モニターから漏れ出る僅かな照明が部屋を照らしていた。
映像機器やケーブルが散乱する殺風景な部屋。
壁にいくつも連なったモニターの一つに、ドクオとツンの顔が浮かび上がる。
「……」
画面をじっと眺めている白衣の男。
「……思ったよりも多いな」
後ろから、高そうなスーツに身を包んだ男が話しかけた。
「そうだね。まだまだ頑張ってもらわないと困るよ」
「一番人気は……兄者か」
「まぁ妥当だろう。関係者だし」
「クック、そうだな……」
「……」
「さて、そろそろ向こうにも顔出さないと」
「ああ」
そう言ってスーツの男は踵を返した。
「君は……兄者が出ていて何も思わないのかい?」
「……」
「答えろよ……弟者」
ドアを開けたところで男が足を止め、白衣の男に振り返る。
部屋の外から漏れ出る光が、スーツの男の顔を照らした。
(´<_` )「……ハラハラするね。まるで好きなチームの試合観戦をしているようだ」
(´<_` )「……とても興奮するよ」
「……」
(´<_` )「それでは失礼する」
ドアが閉められ、靴の音が遠ざかっていく。
「……ふふ」
白衣の男は、何もかも順調とでもいうように笑みを浮かべた。
その頃ブーンは……。
(;^ω^)「篭城作戦するにも、遮るモノがないお……」
まだ最初のフロアにいた。
( ^ω^)「思ったよりあのミミズ動きが遅いお」
( ^ω^)「でもこのままじゃ……お?」
自分が最初に目覚めた部屋。
何をするとはなしに、なんとなく部屋を探索していたブーン。
( ^ω^)「これは……?」
ドアの右上に「A」と書かれた記号を見つけた。
( ^ω^)「……?」
その記号に思案を巡らせている間に、廊下から人の足音が聞こえてきた。
( ^ω^)「あれは……人の足音だお!! ブーンの他にも生き残りがいたんだお!!」
勢い良くドアを開け、廊下に出るブーン。
左を見て、右に振り返ろうとした瞬間。
(lli゚ω゚)「な……なんだおお前……」
自分の考えが間違いだったことに気づいた。
( ´_ゝ`)「ちっ、武器もなんも残ってないのか」
あらかたB地区を探索し終えた兄者。
ミミズの返り血で染まったスーツを脱ぎ捨てる。
( ´_ゝ`)「そろそろまずいかな……」
シャツの袖をめくり上げ、また足早に部屋を出る。
右手には、兄者が簡易的な武器として使っているミミズの牙。
左手には、ミミズの胃袋から取り出した消化されかかっている人間の頭。
( ´_ゝ`)「時間的にそろそろヒトガタを放つ頃だ」
長い廊下の突き当たり。
ドクオ達が通ったモノと同じようなドアを、怒りに燃える兄者が通過した。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……」
ドクオは未だジョルジュの死を嘆いていた。
鉄パイプを握る手に力がこもる。
そしてジョルジュを見殺しにして助かろうとした、自分の汚さに憤りを感じていた。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……行きましょう」
('A`)「ツン……?」
ξ゚听)ξ「こんなトコでいつまでも座ってらんないわ」
('A`)「そうだけど……ジョルジュさんが……」
ξ゚听)ξ「情けないわね!! しっかりしてよ!!」
ξ゚听)ξ「ジョルジュさんはまだ死んだと決まったわけじゃないでしょ!!」
('A`)「……!!」
ξ゚听)ξ「しっかりしてよ……!! 頼れるのは……ドクオだけなんだから……!!」
('A`)「ツン……」
唇を噛み締め、ドクオを見据えるツン。
いままで気丈に振舞ってきたツンの本音が見えた気がした。
('A`)「……よし、行こう!!」
ξ゚听)ξ「ええ……またジョルジュさんにもきっと会えるわ」
ξ゚听)ξ「今は前に進まないと……!!」
思いを新たに、ドクオとツンが立ち上がった。
('A`)「廊下には戻れないよな」
ξ゚听)ξ「ホラ、向こうにドアがある」
('A`)「とりあえず行ってみよう」
この部屋にはもう収穫がなさそうだ。
武器はドクオが持つ鉄パイプだけ。
ツンを後ろに庇い、ゆっくりとドアを開ける。
('A`)「……梯子……?」
ドアの向こうは一畳ほどの狭い空間だった。
壁に梯子がかかっている。
上を見上げると、天井が空いており、梯子が天井裏までつながっているようだ。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「助かったわ。行き止まりだったらどうしようかと思っちゃった」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「さ、行きましょう」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「ドクオ?」
('A`)「……これきっと天井裏につながってるんだよね」
ξ゚听)ξ「? まぁそうでしょうね」
('A`)「……天井裏って、狭いよね」
ξ゚听)ξ「???」
('A`)「俺、狭いトコ苦手なんだよね……」
ξ;゚听)ξ「……」
ツンが呆れたような顔でドクオを見やる。
そしておもむろに右手を差し出した。
ξ゚听)ξ「鉄パイプ。頂戴」
('A`)「え?」
ξ゚听)ξ「あたしが見てきてあげるから」
('A`)「え!? いやいや!! 一人で行かせらんないよ!!」
ξ゚听)ξ「怖いんでしょ? はぁ……今更何を言ってるんだか……」
('A`)「ぐ……」
('A`)「わかった!! 行きます!! 行けばいいんでしょ!!」
ξ゚听)ξ「っていうか行くしかないのよ馬鹿」
('A`)「ぐぐ……」
ドクオはしぶしぶと梯子に手をかけた。
震える足を必死に押さえる。
さっき垣間見たツンの女の子らしさが、ガラガラと音を立てて崩れていくように思えた。
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