彼か。年上の幼なじみは」

ξ゚听)ξ「そう。遂に見られちゃったなぁ」

ツンの隣で、クーはなにやらふむふむと呟いている。

川 ゚ -゚)「どうやら彼も参加者のようだが……」

ξ゚听)ξ「どうせ最初の戦いで負けちゃうわよ」

川 ゚ -゚)「そうだといいが」

クーは執拗にブーンを危険視しているようだった。
ブーンだけではない。ブーンと一緒にいたドクオもだ。

ξ゚听)ξ「クーちゃんは心配しすぎよ」

川 ゚ -゚)「いや、ここはどんな相手でも気を抜かない方がいい」

ξ;゚听)ξ「そんな……」

川 ゚ -゚)「ツン、君だって願いを叶えたいのだろう?
優勝して、彼に告白する勇気が欲しいんじゃないのか?」


18 名前: 戦う女子高生チーム(新ジャンルヒロインズ) 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:36:42.82 ID:bOXNNog4O

ξ////)ξ「……」

ツンは顔を赤くして黙り込んだ。
純情である。1/3の純情な感情である。

「たすけて〜」

と、静かだったところに、なにやら助けを求めることが聞こえた。

ξ゚听)ξ「あ……」

川 ゚ -゚)「そういえば……」

何かを思い出した二人。

从;'ー'从「助けて〜」

ξ;゚听)ξ「渡辺さん!?」

川;゚ -゚)「何故マンホールにはまっているんだ……」

ツンとクーに引き上げられ、やっと地に足をつけた少女。
渡辺さん。少し天然。

从'ー'从「ありがと〜」

川;゚ -゚)「先が思いやられるな……」


19 名前: 戦う女子高生チーム(新ジャンルヒロインズ) 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:37:20.15 ID:bOXNNog4O

ξ゚听)ξ「まぁまぁ。でもあたしと渡辺さん、クーちゃんのお陰で強くなれたのよ」

从'ー'从「実家は道場か何かなの〜?」

川 ゚ -゚)「いや、神社だが」

どこにでもいそうな三人の女子高生。
しかし彼女達も大会の参加資格がある立派なファイターだった。

 


 

21 名前: カップルギコしぃ 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:42:12.75 ID:bOXNNog4O

歓声が響く、大会優勝者の願い事叶えます会場。
そこには、集めた参加証の枚数トップ10に入った者達が集まっている。
願い事は叶わない。だが、トップ10に入れたそれだけで誇りに思える。

( ,,゚Д゚)「やったゴルァ」

(*゚ー゚)「そうだね、ギコくん」

ギコと呼ばれた少年は、彼の名を呼んだ少女を見た。
少女は笑っている。優しく暖かい笑みを、ギコに向けている。

( ,,゚Д゚)「しぃ、願いなんかなくても俺達幸せだゴルァ」

(*゚ー゚)「そうだね……」

しぃと呼ばれた少女は、満ち満ちた気持ちだった。
戦いを終えて、自分の愛と絆はより深まったと確信できたからだ。

( ,,*゚Д゚)「帰ったら結婚式をあげるゴルァ」

(*゚ー゚)「本当?嬉しい……」

微笑みながらも、しぃの瞳から涙が零れた。

ギコとしぃが暮らしている『AAサロン』ブロックは、
願い事叶えます会場から最も離れた場所に位置していた。


22 名前: カップルギコしぃ 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:43:25.68 ID:bOXNNog4O

交通機関もあまり整ってはおらず、戻るのも一苦労なブロックだ。
ギコは『AAサロン』で数を占めるギコ族の直系で、しぃも同じギコ族である。
二人は一族からも祝福され、大会の参加は自分達の絆を深めるイベントのようなものだった。
故郷に戻る二人は、幸せで溢れている。
そしてこれからも、幸せな日々は続くだろう。

そう、思っていた。



( ,,;゚Д゚)「ハッ……!!」

そこは寂れたモーテル。
全ては夢。全ては遠い日の記憶。

( ,,;゚Д゚)「嫌なこと思い出したゴルァ……」

ギコは汗を拭う。
彼の腕の中には、一人の女性が静かに寝息を立てていた。

(#゚;;-゚)「……」

( ,,゚Д゚)「しぃ……いや、でぃ……」

悲しげな瞳で、ギコはそう呼んだ。
片耳がもげ、顔や、おそらく全身に傷を負っているのだろう。
変わり果てた、しぃだった者。


25 名前: カップルギコしぃ 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:48:08.75 ID:bOXNNog4O

( ,,゚Д゚)「明日からまたあの戦いが始まるゴルァ。
そしたら今度こそ優勝して、君をあの頃のしぃに戻すゴルァ」

決意は、まるで燃え盛る炎のように高ぶっている。

「けど、お前だけなら負けるぜ」

突然、どこかから声が聞こえた。

( ,,;゚Д゚)「だ、誰だゴルァ!」

(*゚∀゚)「驚かせて正直すまなかった。
オレはつー。あんた達と同じギコ族の生き残りさ」

暗闇から、ぬっと姿を現す少女。
一瞬、しぃと見間違えそうになったが、ギコは暗い部屋のせいだと自分を誤魔化す。

(*゚∀゚)「オレと組まないか?」

( ,,゚Д゚)「目的はなんだゴルァ」

(*゚∀゚)「一族の復興……かな」

つーの言葉に、ギコはしばらく沈黙する。
そして、ゆっくりと口を開いた。

( ,,゚Д゚)「いいだろうゴルァ」


26 名前: カップルギコしぃ 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:48:58.74 ID:bOXNNog4O

『AAサロン』の大虐殺。
ブロックに帰ってきたギコとしぃはそれに巻き込まれた。
一族は大量に死に、そしてそれを止めに入ったしぃも……
つーの姿を見て、ギコはどこかしぃに似ていると思った。
だから、つーと組むことを了解したのかもしれない。

 


 


28 名前: ちんぽっぽと愉快な仲間達 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:54:08.86 ID:bOXNNog4O

街はピリピリと張り詰めていた。
街だけでない。世界全体が、この大会に臨む者達の闘気によって緊迫していた。
だが、この者には、そんな緊張など関係なかった。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ」ぼいんっ

( ><)「ちんぽっぽちゃん!戦いはもうすぐ始まるんです!」

( <●><●>)「いつもの調子なのはわかってます」

キコキコと自転車をこぎながら、仲の良さそうな三人組が商店街を駆け抜けていく。
可愛いちんぽっぽを中心としたチームのようである。

( ><)(優勝したらちんぽっぽちゃんを礼儀正しくするんです!)

そんな野望を燃やしているのは、ちんぽっぽの友達のわかんないんですだ。

( <●><●>)(ちんぽっぽちゃんとわかんないんですちゃんと、
もっと仲良くなりたいのはわかってます)



29 名前: ちんぽっぽと愉快な仲間達 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 21:55:05.43 ID:bOXNNog4O
そう願うのは、ちんぽっぽとわかんないんですよりも少しだけ付き合い短いわかってますだ。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ」ぼいん

自転車ごと飛び跳ねているちんぽっぽは、「みかんが食べたい」とでも思っているのだろう。
実に平和だ。
平和過ぎて眠たくなるね。
すまん。ちょっと寝るわ。

(;><)「ちんぽっぽちゃん!!!!」

何事!?
な、なにやらわかんないんですが叫んでいる。

     △
   / ̄ ̄\             ☆
  /____ヽ
 │l *‘ω‘ *l│  スペースちんぽっぽ   ☆
 │ ̄ ̄ ̄ ̄│
 │      │      ☆
/l_____l\
 ̄    v v    ̄
     川
   ( (  ) )


31 名前: ちんぽっぽと愉快な仲間達 編@ 投稿日: 2007/03/01(木) 22:00:02.40 ID:bOXNNog4O

と言うやいなや、ちんぽっぽはロケットになって空の彼方に飛んでいってしまった。

(;><)「待ってください!まだ僕が乗ってません!」

(;<●><●>)「突っ込むところが違うのはわかってます」

自転車でちんぽっぽを必死に追いかける二人。
ちんぽっぽは自由気ままにお宇宙(そら)の旅を楽しんでいるのだった。

(*‘ω‘ *)「ちんぽっぽ」ぼいんっ

大会当日の、開催直前のほのぼのエピソードをお送りしました。

 

 

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