137 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 20:33:30.27 ID:jM1l2e+j0
- 浪人中に太った分を戻すため走ってきたが、これは時間かかるそうだ...('A`)
いきます。お待たせしました。
四時限目:「僕らと彼女と彼女の思ひ出と」
早朝、見上げてみれば伸び伸びと広がる青い空、一面に広がった紺碧のキャンパスを自由に飛び回る小鳥達。
出来る事なら鳥になりたいものだ。
勘違いしてもらっちゃ困るが、空を飛びたいだとかそんなロマンチックな話じゃない。
( ´ω`)「鳥には勉強必要ないお…」
予備校に通い初めてまだ一日。
昨日の出来事のおかげで、僕は早くも浪人メランコリーに陥っていた。
138 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:34:23.84
ID:jM1l2e+j0
- 入口を抜け、エレベーター前にたむろしている他の生徒達を尻目に一人だけ階段へ。
僕がDクラスだとわかるや否や、
数人がクスクスと笑いを洩らしていた事には気付いていないふりを貫き通す。
倉庫の…じゃなかった教室のドアノブを回して中に入ると、すでに先客がいた。
('A`)「…あ…おはよ…」
( ^ω^)「(ナナフシかお…)」
生憎と虫にかける言葉は持ち合わせていない。
僕は何も聞こえなかった様に装い席につこうとする。
が、視界の端に捉えたあるものが僕をそうはさせなかった。
( ^ω^)「それ…冒険王ニィトの最新刊かお?」
('A`)「…え?…うん…ブーン君も…冒険王ニィト好きなの…?」
( ^ω^)「好きなんてもんじゃないお、大ファンだお」
―冒険王ニィト。
今巷で大人気の少年漫画であり、何年も前から僕もその魅力にとりつかれている。
主人公ニィトが主に部屋の中でゴキブリと戦ったり、新しいオナニーを開発したりする新感覚スペクタクルストーリーだ。
まさかこいつもその存在を知っていたとは。
139 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:35:48.60
ID:jM1l2e+j0
- ('A`)「そう…なんだ…じゃあ…18話『神への渇望』でニィトが陥ったピンチは…?」
( ^ω^)「両親が旅行中なのにペットボトルもティッシュもなくなった、だお」
( ^ω^)「23話『自由とエロスと』でニィトが最大ダメージを受けた言葉は?」
('A`)「…ニィトの母が言った、『働かなくても腹は減るのね』…だったはず…」
( ^ω^)「中々やるおね」
('A`)「…ブーン君もね…」
( ^ω^)「フッ」
('∀`)「フフフ…」
先程まではまともに声も交した事のない間柄だった僕ら、
いつしか二人の手は固く繋がれていた。
熱い漢の友情が芽生えた、まさに決定的な瞬間だった。
ドア|; ゚听)ξ「(これは、入ってもいい雰囲気なのかしら…)」
140 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:37:07.12
ID:jM1l2e+j0
- 〜昼休み〜
( ´ω`)「相変わらず授業がわけわかめだお…」
朝にドクオと冒険王ニィト談義を行い最高潮まで高まった僕のテンションは、
午前の授業を終えるまでにはまたどん底まで下がっていた。
予め一年受験勉強をやってきた事を前提とされる予備校の授業、
まともにやったのはセンター試験対策くらいだった僕にいきなり応用問題など解けるはずもなく。
( ´ω`)「受ける意義がない気がするお…」
(=゚ω゚)ノ「そんなに落ち込むなヨゥ、どれ、どこがわかんないんだヨゥ?」
( ´ω`)「どこがっていうか…全部っていうか…」
(=;゚ω゚)ノ「アバウトだけど的確だヨゥ…」
141 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:38:01.51
ID:jM1l2e+j0
- (´・ω・`)「う〜ん…ブーンの場合はまず基礎が出来てないみたいだね」
横でお弁当を頬張っていたショボンさんも会話に参加してくる。
彼はしばし何かを考えるような素振りを見せると、そうだ、と言って膝を叩いた。
(´・ω・`)「これから昼休みと放課後は皆で勉強を教えあうってのはどうかな?」
('A`)「…勉強会…ですか」
(´・ω・`)「うん、人に教える事によって知識の確認にもなるし、自分のわからない所も解決出来る。
いいと思わないかい?」
(;´・ω・`)「あと、ジョルジュに日本語を教えようかと思って…」
(;^ω^)(;'A`)(=;゚ω゚)ノ「あぁ…」
( ゚∀゚)「OPPAI?」
ジョルジュの日本語はともかく、勉強会というものは中々有効そうだ。
僕にとっては大助かりになる。
143 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 20:39:17.86 ID:jM1l2e+j0
- (´・ω・`)「ツン君も参加するかい?」
ξ゚听)ξ「嫌です、遠慮しときます」
(=゚ω゚)ノ「おいおいその言い方はないヨゥ」
相変わらずそっけないツンは荷物を持って教室を出ていこうとする。
その肩にイヨウが手をかけた瞬間、
ξ )ξ「触らないでッ!!」
その手は大袈裟な程に思いきり振り払われた。
小刻みに震えながらも、絞りだしたような微かな声で彼女はもう一度、
「触らないで…」
とだけ言い残し教室を出ていく。
普段の気丈な彼女からはとても想像出来ない様な弱々しさは、
触ったら壊れてしまう硝子細工みたいで。
残された僕らはただ呆然とするしかなく、
ツンが通ったドアが音を立てて閉まるまで誰も声を発しなかった。
( ^ω^)「(ツン…泣いてたお…)」
144 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:40:37.05
ID:jM1l2e+j0
- 〜五時間目・LHR(ロングホームルーム)〜
知らない人もいると思うが、予備校にもHRやLHRといった類のものはある。
そこでは受験に関する情報が担任によって発表されたり、
これからの勉強方法についての指針が示されたりする。…はずなのだが。
(*゚∀゚)「あ〜めんどくせ…」
(;´・ω・`)「つーさん、仕事して下さい」
(*゚∀゚)「どうせ馬鹿なあんたらには関係のない話でしょ…
じゃあ口で言うのめんどくさいから各自このプリント読んで」
スーツ姿で机にあぐらをかき、ダルそうにヒラヒラと手に持った紙束を上下に揺らす僕らの担任つー。
この人この態度でどうやってヒュン台に就職出来たのだろうか。
(*^ω^)「(パンツ見えそう…)」
(;´・ω・`)「もう…給料泥棒め…こんな担任初めてだ…はい、みんな」
ショボンさんが彼女から受け取り配ってくれたプリントには、
上半期のヒュン台のスケジュールが記してあった。
145 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:42:37.35
ID:jM1l2e+j0
- ( ^ω^)「7月15日はVIP大学実践模試(VIP大コース生は全員参加)かお」
(=゚ω゚)ノ「それが一番大事だけど、5月15日の全国判定模試も結構大事だヨゥ」
('A`)「…模試でいい成績とれば…やる気も出るよ…」
どうやら当面の目標は来月の全国判定模試のようだ。
今日から数えて約一月半、どれだけ伸びるかと言った所か。
( ^ω^)「やれるだけやっ(ry
ξ゚听)ξ「…ない…」
(;^ω^)「ん?」
ξ;゚听)ξ「あれ?どこにやったっけ…?」
僕の決意の言葉は途中で遮られ、見ればツンが何やら鞄をひっくり返しガサゴソと何かを探している。
やけに焦っていて、これまた普段の彼女らしくない様子だ。
146 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:44:01.79
ID:jM1l2e+j0
- ( ^ω^)「ツン、どうしたんだお?」
ξ;゚听)ξ「財布が…財布がないの…」
僕の問いかけに素直に答えるのもおかしい。
(=゚ω゚)ノ「どんな財布だヨゥ?ブランド物かヨゥ?」
ξ;゚听)ξ「ううん…安物だけど…大事なもの…」
ξ )ξ「おばあちゃんの…形見の財布…」
その言葉を聞いた次の瞬間、僕はドアに向かって歩きだしていた。
147 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:44:59.46
ID:jM1l2e+j0
- (*゚∀゚)「おい…少年よ、どこへ行く、まだHRは終わってないぞ」
( ^ω^)「財布を探してきますお」
(*゚∀゚)「…あたしのHRをサボろうってのかい?」
( ^ω^)「もう伝達事項は終わってますお、今は自習時間のはずですお」
こちらを射すようなつーの視線を正面から見据え、僕はそう答える。
しばしの間視線が交錯し、やがて彼女の眼光がふっと柔らいだ。
(*゚∀゚)「…はっ、違いないね。よし!野郎共!あたし達も一緒に探すよ!」
ξ;゚听)ξ「え…いや、そんな悪いです…」
(*゚∀゚)「いいからいいから、こういう時は好意に甘えるもんだよ!で、今日立ち寄った場所は?」
ξ;゚听)ξ「えっと…、ここと自習室とロビーと…あとコンビニ…」
(*゚∀゚)「聞いたね!?ショボ顔は嬢ちゃんと共に教室!虫顔と外人は自習室!
ヤンキーは落し物がないか聞いてからロビー、
でキンタマ口の少年はあたしと一緒にコンビニまでの道だよ!」
148 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:45:45.89
ID:jM1l2e+j0
- (;´・ω・`)「わ、わかりました…」
(*゚∀゚)「返事はイエスマム!!」
(;´・ω・`)「イ、イエスマム…」
( ゚∀゚)「yes mom!」
豹変したと言えばそうなるが、きっとこっちがつーの本来の姿なんだと思う。
僕らにテキパキと指示を与えるその姿は、とても輝いて見えたから。
かくして僕達は、ツンの財布を探す為に各場所へと散っていった。
149 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:46:54.19
ID:jM1l2e+j0
- (;^ω^)「むぅ…ないお…」
交番にも立ち寄り、コンビニまでの道を隈無くチェックしてみても財布の姿は何処にもない。
道行く人々が、地べたに這いつくばって必死の形相で辺りを見回す僕らを怪訝な表情で眺めていた。
(*゚∀゚)「こりゃあもう誰かに取られちまったかもねぇ…世の中善人ばっかじゃないし」
(;^ω^)「いや、きっとまだあるはずですお!あっちはまだ探してないですお!」
まだ諦めきれない、いや、諦めちゃ駄目だ。
ふと気付くと、つーが僕の横顔をじっと見つめていた。
(*゚∀゚)「…なぁ少年、何でそんなに必死に探すんだ?
あたしの第一印象じゃあ少年は、他人の為に何かしたいです、って感じには見えなかったけど?」
151 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 20:47:58.40 ID:jM1l2e+j0
- 彼女の言うことは正しい。
普段の僕なら他人の事などどうでもいいと思って、
こんな風に無様な姿を往来で晒してはいないだろう。でも今回は違う。
( ^ω^)「僕…父親がいないんですお…」
(*゚∀゚)「…」
( ^ω^)「幼い頃に交通事故でなくしちゃってて。
だから何ていうか、家族からもらった物の大事さ?は一応わかってるつもりなんですお」
(*゚∀゚)「…成程ねぇ…あたしゃてっきりあの子に惚れてんのかと思ったよ」
(;^ω^)「な…ッ!そそそ、そんな事はないですお」
まぁ、可愛いと思わないなんて言ったら嘘になるけども。
それからは二人共黙りこんで、またゴキブリのように地面を這い続けた。そして―――
152 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:49:08.35
ID:jM1l2e+j0
- (*^ω^)「あったお!!!」
財布は、コンビニのゴミ箱の上にぽつんと置いてあった。
誰かが見つけてそのまま判りやすい所に置き直したのだろうか、
何にせよ見つかって本当に良かった。
(*゚∀゚)「めでたしめでたし、と。さて、教室に戻ろうかね」
行きは低い態勢で少しずつ歩いてきた道を、僕らは今度は小走りで戻っていった。
結局、ツンに財布を返したあと僕らは彼女にお礼を言われ、その小さな騒動は幕を閉じた。
153 名前: 留学生(東京都)[] 投稿日:2007/03/13(火) 20:50:18.09
ID:jM1l2e+j0
- それから変わった事と言えば、
ツンが僕達に普通に接してくれるようになった事(それでもまだツンツンしてるが)、
彼女も勉強会に参加するようになった事、
あとほんの少しだけつーがやる気を出すようになった事。
本当に微々たるものだが、少なくともプリントは自分で配るようになった。
ああ、最後にまだあった。
実はツンは入学試験でもトップクラスの成績でAクラス間違いなしだった所を、
ヒュン台の手違いでDクラスに振り分けられてしまっていたらしい。
それをつーから聞かされ、今からでもAクラスには上がれるけどどうするかと問われたツンは、
意外な事にDクラスに残る事を選んだ。
155 名前: 留学生(東京都)[]
投稿日:2007/03/13(火) 20:50:55.82 ID:jM1l2e+j0
- その理由は彼女曰く、
ξ///)ξ「あ、あたしがいなかったらあんた達に教えられるまともな人間がショボンさんしかいないでしょ!
べ、別に感謝してるとかじゃないんだからねっ!」
だそうだ。
財布を渡した時の彼女のあの半分泣いているような綺麗な笑顔、
それだけで恩返しは十分だなんてクサイ台詞は、絶対に言えない僕だった。
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