( ^ω^)が歌手になりたいようです-第四部
アナウンス「パイオツ駅ーパイオツ駅ー。終点です。」 ('A`)「ふいー・・・着いた着いた。」 2006年3月。ドクオが故郷に戻ったのは実に1年ぶりの事であった。 ('A`)「(一応電話したけど・・・父ちゃんいるかな・・・)」 ドクオは上京しても半年に一度、最悪でも正月には必ず帰るようにしていた。 しかし去年はレポートの提出とバイトの日々に追われて帰ることができず、 今年の正月も運悪く風邪をひいて帰る事ができなかった。 だから春休みの内、暇な内に一度帰らねばと思っていたのである。 まあ、帰ったからといってもいつもドクオは何もしないのだが。 けれど、今回はある目的があった。 ('A`)「(言わなきゃ・・・父ちゃんに・・・ギタリストになりたいって・・・)」 ドクオは大学に入り、ブーンに出会い、 すっかり諦めていた夢をまた追いかけようと思ったのである。 だから、どうしても父の了解を得たかった。 たった一人の肉親には、応援してもらいたかった。 ('A`)「(ああー、でも怖ー。) 不安が絶え間なくドクオに襲いかかったが、気にしないフリをしてドクオはプラットホームからでる。 ('A`)「(懐かしいなー)」 1年ぶりに帰ったパイオツの町並みは何も変わっていなかった。 あの路地も、田んぼに囲まれたえらくミスマッチなスーパーも、何一つ変わってなかった。 「あれ!?ど、ドクオ君かい!?」 ('A`)「?」 ('A`)「?」 急に後ろから声をかけられ、ドクオは振り返る。声の主は、懐かしいあの人だった。 ( ´⊇`)「やっぱり!ドクオ君じゃないか!久しぶりだなー。」 ('A`)「先生!・・・久しぶりです」 ドクオに声をかけた人物は、ドクオが高校の時の担任であった。 普段はごく普通の人なのにたまに青春ドラマ顔負けのクサイ台詞を連発する、そんな人だった。 けれど、ドクオは別にそんな彼が嫌いではなかった。 ( ´⊇`)「今、戻ってきてるのかい?」 ('A`)「はあ、今日帰ってきました。」 ( ´⊇`)「そっかー。今大学は丁度春休みだもんな。まあ、高校もそうだけど。 何か用があって戻ってきたのかい?それとも、ただ遊びに?」 その言葉に、ドクオは今、自分の決意を話してみようと思った。 故郷でドクオの夢を応援してくれたのは、この人だけだったから。 ('A`)「実は・・・俺、やっぱり音楽やりたくて・・・。 今回は父の承諾を得るために戻ってきたんす。」 そう言うと、先生は心底嬉しそうに笑った。 ( ´⊇`)「そうかあ!そうか・・・うん、うん、良かった。 やっぱり君はまだ夢を忘れてなかったか!」 ('A`)「はあ、まあ・・・」 ( ´⊇`)「いいかドクオ君!たとえ反対されたって諦めちゃいけない!! 何度でも立ち向かっていけ!殴られても、蹴られても、何度でも起き上がれ! そうすればきっと伝わる!!頑張れ!頑張るんだ!!!」 先生の声は徐々にヒートアップしていく。 いくら周りが田んぼで人通りが少ないとはいえ、ドクオはちょっと恥ずかしくなった。 ('A`)「ちょ、先生、あの・・・そ、その辺で・・・」 ( ´⊇`)「あ、ああ。スマン、つい熱くなってしまった・・・」 ('A`)「変わってないっすね。先生・・・」 ドクオは笑った。つられて先生も笑った。 ( ´⊇`)「ま、とにかく頑張ってくれよ。今回はどれくらいこっちにいるんだい?」 ('A`)「ああ、来週から学校なんで、とりあえず今週いっぱいは・・・」 ( ´⊇`)「そうか!じゃあ是非とも結果を教えてくれ!学校に来てくれれば・・・ と言いたい所だけどあいにく先生は去年異動しちゃったんだよな・・・」 ('A`)「え?じゃあ今どこで?」 ( ´⊇`)「隣町の男爵高校さ。ま、楽しくやってるよ。 そうだ!喫茶貧乳は知ってるよな!?」 ('A`)「あ、はい。知ってます。」 喫茶貧乳とはパイオツにある唯一つの喫茶店である。 名前の割には巨乳のウエイトレスが多いのでわりと繁盛している。 ( ´⊇`)「先生最近日曜はいつもあそこにいるんだ。 だからもし日曜、時間があいてたら来てくれよ。」 ('A`)「はい、分かりました。」 それから握手をして二人は別れた。 ('A`)「ただいまー・・・」 ドクオは玄関のドアを開ける。だが、人の気配はなかった。 ('A`)「父ちゃんいないのか・・・」 とりあえず、ドクオは自分の部屋に戻った。 1年も帰ってこなかったのでさぞ埃っぽくなっているかと思いきや 意外にも塵一つ落ちていなかった。 ('A`)「(父ちゃん、掃除しといてくれたのかな・・・?)」 あの父が自分の為に部屋を掃除してくれるなんて想像もつかなかった。 それだけに、ドクオはとても嬉しかった。 それから小一時間ほど、ドクオは部屋でくつろいでいた。 すると父が帰ってきたらしく玄関の方から物音がする。 ややあって、父は部屋に入ってきた。 (-@∀@)「帰ってたのか・・・」 ('A`)「父ちゃん、ただいま。・・・久しぶり。」 (-@∀@)「・・・ああ。」 たったそれだけの会話をして父は部屋から出て行った。 一年ぶりの親子の再会は、あまりにもあっけないものであった。 その日は結局、父との会話はそれだけであった。 それから一日過ぎ、二日過ぎ、三日経ってもドクオは父に言い出せずにいた。 顔をあわせてもロクな会話がないので、言うチャンスを掴めずにいたのだ。 しかし来週までいる訳にはいかない。来週の中頃にはもう学校が始まってしまう。 でも、チャンスがない。ドクオは途方に暮れていた。 そして帰省して6日目の土曜の昼。 ('A`)「(ああー。ヤベー。もう時間ねえよ・・・でも言うのこえええええええ・・・)」 どうしよう、どうしよう、そればかり考えていた。 ('A`)「(・・・喉渇いた。とりあえず水飲みにいこ・・・)」 ドクオは1階におりて台所へ向かった。すると・・・ ('A`)「と、父ちゃん!?」 (-@∀@)「・・・・・・」 そこには、真っ青な顔で倒れている父がいた。 突然の事態に、ドクオは取り乱す。 ('A`)「きゅ・・・救急車!!救急車!!」 ドクオが慌てて電話をとろうとした、その時、父が喋った。 (-@∀@)「余計な事するな・・・大丈夫だ。」 ('A`)「で、でも・・・」 (-@∀@)「大丈夫だと言ってるだろう・・・ただの風邪だ・・・。 薬を取ろうとしたら・・・眩暈がしただけだ・・・。」 言いながら、父は立ち上がる。「大丈夫」という割には、ふらふらで、すぐまた倒れそうだった。 ('A`)「父ちゃん!」 ドクオは駆け寄って父を支え、寝室まで連れて行く。支えた体は、とても軽かった。 ('A`)「(父ちゃん・・・痩せた・・・?)」 その日の夜、ドクオは父にお粥を作ってやり、寝室まで運んできた。 それをそっと父の枕元に置く。 幸い、本当にただの風邪だったようで、まだ微熱こそあるものの 薬を飲んだ父はすっかり元気になったようだった。 ('A`)「じゃ、俺はリビングで夕飯食べるから、何かあったら呼んで。」 ドクオはそう言って部屋から出て行こうとした、その時だった。 (-@∀@)「待ちなさい。」 ('A`)「え?」 (-@∀@)「おまえの飯はなんなんだ?」 ('A`)「俺は・・・台所にレトルトのカレーがあったから・・・今からそれ温めようと・・・」 (-@∀@)「そうか。じゃあ、できたらここに持ってきなさい。・・・一緒に食べよう。」 ('A`)「え・・・?う、うん・・・。」 長年父と二人だけで暮らしてきたが、そんな言葉をきくのは初めてであった。 ドクオは嬉しさよりも、戸惑いが先に来た。 ('A`)「(父ちゃん・・・どうしたんだろう・・・)」
15分後、ドクオはレトルトのカレーを父の寝室まで持ってきて、一緒に食べた。
二人そろって夕飯を食べるなんて一体何年ぶりだろう。
そう言えば、中学校から一緒に夕飯を食べた記憶など全くなかった。
そんな事を考えながらドクオがカレーを食べ終えた時、父が口を開いた。
(-@∀@)「言ってみなさい。」
('A`)「は?」
父が言ってる意味が分からず、ドクオは素っ頓狂な声をあげた。
(-@∀@)「今、お前が戻ってきてるのは私に何か言う為なんだろう?」
('A`)「父ちゃん・・・何で知って・・・」
(-@∀@)「お前が上京してから一週間近くこっちにいるなんて初めてだからな。
いつも帰ってきたところですぐ逃げるようにまた東京に戻るのに。」
('A`)「逃げるなんて・・・」
ドクオがそう言うと、父は笑う。「またやってしまった。」とでも言うように。
(-@∀@)「さ、早く言いなさい。」
父にそう促されて、ドクオは焦る。まだ心の準備などできていないのに、
いきなり言わざるを得なくなってしまった。心臓が、早鐘を打つ。
('A`)「お、俺・・・俺、は・・・。」
言わなければ。これを逃したらきっと一生自分は言えない。
だけど、勇気が出ない。言葉が喉元でつかえてしまう。
(-@∀@)「そんなに、言いにくい事なのか?」
('A`)「・・・・・・」
(-@∀@)「言ったら、あの時みたいにまた私に殴られる、そう思ってるのか?」
父は、まるでドクオが何を言いたいかもう分かってるように、言った。
そして笑う。
(-@∀@)「大丈夫だ。私は今風邪をひいていてこんな有様だ。
とてもお前を殴る体力なんて残ってない。だから、さ、言ってみなさい。」
('A`)「・・・父ちゃん・・・」
ドクオを見る父の目は穏やかだった。こんな父を見るのは、
もしかしたら母が生きていたとき以来かもしれない。
大丈夫。今ならきっと言える。ドクオはそう思った。
('A`)「・・・俺、俺やっぱり音楽やりたいんだ。ギタリストに・・・なりたいんだ・・・」
(-@∀@)「・・・」
父はふうっと大きなため息をつく。
(-@∀@)「上京する前、ギターを捨てたって言ったよな?
あれは、嘘だったのか?」
('A`)「・・・ごめん・・・」
長い、長い沈黙が二人を包んだ。ドクオは逃げ出したかった。
あの日のようにまた嘘だよと笑って、この部屋から出て行きたかった。
だけど、体は動かなかった。動こうとしなかった。
-@∀@)「昔話でも、しようか・・・」
沈黙を破り、やんわりと父が言う。
('A`)「え?」
(-@∀@)「こんな気分なのは、今日という夜がこんなにも穏やかなせいだからなんだろうな。
今ならおまえに、何でも話せそうな気がする・・・」
('A`)「・・・?」
(-@∀@)「母さんが、生きていた時のこと覚えてるか?」
('A`)「そりゃ、少しは・・・」
(-@∀@)「母さんは、歌が好きな人だった。
おまえみたいに、いつもうるさい音楽を聴いていた。
そして暇さえあればいつも歌ってるような人だった。うるさい音楽に合わせて・・・
だけど母さんはものすごい音痴でな。
私は昔から音楽が好きではなかったが、母さんの歌は好きだった。
母さんの音程の外れた歌は楽しくて、飽きなくて、ずっと聴いていたかった。」
父は語りだす。懐かしそうに、愛おしそうに。
(-@∀@)「母さん、何で死んだか知ってるか?」
('A`)「いや・・・」
(-@∀@)「喉頭ガンだ。」
('A`)「・・・」
(-@∀@)「病気になってから母さんは食べ物が喉をうまく通らなくなった。
声だってかすれて、あんなに大好きだった歌がもう歌えなくなってしまった。
それでも母さんは明るかった。落ち込む姿なんて見せた事なかった。
いつも病室でカセットを聴いて、楽しそうに微笑んでた。」
(-@∀@)「母さん、死ぬ前に遺書を残していてな、
それにはお前が元気で健やかに育つように、私が音楽を好きになるように、
そして最後に、自分は天国で歌いながら二人を見守っている。
そう書かれていた。」
('A`)「・・・・・・」
(-@∀@)「母さんの葬式をしている時、私は音楽を好きになろうと思った。
それが、母さんの供養になると思ったから。
だから葬式が終わり家に帰ると私はすぐにラジカセを用意して
母さんがいつも楽しそうに聴いていたカセットを入れた。」
父は悲しそうに話し続ける。
(-@∀@)「カセットからはすぐに母さんの好きだったうるさい歌が流れた。
私は何度もそれを聴いた。でもどうしても、私は音楽を好きになれなかった。
いや、前よりもっと嫌いになった。音楽を憎むようになった。
だってそうだろう?
どんなにうるさい音楽を聴いても母さんはもうそれに合わせて歌ったりしない。
そこに母さんの音楽がないんだ。母さんの歌が聞こえてこないんだ。
なのにどうして好きになれる?」
('A`)「父ちゃん・・・」
(-@∀@)「それからの私は、・・・おまえも記憶にあるだろうが、とにかく荒れた。
母さんの聴いていたカセットは全て燃やした。音楽をこの家から遠ざけた。
何人もの女の人とつきあった。それで母さんを忘れようとした。
でもある日、これじゃいけない、そう思った。
いつまでも悲しんではいけない、母さんの死を受け止めなければと思った。
だが、気づいたのが私は遅すぎた・・・」
こんなに喋る父を、ドクオは初めて見た。
そして、こんなに悲しそうな父も。
(-@∀@)「私が正気を取り戻したとき、お前はもう中学生だった。
たしかその頃からだったよな?お前が音楽を聴きだしたのは・・・」
('A`)「うん・・・」
(-@∀@)「私はお前と、母さんがいた頃のように、あの頃のように幸せな関係に戻りたかった。
嘘じゃない。本当にそう思っていた。
だがお前は音楽を聴いていた。その音楽は母さんを思い出させた。
私に再び母さんを失ったときの悲しみが襲い掛かってきた。
何度も私は音楽を聴くなと怒鳴ったよな?
とても理不尽な理由だと自分でも思った。でも言わずにいられなかった。
そして、それでもお前は音楽を聴き続けた。
そのうち私はお前にどう接すれば良いのかもわからなくなった。
お前の愛し方を・・・忘れてしまった。」
('A`)「うん、うん・・・」
ドクオは必死で相槌を打った。泣かないよう、必死で堪えた。
父の声を聞き漏らさないように、自分の心が壊れないように、頑張っていた。
(-@∀@)「・・・大丈夫か・・・?」
そんなドクオの様子に、父も気がついたのだろう。心配そうに声をかけた。
('A`)「うん、俺、平気だよ。だから、続けて・・・」
声が震えないように、ドクオは言う。
(-@∀@)「そしてお前との溝が埋まる事のないままお前は高校生になった。
もう一生お前とは分かり合うことができないのではと思った。
・・・だが、それでもいいと思った。
私はお前が世界の全てと言った音楽を嘲り、お前自身すら軽蔑した。
それから3年後、お前は家を出て、私の薦めたVIP大学に進学した。」
('A`)「・・・・・・」
(-@∀@)「・・・お前には黙っていたが、実は私は去年の夏、ガンの手術を受けたんだ。」
('A`)「え!?」
思いもよらない父の告白に、ドクオはショックを受ける。
('A`)「な、何でそんな大事な事俺に教えてくれなかったんだよ・・・!?」
父はドクオに構わず話を続ける。
(-@∀@)「手術が成功する確率は5分5分と言われた。
私は入院してる間中、まったく死の恐怖が襲ってくる事はなかった。
もし手術が失敗に終わったとしても母さんに会える。
だから別に死ぬのも悪くない、そう思っていた。」
('A`)「そんな・・・」
(-@∀@)「そして手術の日になった。私は覚悟を決めていた。
担当医には入院中何度も身内に連絡するように言われたが私は断った。
お前に教える必要などないと、本気で思っていた。」
('A`)「・・・・・・」
(-@∀@)「手術をする為に全身麻酔をかけられようとしていたその時だった。
急にお前の顔が浮かんだ。あの、お前が高校3年の時の三者面談の光景が私に蘇った。
・・・あの時の私はなぜお前の担任に怒鳴られたのか全く理解できなかった。
私は正しい事を言っているハズなのに、何も間違った事を言っていないのに、
どうしてあんな事を言われなければならないのかと思っていた。」
(-@∀@)「でもやっと、分かったんだ。
死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされてやっと。
そうだ、確かにお前はあの時夢を語って笑ったんだ。希望を話してくれたんだ。
なのにその笑顔を、私は消したんだ・・・」
('A`)「・・・・・・・・・」
(-@∀@)「あの日、お前、部屋で一人で泣いてたよな?」
('A`)「えっ!?父ちゃん聞こえてたの!?」
(-@∀@)「ああ。全部聞こえていた。」
('A`)「・・・・・・!!!!!」
まさか聞かれていたとも思わなかった。
あの時自分が叫んだ言葉を思い出し、ドクオは顔を真っ赤にする。
(-@∀@)「やっと全部理解できたんだ。
何でお前が泣いたのか、何でギターを弾かなくなったのか。
そしてそれは誰のせいなのか。私は、急にお前に会いたくなった。
お前に、今から私は手術を受ける。だから見舞いに来てくれ。そう言いたかった。
でも、今更そんな虫の良い事は言えなかった。」
父は語る。淡々と。時折水を飲みながら。
(-@∀@)「死にたくない。母さんが死んで以来そんな事を思ったのは初めてだった。
お前を一人にさせてたまるか。お前とすれ違ったまま死んでたまるか。そう思った。
麻酔で意識が落ちる寸前、私は担当医に絶対死にたくない。お願いだから助けてくれ、
私の命を救ってくれと頼んだ。今まで私は生きる事に対して無気力だった。
そんな私が命乞いをし、彼は驚いたのだろう。
安心しろ。絶対に助けると言ってくれた。
医者の中で絶対という言葉は禁句なのに、何回も何回も言ってくれた。」
('A`)「うん・・・」
(-@∀@)「そして手術は無事成功に終わった。6時間もの大手術だった。
意識が戻った時、良かった。生きている。良かった。何度もそう思った。」
('A`)「・・・うん。」
(-@∀@)「こんな話をしてこんな事を言うのは卑怯だと思う。
でも、言わせてくれ。今までお前には本当に申し訳ないことをした。
たった一人の家族なのに、俺は今までお前を見ようとしてこなかった。」
('A`)「良いよ、そんなの。・・・そんな事は、もうどうだっていいんだ・・・。」 (-@∀@)「お前は私を憎んでいるだろう・・・?」 ('A`)「!そんなことっ・・・」 「そんな事ないよ」とはどうしても言えなかった。 父の事は大切だ。それは本当だ。たった一人の肉親なのだから。 自分のことをどう思っていたにせよ、この家に住まわせてくれて、 何不自由なく育ててくれて、東京の大学にまで行かせてくれたのだから。 しかし、全く憎んでいない、感謝しているといったらそれは嘘になる。 ドクオが父に甘えようとすがりつく度にいつも父はその手を振り払った。 とても冷たい瞳をして。 その事がどんなにドクオの心を痛めつけただろう。 何度彼の世界を絶望に染めただろう。 そう、憎んでいないはずなど、ないのだ。 ('A`)「・・・そんな、ことっ・・・!」 (-@∀@)「・・・・・・」 ('A`)「(そんな事ないって・・・言えよ!!!!)」 ドクオはそう自分に叱咤したが、どうしても言葉がでなかった。 そんなドクオを見て、父は優しく笑う。 (-@∀@)「無理しなくて良い。 まさか私だってお前に憎まれていないなんて万に一つも思っていないさ。 ・・・こんな私の元でこれまでちゃんと生きていってくれてありがとう。 愛情を与えず育ててしまったのに、お前は本当に優しい子に育ってくれた。 私の事を憎んでいたのに、そんな感情を一切出さず、お前は私の側にいてくれた。 私がお前の立場だったらきっといつか狂ってしまっていただろうに。 礼など、いくら言ったって言い足りない。償おうとも、償いきれない。 ありがとう。・・・本当に、ありがとう。」 ドクオの目から涙が零れ落ちる。でももう堪えようとはしなかった。 父は本音を話してくれた。最初はあまりに辛くて涙がでそうになった。 でも今は違う、こんなに温かく、満たされた気持ちで涙が溢れてくる。 ドクオは笑った。泣きながら顔をぐしゃぐしゃにして笑った。そして言った。 自分の本当の気持ちを。 (;∀;)「だって、だって俺には、音楽があったからさ・・・だから・・・ だから平気だったんだ。だから・・・ちゃんと生きてこれたんだ・・・」 (-@∀@)「そうか・・・」 父は泣きじゃくるドクオの肩をそっとさする。 (-@∀@)「すごいな・・・音楽の力は・・・」 (;∀;)「うっ、うん・・・うん・・・すごいんだ、音楽は、すごいんだ・・・ 俺、音楽が、音楽が大好きなんだ・・・こんなに夢中になったもんなんて、他にないんだ・・・ 音楽がなきゃ、俺の生きてる意味なんか・・・ないんだ・・・」 ドクオはあの三者面談の日も泣きながら同じ事を言った。 まさか数年後もまた、こんな事を言うなんて思わなかった。 それもこんなに幸せな、こんなに満たされた気持ちで。 それから父とドクオは今までの溝を埋めるかのように話した。たくさん笑いあった。 相変わらず父はドクオの名前を呼んだりはしなかったが、そんな事は気にならなかった。 これは夢なんじゃないかとドクオは思った。 もしそうなら醒めなければいいと本気で思う。 でもこれは夢じゃない、現実だ。それはなんて嬉しい事だろう。 なんて自分は幸せなんだろう。そう思った。 ('A`)「・・・う・・・」 寝室から朝日が差し込みドクオは目を覚ます。 どうやら昨日は話疲れてそのまま眠ってしまったようだった。 ('A`)「まだ、6時か・・・」 ドクオは父の布団をかけなおしてから自分の部屋に戻り、もう一度寝た。 コンコン ノックの音でドクオは目を覚ます。 (-@∀@)「そろそろ起きなさい。もう10時だ。」 昨日の事もあってか、どこか照れくさそうに父は言う。 ('A`)「父ちゃん・・・風邪はもういいの?」 (-@∀@)「ああ、もう平気だ。・・・朝食を作ったんだ。 下りてきて、食べなさい。」 リビングには不恰好な目玉焼きと、美味しそうな匂いのする味噌汁がテーブルの上に置かれていた。 ('A`)「・・・なんか、新婚家庭みてーだな・・・」 なんとはなしに呟いたドクオの言葉に父はご飯を喉につまらす。 (-@∀@)「ななな何をいってるんだお前は!馬鹿か!!!!」 ('A`)「冗談だよ。そんな慌てると本当に新婚みたいだぞ。」 (-@∀@)「おい!!まだ親をからかうか!!!」 そんな会話をしながら、二人でご飯を食べる。 普通の家庭ならなんて事のないいつもの朝食。 だけどドクオにとっては最高に幸せな朝食。 (-@∀@)「・・・今日、帰るのか?」 ('A`)「うん、飯食ったら・・・行く。」 今日は日曜日。新学期はもうすぐそこまで来ていた。 (-@∀@)「そうか・・・また、いつでも帰って来きなさい。」 父の言葉にドクオは笑って答える。 ('A`)「当たり前じゃん。だってここ、俺の家だもん。」 帰るとき、父は玄関まで見送りしてくれた。 「ギタリスト、頑張れ。」最後にそう、言ってくれた。 今回はドクオにとって人生で一番勇気を使った里帰りだった。 そして、人生で最高の里帰りとなった。 ここは貧乳喫茶・・・ ボインボイーン 独特なベル音が鳴りウエイトレスが駆けつけてくる。 ウエイトレス「いらっしゃいませ!お一人様ですかボイン?」 ('A`)「あ、その・・・」 ドクオはある人物を探して、キョロキョロと辺りを見回す。 ( ´⊇`)「ドクオ君!来てくれたのか!!」 ドクオの姿を見つけて、先生は席から立ち上がってやってきた。 ('A`)「あ、はい・・・」 ( ´⊇`)「さ、こっちに座って座って!!すみません、アメリカン追加で!」 ウエイトレス「はーい。かしこまりましたボイーン。」 ドクオは担任に全て話した。 父がギタリストになることを賛成してくれた事。 まだ和解とまではいかないが、父との溝が大分埋まった事・・・その全てを・・・ ( ;⊇;)「そうか・・・そうか!!良かったなあ!!本当に良かったなあ!!」 ('A`)「(うわ、暑苦しいなあ・・・)はあ、ありがとうございます。」 担任は周りも気にせず泣き出した。 その姿を見た人たちの間からクスクスと笑い声が聞こえる。 ドクオは恥ずかしかった。 ( ;⊇;)「やっぱりな、そうなんだよ!!!人生は何度だってやり直せる!! 君も死にかけてやっと気づいたのか!!!先生は、先生は嬉しい!!!」 ('A`)「ちょw先生ww死にかけたの俺じゃなくて父ちゃんです。 それともう少しでいいから小さい声で・・・」 ( ;⊇;)「今日は飲もう!!今日は先生と朝まで語り合おう!! 君みたいな教え子を持てて先生は本当に幸せだ!!」 ドクオはその日本当に朝まで飲みに付き合わされてアパートに戻るのが1日遅れ、 やっと戻ってきた頃には酷い二日酔いに見舞われた。 それは人生最低で、最高の二日酔いだった。 ('A`)「俺は最近やたら人生最高を味わっているな・・・」 そんな独り言も、悪くはない。