37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:34:03.43 ID:G/v0RorB0

( ^ω^)「慣れれば良いもんだお。このままトップを狙うお!」

軽トラやオート三輪を抜き去り、内藤はどんどん進んでいった。
コースは難易度をあげ、リタイアするプレイヤーもそれに比例して多くなってくる。
そんな中、後方から猛烈な勢いで迫る影があった。
真紅のRX-8は内藤のマグナムを超える速度で走りぬけ、なぜかスピードを落とす。
内藤がRX-8の隣に並ぶと、窓を開け内藤に話しかけてくる。

(´・ω・`)「やっぱり内藤か。どうだ調子は?」
( ^ω^)「おぉ!ショボン先生かお!先生も参加してたのかお!」
(´・ω・`)「途中参加だ。ユーロトンネル抜けたらレースしてるって言うから参加してみたんだが・・・」
( ^ω^)「先生もイギリス出発組だったのかお。一緒にいくかお?」
(´・ω・`)「はっは、馬鹿いうな。俺は20億を手に入れる。だから・・・お前には負けれんのよ!」

ショボンのRX-8が急に内藤のマグナムにぶつかってくる。
危うくコースアウトしそうになったが、マグナムは速度を落とし持ちこたえた。
その隙にショボンはスピードを上げ距離を開いていく。

(´・ω・`)「じゃあな内藤、20億手に入れたら何かおごってやろう!」
( ^ω^)「ちょwww先生あんた金の亡者かおwwww」


38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:35:55.31 ID:G/v0RorB0

( ^ω^)「なんて大人気ない・・・いくおマグナム!先生に負けるなお!」

内藤の声に従い、マグナムはショボンを追いかける。
ショボンは正確かつ力強い運転で連続カーブをクリアし、中々距離は縮まらない。
レースは中盤を過ぎ、ロシア国境まで後30キロの表示が見えてきた。
コースはこれまでとは違い、狭い峠に差し掛かる。
峠を上りはじめたプレイヤーたちの目の前で、峠の頂上から落ちてきたらしいマシンが爆発炎上した。

(;^ω^)「・・・マグナム、慎重かつアグレッシブにいくお」

怖気づいた内藤と周りのプレイヤーは速度を落とす。
だがショボンだけが速度を落とさずに峠を上り、やばて視界から消えた。
まさに上り最速。あのペースを維持すればやがてトップ集団に追いつくだろう。

( ^ω^)「ありゃ、いっちゃったお・・・む、あれは!」

峠の激しいカーブの中、ガードレールの一部が壊れている。
おそらく誰かが落ちたのだろうが、その壊れたガードレールの前方にコースの一部が見える。
高速で飛び出せばショートカットできるかもしれない。

( ^ω^)「・・・やっぱり慎重じゃなくていいお!いくおマグナム!」


40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:37:27.48 ID:G/v0RorB0

十分な加速をつけ、ガードレールからマグナムが飛び出す。
浮遊感とともに車体が宙を舞い、はるか前方のコースめがけて進んでいく。
眼下にはたくさんのプレイヤーが見えた。
コースアウトする者もいれば、うまく峠を下っていく者もいる。
その中に、兄者のブロッケンGもいた。
その頑強さを利用し、強引に他プレイヤーを弾き飛ばしながら進んでいる。
その後ろからはショボンのRX-8が次々に参加者を抜き去り、着実に順位を上げていた。

( ^ω^)「けど・・・これで一気に追いつけるお!」

内藤が飛び出した上り途中から、マグナムは下りの途中までの大幅なショートカットに成功した。
着地の衝撃をものともせず、マグナムは走行を再開する。
ちょうどバックミラーには兄者のブロッケンGが見える。
その順位をキープし、内藤は峠を越えた。

( ´_ゝ`)「あちゃー・・・降ってきやがったよあいつ。やるねぇ」

内藤に続いて、兄者も峠を越え内藤を追いかける。
前方は雪降り積もるロシアの地だが、コースはしっかり整備されスリップの危険はなさそうだ。
直線にはいり、兄者はコース表を取り出した。
もう少ししたらコースは2つにわかれているようだ。
距離の短い“ミニ四駆の現実と末路コース”と、距離の長い通常コース。

( ´_ゝ`)「・・・?短いほうに行くよな、普通」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:40:01.94 ID:G/v0RorB0

( ^ω^)「こっちの短いほうにいくかお」

兄者と同じように、内藤も短いコースを選んだ。
後続はそれぞれのコースにわかれ、20台ほどが内藤に追随する。
兄者のブロッケンGは後方に確認できるが、ショボンのRX-8はいないようだ。

( ^ω^)「このコースは直線かお。となれば・・・いくおマグナム!」

マグナムを加速させようと叫ぶが、マグナムはまったく速度を変えない。
それどころか減速し、ついには現実のミニ四駆程度の速度にまで落ちた。
声に反応しないとなると、アクセルのついていないマグナムでは加速のしようがない。
内藤は後続のマシンに次々に追い抜かれていった。

( ´_ゝ`)「内藤か・・・なにしてんだあいつ、あんなトロトロと・・・」

兄者はアクセルを踏み込み、あっさり内藤を追い抜いていった。
バックミラーから内藤が見えなくなり、コースに障害物が現れ始める。
小さな岩やトタンの壁を避けながら進むと、コースの半分を占めるほどの大岩が見えてくる。

( ´_ゝ`)「でかいな。だが、このブロッケンGならあんな岩くらいなんて事はない」

兄者はさらにスピードを上げ、大岩を打ち砕こうとまっすぐ向かっていく。
それが兄者の最大のミスだった。


43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:41:33.21 ID:G/v0RorB0

( ´_ゝ`)「邪魔だから掃除してやる!」

猛スピードでブロッケンGが大岩に迫る。
今まで兄者は障害物をことごとく打ち砕いてきた。
ライバルである他のプレイヤーのマシンをふっ飛ばし、時には大木をなぎ倒して。
その頑強さを兄者は信じていた。
たとえ大きくても、岩ならば打ち砕けるはずだと。
ブロッケンGのバンパーが大岩に突き刺さる。
後は岩をくり貫き、粉々に砕くだけ。
そう信じていたし、そうなるはずだった。このコースでなければ。

( ´_ゝ`)「なっ・・・!ちょっとタンマ!?」

だが、突き刺さったバンパーは砕け散り、猛スピードで岩に激突したブロッケンGは岩が辿るはずだった運命を逆に味わう。
爆発したブロッケンGの中で兄者は事態が把握できないままリタイアした。
炎の中意識が薄らいでいく。
自転車でこけたような痛みが全身に走り目を覚ますと、そこはプレイポッドの中だった。
外に出るとアメリカのテスト会場に集まった観衆から拍手が起こる。

観客「つっこむなんて男らしいぞーwww」
観客「テラアホスwww」
( ´_ゝ`)「・・・ちっ、リタイアかよ。あーぁ・・・後は任せたぞ、弟者よぉ・・・」


44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:43:55.60 ID:G/v0RorB0

( ^ω^)「いま爆発音が聞こえたような・・・嫌な予感がプンプンするお」

現実のミニ四駆並みのスピードで走る内藤を、相変わらず後続が追い抜いていく。
それだけならまだ良い。
だが、内藤を追い抜いていったマシンが悉くスクラップとなっているのを見て、内藤はコース名を思い出した。
ミニ四駆の現実と末路コース。
おそらくこのコースでは、ミニ四駆タイプのマシンは現実と同じような性能しか得られない。
岩すら砕く装甲はプラスチックに戻り、声で動くマシンは直進しかできなくなる。
スクラップでちらかったコースを進むと、とろとろ走る内藤の右前方に大岩が見えてきた。
その大岩はコースの半分ほどもあるが、幸い内藤は大岩の反対側を走っている。
もし内藤の真正面に大岩があれば、今の進路変更できないマグナムではリタイア確実だっただろう。
幸運に感謝しながら大岩に近づくと、見覚えのあるマシンが火を噴いていた。

( ^ω^)「・・・!兄者さんのブロッケンG・・・!岩を砕こうとしたのかお・・・ナムナム」

大岩にぶつかり大破したブロッケンGに手を合わせる。
おそらくリタイアした兄者とはもう二度と会えない。
惜別の思いをこめた黙祷を終え前方を見ると、はるか遠くにコースの合流点が見えた。

( ^ω^)「合流点・・・あそこまで行けばマグナムは元通りに・・・!?」

だが、ここはミニ四駆に現実を思い出させるだけでなく、その哀れな末路を体現するコース。
その世代の人間なら、公道でミニ四駆を走らせ車に轢かれたと言う者も少なくないだろう。
そんな経験を持つ人物が設計者にいたのか、内藤の前方に巨大な車が出現した。


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:45:57.95 ID:G/v0RorB0

(;^ω^)「おぉうっ!?ちょ、曲がれおマグナム!このままじゃ轢かれるお!」

当然マグナムは内藤の声に反応せず、巨大なタイヤに向けて直進する。
なんとかしようと車体を揺らしてみるがマグナムはびくともしない。
内藤は考えた。
曲がれないなら止めればどうか?止めることもできない。
ほかのマシンにおしだしてもらえないか?周りにほかのプレイヤーはいない。
そこで内藤は自分のマシンの特性に気付いた。

( ^ω^)「・・・僕のマグナムだけミニ四駆並のスピード・・・なら、降りればいいお!」

マグナムのドアをあけ、コース上に飛び出す。
速度が遅いおかげで怪我をすることもなく着地できた内藤は、リタイアを免れた。
マグナムはそのままタイヤにつっこみ、無残にもぺしゃんこになる。

( ^ω^)「ぼ、僕のサイクロンマグナムがー!!・・・ま、死ぬよりはいいお」

たしかにレースは失格になるだろうが死ぬよりは良い。
ようするに目的地にたどり着けば良いのだから。
内藤は地図を広げ、最寄の町まで歩き出した。


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:47:23.45 ID:G/v0RorB0

内藤はもうすっかり暗くなった道を歩いていた。
このテストをはじめてもう十数時間。
少しずつ、このVIPシステム・ワールドテストのことがわかってきた。

( ^ω^)「このテスト・・・利便性に比例して危険も増えるのかお?」

ドーバー海峡を越えるとき、カヌーよりもリ便利な移動手段を使っていたジョンたちから大蛇に襲われた。
車を使ったレースでは危険なコースの上に様々なトラップ。
もし飛行機でも使おうものなら空軍くらい出てくるのかもしれない。

( ^ω^)「こうして歩いていても何も起こらないお。となれば、徒歩でゴールを目指すのが一番安全・・・」

そんなことを考えながら歩いていくうちに、明かりが見えてくる。
長いこと歩いてようやくたどり着いた町では、NPCに混じってプレイヤーが露店を開いていた。
色々な国の言葉が飛び交う中、日本語で客引きをしている店がある。

( ,' 3 )「いらっしゃいー。何でもあるよ、見ていっておくれー」
( ^ω^)「・・・荒巻先生、何やってるお?」


47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:49:18.33 ID:G/v0RorB0

( ,' 3 )「おや・・・内藤君じゃないか。ゴールを目指してるんじゃないのかい?」
( ^ω^)「まぁ、そうだけどお・・・荒巻先生はゴール目指さないのかお?」
( ,' 3 )「20億なんて大金はねぇ・・・それに私なんかが一番でゴールできるとはとてもとても・・・」

なにもゴールを目指すだけしか出来ないわけじゃない。
もちろん多くのプレイヤーが賞金目当てにゴールを目指すだろうが、中には露天商をするものや宿屋を営む者もいるだろう。
この、荒巻のように。
荒巻は各地でそれぞれ違う値段で売られている道具を安く買い集め、NPCがいない町の外や山の中などで売り歩いていた。
痒いところに手が届くサービスと豊富な品揃えで、荒巻の所持金は出発時の資金100万円からおよそ3000万まで増えている。

( ^ω^)「すげぇ金持ちだお。けど、外国の人相手にも商売できるのかお?」
( ,' 3 )「それはほれ、この翻訳コンニャクで一発」
( ^ω^)「・・・いくらだお、それ?」
( ,' 3 )「んー・・・生徒割引で、5万」
( ^ω^)「買うお先生、箸つきで頼むお」
( ,' 3 )「まいどあり。今日は遅いからそこの宿屋に泊まるといいよ、私も泊まってるからね」

内藤は荒巻に勧められた宿屋に泊まり、翻訳コンニャクをおいしく頂いた。
これで外国の人の言葉もわかるようになり、旅は快適なものになるだろう。
内藤は素泊まり3千円のわりに豪華なベッドでゆっくり疲れをとり、明日の出発に備えた。


48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:49:46.94 ID:G/v0RorB0

夢というのは現実時間ではほんの数秒だという。
夢を見るのと同じ原理のVIPシステム中ではテスト開始から一日が過ぎようとしていたが、現実世界ではまだ数時間しかたっていない。
テスト会場のひとつ、ニュー速市の星狐学園体育館では、プレイヤーの現状がアナウンスされていた。

('A`)「ナットウミサイルだと!?全機、板野サーカス・フォーメーション!」
ドクオはアメリカからスタート。
戦闘機による太平洋横断に参加し、現在ドッグファイト中。

(´・ω・`)「四輪ドリフト!」
ショボンはまだレース中。
現在トップ集団で首位争い中。

ξ゚听)ξ「綺麗ねぇ・・・こういうのも優雅で良いわ」
ツン、オーストラリアから出発。
安全が保障された豪華客船による世界一周ツアー中。

(,,゚Д゚)「はっ、はっ、ふー・・・」
ギコ、日本からスタート。
現在中国をマラソンで横断中。

(*゚ー゚)「・・・暑い・・・」
(*゚∀゚)「・・・痩せそう・・・」
しぃとつー、共にアフリカ喜望峰からスタート。
現在ラクダで北上中。


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:53:35.16 ID:G/v0RorB0

( ^ω^)「さて、よく寝たお」
( ,' 3 )「内藤君、ロシアから南方の雪山を越えていくツアーがあるよ。私はそこで商売してこようと思うんだが途中まで一緒にどうだい」
( ^ω^)「お、本当ですかお?それじゃお供させてほしいお」

そして内藤は荒巻と一時合流。
ロシア南方の山脈を越えることになる。
内藤は荒巻の所有しているバスに乗せてもらうことになった。
バスにはほかにもたくさんのプレイヤーが乗り込み、満員になる。彼らは全員、荒巻のたてた山越えツアーの参加者たちだ。

( ,' 3 )「これで全員、と。それでは出発しますよ」
( ^ω^)「参加費3万円・・・この人普通に商売人になれば良いんじゃないのかお?」

各国のプレイヤーでにぎわうバスに揺られ、内藤はロシア南方の雪山に到着した。
参加者相手に登山具を売りつける荒巻から必要な道具一式を購入し、内藤は雪山に挑む。

( ,' 3 )「生徒割引で一式7万。気をつけていくんだよ」
( ^ω^)「どうもですお。先生も頑張って商売してくださいお」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:55:05.24 ID:G/v0RorB0

ニュー速市では見られないような綺麗な粉雪と、見渡す限りの針葉樹。
登山路も埋もれかけた雪山を、30人ほどのプレイヤーが黙々と登っている。

( ^ω^)「こぉぉなぁぁぁゆきぃぃ!・・・ねぇ、せめて吹雪とめてくれないかお?」

雪で歩きづらい上に、登るにつれて少しずつ天気がわるくなってくる。
最初よわかった風もじょじょに強くなり、いまや吹雪を巻き起こしていた。
吹雪のせいで視界が確保できない。
すぐ前にいるはずのプレイヤーすら見えないような吹雪の中で、内藤は登山路に残った足跡だけを頼りにひたすら歩いた。
したを向いて歩いていくうちに吹雪はさらに強くなり、足跡もだんだん確認し辛くなってくる。
やがて内藤は足跡が二手に分かれている場所にたどり着いた。

( ^ω^)「・・・ん?分かれ道・・・どっち行けば良いんだお?」

足跡の濃いほうと、足跡の薄いほう。
どちらに行けば良いのかわからないが、内藤は足跡が濃いほうを選んだ。
足跡の濃いほうの道を進んでいくと、小さな洞窟が見えてくる。
扉のついたその洞窟の前で、二人のプレイヤーが話し込んでいた。

男「ふぅ・・・なんだ、この洞窟、扉がついてるぞ」
男「ああ、この鍵で開くらしい。開けるぞ」

プレイヤーの片割れが鍵を差し込むと、重苦しい音をたって扉が開いていく。
扉が開ききるとアナウンスが流れた。

“この中にはいれるのは一人だけです。誰がはいるか決めてください”


52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/16(日) 23:57:27.57 ID:G/v0RorB0

( ^ω^) (一人だけ?引き返さないといけないのかお・・・だりぃお・・・)

一人しか入れないなら鍵をもっていた男が行くべきだろう。
そう思い内藤が引き返そうとすると、男たちが口論を始めた。

男「なんだって?一人しか入れないなんて聞いてないぞ!」
男「てめぇだましやがったな!一人だけ行くつもりだったんだろう!」
男「ち、違う!俺はてっきり・・・」
男「だーうるせぇ!どけ、俺が行く!」

やがて口論は殴り合いの喧嘩になり、男たちは雪の上で転がりながら揉み合う。
周りに注意をはらわずに争う男たちを見て、内藤によからぬ考えが芽生えた。

( ^ω^) (・・・こっそり入っちゃおうかお)

男たちに気付かれないようにこっそりと洞窟に近づく。
内藤に気付かずに争いを続ける男たちを尻目に、内藤は洞窟にはいった。
洞窟の扉が閉まる音でようやく内藤に気がついた男たちは争いをやめ、呆然と閉まっていく扉を眺めている。

男「ちょ、おま・・・」
男「漁夫の利ktkr・・・うぇうぇ・・・」


53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:01:40.26 ID:rJzYmFlF0

( ^ω^)「争いは何も生まないという良い勉強になったお」

扉の外から聞こえる罵声を無視し、内藤は洞窟を進んでいった。
洞窟は人工のトンネルのようで、案内板が設置されている。
電灯が完備されたトンネル内には休憩用と思われる空間などもあり、鍵をもっていたと思われるプレイヤーの捨てていったゴミが散乱していた。
洞窟内の案内板に従い進んでいくと、やがて出口が見えてくる。
だがなぜか、数人のプレイヤーが出口の前に集まっている。

( ^ω^)「なにしてるんだお?・・・ってこれは・・・」

そこは、断崖絶壁だった。
なぜか眼下には大きな運河が流れていて、豪華客船がその運河を通っている。
内藤は出口に群がっているプレイヤーの一人に声をかけた。

( ^ω^)「あのー・・・これどうやって降りるんだお?」
( ゜∀゜)「さぁ・・・落ちてみる?うん、いっそ飛んでみれば良いと思うよ」
(;^ω^)「いやそれはwww」
( ゜∀゜)「いやいやwwwまぁまぁまぁwwwww」
(;^ω^)「ちょ、押すなお!あっー!!」

内藤はどこかのプレイヤーに押し出され、50メートルはありそうな崖から落ちていった。


54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:02:09.36 ID:rJzYmFlF0

(;^ω^)「ひぃぃぃ!」

猛烈な勢いで落下していく。
いくら下が水だからといって、こんな高さから落ちたら死んでしまうだろう。
落ちながら何とか手持ちの道具を出していくが、登山具と食料くらいしか持ち物はない。

(;^ω^)「何か空を飛べる道具とかないかお!?レッドブルとか!」

このままでは高速で水面に激突し、ひしゃげたカエルのようになってしまう。
それどころか下手をしたら優雅に航行している豪華客船に落下し、それはもう偉いことになるかもしれない。
それならいっそ水面にぶつかったほうがマシだろうか。

(;^ω^)「ん?水面?・・・水?水かお?なら・・・」

内藤は懐に手を入れた。
水が相手なら、内藤の懐には心強い味方がいる。
内藤はあらん限りの声を振り絞り叫んだ。

(;^ω^)「リヴァイアたーんっ!!」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:03:51.42 ID:rJzYmFlF0

ξ゚听)ξ「雪化粧の断崖絶壁に、対岸は緑豊かな大自然・・・現実にはない光景よね〜」

ツンは世界一周の豪華客船の甲板にあるカフェテラスで優雅にティータイムを楽しんでいた。
参加費100万のツアーには20億円目当てのプレイヤーは一人もいない。
だからこそ100万という初期資金全てをつぎ込むツアーを楽しめるというものだ。
その優雅な時間も、もうすぐ終わろうとしている。

「リヴァイアたーんっ!!」
ξ゚听)ξ「・・・今なにか聞こえたような・・・」

豪華客船のすぐそばで唐突に水柱が上がり、飛沫が雨となって降り注ぐ。
その飛沫雨のおかげで出来た虹を見上げると、ツンのよく知っている人物が浮かんでいた。
スクール水着の少女にだきついたその人物はゆっくりと豪華客船に降り立つと、力なく座り込む。

(;^ω^)「はぁ・・・死ぬかと思ったお」
リヴァイアたん「ご利益てきめん!あと一回だから大事に使うよーに」
( ^ω^)「わかったお。ありがとうだおリヴァイアたん!」

ξ゚听)ξ「・・・なにやってんのあんた」


56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:06:13.22 ID:rJzYmFlF0

ツンは突然降って来た内藤をとりあえずカフェに連れて行き、今までの話を聞いた。
内藤は話の途中で何度もツンに同行を申し出たが、あっさり断られる。

ξ゚听)ξ「・・・嫌だ。もうやめてよね、なんでアンタが降ってくんのよ、お呼びじゃないのよ・・・」
( ^ω^)「ちょ、それはないおツン。一緒にチベット行こうお」
ξ゚听)ξ「だから・・・私は別にお金もいらないし、ゲームで優勝する気もないの!たまにはゆーっくり優雅に旅行をね・・・だいたいチベットってほかに何があるのよ」
( ^ω^)「・・・実はチベットにはこの世界でしか食べられないっていう究極の料理があるんだお」
ξ゚听)ξ「!?・・・へぇ、それで?」
( ^ω^)「美しい花が咲き誇るそこはまさに桃源郷。さらに人懐っこい小動物がおもてなししてくれるんだお」
ξ゚听)ξ「ふ、ふぅん?そ、それがどうしたの?」
( ^ω^)「いや別に。そっかお、残念だおー。まぁ僕だけでもがんばってたどり着くお。ツンは旅行を楽しんでくれお」
ξ゚听)ξ「あ、ちょっと・・・」

豪華客船は突然の来訪者である内藤を降ろすため、途中の停留所で内藤を降ろすことになった。
船を下りようとする内藤の登山服。その裾を、ツンが握っている。

( ^ω^)「ん?なんだお、ツン?www」
ξ゚听)ξ「・・・あんた一人じゃ寂しいだろうから、ついていってあげてもいいわよ。仕方なくよ?別に小動物とかに釣られてないからね?」

こうして偶然にもツンと合流した内藤は、崑崙山脈のふもとにある村に向かった。


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:06:37.40 ID:rJzYmFlF0

ξ゚听)ξ「それで・・・チベットにいくには崑崙山脈を越えないといけないけど?」
( ^ω^)「うーん・・・崑崙さえ越せばチベットだから盛大に・・・」

内藤とツンは村の食堂で地図を広げていた。
なんだかんだでここまでたどり着いたプレイヤーは少ないらしく、今までの村と違いプレイヤーの数も少ない。
ロシアの山越えに挑んだプレイヤー達はまだ山を越えていないのか、一人も村にたどり着いていなかった。
そうなると崖から落とされたのも幸運だったようだ。
だがしかし、その幸運は続かなかった。
崑崙山脈は踏破できない。岩肌をむき出しにした山々は人が歩いて登れるほど優しくはない。

ξ゚听)ξ「じゃダメじゃない。私かえっていい?」
( ^ω^)「いやいや、なんとかしてヘリか飛行機を買えれば・・・」

この村には滑走路がある。
おそらく崑崙を超えるために、近くのこの村に用意されているのだろう。

( ^ω^)「滑走路があるなら、飛行機を安く売ってる可能性もあるお」

 

 

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