559 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:45:34.42 ID:qYh4BKKh0

J(‘ー`)し「ねえブーン、幼稚園は楽しい?」

( ^ω^)「うん、とっても楽しいお!お友達もいっぱいできたお!」

J(‘ー`)し「そう、良かったわねえ・・・」

( ´∀`)「もう、幼稚園で好きな子はできたか?」

( ^ω^)「うん、できたお!」

J(‘ー`)し「あら、だあれ?母ちゃんたちに教えてくれると嬉しいな。」

( ^ω^)「えっと、先生とー、まさふみ君とー、ゆきちゃんとー、
しゅうとく君とー、なおちゃんとー、それから・・・」

指折り数えてそう言うブーンを見て、父は笑い出す。


560 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:46:25.94 ID:qYh4BKKh0

( ´∀`)「ははは、そんなに好きな子が多いと大変だなー。」

( ^ω^)「全然大変じゃないお!好きな人がいっぱいで嬉しいお!
あ、もちろん父ちゃんと母ちゃんも大好きだお!」

J(‘ー`)し「うふふ、どうもありがとう。母ちゃんもブーンが大好きよ。」

( ´∀`)「父ちゃんもだぞ!父ちゃんもブーンが大好きだ。」

( ^ω^)「本当かお!?嬉しいおー。」

ブーンはぴょんぴょんとジャンプしてはしゃいだ。
それを両親は微笑んで見つめていた。


561 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:49:09.08 ID:qYh4BKKh0

たった一人の人なんて、僕はいらない。

僕はずっとたくさんの人を好きでいたいんだ。

だって一人の人を好きになってしまったら、きっと他が見えなくなるでしょう?

一人の人を好きになってしまったら、他の大切な人をきっと忘れてしまうでしょう?

そう思う僕は、おかしいのかな。

誰か一人を「特別」にしたくない僕は、おかしいのかな。


562 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:50:15.68 ID:qYh4BKKh0

( ^ω^)「うーん・・・」

軽く伸びをして、ブーンはベッドから身を起こす。

( ^ω^)「なんだか、夢をみていたようだお・・・」

ブーンは軽く目をこする。

コンコン

( ^ω^)「はいですお」

J(‘ー`)し「ブーン起きた?ご飯よ。下りてきなさい。」

( ^ω^)「分かったおー」

ひどく懐かしい感じのする夢だったような気がする。
だけど起きた瞬間に忘れてしまった。

自分は一体どんな夢を見ていたのだろうか?

( ^ω^)「まあいいお。お腹すいたお。とりあえずご飯だおww」


563 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:51:37.29 ID:qYh4BKKh0

('A`)「お前さー・・・前から思ってたんだけど・・・」

ドクオがそう話を切り出したのは
最近出来たブーンの新曲を聴き終えた直後の事であった。

( ^ω^)「?なんだお?」

('A`)「ラブソング下手だよな。」

( ^ω^)「!!!!!マジかお!」

('A`)「この新曲も、多分ラブソングなんだろ?一応好きだとかなんとか歌ってるし。」

( ^ω^)「多分も何も正真正銘、丹精込めて作った僕のラブソングだお・・・。」

ブーンは少しショックを受けたようだ。明らかに声に力がなくなっている。
ドクオは慌ててフォローした。

('A`)「い、いや、曲は良いと思うぜ?曲は!うん、曲はな!」

( ^ω^)「歌詞は・・・?」

('A`)「・・・・・・・・・スマン・・・」


564 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:52:58.45 ID:qYh4BKKh0

( ^ω^)「いいお・・・僕もまだまだ精進すべきという事が分かったお。
励みになったお。」

そう言ってブーンはため息をついた。

('A`)「お前さ、今誰か好きなヤツとかいねーの?
そしたらその人の事考えて作れば良いんだよ。
そしたら多分今よりずっとよくなるんじゃねーの?」

( ^ω^)「好きな人くらいもちろんいるお!」

('A`)「あ、家族とか友達とか抜かしてな。」

ドクオの言葉にブーンは一瞬たじろぐ。

( ^ω^)「そ、そんなの当たり前だお・・・ちゃんと好きな女の子ぐらいいるお・・・」

('A`)「あ、三次元限定な。」

( ^ω^)「三次元限定は卑怯だお!!!」

('A`)「やっぱりギャルゲーかエロゲーのヒロイン言うつもりだったんだな!」

( ^ω^)「・・・・・・」


566 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:53:57.19 ID:qYh4BKKh0

ブーンはさっきよりも落ち込んでしまったようだった。

('A`)「で、でもさ、今好きな人いなくたって、例えば初恋の人とかさ、
そんくらいはいるだろ?」

( ^ω^)「いないお。」

('A`)「は?」

( ^ω^)「実は僕、まだ恋というものをした事がないんだお・・・」

('A`)「・・・・・・」

( ^ω^)「・・・・・・」

('A`)「キメェwwwww」

( ^ω^)「ちょwキモくないおww好きな人できないもんはしょうがないんだおwww」

そう言ってまた大きなため息をつくブーンの肩をドクオはそっと叩く。

('A`)「ま、お前ラブソング以外はうまいんだからさ、
しばらくはラブソング作らないで他の曲作ってりゃ良いじゃん。な?」


567 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/03(月) 20:55:42.77 ID:qYh4BKKh0

( ^ω^)「でもやっぱり歌手を目指す者としてラブソングを上手に歌いたいお。
それに昔からオリコンランキングはほとんどラブソングが上位を独占しているお。
人々はいつになってもラブソングを求めているんだお。」

('A`)「そんな事言ったって・・・あ、そうだ、お前の好きなミュージシャンのラブソングを
参考にしたらどうだ?さすがに好きなラブソングはあるだろ?」

( ^ω^)「レミオメロンの3月メロンとか、粉メロンとか、電話メロンとか好きだお。」

('A`)「じゃそれ参考にしてさ・・・るるりとかは聴かねえの?」

( ^ω^)「るるりは痴女な女の子が好きで聴いてるお。」

('A`)「それラブソングじゃねえwwwほら、ケシの花とか、秋風とかは聴かねえの?」

( ^ω^)「あー、そういえば聴いた事ないお。」

('A`)「じゃCD貸してやる。」

ドクオはそう言って部屋に無造作に置かれているCDをガシャガシャと荒らしだす。

('A`)「あった。ほら、これ持ってけ。良い曲だぞ。」

( ^ω^)「ありがとだお。聴いてみるお。」

そうしてブーンはドクオからCDを借り、ドクオの部屋を後にした。

629 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:13:27.18 ID:KTkoPUgQ0

家に帰ったブーンは早速ドクオに借りたCDを聴いてみる事にした。
優しいメロディがブーンの部屋に流れ出す。

( ^ω^)「・・・・・・綺麗な曲だお・・・」

ブーンはうっとりと曲に耳を傾ける。

でも、なぜだろう?共感できない。そうブーンは思った。

( ^ω^)「レミオメロンも、他の人たちが歌ってるラブソングも、なぜだか共感できないお・・・。
こんなに綺麗なメロディで、優しい歌詞で・・・
でも僕にはこの気持ちが分からないお。何でだお?」

ラブソングの歌詞には、まるで決まりでもあるのかと疑いたくなるほど
「会いたい」とか、「触れたい」とか「大切」とか、
そんな言葉が山のように書かれていた。

ブーンにはそれがよく分からずにいた。
会いたいなら会いに行けばいい。触れたいなら触れればいい。
大切に思うなら相手にそう言えば良いのだ。
なのに大抵の歌の主人公たちは、そんな事も出来ずに悩んでいた。
そして言うのだ。「切ない」と。


630 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:15:03.65 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「あああ・・・分からないお・・・」

その日ブーンは自分の持ってるCDの中からラブソングだけを選んで何度も何度も聴いた。
歌詞を何度も読み直した。
しかしやはり良い曲だと思うだけで共感はできなかった。
歌詞の意味もよく理解できなかった。
気づいたらブーンはCDをかけたままで眠ってしまった。

そして次の日の昼・・・


631 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:16:03.26 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「結局分からなかったお。こういう時はコーヒーでも飲みに行くお。」

そう言ってブーンは気分転換に近所の喫茶店に行く事にした。
ブーンは宿題をする時などによく利用している喫茶店へ向かった。

カランカラン・・・

( ^ω^)「こんにちはだお。」

ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー。」

( ゚ω゚)「!!!!!」

ブーンは一瞬にして目線を奪われる。なんて可愛い人だろう。

ξ゚听)ξ「一名様でよろしいですか?」

( ^ω^)「ああううあうあうあうあ・・・はははは、はい・・・」

ξ゚听)ξ「?喫煙席と禁煙席どちらがよろしいですか?」

( ^ω^)「ききききききききん、きん・・・」


632 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:17:09.35 ID:KTkoPUgQ0

口が回らない。心臓がバクバクしている。自分は一体どうしたんだろう?

ξ゚听)ξ「はい?」

( ^ω^)「き、禁煙席で!!!」

ξ゚听)ξ「では、こちらの席へどうぞ。」

席に案内され、なんとかコーヒーを注文した。
未だに心臓は静まらない。

( ^ω^)「(どうしたんだお・・・?僕はただあの女の子を可愛いなって思っただけで・・・
それだけなのに何でこんなドキドキするんだお・・・?)」

しばらくして、あの女の子がコーヒーを運んできた。

ξ゚听)ξ「お待たせいたしました。アメリカンになります。」

女の子はそう言ってブーンの前にコーヒーを置く。
白くて、綺麗な手だ。


633 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:18:22.42 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「あああああああああの!!」

ξ゚听)ξ「はい。」

何か、何でも良い。話しかけなきゃ。なぜだかブーンはそう思った。
だけど何を話せばいいか分からなかった。

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・チョコレートパフェもお願いしますお・・・・・・。」

ξ゚听)ξ「かしこまりました。チョコレートパフェを追加、ですね?」

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・はいですお・・・・・・・・・」

それからまたしばらくしてまた女の子がチョコレートパフェを持ってきてくれた。
しかしブーンは何だか胸がつかえてしまってなかなかパフェを食べきれなかった。

( ^ω^)「(はあ・・・そろそろ帰るお・・・)」

どうやら今日の店員は店長とあの女の子だけらしい。
ブーンが席を立つと女の子はレジの方へ移動した。


634 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:20:25.61 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「お会計980円になります。」

( ^ω^)「あっ、あのっ、最近ここにバイトに来たんですかお!?」

ξ゚听)ξ「はい?」

もしかしたらこの女の子は今日だけ何かの都合でバイトに来ていて、もう二度と会えないかもしれない。
そう思ったら、勝手にブーンの口は動いていた。

ξ゚听)ξ「・・・・・・はい、最近からですけど・・・」

女の子は訝しげな瞳でブーンを見る。

( ^ω^)「しゅっ、週に何回ぐらい来てるんですかおっ!?」

いよいよ女の子の顔が曇ってきた。
あからさまにブーンを警戒しているようであった。


635 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:21:14.46 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「失礼ですが、私のシフトがお客様に何か関係でもあるんですか?」

トゲトゲしく女の子は言う。

( ^ω^)「あっ、ありますおっ!関係ありますっ!!」

ξ゚听)ξ「なんですか?納得のいく理由ならばお教えします。」

( ^ω^)「あなたに会いたいからですお!!」

ξ////)ξ「はっ!?」

( //ω//)「はっ!!」

ブーンの言葉にお互いが赤面した。


637 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:22:26.01 ID:KTkoPUgQ0

ξ////)ξ「あっ、あんた何言ってるの!?バカじゃない!?」

女の子は仕事中という事も忘れブーンに乱暴な口調でそう言う。

( //ω//)「ごごごごごめんですお!!何でもないですお!!
今の忘れて下さいお!!あ、お金、ハイ!釣りはいりませんお!!!」

そう言ってブーンは千円札をだして逃げるように喫茶店からでて行った。

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

女の子はブーンの置いていった千円札を見ながら、呆然としていた。

ξ////)ξ「変なヤツ・・・」

でも、悪い気はしなかったな。女の子はそう思った。
 

639 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:24:02.98 ID:KTkoPUgQ0

家に帰るとブーンは自分の部屋で転げまわっていた。

( ^ω^)「あー恥ずかしいおー!!何であんな事言っちゃったんだおー!!
もうあの店いけないおー!!!」

何であんな事言ったのか自分でも分からなかった。
でもまた会いたい。何度だって会いたい、なぜかそう思った。

( ^ω^)「(・・・・・・明日も、学校終わったら行ってみるお・・・)」

次の日学校が終わるとブーンはすぐに喫茶店へと向かった。
またあの子がいるかもしれないと思うと胸が苦しいような、
くすぐったいような、変な気分がした。

カランカラーン

( ^ω^)「こんにちはですお。」

( V∀V)「いらっしゃいませー。一名様ですか?」

出てきたのは昨日の子ではなく、いつもいるウエイトレスだった。


640 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:25:47.15 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「あ・・・はい・・・」

( V∀V)「お客さまは確か禁煙席のほうですよね?それではこちらへどうぞー」

ブーンは席について辺りを見回すがそこに昨日の女の子はいなかった。
気がつけばさっきまでの嬉しいような恥ずかしいような
訳のわからない焦燥感は消え、ただただ虚しさのようなものが残った。

やがて運ばれてきたコーヒーをブーンは一気に飲み干した。
舌を火傷したが、別段痛いとも思わなかった。
あの子がいない。そう思うだけで舌より胸の方が何倍も痛かった。


そして次の日の夜・・・

今日も喫茶店へと足を運んだが彼女はいなかった。
まだまだバイトの給料日まで日がある中、
コーヒー代だって馬鹿にならないのに自分は一体何をしてるのだろう?

( ^ω^)「もう次の給料日まで喫茶店に行くのはやめるお・・・」

そう決心すると、また胸がズキンと痛んだ。


643 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:26:44.99 ID:KTkoPUgQ0

コンコン

J(‘ー`)し「ブーン?ごめんね、ちょっとコンビニで牛乳買ってきてもらって良いかしら?」

( ^ω^)「あ、母ちゃん・・・分かったお。行ってくるお・・・」

J(‘ー`)し「お願いね。」

そしてブーンはコンビニへと出かけた。

沈んだ気持ちで自動ドアを通った、その時だった。

ξ゚听)ξ「いらっしゃいませー」

( ゚ω゚)「アッー!」

ξ゚听)ξ「あれ?あんたこの前の喫茶店の・・・」


644 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:27:42.65 ID:KTkoPUgQ0

思いがけない再開にブーンは嬉しくて飛び上がりそうだった。
しかも彼女は自分の事を憶えていてくれた。
なんだか泣きそうになる気持ちをぐっと堪えた。

( ^ω^)「こ、ここでもバイトしてたんですかお!?」

ξ゚听)ξ「・・・まあね、深夜だけだけど。」

( ^ω^)「喫茶店と掛け持ちなんて大変じゃないですかお?」

ξ゚听)ξ「そうでもないわよ。深夜は人少ないし、
あそこの喫茶店だってあんまり人来ないしね・・・」

( ^ω^)「ふーん・・・えらいですお。勤労少女ですお。」

ξ////)ξ「べっ、別にあんたに褒められたって嬉しくないわよっ!」

この前より警戒心が解けたのか、まだ言葉に冷たさは残るものの
女の子は普通にブーンと会話してくれた。

646 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:29:08.63 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「でも、楽とは言っても深夜に女の子一人じゃ危なくないですかお?」

ξ゚听)ξ「別に・・・。近くに交番だってあるし。それに、深夜のほうが時給良いしね。」

( ^ω^)「だけど、可愛い女の子がこんな時間に一人で・・・」

そう言って二人はまた赤面する。

ξ////)ξ「ああ危なくないって言ってるでしょう!?しつこいわねっ!
それより何か買いに来たんでしょ!?早く商品だしなさいよ!!」

( //ω//)「あああ、す、すみませんだお!!じゃ、これ、牛乳お願いしますお!!」

ブーンは慌てて牛乳を差し出し、女の子もものすごい速さで会計を済ませる。
ブーンにレシートを渡すと、女の子はぼそっと呟いた。

ξ////)ξ「月曜・・・」

( ^ω^)「お?」


647 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:30:20.04 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「月曜から水曜までは夕方喫茶店でやってて、金、土はここで深夜やってるの。」

( ^ω^)「そうなのかお!?教えてくれてありがとだお!遊びに行くお!」

ξ゚听)ξ「・・・べっ、別にあんたに来て欲しいから言ってるとかじゃなくて、
この前聞かれたから今教えてやってるだけなんだからねっ!」

そう言って女の子は再び赤面する。

( ^ω^)「ついでに電話番号とか教えてくれるともっと嬉しいお。」

ξ゚听)ξ「この店の電話番号ならレシートに書いてあります。」

( ^ω^)「うはwwwじゃあせめて名前だけでも・・・」

ξ゚听)ξ「・・・・・・ツンよ。」

( ^ω^)「おお、ツンちゃんよろしくだおwww僕はブーンだおwww」


648 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:32:05.85 ID:KTkoPUgQ0

それからブーンは暇さえあれば喫茶店とコンビニに足を運んだ。
その甲斐あってか2ヵ月後には随分ツンと仲良くなる事ができた。
店にお客さんがいない時を見計らって、二人はいろいろな事を話した。

お陰でいろいろとツンの事を知る事ができた。
ブーンと一緒の21歳だということ、地方からでてきてこっちの美術大学に通っているという事、
今は姉と二人でアパートに暮らしているという事、
それから近所においしいクレープ屋さんがある事・・・

ブーンも聞かれれば何だって答えた。
大学の事、歌手を目指しているという事、そして今その夢に向かって頑張っているという事
それと自分の大好きな歌手の話・・・

どれもこれも他愛のない話ではあるが、二人が笑顔でいるには十分すぎる話題であった。
ツンと一緒にいるとあっという間に時間が過ぎた。
ギターを弾くたびにツンの顔が浮かんだ。その度にとても優しい気持ちになれた。
しかしブーンは未だにこの気持ちはなんなのか分からずにいた。


649 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:32:49.97 ID:KTkoPUgQ0

そして金曜の深夜・・・

( ^ω^)「おいすー。」

いつものようにブーンはコンビニにやってきた。

ξ゚听)ξ「いらっしゃい。」

( ^ω^)「相変わらずすいてる店だお。」

ξ゚听)ξ「東京と言ってもここは下町の方だしね。しかも深夜だし。
で?今日は何を買いにきたの?牛乳?飴?」

( ^ω^)「今日はうまい棒だおww」

ブーンはお菓子のある棚からうまい棒を2、3本取ってレジへと持っていく。

ξ゚听)ξ「はい。ありがとうございます。」

ツンはちゃっちゃと会計を済ます。


650 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:34:04.08 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「ところでツンは美大に通ってるって言ってたけど
やっぱり将来は画家かなんかになりたいのかお?」

その言葉にツンはくすくすと笑う。

ξ゚听)ξ「今時画家なんてよっぽどの才能と財力とコネがなきゃやっていけないわよ。
しかもあいにく私はその3つのうち財力しか持ってないわ。」

( ^ω^)「えっ?ツン金持ちだったのかお!?」

ξ゚听)ξ「お金なきゃ美大なんてバカ高いとこ入れないわよ。」

( ^ω^)「そうだったのかお・・・僕はてっきり・・・」

ξ゚听)ξ「てっきり、私の事貧乏だと思ってたの?」

きっ、とツンが睨む。

( ^ω^)「ちち違うお!ただツンてすごいバイトしてるしだから金持ちってちょっと意外だと・・・」

ξ゚听)ξ「つまり、貧乏だと思ってたって事でしょ?」

( ^ω^)「そ、そうじゃなくて、えっと、なんと言ったら良いのかお・・・」

あたふたするブーンを見て、ツンはまたくすくすと笑う。
ずっとこの笑顔を見ていたいとブーンは思った。


651 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:35:00.83 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「でもまあ、私が貧乏ってのは別に間違ってないわよ。
お金があるのは、親だもの。私はいつも金欠だけどね。」

( ^ω^)「・・・あんまり仕送りもらえてないのかお?」

ξ゚听)ξ「そんな事ないわ。私一人だったら、少し節約すれば
正直バイトなんてしなくても十分やっていける。」

( ^ω^)「じゃなんでこんなバイトばっかしてるんだお?」

そう言うと、ツンは少し困ったような顔をして黙り、やがて口を開く。

ξ゚听)ξ「私、お姉ちゃんと二人暮らしって、前言ったわよね?」

( ^ω^)「うん。きいたお。」

ξ゚听)ξ「私のお姉ちゃんね、・・・障害を抱えてるの。」

( ^ω^)「え!?」


654 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:36:28.03 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「ちょっと長い話になると思うけど・・・聞いてくれる?」

( ^ω^)「もちろんだお。」

ブーンがうなずくと、ツンは少し笑って話し始めた。

ξ゚听)ξ「私とお姉ちゃんは三つ年が離れているんだけど、すごく仲が良かった。
私、小さいときは痩せっぽちでよく男の子からいじめられてたんだけど、
そうするといつもお姉ちゃんがすぐに来てくれて私をいじめっ子から守ってくれたの。
他にも私が悪戯して両親に叱られてる時も庇ってくれたし、勉強が分からないと優しく教えてくれた。
お姉ちゃんはいつも私の味方だった。」

( ^ω^)「へえー、ツンのお姉ちゃんはなんだかツンのヒーローみたいだお。」

ξ゚听)ξ「そうね。お姉ちゃんは私の正義のヒーローだった。
私はお姉ちゃんが大好きだった。まあ、今も大好きだけどね。」

( ^ω^)「(うはwwwツンのお姉ちゃんになりたいおwwww)」

ξ゚听)ξ「でもね、私が16歳の時、お姉ちゃんは交通事故にあってしまったの。
幸い命に別状はなかったんだけど、その時の後遺症でお姉ちゃんは知能が7歳の時に戻ってしまった。」

( ^ω^)「え・・・」


655 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:38:06.17 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「まれにこういう事があるらしいの。
事故の苦痛と、恐怖から逃れるために脳が防御反応を起こして
自分が一番幸せで安心できた時代へと戻ってしまう、って事が。
お姉ちゃんにとってその時代は7歳の時だったのね。」

( ^ω^)「・・・・・・」

ξ゚听)ξ「事故にあってからずっと面会謝絶で、
やっと面会の許可がおりた頃お姉ちゃんはもう7歳の女の子になっていた。
体が19歳という事を除いたら、仕草も、言葉遣いも、何もかもが普通の7歳の女の子だった。」

なんて切ない話だろう。ブーンは何も言えなかった。かける言葉がみつからなかった。

ξ゚听)ξ「さっき、うちは金持ちだって言ったわよね?」

( ^ω^)「う、うん。聞いたお。」

ξ゚听)ξ「私の実家は、ちょっと名の知れた和菓子屋でね。結構由緒ある家なのよ。
・・・だからかしらね、両親はとても世間体を大切にしていた。」

( ^ω^)「うん・・・」


656 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:39:24.77 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「お姉ちゃんの様子を見て、両親はものすごくショックを受けてた。
そりゃあ私だって驚きはなかったって言ったら嘘になるけどね。
両親はお医者さんに、もうずっとお姉ちゃんはあのままなのかって訊ねた。
お医者さんは辛そうにうなずいた。
それ以来お姉ちゃんに対する両親の態度は変わってしまった。
入院中、2度とお姉ちゃんのお見舞いに来る事はなかった。」

( ^ω^)「(そんな・・・ひどいお・・・)」

ξ゚听)ξ「お姉ちゃんが退院して、家に戻ってきても両親の態度は変わらなかった。
むしろますます酷くなった。お姉ちゃんを、トイレとご飯の時以外部屋から出さないようにしてた。
それ以外の時にお姉ちゃんが部屋からでてくると両親はすごい剣幕でお姉ちゃんを怒った。
お姉ちゃんは、何で自分が怒られてるのかよく分かっていない感じだった。
ただ悲しそうに涙を流してごめんなさいって謝ってるだけだった。」

( ^ω^)「(・・・ひどいお・・・)」

ξ゚听)ξ「両親は私にも無意味にお姉ちゃんの部屋に行くなって言った。
でも私は内緒で何度もお姉ちゃんの部屋に行った。
その度にお姉ちゃんはすごく喜んでくれた。
私もそんなお姉ちゃんをみるのが嬉しかった。
部屋ではいつも折り紙をしたり、絵を描いたりして遊んでた。・・・すごく楽しかった。」


657 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:41:43.70 ID:KTkoPUgQ0

( ^ω^)「・・・・・・」

ξ゚听)ξ「そして私が高校3年生になった頃、両親がお姉ちゃんを施設にいれようって言いだした。
その方が、お互い幸せだろうって。私は大反対した。
別に施設が悪いとかそういうんじゃなくて、
単純にお姉ちゃんと離れたくないっていう私のワガママだった。
だけど両親はお姉ちゃんを施設に入れたがった。
だから私、言ったの。
私が東京の美大に受かったら、お姉ちゃんを連れて東京に行く。
私がお姉ちゃんの面倒を看る。だから施設には入れないでって。」

ツンはゆっくりと語る。どこか寂しそうに。

ξ゚听)ξ「もちろん両親は私の意見に反対した。
犬や猫を育てるんじゃない。人間を、しかも、・・・障害を持っている人間の面倒を看るのが
どれだけ大変だと思ってるんだって言った。
でも私も負けなかった。大変な事ぐらい、高校生の自分にだって簡単に想像できたけど、
だけどそれでも私はお姉ちゃんと一緒にいたかった。お姉ちゃんを守りたかった。
私が小さい時、お姉ちゃんが私を守ってくれたように。
今度は、私の番だって思ったの・・・」


658 : ◆8esz8O/.sM :2006/04/04(火) 13:43:57.01 ID:KTkoPUgQ0

ξ゚听)ξ「そして結局最後は両親も折れてくれたの。条件つきだけどね。
その条件は、私の分の仕送りはするけど、お姉ちゃんの分の仕送りは一切しないというものだった。
お姉ちゃんの生活費は、全部自分でバイトして稼げって言われた。
もしそれで私が留年したり、お金が足りなくなって仕送りの値上げを頼んだりしたら、
すぐお姉ちゃんを実家に連れ戻して施設に連れて行くって言われた。」

( ^ω^)「うん・・・」

ξ゚听)ξ「上京してバイトが見つかるまでは結構大変だったけど、
私の生活費を削っていけばなんとかやっていけた。
少し苦しかったけど、お姉ちゃんの事を思えば耐えられた。
で、そのうち運良くバイトが決まって、今ここにいるって訳。」

( ^ω^)「つまり、今ツンがバイトしてるのはお姉ちゃんの為って事かお?」

ξ゚听)ξ「そんなんじゃないわ。・・・確かに生活費を稼ぐためではあるけど、
欲しい服とか、画材とかいっぱいあるしね。だからよ。」

( ^ω^)「・・・ツンはお姉ちゃんが大好きって事がよく分かったお。
僕は一人っ子だからそういうの羨ましいお。」

ブーンは素直にそういう。姉妹愛の深さを、ツンの話に感じていた。

 

 

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