155 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:17:00.35 ID:6Y3Y0Qop0

作者です、できました、投下します!


飛び出して行ってから十分後、目を真っ赤にはらしたイヨウが戻ってきた。

(= ω )ノ「ショボンさん…すいませんでしたヨゥ…お話の続きをどうぞですヨゥ」

(;´・ω・`)「大丈夫かい?すまないね余計な事を言ってしまって」

(= ω )ノ「はい、つよい子ですんで大丈夫ですヨゥ…」

(´・ω・`)「ま、フラれたって気にすることはないさ。
僕達には勉強がある、そうだろ?」

(=*゚ω゚)ノ「ショボンさん…」

(*´・ω・`)「イヨウ…」
 


156 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:17:37.07 ID:6Y3Y0Qop0

見つめ合う二人、
次第に近づく心の距離、
そして背後に拳を振りかぶった一つの影。

ξ#゚听)ξ「ksmsはいいから早く続きをお願いします」

(´#)ω(#`)「ふぁい…」

(=#)ω(#)ノ「いひゃいほぅ…」

床に転がる屍が、一つ増えた。

13時限目:「飛べない豚でも必死に生きてる」
 


157 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:18:03.15 ID:6Y3Y0Qop0

(;´・ω・`)「えっと、どこまで話したっけな…」

未だ額から垂れてくる血を拭いながらも喋るショボンさん。
病院にきてからの怪我の方が、圧倒的に多いと思うのは気のせいだろうか。

(´・ω・`)「あぁ、僕の受験の話だったね」

そうですと答え、僕らは姿勢を正し話を聞く体制をとった。
 


159 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:19:02.91 ID:6Y3Y0Qop0




(´・ω・`)「いよいよこの日がきたか…」

センター試験は、かろうじて足切りを食らわずに通過した。
あとは明日に迫った国立大学の試験のみ。
うちの家計を助ける為だ、私立など学費の高いところには入ってはいられない。

(´・ω・`)「目指せ合格」

額に巻いた鉢巻きをキツく締め直し、僕は最後の最後の追い込みに入ったのだった。
 


160 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:19:43.14 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「それじゃあ、行ってくるよ」

('、`*川「いってらっしゃい、頑張ってね」

(`・ω・´)「父ちゃん!がんばれ!」

(´・ω・`)「おお、頑張るさ」

軽いシャキンの体を肩まで持ち上げると、
息子はキャッキャッと嬉しそうに笑った。
この笑顔こそが僕に力をくれる。
 


161 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:20:14.26 ID:6Y3Y0Qop0

それともう一つ。

('、`*川「…気をつけてね」

(´・ω・`)「…あぁ」

僕の大事な家族、大切な、大切な宝物。
自分の手で完全に養えるようになる為の、今日は第一歩だ。
もう一度持ち物を確認し、ボロアパートのドアを開けて僕は日差しの中に歩き出した。

('、`*川「(頑張ってね…)」
 


162 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:20:56.08 ID:6Y3Y0Qop0

受験会場についた時には、緊張はピークにまで高まっていた。

(;´・ω・`)「掌に人の字掌に人の字…」

周りを見れば若い人達ばかり。
その中で一人挙動不審な大人が冷や汗を垂らしてブツブツ言っているのは、
滑稽な風景なんだろうな。
そう自虐してみると、不思議と少し気が楽になった。

首からぶら下げた、ペニサスにもらったお守りを握りしめる。

(´・ω・`)「やってやるさ」

試験開始のベルが鳴った。
 


163 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:21:38.45 ID:6Y3Y0Qop0

午前中の試験は、それなりに順調だった。
幾つか自信のない答えもあったが、おおむね良く出来たと思う。
昼休みとなったので、僕は午後の授業に備えてペニサス手作りのお弁当を鞄から出す。

(´・ω・`)「カツサンドにキットカットか」

ゲンをかつぎたがる彼女らしいセレクトだ。
肉は本当は余程の事がないと食べないのだけど。だって高いし。
手を合わせ、心の中で感謝して手を付ける。

(´・ω・`)「(うむ、これはなかなか…)」
 


164 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:22:11.37 ID:6Y3Y0Qop0

手作り弁当に舌鼓をうっているうちに、窓の外が何やら不穏な空気になってきた。
急に空に暗雲が立ちこめ、遠くの方では微かに雷の音がする。
既に窓ガラスは雨で曇っていた。

(´・ω・`)「(こんな時期に嵐か…仕方ない。後で彼女に迎えにきてもらおう)」

鞄から携帯を出し、僕はペニサスにメールを打つ。
雨が降ってきたので車で迎えにきてほしいと。
外の嵐は、激しさを増すばかりだった。
 


165 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:24:01.97 ID:6Y3Y0Qop0

午後の試験は国語だ。
僕は頭を抱え、
必死に未見のこの古文単語の意味を推測しようとしていた。

(;´・ω・`)「(文脈から推測すると…いや駄目だ、
これじゃ意味が通らないし前後と矛盾する…じゃあこれは?)」

思い通りにならない問題に思わず頭をかきむしる。
すると、何やら前の方で話していた二人の試験官と目があってしまった。

(;´・ω・`)「(ヤバい、不正行為と疑われたか?)」
 


167 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:24:37.79 ID:6Y3Y0Qop0

なんと二人は僕を指差し、頷くとこちらへ歩いてくるではないか。
僕の頭はパニックに襲われる。
疑われるような行為をしたか?
何かミスでもあったのか?
それとも僕の試験会場が違っていたとか?
もはや古文単語など頭から吹き飛んでいた。

だが必死に冷静なフリをしていた僕にその二人がかけた言葉は、
意外なものだった。
 


168 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:25:12.52 ID:6Y3Y0Qop0

(  )「緊急の事です。試験を一旦中止して我々ときてもらいたい」

(;´・ω・`)「は、はぁ…」

周りの受験生の迷惑そうな視線の中、僕は彼らに続いて部屋を出て行く。
振り返って見ると、残してきた答案がまるで最後まで解けと僕に呼びかけているようで。
しかし彼らに逆らう勇気などない僕は、大人しく後に続くのだった。
 


169 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:26:00.79 ID:6Y3Y0Qop0

連れてこられたのは、小さな部屋。
しかしソファーとテーブルが置いてある以上、ここは応接室なのだろう。
そしてテーブルの向かいのソファーには、既に一人の男がいた。

男は僕に目線だけで座れと指示する。
それに従い、見た目以より遥かにふかふかで座り心地のいいソファに僕は腰をおろす。

(;´・ω・`)「(な、なんなんだろう)」

男「単刀直入に言いますショボンさん」

男は僕の目を正面から見据え言い放つ。
 


170 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:26:31.47 ID:6Y3Y0Qop0


男「奥さんとお子さんが事故に遭われました」

窓の外で、稲妻が一瞬だけ眩しく光る。
一瞬だけ儚く、そして一瞬だけ美しく。
嵐は、止む気配がなかった。
 


171 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:26:56.58 ID:6Y3Y0Qop0

「車の運転中に、雨でスリップしてそのままガードレールに衝突したようです」

―――嘘だ

「助手席に乗ってらしたお子さんと、運転していた奥さんは」

―――嘘だ

「即死だったそうです」

―――嘘だ嘘だ嘘だ


173 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:27:39.91 ID:6Y3Y0Qop0

その部屋にたどり着いた僕を待っていたのは、
二つのベッドとその上に被せられた大小二枚の白い布。
そっと大きい方の布を取ってみる。

(´・ω・`)「…やぁ、迎えにきてくれるんじゃなかったのかい?」

彼女は、奇麗だった。顔に傷がなかったワケじゃない。それでも、奇麗だった。

もう一枚の布もめくってみる。

(´・ω・`)「おい、まだお昼寝の時間じゃないぞ」

息子の顔も、穏やかにただ目を閉じているだけのように見える。

いつもみたいに頬をつねれば、
駄々をこねつつ起きるんじゃないかと思ってやってみるけど、やっぱり反応はない。

 

174 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:28:15.95 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「二人とも、僕に休日は早く起きろって言うくせに、自分達だけ寝てるのかい?」
(´・ω・`)「ずるいじゃないか、僕は試験中だったってのに」
(´・ω・`)「そういえば聞いてくれよ、結構試験出来たんだよ」
(´・ω・`)「だからちょっと気が早いけどお祝いに何か食べに行こうよ」
(´・ω・`)「だからさ、起きてよ」
(´・ω・`)「ねえ」
(´・ω・`)「なんでだよ」
(´・ω・`)「僕がメールで頼んだからなの?」
(´・ω・`)「ねぇ、返事しておくれよ」
(´・ω・`)「なんで」

リノリウムの床に、送ってくれた警察の車から降りる時に浴びてしまった雨がぽたりと落ちる。
それは次第に数を増していく。
違った、雨じゃない。
その液体は、僕の両の瞳から出ていた。

僕は、泣いた。
 


175 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:29:03.29 ID:6Y3Y0Qop0




―――試験は、落ちていたよ。
途中放棄したのだから、当たり前だと言えば当たり前だけど。
大学を目指す理由がなくなった今、僕にとってそんな事はどうでもいいはずだった。
でも何故か僕はヒュン台の門を叩き、そして入学試験を受けた。
試験を受けた時はびっくりしたよ。
簡単なはずのテストなのに、
解こうと思うと頭がガンガンしてきて、鉛筆を握るどころじゃないんだ。
 


176 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:29:40.70 ID:6Y3Y0Qop0

それでもなんとか受け終えた僕に用意されたクラスは、その歳に創立されたVIP大コース。
最初僕は、シャキンが約束を守れと言ってるんだと思った。
男と男の約束を守れってね。
彼女達の保険金で生活して、僕は一年間本当に勉強に打ち込んだ。
自分では合格間違い無しだと思ってたよ。
でもね、やっぱり試験の類いを受ける時になると、気が遠くなって問題を解く事すらままならないんだ。
結局その年VIP大を受けて、僕は落ちた。
 


177 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:30:10.09 ID:6Y3Y0Qop0

精神科医にも行ったよ。そしたさ、トラウマだって。
妻と子を試験中になくしたショックがあなたの精神に強いダメージを与えてますだって。
笑っちゃうよね、人間って簡単な事ですぐ壊れちゃうんだ。
それから僕はひたすら勉強を続け、ひたすら落ち続け、ひたすら受け続けた。
そして、君たちに出会った―――
 


178 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:31:12.10 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「それで今日の模試で、
過去最大の痛みがきて思わず意識を失っちゃったってワケさ」

ショボンさんの、長い独白が終わった。
誰も、何も喋らない。
いや、喋らないじゃなくて、喋れなかった。
なんて言えばいいのかわからなかった。

(´・ω・`)「ね?つまらない話でしょ?それでね」

ふぅ、と一息入れて彼は上を向いて呟く。

(´・ω・`)「僕は、ここで終わりにするよ」

(; ^ω^)「なっ…!」

(;‘A`)「終わりにするって…受験をって事ですか…?」
 


179 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:31:50.86 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「うん。思えばあれからただがむしゃらにやってきたけど、もういい。
試験のたびに頭が痛くなるのはきっと彼女と息子が、
もうやめろお前には無理だって言ってるんだと思うんだ」

(´・ω・`)「そもそも彼女達が死んだのは、僕のせいだしね。
恨まれてもおかしくない。
これまでの8年間、僕は本当に無駄な事をしてたよ。意味ないのにね」
 


181 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:32:29.14 ID:6Y3Y0Qop0

―――パシッ―――

乾いた音が病室に木霊する。
つーが、ショボンさんに平手打ちをかました音だった。

(*゚∀゚)「あんた、それ本気で言ってんのかい?」

(´・ω・`)「…痛いよ、つー」

(*゚∀゚)「だったら見損なったね。
自分の家族の事もわからないようじゃ、そりゃあんたは自分の事すら満足に出来やしないよ」

(´・ω・`)「…何が言いたい」

(*゚∀゚)「はっ、自分で考えな」

そのままつーは病室を出て行ってしまう。
ショボンさんは平手を喰らった頬をさすり、顔をしかめている。
 


183 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:33:34.03 ID:6Y3Y0Qop0

ξ゚听)ξ「あたしも…ショボンさんは間違ってると思います」

(´・ω・`)「…君までかい」

ξ゚听)ξ「確かにペニサスさんとシャキン君はショボンさんを迎えに行く途中で事故に遭いました。
でもそれは、偶然なんです。あなたのせいなんかじゃない」

(´・ω・`)「でも僕がメールで頼まなきゃあんな事にはならn

ξ゚听)ξ「ショボンさんは責任をなすりつける相手が欲しかっただけです」

(´・ω・`)「…ッ!」

ξ゚听)ξ「でもあなたは優しい人だから、自分しか見つからなかった。
恨むべき存在が自分しかいなかった。
だからいつまでも自分を責め続けている。違いますか?」
 


184 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:34:05.96 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「…」

ξ゚听)ξ「ショボンさんが受験をやめると言うなら止めはしません。
でもペニサスさんとシャキン君が何を思っていたか、それを考えてからにして下さい」

(´・ω・`)「そんなのは…昔からずっと考えてきたさ…」

再び沈黙が訪れる。
 


186 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:35:26.26 ID:6Y3Y0Qop0

僕は、口べただ。今思っている事が伝わるかわからない。
でも、伝えなきゃならない気がする。

( ^ω^)「ショボンさん…」

(´・ω・`)「なんだい」

( ^ω^)「これを、見て下さいお」

僕は、常日頃から持ち歩いている一冊のノートを取り出してみせる。
 


187 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:36:08.69 ID:6Y3Y0Qop0

( ^ω^)「これは、ショボンさんに初めて教えてもらった数学の問題ですお。
これが英語の訳、これが古文の助動詞の使い方」

一ページずつ、彼に教わった事を一つ一つ説明していく。

( ^ω^)「これは生物の分類の話、これが漢文の返り点、これが…」

(´・ω・`)「それが…どうしたんだい?」

( ^ω^)「ショボンさんの勉強は、無駄なんかじゃないですお。
あんなにバカだった僕にここまで詳しく教えてくれたお」

( ^ω^)「こんなにわかりやすく教えられるなんて、中々できないことですお。
それは、ショボンさんが頑張ってきた証なんですお」

彼は、黙って僕の言葉を聞いている。
 


188 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:37:01.62 ID:6Y3Y0Qop0

(# ^ω^)「ショボンさんは、シャキン君との約束を守ろうとしてここまで頑張ったんですお!!
シャキン君が怒ってるわけないですお!!!!」

(´・ω・`)「!」

(# ^ω^)「男と男の約束は、守らなくちゃいけないんですお!!
諦めたら本当にペニサスさんもシャキン君も怒ると思いますお!」

(´・ω・`)「でも、僕は試験もまともに受けられない」

( ^ω^)「受けられないと自分で決めつけてるからですお、
自分が悪いと決めつけてるからですお。
誰も悪くない、ショボンさんに責任はないですお」
 


189 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:37:55.91 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「僕は…悪くない?」

( ^ω^)「そうですお。
本当にペニサスさんとシャキン君の事を思ってるなら、
合格通知を見せてあげるのが一番喜ぶと思いますお。
それがショボンさんに出来る事ですお」

(´・ω・`)「…」

ショボンさんは、何も言わない。ただベッドの白いシーツだけを見つめている。

言いたい事は言えたような気がする。
上手く伝わったかはわからない。でも、これでもう十分だ。

( ^ω^)「それじゃ、そろそろ失礼しますお」

振り返らずに病室を出て行く。
ここからは、ショボンさん自身が決める事だ、僕は必要ない。

僕は、ゆっくりと病院の廊下を踏みしめていった。


190 名前: すくつ(東京都)[] 投稿日:2007/03/22(木) 00:38:51.93 ID:6Y3Y0Qop0

(´・ω・`)「………」

ブーン達が帰った後、僕は引き出しにしまっておいた指輪を取り出して薬指にはめた。
いつまでも未練がましく持っているこの指輪だ。

(´・ω・`)「僕に、出来る事…」

目を瞑ると、懐かしい二つの顔が浮かんでくる。
いつも通り、無表情でこちらを見つめている。

(´・ω・`)「僕、もう少し頑張ってみてもいいのかな?」

二人が、少し笑ったような気がした。

 

 

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