1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:00:00.55 ID:bwjmJwBM0
 

( ^ω^)「はぁ……今日もいいこと無かったお」

日も半分沈みかけたころ。
今年中学生になったばかりの少年、ブーンは学校の帰り道をとぼとぼと歩いていた。
学校が始まって半年、今までブーンは何1つ学校で楽しいことを経験していなかった。

( ^ω^)「早く帰ってvipするお!」
そんな彼の唯一の楽しみ、それは帰ってからのネットであった。
そのことを考えたブーンの顔はみるみる嬉しさに満ち溢れ始める。
取り得である足の速さを活かし、ブーンは岐路を急いだ。

 

4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:05:33.78 ID:bwjmJwBM0

 

ふと、ブーンは足を止めた。
( ^ω^)「お? あんなところに神社なんてあったかお?」
彼の視線上にあるのは、随分古びた神社。別に昨日建ったというわけでもなさそうだ。
だが彼は今日、初めてその存在に気づいた。不思議がるブーン。ただ単に毎日通り過ぎていただけのことかもしれないが。
( ^ω^)「ちょっと行ってみるお!」
いつもならネットを最優先にして行動するブーンであったが、今日だけは何故かこの神社に強い興味を持ったのだ。

ブーンは何のためらいも無く、両手を広げた奇怪なポーズで神社の中に消えていった。
 

 

5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:05:54.27 ID:bwjmJwBM0

 

( ^ω^)「ごめんください、だお」
丁寧に挨拶をするブーン。勿論、返事は無い。
それ以前に神社の中に勝手に入っていいのかと言われそうだが、常識に欠如してるブーンだからそれは仕方が無い。
神社の中は案外広く、学校の教室二部屋分くらいはありそうだった。
( ^ω^)「何か気味悪いお……」
あちこちに蜘蛛の巣が張っていて、何か出そうな感じ。
ブーンは少し怖くなってきた。

ふいに、ブーンは奥のほうにある物に気づいた。
( ^ω^)「宝石だお!」
奥のほうにあった祭壇らしき物の上に宝石が置かれていた。
神社を発見したことといい、今日のブーンはやたらと何かに気づく。
( ^ω^)「今日は冴えてるおw」
ルンルン気分で宝石に触る。その緑色に輝く宝石は、何処か、異質めいた美しさを秘めていた。
宝石に関する知識など皆無であるブーンはそれが何か知ることは出来なかったが、儲け物とだけは思った。
( ^ω^)「持ち帰るお!」
ブーンが宝石をポケットにしまおうとした、その瞬間。

(;゚ω゚)「お!? 何だお!?」
突如、宝石がまばゆい光を放ち始めたのだ。
目を潰されるんじゃないかと思うくらいの眩しい光だ。
光は辺りを包み始め、ついにはブーンの視界から周りの景色を奪った。
(;゚ω゚)「何がどうなって……うわあぁぁぁくぁwせdrftgyふじこ」
発した奇声が終るか終わらないかという内に、ブーンは突然意識を失ってしまう。

少しの間の後光は治まったが、神社の中にブーンの姿はすでに無かった……。

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:06:27.54 ID:bwjmJwBM0

 

(  -ω-)「……お?」
花の辺りに何か違和感を感じ、ブーンはようやく目を覚ます。
ゆっくりと立ち上がると、1匹の蝶がひらひらと舞っていた。違和感の正体はこれだったのか。

鼻に清々しい空気が流れ込んでくる。
( ^ω^)「……ここどこだお?」
いつの間にか、見知らぬ場所に飛ばされていた。
山道のようだった。辺りには木が生い茂っている。しかしその木々もどこか、生き生きとしていた。
( ^ω^)「………とりあえず歩いてみるお」
そういって歩いては見るものの、人影らしきものも見えない。よっぽど町から離れた場所なのか。
それでもじっとしてるわけにもいかずに、ただ歩くしかなかった。

しかし、何もわからないまま1時間、2時間、そして3時間が矢のように過ぎていった。

( ;-ω-)「もうだめだお……死ぬお……」
ついにその場に座り込んでしまうブーン。疲れただけではなく、腹も減った。
しかしそれでも人は見つからない。
仕方なく、しばし休憩をとることにした。

 

7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:07:36.59 ID:bwjmJwBM0

 

――カッカッカッ……

( ^ω^)「お?」
物音がしたのに気づききょろきょろと見回す。
遠くに、小さな影が見えた。だんだん近づいてくる。
( ^ω^)「助かったお! 人だお!」
影は近づき続け、ついに何かを判別できるまでになった。

それは馬だった。人でもあった。つまり馬に乗った人だった。
重そうな鎧をつけ、刀を腰に携えている。
(´・ω・`)「何者だ」
こちらが何かを言う前に、いきなり男は尋ねてきた。
ブーンは男の異様な出で立ちに驚きつつも、答える。
( ;^ω^)「え……えぇと、僕はブーンといいますお」
(´・ω・`)「ブーン? 私はショボ之介という者だが……変な名であるな」
( ^ω^)「(おめぇに言われたかねえよw)」
(´・ω・`)「 な ん か 言 っ た か ?」
腰に携えた剣が鈍く光ったのを見て、慌ててブーンは首を振った。
(;;;^ω^)「な、何でもありませんお!」
(´・ω・`)「そうか……」
ショボ之介は首をかしげ、少し間をおいてからまた尋ねた。
(´・ω・`)「ところでお主は何故ここにいるのだ?」
( ^ω^)「え……それがその……」


 

 

8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:08:22.42 ID:bwjmJwBM0

 

( ^ω^)「え……それがその……」
こんなときにで嘘を言ってもしょうがないので、ブーンはありのままに自分に起きたことを話した。
しかし、ショボ之介はそれを信じようともしない。
(´・ω・`)「馬鹿な。そんな話が信じられるわけが無かろう。出鱈目を言うと容赦せぬぞ」
ショボ之介は怒っているようだったが、顔のせいでそうは見えない。しかし気迫だけは十分だった。
( ;^ω^)「で、でたらめじゃないですお! 本当ですお!」
(´・ω・`)「黙れ黙れ! そのような嘘には農民風情でもひっかからぬわ!」
(´・ω・`)「それにその出で立ちも怪しい。敵の刺客かもしれん。ここは捕らえる!」
( ;^ω^)「うぇwwwwちょwwwまtt(ry」
怪しい出で立ちの奴に怪しい出で立ちと言われるとは思っていなかったブーンは戸惑った隙にショボ之介の1撃をくらい、また気絶してしまった……。
ぐったりとしたブーンの体を抱えるショボ之介。
(;´・ω・`)「ちょ、こいつ、重い」
しかしこのまま放っておくわけにもいかないので、必死の思いでブーンを運んでいった。

 

9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:08:46.37 ID:bwjmJwBM0

 

かなり広い部屋で、2人の男が話している。
???「それで、そ奴は?」
(´・ω・`)「牢にぶち込んでおります」
男のうちの1人、ショボ之介がもう1人の男に恭しく言葉を述べた。
男は実に興味深そうな表情で、ショボ之介に命ずる。
???「刺客にしては中々面白い冗談を言う奴だな。よし、つれて来い」
(;´・ω・`)「は……しかし……危険を秘めている可能性が……」
???「大丈夫だ。つれて来い」
(´・ω・`)「はっ……」

(♯^ω^)「ここから出すお! いきなり気絶させて牢屋に入れるなんて非人道的だお!」
簡素な造りの牢屋を激しく叩くブーン。
しかし見かけの割りに中々丈夫で、それくらいでは壊れそうに無かった。逆にそれくらいで壊れてもらってもあれだが。
( ^ω^)「(……それにしてもここはどこなんだお? さっきのショボ之介とかって人の格好といいこの牢屋といい……まるで戦国時代だお)」
真っ当に考えればそうなる。しかしそれはありえぬことだ。タイムスリップでもしたというのか?
(´・ω・`)「五月蝿い。少しは大人しくしろ」
いつの間にかショボ之介が立っていた。相変わらずパッとしない顔つきだ。
( ;^ω^)「あっ! 早くここから出してくださいお!」
相手が得体の知れない危険な奴なので、急に丁寧語を使うブーン。
そんなんで出してくれるとは思ってはいなかったが、相手の答えは意外なものだった。
(´・ω・`)「そのためにここに来たのだ。さっさと出ろ」
そしていとも容易く扉を開けてくれた。
( ^ω^)「え? いいのかお?」
(´・ω・`)「勿論手は縛るがな」
( ;^ω^)「やっぱり……」
話はそう上手くはいかないようだった。

 

 

10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:09:12.18 ID:bwjmJwBM0

 

( ゚∀゚)「やっと来たか!」
ショボ之介につれてこられた場所は、大広間のようだった。
奥に居座っているのは狂人的な笑みを浮かべた男。
(´・ω・`)「連れて参りました」
( ゚∀゚)「ご苦労。1歩下がれ」
男はショボ之介を下がらせると、ブーンの顔を覗き込んだ。
そして笑い出す。
( ゚∀゚)「これは面白い! 実にへんちくりんな奴だ!」
(♯^ω^)「(お前に言われたくないお)」
そんなブーンの内心を知ってか知らずか、勝手に話を進める。
( ゚∀゚)「勿論、余の名は知っておろうな」
( ^ω^)「え? そんなこと知るわk」
( ゚∀゚)「知っておろうな」
( ;^ω^)「いやだから知らn」
( ゚∀゚)「 知 っ て お ろ う な 」
( ;^ω^)「はいですお……」
仕方が無くそう答える。しかし男はというと。
( ゚∀゚)「うむ。しかし念のためもう1度名乗ってやろう。余は斉藤ジョルジュ道三じゃ! しかと覚えておけ」
結局教えてきた。
( ^ω^)「(どう見てもジョルジュが余分です。本当に(ry)」
要するに、世に言う斉藤道三がこいつらしい。
多分ジョルジュつきが本名なのだろうが……芸能人のような名前だ。
( ^ω^)「(でも……斉藤道三ってことはやっぱここは戦国時代……)」
認めたくは無いが、どうやらそれが真実と認めざるを得ないようだ。表情はともかく、声は嘘を言っているようには聞こえない。

やはりブーンは戦国時代にタイムスリップしていたのだ。
 

 

11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:10:27.83 ID:bwjmJwBM0

 

( ゚∀゚)「しかしそちは面白いのぉ! 気に入ったぞ!」
( ;^ω^)「い、いやそんな……」
嫌な予感がして、遠慮がちになるブーン。下手をしたら身動きが出来ないことになるかもしれない。
そしてその予感は、的中した。

( ゚∀゚)「よし! お前を余の家来にしてやろう!」
( ;^ω^);´・ω・`)「ちょwwwww」

 

 

12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:11:04.09 ID:bwjmJwBM0

 

( ;^ω^)「(こいつ殿の才能0だお……)」
(;´・ω・`)「(見ず知らずの、しかも敵の刺客かも知れぬ者をこうも容易く家来に……殿は何を考えておられるのだ)」
そう思っても、口答えは出来ない。更にしょんぼりとした顔になるショボ之介。
そしてブーンのほうはというと、必死で断る。
( ;^ω^)「ちょ、まだ決心が、それに親にだって報告してませんお!」
( ゚∀゚)「しかし先程の話を聞く限り、家には戻れんのだろう?」
( ;^ω^)「ギク……」
余計なことを話すのではなかった、と後悔する。しかしもう遅い。
( ゚∀゚)「帰れる方法が見つかるまで余が面倒を見てやろう。勿論働いてはもらうが」
( ^ω^)「……それって……戦に出ろってことですかお?」
戦国大名の家来の仕事といったら、ブーンの頭ではこれしか考えられない。
( ゚∀゚)「当・然」
( ;^ω^)「………」
相手が戦国大名である以上、断るわけにもいかなかった。断ったら多分処刑される。
だけど、戦には参加したくない……。

ブーンが決めかねていると、斉藤道三ことジョルジョが急に口を出す。
( ゚∀゚)「どうだ!? 余の家来になればうまい物食い放題、おなごとも遊び放題だぞ! おっぱいも(ry」
(*^ω^)「え、まじですかお!?」
素晴らしい殺し文句の前にブーンの心が揺らぐ。
(´;ω;`)「(殿……嘘までつかなくとも……)」
ショボ之介はただ1人泣いていた。

その後、ブーンが話を承諾したことは言うまでもない。
かくして、ブーンの戦国時代での生活は始まった。
 

 

14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:11:28.36 ID:bwjmJwBM0

 

それから2ヵ月後。
ジョルジュの居城での生活は勿論、彼が言ったとおりにはならなかった。
(♯^ω^)「(あの野朗……許さないお)」
騙されるほうも騙されるほうだが。
(´・ω・`)「ブーン、ぼさっとするな! かかってこい!」
ショボ之介の怒号が飛ぶ。
ブーンは今実践の訓練をしていた。しかしブーン自身がやる気ではないため2ヶ月たっても大して上達はしていない。
( ^ω^)「仕方が無いお……。やるお」
ショボ之介に向かって駆け出すブーン。足だけは相変わらず速い。
( ^ω^)「うおぉぉぉぉぉぉ!」
木刀をショボ之介目掛け振り下ろす。だがその動作は大きく、遅く、隙だらけだった。
(´・ω・`)「甘い!」
ブーンの一撃を簡単に受け流すと、ショボ之介はがら空きになったブーンの背中をしたたかに打った。
( ;>ω<)「ぐあっ」
木刀とはいえ、結構な痛み。思わず倒れこむ。
ショボ之介はやれやれといった感じだ。
(´・ω・`)「まったく、ここ2ヶ月で何の上達もしておらん。やる気はあるのかお主は」
くどくど長い説教が始まる。もう最近では日課と化していることだ。
( ;^ω^)「ありますお……」
本当にやる気のある奴なら、こんな小さな声で返事はしない。
ショボ之介にはブーンの心が読めていた。
(´・ω・`)「(やれやれ……どうしたものか)」
 

 

15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:11:51.77 ID:bwjmJwBM0

 

困り果てたショボ之介。そんな彼の脳裏に、かつて道三がブーンを家来にさせた殺し文句が浮かんだ。
(´・ω・`)「(……殿がおやりになられたのなら私だって……。)……おいブーン」
( ^ω^)「何ですかお?」
(´・ω・`)「お主が何故、殿の言ったとおりうまい物食い放題、おなごとも遊び放題、おpp……ゲホッゲホッ! ……の褒美がもらえないかわかるか?」
( ^ω^)「え、あれ嘘じゃなかったのかお! わからないお、是非教えてくださいお!」
(´・ω・`)「(手応え有り)」
ショボ之介の目が微かに光る。だがそんなことにはブーンはお構いなし。
( ^ω^)「早く教えてくださいお!」
(´・ω・`)「まぁそう焦るな。理由は簡単、お前が練習を放棄したからだ。即ちそれは実戦で手柄を立てようとしないということ。そのような奴に与える褒美など無い」
(´・ω・`)「だから、褒美が欲しければ手柄を立てろ。ご恩と奉公、これ鉄則」
( ^ω^)「………」
(;´・ω・`)「(くっ……流石に同じ手を二度はくわんか……!)」
( ^ω^)「……たお」
(´・ω・`)「?」
( ^ω^)「わかりましたお! 頑張るお! 手柄たてまくりますお!」
さっきとは打って変わり、やる気満々の声だった。
(´・ω・`)「(……単純な奴め)」
ボソッと呟くショボ之介。勿論ブーンには聞こえるわけが無かった……。

 

16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:12:27.33 ID:bwjmJwBM0

 

ブーンは見違えるほど強くなっていった。全ては世のため……ではなく娯楽のために。
数週間後には実戦に出ても問題ないほどに成長していた。恐るべし、ブーン。

(;´・ω・`)「(まさかここまでとは思わなかった……)」

今、ショボ之介とブーンがいる軍団はある場所へ向かっていた。
それは、モララーと呼ばれる大名が住まうジエン城。ジョルジョの治める地域のすぐ隣にあり、つねに彼の目の上のたんこぶとなっていた存在。
ついにそいつを討ち取ることにしたのだ。

辺りは暗い。先方に夜討ちを選んだのだから当然だ。
月明かりだけを頼りに軍団は進んでいった。
( ^ω^)「暗いお……怖いお……」
練習ではめきめきと自信をつけていったブーンだが、実戦はこれが始めて。嫌でも緊張する。
そんな内心を知ってかしらずか、ショボ之介がこんな質問をする。
(´・ω・`)「ブーン、思ったのだがお主は家が恋しくなったりはしないのか?」
( ^ω^)「え?」
(´・ω・`)「お主は家に戻れないそうだが、ここに来てからもう大分時が経つ。親の顔が見たいだろう?」
( ^ω^)「………」
ブーンは答えない。いや、答えようと思えば答えられる。
答えは……“見たくない”

 

17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:12:43.16 ID:bwjmJwBM0

 

ブーンは小学校高学年のころから親に見離されていた。
まぁ、大した成績も取らず1日中ネットをしているのだから当然といえば当然だが。
そしてブーンのほうも、親を嫌っていた。
学校でもそうであったが、家でもネットを除き楽しいことなど何も無かった。
ブーンにとって、親もクラスメイトも他人も皆同じであった。

( ^ω^)「………」
相変わらず黙ったままのブーン。ショボ之介は少しため息をついた。どうやら、答えを聞くのを諦めたらしい。
(´・ω・`)「まぁ、人には色々ある」
腰の刀をしっかりと押さえ、ブーンはそんなショボ之介の乗る馬の後をついていった。

ふと、軍団の動きが止まった。
( ^ω^)「お? どうしたんですかお?」
(´・ω・`)「静かに」

――ワァ……ァァ……

( ;^ω^)「何か聞こえ……人の声だお!」
(;´・ω・`)「いかん! 読まれた!」
ショボ之介が叫んだ途端、ブーンの隣にいた兵士が矢の直撃をもらい、倒れた。
( ;゚ω゚)「うわ、わわわ!?」
次々と飛んでくる矢。何人かの兵士は叩き落し、また何人かはどこかしらにくらって倒れていく。
(´・ω・`)「怯むな! 突撃!」
ショボ之介の合図と共に、軍団は雄叫びをあげながら駆け出す。
一方、モララー軍も矢での攻撃から切り替え、向かってきた。
( ;゚ω゚)「くるお……くるお……!」

ブーンの最初の戦いが始まった。
 

 

19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:13:10.29 ID:bwjmJwBM0

 

( ;゚ω゚)「や、やっぱ怖いお!」
凄まじい形相で向かってくる兵士に対し、実戦初心者のブーンは完全に恐れをなす。
思わず、逃げ出してしまった。
しかしそんなことは気にせず他の兵士は戦い始める。
瞬く間に、血が、悲鳴が、体の一部が宙を舞った。
(´・ω・`)「ぬぉぉぉ!」
ブーンは遠くから見ていたが、ショボ之介の活躍は顔をのぞき凄まじいものがあった。
そこらの兵士とはわけが違う。次々に敵兵をなぎ倒していく。
( ;゚ω゚)「……いっそ、ショボ之介さんが殿様になったほうがいいお……」
思わずそう漏らす。その時、
モララー兵「うおお!」
敵兵の刀が、目前に迫っていた。
( ;゚ω゚)「わわわ!」
慌てて防ぐが、その衝撃に腕が悲鳴を上げる。
( ;゚ω゚)「(刀同士がぶつかったときの衝撃って……こんなにも凄いものなのかお!?)」
思わず愕然とする。練習でいい気になりすぎていた。
敵兵はお構いなしに連続で振ってくる。鈍い金属音が立て続けに響き、その度にブーンの表情が強張っていく。
そして何発目かの衝撃で、尻餅をついてしまう。
その隙を見逃さず、敵兵は刀を振り下ろす!
( ;゚ω゚)「わぁぁぁぁ!」
もう駄目だ。目を瞑り、最後の抵抗にもと我武者羅に刀を振るった。

 

20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:14:10.05 ID:bwjmJwBM0

 

ザシュ、という嫌な音がした。そしてブーンの顔に何か生暖かいものがかかる。
だが、痛みは無い。
( ;−ω゜)「お……?」
少しだけ目を開けると、目の前には刀を構えたまま硬直する敵兵の姿があった。
その腹にはブーンの刀が深く突き刺さっている。
( ;゚ω゚)「お、おぉぉ!?」
仰天するブーン。信じられないが、我武者羅に振った刀が敵兵に当たったのだ。敵兵が油断していたからなのか、ただ単に素人だったからか。
いずれにせよ、初めてブーンは敵を討った。――つまり、人を殺した。
( ;゚ω゚)「やっちゃったお……」
覚悟はしていた。だが、やはり罪悪感が押し寄せてくる。人を殺したのだ。敵とはいえ。
血が滴る愛刀を見つめ、ブーンはただ愕然とする。
そこに、ショボ之介の怒鳴り声がきた。
(´・ω・`)「ブーン! 1人討ったからって感動している暇か! 死ぬぞ!」
( ;゚ω゚)「え……わわ!」
背後から別の敵兵が来た。もう、こうなったら躊躇する暇は無かった。練習を思い出し、相手の一撃を受け流した。そして隙が出来たところを斬る。
流れるような動き。思わずショボ之介も目を見張る。
(´・ω・`)「(むむっ!)」
しかし、それがいけなかった。飛んできた矢がショボ之介の肩を貫く。
(;´-ω-`)「うぁっ!」
それによってバランスを崩し、落馬する。そこを敵兵が狙ってきた!
( ;^ω^)「! 危ないお!」
 

 

21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:14:36.08 ID:bwjmJwBM0

 

ブーンは駆け出した。例の奇怪なポーズで。速い。やはり足だけはかなりのものだ。
瞬く間にショボ之介と敵兵の間に割り込む。
モララー兵&(;´・ω-`)「!!」
( ^ω^)「うおぉぉぉぉ!」
刀が月明かりを反射する。猛烈な勢いで繰り出されたブーンの斬撃は、敵兵の頭を遥か遠くへ吹き飛ばしていた。
2体の首を失った死体は、ブーンに返り血を浴びせた後、倒れた。
(;´・ω・`)「ブーン……お主……」
( ;^ω^)「………」
ショボ之介の命が助かり、ホッとしたのもつかの間、再び人を殺したという罪悪感が襲ってきた。
その罪悪感と、初めて見る死体の山、それに疲労が重なり、ブーンの意識は混乱していく。
( ;-ω-)「お……」
そして数秒後、気絶した。
(;´・ω・`)「ブゥゥゥン!」

 

22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:15:03.10 ID:bwjmJwBM0

 

( -ω-)「う……ぅぅ……」
薄っすらと目を開ける。明るい。どこかの部屋のようだった。
( ^ω^)「ここは……」
(´・ω・`)「大丈夫だったか?」
( ;^ω^)「うおぉぉ!? ……ショボ之介さんでしたかお。驚かさないでくださいお」
(´・ω・`)「勝手に驚いたのはお主だが」
いつもどおり、淡々と喋るショボ之介、その肩には包帯が巻かれていた。
( ;^ω^)「傷……大丈夫なのですかお?」
(´・ω・`)「この程度大したことは無い。それよりも、立てるか? 殿がお主を呼んでおる。目覚め次第来い、とな」
( ^ω^)「え、僕を?」

ショボ之介に連れられて外に出ると、そこは城下町のようだった。
( ^ω^)「広いお……」
元々静かな地方住まいだったブーンにとって、この広さと活気は不慣れなものだった。
ショボ之介とはぐれないよう、気をつける。

ふと、ブーンはすれ違った1人の町人に目を留めた。
ξ゚-゚)ξ「………」
華麗な娘だった。すれ違っただけで、ブーンの目は釘付けとなった。
( ^ω^)「綺麗だお……」
だが、
(´・ω・`)「置いていくぞ」
( ;^ω^)「わわ、ちょっと待って下さいお!」
慌ててその場を離れざるを得なかった。

 

23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:15:39.97 ID:bwjmJwBM0

 

( ゚∀゚)「いやぁ、よくぞ参った」
相変わらずの笑みを浮かべるジョルジュ。ブーンはこいつがどうも苦手だった。
できるだけ早く用を済ませたい。そしてさっきの娘を……
(*^ω^)「何のようですかお?」
変な妄想をして、思わず頬を赤らめる。
( ;゚∀゚)「……気色悪いぞ」
( ;^ω^)「わわ、すいませんお!」
慌てて顔を伏せた。変な誤解をされては困る。
( ゚∀゚)「まぁよい。……ブーンよ、そちはこの度の戦でショボ之介を救ったそうじゃな」
( ^ω^)「え? あぁはい、もう無我夢中で……」
( ゚∀゚)「素晴らしい! 2ヶ月全く手柄なしで家来にしたのを間違ったかと思ったがよくぞやってくれた!」
( ^ω^)「はぁ……」
( ゚∀゚)「そこでお主を足軽から足軽小頭にしてやろう!」
( ^ω^)「(何のことだかわからないお……。でも何か階級上がったっぽいからとりあえず喜んでおくお) ありがとうございますお!」
ここで、ある疑問に気づくブーン。
( ^ω^)「……あれ?」
( ゚∀゚)「どうした?」
( ^ω^)「結局あの戦には勝ったのですかお?」
気絶してしまったため、勝敗はまだ知らないのだ。当然の質問といえよう。
( ゚∀゚)「当たり前ではないか。そこを見よ」
( ^ω^)「そこ……?」
ジョルジュの指した方向を見る。そこには……
 

 

24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:16:02.09 ID:bwjmJwBM0

 

(・∀・)「………」

( ;゚ω゚)「わわわ!?」
生首があった。
( ゚∀゚)「見よ、この立派なモララーめの首を」
( ;^ω^)「う……討ち取ったんですかお?」
(´・ω・`)「私がね」
( ;^ω^)「………」
絶句するブーン。人を殺したときの気持ちに再び襲われる。
ジョルジュはそんなブーンを無視して自慢話を始める。
( ゚∀゚)「余が送った援軍の力もあり無事に勝利となった。尤も、優秀な余の軍なら援軍無くとも(ry」
後半はもう聞いていなかった。
今だに人を殺したときのショックが大きかったのだ。
( ^ω^)「(僕は人を殺したお……自分を守るためとはいえ、それはいいことなのかお?)」
葛藤するブーン。そんな彼の異変に気づいたのか、ショボ之介が切り出した。
(´・ω・`)「殿、どうやらブーンはまだ体調が優れぬ様子。しばし私の家に戻らせ休ませましょう」
( ゚∀゚)「ん、そうか。そうしてくれ」
少しジョルジュは不満そうだった。
長居は無用と判断したショボ之介はブーンを連れ、部屋を出た。

 

26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:16:42.06 ID:bwjmJwBM0

 

それとほぼ同時刻、現代――

???「まずい……誰かが向こうにいったようだ」
老いぼれた声がする。かなり焦っているようだ。
???「本当ですか!? ……何ということだ……」
こちらは若い声。だがこちらも焦っている。
???「万が一、向こうに行ったのが―――の連中だったら……」
???「やめろ、そんなことは考えないでくれ……。いずれにせよ早く連れ戻すか、始末しなければ……」
???「そうですね……。では、早速準備を……」
何か物音がして、若い声がしなくなる。
年老いた声のみが悲痛な様子で独り言を呟いていた。
???「せっかくここまでこぎつけたというのに……。奴等に利用されているかもしれないとは……何ということ……」

その声の主の前では、あの宝石が静かに輝いていた……。
 

 

27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:17:12.71 ID:bwjmJwBM0



( ^ω^)「ふぅ……だお」
やっと、ショックから少し立ち直り始めた。
何とかあれは正当防衛なんだ、と割り切っている。
だがすぐに、割り切れないような殺人も犯すことになるのだろうが……。

(´・ω・`)「生きてたか」
戸が開き、ショボ之介が顔を出した。
( ^ω^)「あれ、ショボ之介さん何か用ですかお?」
(´・ω・`)「ここは私の家だ阿呆。ぶち殺すぞ」
( ;^ω^)「す、すいませんお……」
ショボ之介から殺気のオーラが出て、また引っ込んだ。

(´・ω・`)「じきにまた戦が始まる。それまでに体調を戻しておくのだな」
そう告げた後、ショボ之介は飯を用意してくれた。
おいしそうな飯だ。
( ^ω^)「お! ありがとうございますだお! ハムッ、ハフハフ……」
(´・ω・`)「キメェw」
( ;^ω^)「………」
(´・ω・`)「どうした?」
( ;^ω^)「どこでそんな言葉覚えたんですかお……」
(´・ω・`)「お主のオーラが私に影響を及ぼしたようだ」
( ;^ω^)「ちょwオーラってwwww」
 

28 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/18(火) 22:18:30.30 ID:bwjmJwBM0

 

――こちらはジョルジュ城

( ゚∀゚)「近隣諸国に変わった動きは?」
ジョルジュが目の前に跪く男に尋ねている。
(´∀`)「それが……織田の勢が……」
彼の名はモナ丸。ジョルジュの最も信頼する家来であり、彼の従兄弟でもある男だ。

織田、という姓を聞きジョルジュの表情が強張る。それでも笑みだが。
( ゚∀゚)「織田か……。信長め、最近では今川を桶狭間で破ったそうだな」
(´∀`)「はっ。まさか、あの駿河の猛者今川が敗れるとは思いもしませんでしたが……」
( ゚∀゚)「ふん、若造め。やってくれる……」
(´∀`)「いかがなさいます?」
暫くの間、ジョルジュは目を瞑って考えていた。だがやがて、こう告げた。
( ゚∀゚)「しばらくは様子を見ておけ。今奴を排除しようとするのは、危険だ」
(´∀`)「承知しました」
恭しく礼をして、モナーは引き下がる。
1人残されたジョルジュは、ブツブツと呟き始めた。
( ゚∀゚)「信長……そちの力、利用させてもらうぞ。フフフ……」
 

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