45 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:00:53.47 ID:jM1l2e+j0
- 二時限目:「up or down」
( ^ω^)「じゃあ、行ってくるお」
J('ー`)し「事故るなよ」
お気に入りのジャケットを羽織り、テキストの入った重たい鞄を持って僕は家を出た。
季節は春、満開に咲いた桜が風にあおられて見事に散り乱れ、
淡いピンクの花吹雪はまるで僕の新しい門出を祝福しているよう。
そう、今日はヒュン台予備校の授業開講日、
これから目標に向かって努力する輝かしい一年が始まるのだ。
( ^ω^)「内藤伝説(レジェンド)の幕開けだおwww」
自宅から五分程歩くと駅が見えてきた。
ちょうど通勤・通学ラッシュの時間帯なので、学生やサラリーマンがホームに群れをなして並んでいる。
その中に見知った顔を見つけた僕は人混みをかきわけそいつに近付く。
(*^ω^)「ヒッキーおは〜www」
(;-_-)「(ビクッ)あ、内藤君、おはよう…」
47 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:02:17.47 ID:jM1l2e+j0
- この幸の薄そうな小柄な青年は、高校時の級友のヒッキーだ。
始めての中間テストでとんでもない点数を取った僕を小馬鹿にした勇気のある人物でもある。
思えば高校時代は良く遊んでやったっけ…
拾ってきたエロ本を5000円で売ってあげたり、
運動不足っぽいから街まで煙草を買いに行かせてあげたり、
出会い系サイトに内緒で登録して彼女を作るチャンスを作ってあげたり…
まぁ要するに僕の親友だ。
(*^ω^)「いや〜卒業式以来かおwww会いたかったお心の友よwww」
(-_-)「う、うん…そうだね…(こっちは卒業してお前と離れられて嬉しかったんだよ)」
48 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:03:22.94
ID:jM1l2e+j0
- そんなヒッキーの胸の内も知る由のない僕は、久しぶりの再会に心踊らせていた。
やはり高校時代の友人というのはいいものだ、気がねなく話が出来る。
( ^ω^)「ところでヒッキーはどこの大学に通う事になったんだお?」
(-_-)「え?僕は一応VIP大の理科二類だけど…」
( ^ω^)「(現役でVIP大…)」
よもやその名前をここで聞く事になろうとは。
しかし、僕の天才的頭脳はその情報を元にして一瞬で文句なしの結論にたどり着く。
すなわち、
『舎弟のヒッキーがVIP大に合格出来た=僕に出来ないはずがない』
(-_-)「な、内藤君は?」
( ^ω^)「僕は…」
(*^ω^)b「VIP大(予定)だお!」
(;-_-)「え?嘘!?っていや、疑う意味じゃなくて…」
49 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:04:54.75
ID:jM1l2e+j0
- ちょうどその時、警笛を鳴らし、人を可能な限り内部に圧縮した電車が滑り込んでくる。
ヒュン台があるニュー速駅方面行きだ。
( ^ω^)「おっ、電車がきたから行くおwwwまた明日会うおwバイブーww」
僕は名残惜しそうなヒッキーに手を振ると、
邪魔な奴らにさりげなく肘打ちを仕掛けながら車両に乗り込む。
運良く女子高生の後ろに立てたので、駅につくまで髪の匂いを楽しむ事にしよう。
( ^ω^)「(触ると捕まるけど嗅ぐだけなら大丈夫だおwww)」
まぁ揺れに合わせて手が触れてしまうのは不可抗力でしょ。
乗客が悲鳴を挙げる程に満員になった車両は、定刻通りホームを出ていった。
(-_-)「(あっちはVIP大方面じゃないんだけどな…。あと明日から時間帯変えよう…)」
50 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:07:59.26
ID:jM1l2e+j0
- ( ^ω^)「ついたお!」
ヒュン台予備校ニュー速校舎、相変わらずの金のかかっていそうな豪勢な造りで、
まさにこの僕にふさわしい。ここにくるのはあの忌まわしきテスト以来、二回目だ。
( ^ω^)「まぁあのテストも実はできてたってオチだけどwww」
入口を目の前にして高笑いをし続ける僕を、通り過ぎる人々が何人も振り返っては凝視していた。
多分羨望とか憧れとかそういう感情だと思う。
( ^ω^)「まずは教室のチェックだおね」
一階窓口の横の掲示板に貼られた教室割り当て表には、既に何人かの生徒が群がっていた。
彼等の後ろから僕も自分の教室を探す。
ちなみにこのニュー速校舎は六階建てで、一階のホールを除いたそれぞれの階によってレベルが分かれている。
例えば中堅大学志望のコースは4階、底辺のカス共は2階、といった具合にだ。
( ^ω^)「って事はもちろんVIP大コースは最上階の六階だおww」
51 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:10:25.08
ID:jM1l2e+j0
- 案の定、VIP大コースは六階に設置されていた。だが少しおかしいことがある。
( ^ω^)「理系Aクラスが61号教室、Bクラスが62号教室、
Cクラスが63号教室、文系は別校舎で、Dクラスはどこだお?」
どこを探してもDクラスの教室が書かれていないのだ。
もっと良く見ようと身を乗り出した途端、前にいた生徒がその場を去ったので、
勢い余って僕はそのまま掲示板に突っ込んでしまった。
( ´ω`)「痛いお……」
激しくぶつけた頭をさすりながら起き上がると、
先程までは人に隠れて見えなかった小さな字が目に飛び込んできた。
『国公立理系・VIP大学コース Dクラス……地下一階特別教室』
( ^ω^)「何故にDだけ地下…」
思えばこの時にもっと疑問を抱いておくべきだったのかも知れない。
建物の構造上の関係だと自分に言い聞かせ、
何も知らない僕はカビくさい階段を地下へと降りて行った。
53 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:12:29.29 ID:jM1l2e+j0
- 階段を降りた先は不思議の国でした…じゃなくて、僕の目にまず映ったものは薄汚れた鋼鉄製の扉。
『Dクラス』と書かれた表示の脇に、うっすらと『資材倉庫』の文字が残っていたのはきっと僕の気のせいだろう。
むしろそうであって欲しい。
( ^ω^)「とりあえず中に入ってみるお」
長年油をさしていないのだろうか、掴んだドアノブはギギギと不愉快な音を立て、僕の手に合わせてゆっくり回った。
初めて入る自分の教室、感想はと聞かれたら、
( ^ω^)「なんていうか…監獄?」
まず窓がない。地下だから当たり前なのだが、若干低いような気がする天井と、切れかけて点滅している蛍光灯もあいまって余計に閉塞感を感じる。
灰色の無機質なコンクリの壁には所々ヒビが入り、隅にはクモの巣まである。
市販の中では最低レベルではないかと思わせる錆びたパイプ椅子とガタガタの木製の机は、戦前から使用されてきた物だと言われても特に驚かないだろう。
全体的に埃をかぶっている床は、ヒビと正体不明の染みで覆われていた。
歩く度に粉が舞う床なんて初めて見た。
とにかくひどい教室だった。
例えるならば、ナチスの強制収容所のガス室、イメージ的にはそんな感じだ。
54 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:16:49.09
ID:jM1l2e+j0
- (;^ω^)「ホントにここが教室かお…」
余りの衝撃に呆然とする僕、その背後から不意に誰かが声をかけてきた。
( ´・ω・`)「やぁ、理系Dクラスへようこそ。
このコーヒーはサービスだから安心して受け取って欲しい」
(;^ω^)「うぉっ!?驚かさないで下さいお…」
( ´・ω・`)「びっくりさせてしまったかい?それはすまない。
僕はショボン、君と同じくこのDクラスの生徒だよ」
あぁ、なんだ、同じ浪人生か。いや、それにしては少し老けているような…。
つか、オッサンじゃね?
このショボンという男性、どう見ても確実に10代ではない。
むしろ20代後半から30代前半と言った方がしっくりくる。
その柔和な表情から放たれるオーラが親戚の叔父さんそっくりだ。
(;^ω^)「あの、出会って早々失礼ですが、ショボンさんお歳は…」
( ´・ω・`)「僕かい?今年で31歳になるね。
ヒュン台には何年も通っているベテランだから、わからない事があったら僕に何でも聞いておくれよハハハww」
55 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:18:13.60
ID:jM1l2e+j0
- 僕のぶしつけな質問に気を悪くした素振りも見せずに朗らかに答えるショボンさん、
いい人だとは思う。
(;^ω^)「(でも何浪してるんだおこの人…)」
それをネタにして笑ってる場合なのだろうか。
僕には到底理解出来ない感性だった。まぁ、浪人なんて大した志のない奴ばかりなんだろう。
( ´・ω・`)「さて、まだ君の名前を聞いてなかったね」
( ^ω^)「あ、僕は内藤ホライゾンと言いますお、ブーンとよく呼ばれてますお」
( ´・ω・`)「ブーンね…よしわかった。じゃあ今から他の子達にも君を紹介するね」
その言葉を受けて辺りを見渡して見れば、確かに僕らの他にも数人の生徒が教室内にいる。
教室の余りの酷さとショボンさんの強烈な印象に気を取られて、今まで気付かなかった。
( ´・ω・`)「まず、彼がドクオ。ブーンは一浪かい?
じゃあドクオと同い年だね、仲良くやるんだよ」
('A`)「…ヨロシク…」
髪の長い根暗そうな男、全体的に細くて昆虫のナナフシを彷彿とさせる。
オタクっぽくて僕の最も嫌いなタイプだ。ショボンさんには悪いがあまり仲良く出来そうもない。
56 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:19:12.40
ID:jM1l2e+j0
- ( ´・ω・`)「次がイヨウ、彼は君の一つ歳上かな?見た目はアレだけど明るくていい子だから心配しなくてもいいよ」
(=゚ω゚)ノ「ショボンさん、アレはひどいヨゥwwよろしくだヨゥ」
うって変わってこちらは髪を派手に染めた今時の若者風の男。
耳には肌が見えないくらいピアスが散りばめられ、
手首と首にもジャラジャラとアクセサリーがはめられている。
こういう奴なら高校の時に良くつるんでいたからノリもわかる、
気が合いそうな奴がいて良かった。
58 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:20:25.23 ID:jM1l2e+j0
- (;´・ω・`)「そして彼はジョルジュ、僕も彼の事は詳しく事はわからないんだ…すまない」
( ゚∀゚)「OPPAI…IPPAI…」
…外人?日本語は喋れないのだろうか?
手に持ってるそれはもしかしておっぱいプリンか?
...なんで予備校に...?
59 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 14:21:39.53
ID:jM1l2e+j0
- ( ´・ω・`)「これがDクラスの構成メンバーかな。
後一人来るらしいんだけど遅いね。さて、何か質問でもあるかい?」
僕を含めてたったの六人か、やけに少人数な気もするが考えても仕方がない。
代わりに僕は、先程から気になっていた質問をぶつけてみる事にした。
( ^ω^)「じゃあ、なんでDクラスだけ六階じゃなく地下なんですかお?
しかもこんな汚い教室で…」
一瞬、僕を除く全ての人が目を丸くする。
まるで僕の無知ぶりに驚愕したかのようだ。
あ、いや、ジョルジュはおっぱいプリンにかぶり付いていただけだった。顔こえーよ。
(;´・ω・`)「君、何も知らずにこのクラスに入ってきたのかい?」
( ^ω^)「?いや、テスト受けたら指定されたのがこのクラスだったもので…」
(=;゚ω゚)ノ「お前、Dクラスの"D"って何の略かわかるかヨゥ?」
( ^ω^)「さぁ…?」
ABCときたら次はDだろ、その程度にしか僕は考えていなかった。
61 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:22:24.16 ID:jM1l2e+j0
- ('A`)「Dクラスの"D"ってのは…」
あ、ナナフシが喋った、声帯あったのか。
62 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:23:08.92 ID:jM1l2e+j0
('A`)「"ど こ も 受 か ら な い" のDだよ…」
64 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 14:24:11.71 ID:jM1l2e+j0
- ( ^ω^)「……ん?」
(;^ω^)「え?」
(;;^ω^)「えぇぇぇ!?」
(=゚ω゚)ノ「それか"どん底"のDだヨゥ」
( ´・ω・`)「もしくは"どうでもいい"のDだね」
( ゚∀゚)「D…for "D cup"…」
( ´・ω・`)「まぁ勿論正式名称ではないけどね、そう呼ばれている事は確かさ」
ちょっと待った、ここはれっきとしたVIP大コースのクラスじゃなかったのか?
最難関大を目指す為のクラスがどこも受からない?
不測の事態に混乱した頭を一端整理しようとした瞬間、ドアを開けて最後の一人が入ってきた。
ξ゚听)ξ「あ…」
(;^ω^)「お…?」
これが、僕が一年間苦楽を共にする事になる、仲間達との出会いだった。
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