5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:28:24.50 ID:ZE3Up+qD0
時は2ch暦69年。
日本のどこかにある平和で平凡で退屈な街、ニュー速市。
のどかというほど田舎ではなく、垢抜けているというほど都会でもない街。
そんな街に嫌気がさして若者は飛び出し、そして夢破れて帰ってくる。
そうやって人口は増えず減らず、名産品も観光地も特にないニュー速市は、大都市の衛星都市として凡庸に時を重ねていた。
これは、そんな街に突然舞い降りた世界的な大イベントのお話。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:30:07.88 ID:ZE3Up+qD0
ある日。世界の大企業が手を結び、ITアトラクションの新しい形を模索するというプロジェクトが立ち上がった。
世界中の人々が言葉の壁も国境の壁も越えて、まったく同じ条件で触れ合えるアトラクション。
移動の手間もなく、大きな費用もかからずに、世界中の人々と顔をあわせ、体を動かし親交を深める。
まさに夢のような話だが、夢は実現しないから夢という。
だが。
実現不可能と思われたそのプロジェクトを、昨今急速に発達した技術が可能にした。
高度なプログラムと、サービス提供用のサーバーの莫大な処理能力。
さらに超高速伝達を可能にする専用回線、強制睡眠・脳波接続を行うプレイポッド。
それらによって、仮想現実の世界を現実と同じように体験できるという夢物語が実現した。
Vision lncarnate Program。
通称VIPと名付けられたその新システムは、世界各国でテスターの募集を開始。
ニュー速市は奇跡的に、そのテスター都市の一つとして選ばれた。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:30:53.41 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「オンラインゲームの究極系・・・味や温度も感じられるなら、マンガ肉も食べられるかもしれないお!」
ハードゲーマーで軍オタの内藤。
星狐学園情報技術科に所属。
('A`)「おぉ、本物のポーションも飲めるかもな。何でも再現可能らしいからなぁ・・・夢が広がるぜ」
同じくハードゲーマー、ドクオ。内藤の友達。
とあるゲームの全国大会準優勝者。
ξ゚听)ξ「何でもありって想像するの難しいわね・・・現実にないような綺麗な景色とか見れるのかしら」
内藤の隣の家に住む幼馴染、ツン。
成績優秀、語学堪能。内藤の趣味に付き合っているため不本意ながらゲーマーに。
(´・ω・`)「けどなぁ・・・現実と同じ体感が可能なら痛みもあるんじゃないか?」
上記三人の担任、ショボン。
車はもちろんのこと、船舶、重機等の免許を持つ。歴史教師。
( ,' 3 )「痛みか・・・それは困るね。映画のようなアクションをすれば死んでしまいそうだ」
保健医の荒巻。
スキーやカヌー、キャンプなどアウトドアな趣味を持つスポーツマン。
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:31:19.51 ID:ZE3Up+qD0
(,,゚Д゚)「ドキドキするなぁ。説明はまだ始まらないのか?」
星狐学園近くに住む大学院生、ギコ。
元駅伝選手。地学専攻。旅行が趣味。
(*゚ー゚)「落ち着きなさい、ギコ。あと10分もあるじゃない」
中学時代からのギコの恋人、しぃ。
整体士。趣味は料理と読書。
(*゚∀゚)「ねぇねぇ、しぃ。賞金が出るって聞いたけどホントかな。欲しいものあるんだけど」
しぃのお姉さん、ダンサーのつー。
趣味はバイク、大型免許もち。
体育館に設置された大仰な装置の前に集められた彼らを、観客席のテスターに選ばれなかった者たちや友人が見守っている。
ステージ上には巨大なスクリーンが設置され、その周囲に小型のスクリーンが8つ。
巨大なスクリーンは全体を映し、小型スクリーンはそれぞれ8人の参加者をモニターする。
さらに、日本でテスターに選ばれた都市はニュー速市だけという事もあり、TV局も万全の体制で待機していた。
カメラの前で実況するアナウンサーの周りに、地元の中学生たちが群がっている。
そんな中、装置の点検を監督していたスーツ姿の男がマイクを手に取った。
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:33:47.67 ID:ZE3Up+qD0
担当者「あーあー・・・はい、みなさんよく集まってくださいました。点検は完了しました。これより説明にうつりたいと思いますが、準備はよろしいですか?」
('A`)「おお、きたきた」
( ^ω^)「はやくやりたいおwww」
会場はいっせいに静まり、世界で同時に開始される大テストの説明が始まる。
説明といっても装置の起動などは全てスタッフが行う上に、テスト中、つまりプレイ中は現実とまったく同じ体感。
つまり、現実世界と同じように動ける。
仮想現実を体験するというよりも、違う世界に飛ばされるといった表現のほうがしっくり来る。
現実と違うことといえば、運営側の措置によって調整される痛覚処理くらいだ。
担当者「というように稼動中は現実と同じように動けますので、操作に関してわからないことなどは発生し得ません。痛みなどもその大きさに反比例して調整されますので、少々無茶なことをしていただいても結構です。では次に乗り物についてですが・・・」
ゲーム中には現実では触れることさえしない乗り物などもでてくるだろう。
その場合、運転方法はあらかじめプレイヤーが設定した方法が採用される。
実際運転できる人間なら現実と同じように。
そうでなければゲームの操作方法で、あるいは、違う乗り物の運転方法で。
担当者「さて、あとはプレイ中で確かめてください。何が起こるかはみなさんの行動で変わってきます。プレイ中に死亡すればゲームオーバーです」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:35:07.44 ID:ZE3Up+qD0
担当者「それでは、プレイポッドに搭乗していただきましょう。プレイヤー全員が準備できましたら即開始となります。どう進めばいいか等は、ゲーム中で説明されますのでご安心を」
内藤たち8人のテスターがスタッフに誘導され、それぞれのプレイポッドに乗り込む。
コンテナ型の装置に乗り込み、指示に従いソケットに手を通す。
スタッフがヘッドギアをかぶせると、視界は暗闇に支配される。
内藤は暗い視界の中、これから始まる体験に胸を躍らせていた。
( ^ω^)「い、いよいよだお!ばっちこいだお!」
全員のプレイポッドに電源が入る。
プレイヤーそれぞれが緊張して開始を待つ中、ヘッドギアから直接担当者の声が響いた。
装置の駆動音が聞こえ、意識がまるで眠りに落ちるように薄らいでいく。
おそらく、目が覚めたら仮想現実の世界。
担当者「それでは準備はよろしいですか?神様にお祈りは?恐ろしい目にあって小便ちびる心の準備はOK?・・・それではいってみましょうか。未知なる体験の先駆け、VIPシステム・ワールドテスト、みなさんの健闘を祈ります!」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:37:41.87 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「・・・はっ!?今何か不吉な台詞を聞いたような・・・って、ここは?まさかこれが仮想現実・・・かお?」
プレイポッドの中にいたはずの内藤が目を覚ますと、そこは晴天に包まれた大都市だった。
空気の匂い、風、照りつける太陽。
すべてが現実そのものだった。
あたりを見渡せば様々な人種の人々が集まり、ある人は歓声を上げ、ある人は頬をつねっている。
( ^ω^)「・・・うっひょぉぉぉ!すごいお!いや、ちょwwwこれ現実じゃね?wwww」
はしゃぐ内藤の近くで大気が揺らぐ。
その揺らぎは瞬く間に人型を作り、ドクオが仮想現実の世界に実体化した。
その光景を見て、内藤は今いる場所がまぎれもなく仮想現実、VIPシステムの世界なのだと実感する。
ドクオに続き、体育館にいたプレイヤーが次々に実体化していく。
('A`)「・・・おぉ・・・ここがそうか。すげぇな、人類の技術ってやつは!」
ξ゚听)ξ「ここは・・・これが仮想現実?すごい・・・」
(´・ω・`)「暑さも風も感じるな。いやぁ・・・信じられん。なんてこった」
( ,' 3 )「おや、外国の人もいるね。みんなまだ何をすれば良いのか聞かされていないのかな」
(,,゚Д゚)「しぃ、しぃ!すごいな!見えてるか?鳥だって飛んでる!もうすごいな!すげー!」
(*゚ー゚)「そうね、ビックリするわ・・・いい年してそこまではしゃぐギコにね」
(*゚∀゚)「あらまぁ、手厳しいねー」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:41:27.13 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「これで日本勢は集まったお?」
ξ゚听)ξ「そうね。私達星狐学園の生徒と・・・えっと」
(*゚ー゚)「あ、私達は市内に住んでいて・・・私はしぃ。こっちはギコに、姉のつーです。よろしく」
(,,゚Д゚)「どうも、ギコです。同じ日本テスター同士、頑張りましょう」
(´・ω・`)「これはどうも・・・こちらは高校生がいますからご迷惑をお掛けするかもしれませんが・・・」
(*゚∀゚)「いいえー。せっかく同じ場所から参加したんですから楽しくいきましょう」
('A`)「ん・・・なんか人が集まりだしたぜ」
( ,' 3 )「どこかへ向かうようだね。どれ、我々もいってみよう」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:42:38.07 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「何か配ってるお」
( ,' 3 )「ふむ・・・説明書的なものじゃないかな」
(´・ω・`)「なるほど。よし・・・ドクオ、とってこい。全員分だ」
('A`)「へ?なんで俺が・・・」
(´・ω・`)「いけ」
('A`)「・・・はいはい」
説明書を配っている仮説テントに、各国のテスターが行列を作っている。
それを眺めてから、ドクオはため息をついて歩き出した。
そのあとをつーがついてくる。
(*゚∀゚)「お姉さんもついていってあげよう。君、名前は?」
('A`)「あ・・・ドクオです。なんかすいません、どうも・・・」
(*゚∀゚)「良いよ良いよ。さ、暇だろうから並んでる間お喋りしよっかー」
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:43:41.33 ID:ZE3Up+qD0
ドクオが長いこと並んで持ち帰ってきたのは、荒巻の言うとおり説明書のようだった。
そこには、体育館で説明されなかったことが書かれている。
まず、このテストは競争制らしい。
スタート地点で資金が渡され、最終目的地を目指し旅をする。
途中で資金を稼ごうが、だらだらとリゾートを楽しもうがプレイヤーの勝手だが、最初に目的地に到達したプレイヤーには賞金が出るようだ。
基本的にプレイヤーは個人進行だが、目的達成のためにチームを組むのも当然許されている。
その場合賞金はプレイヤー間での話し合いで処理してもらう。
ちなみに賞金額、20億円。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:45:00.81 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「・・・0がいっぱいだお」
ξ゚听)ξ「・・・20億!?」
(´・ω・`)「ほう・・・車のローンを払って、高い飯食って・・・良いな。実に良い」
(,,゚Д゚)「スタート地点ってここか?資金ってのはどこに・・・」
ギコがめくった説明書のページに、最後の説明が書かれていた。
この説明書を読み終われば各プレイヤーはこの仮想現実の世界のどこかにあるスタート地点に飛ばされ、そこから一人でスタートすることになる。
飛ばされた先で資金が渡され、それからは自分の知恵と体力で目的地を目指す。
ギコが声に出してその文を読み上げると、説明書は淡い光とともにかき消えた。
(*゚ー゚)「消えた・・・ということは、今から飛ばされるのかしら」
(*゚∀゚)「そうでしょ。だってほら、どんどん人が消えてってるよ」
周りを見ればさっきまでいた各国のテスターの数が半分ほどまで減っている。
説明書を読み終えたプレイヤーからスタート地点に飛ばされるようだ。
内藤たちも例外ではなく、いつ自分が飛ばされたのか認識できないまま、急に意識が暗転する。
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:47:06.53 ID:ZE3Up+qD0
波の音が聞こえる。
頬にはやわらかい感触と、ほのかな潮の香り。
目を開けて起き上がると、一面に広がる大海が見える。
振り返ると、さっきまでいた大都市とは違った田舎町が見えた。
( ^ω^)「ああ・・・飛ばされたのかお。ちょっと乱暴だお、改善を提案するお」
内藤は砂浜にいた。
どうやらここが内藤のスタート地点らしい。
ふと気がつけば、内藤はその手に札束を握っていた。
この仮想世界の通貨なのだろうか、見たこともないような紙幣だが、なぜかその額は理解できた。
日本円にしておよそ100万円。この資金を元に目的地を目指さないといけないらしい。
(;^ω^)「ん?・・・そういえば、目的地ってどこだお?」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:52:29.37 ID:ZE3Up+qD0
( ^ω^)「おけおけ、落ち着くお内藤ホライゾン。ゲームの基本として村人がいるはずだお、まずは情報収集だお」
内藤は砂浜から町に移動した。
仮想現実とは思えないようなリアルな住人たちが内藤を出迎える。
住人は皆親切に接してくれたが、目的地は教えてもらえなかった。
AIで動いているだろう住人に混じって外国のテスターもいるようだが、彼らに話を聞こうにも内藤は日本語以外喋れない。
(;^ω^)「むぅ・・・困ったお。いきなり詰まるとは思わなかったお」
内藤はコンビニ前のベンチに座りコンビニで買った缶ジュースを飲んでいた。
今いる場所はどうも日本ではないようだが、プレイヤー以外になら日本語で話せるらしい。
そんな事を考えながらコンビニのほうを眺めていると、東洋系の男が出てきた。
男は内藤の視線に気付くと、気軽に声をかけてくる。
( ´_ゝ`)「なんだ坊主。そんなとこでボーっとして、暇なのか?」
( ^ω^)「・・・あーっと、プレイヤーですかお?日本の?」
( ´_ゝ`)「まぁ、一応な。アメリカ在住だからアメリカからインしてるんだけどな」
( ^ω^)「これは助かったお。良かったら目的地の場所を教えて欲しいですお」
( ´_ゝ`)「目的地っておまえ・・・知らんのか?コンビニ店員に聞けば教えてくれるってのに」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 00:57:29.51 ID:ZE3Up+qD0
(;^ω^)「コ、コンビニ店員に聞けば良かったのかお。迂闊だったお」
( ´_ゝ`)「・・・ふむ。あんまり頼りがいはなさそうだが、一緒に来るか?ちょうど人手を探してたんだが見つからなくてな」
その男は兄者と名乗った。
この辺で相棒を探そうとしたらしいが、声をかけた相手は断るか、もしくは明らかに腹黒そうな人間ばかりで困っていたそうだ。
その点内藤は安全だと判断したらしく、内藤の隣に座り話し始めた。
兄者の話からすると、この仮想世界は地理的にいえば現実とまったく同じらしい。
内藤と兄者の現在地は現実でいうところのイギリス、ドーバー海峡に面した田舎町だ。
目的地はチベット付近、そのあたりにゴールがあるとか。
( ´_ゝ`)「んで、とりあえずユーラシア大陸に渡らにゃならん。となると船が必要なんだが・・・」
( ^ω^)「なんだが・・・?」
( ´_ゝ`)「高い。60万くらいする。こんな最初から資金の6割を失うのは避けたい」
( ^ω^)「はぁ。それって船を売ってる店があるんですかお?」
( ´_ゝ`)「ああ。道具屋に売ってるんだ。・・・そうだな、船以外に使えるものがあるかも知れんし、連れて行ってやろう」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火) 01:01:59.79 ID:ZE3Up+qD0
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火)
01:11:53.82 ID:ZE3Up+qD0
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火)
01:18:58.41 ID:ZE3Up+qD0
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火)
01:23:46.04 ID:ZE3Up+qD0
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火)
01:28:18.02 ID:ZE3Up+qD0
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/11(火)
01:34:31.78 ID:ZE3Up+qD0
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:20:19.48 ID:G/v0RorB0
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:20:49.38 ID:G/v0RorB0
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:23:12.33 ID:G/v0RorB0
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:24:43.65 ID:G/v0RorB0
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:28:23.68 ID:G/v0RorB0
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日)
23:31:33.04 ID:G/v0RorB0