155 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 19:48:26.78 ID:n2ds+5v10

モニターから漏れ出る僅かな照明が部屋を照らしていた。
映像機器やケーブルが散乱する殺風景な部屋。
壁にいくつも連なったモニターの一つに、ドクオとツンの顔が浮かび上がる。


「……」

画面をじっと眺めている白衣の男。


「……思ったよりも多いな」

後ろから、高そうなスーツに身を包んだ男が話しかけた。


「そうだね。まだまだ頑張ってもらわないと困るよ」

「一番人気は……兄者か」

「まぁ妥当だろう。関係者だし」

「クック、そうだな……」

「……」

 

156 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 19:49:06.40 ID:n2ds+5v10

「さて、そろそろ向こうにも顔出さないと」

「ああ」

そう言ってスーツの男は踵を返した。

「君は……兄者が出ていて何も思わないのかい?」

「……」

「答えろよ……弟者」
 
157 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 19:49:46.08 ID:n2ds+5v10

ドアを開けたところで男が足を止め、白衣の男に振り返る。
部屋の外から漏れ出る光が、スーツの男の顔を照らした。

(´<_` )「……ハラハラするね。まるで好きなチームの試合観戦をしているようだ」

(´<_` )「……とても興奮するよ」

「……」


(´<_` )「それでは失礼する」

ドアが閉められ、靴の音が遠ざかっていく。


「……ふふ」

白衣の男は、何もかも順調とでもいうように笑みを浮かべた。

 

159 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:03:16.59 ID:n2ds+5v10

その頃ブーンは……。

(;^ω^)「篭城作戦するにも、遮るモノがないお……」

まだ最初のフロアにいた。

( ^ω^)「思ったよりあのミミズ動きが遅いお」

( ^ω^)「でもこのままじゃ……お?」

 

160 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:05:52.17 ID:n2ds+5v10

自分が最初に目覚めた部屋。
何をするとはなしに、なんとなく部屋を探索していたブーン。

( ^ω^)「これは……?」

ドアの右上に「A」と書かれた記号を見つけた。

( ^ω^)「……?」

その記号に思案を巡らせている間に、廊下から人の足音が聞こえてきた。
 
162 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:15:33.90 ID:n2ds+5v10

( ^ω^)「あれは……人の足音だお!! ブーンの他にも生き残りがいたんだお!!」

勢い良くドアを開け、廊下に出るブーン。
左を見て、右に振り返ろうとした瞬間。

(lli゚ω゚)「な……なんだおお前……」

自分の考えが間違いだったことに気づいた。

 

167 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:33:34.24 ID:n2ds+5v10

( ´_ゝ`)「ちっ、武器もなんも残ってないのか」

あらかたB地区を探索し終えた兄者。
ミミズの返り血で染まったスーツを脱ぎ捨てる。

( ´_ゝ`)「そろそろまずいかな……」

シャツの袖をめくり上げ、また足早に部屋を出る。
右手には、兄者が簡易的な武器として使っているミミズの牙。
左手には、ミミズの胃袋から取り出した消化されかかっている人間の頭。

( ´_ゝ`)「時間的にそろそろヒトガタを放つ頃だ」

長い廊下の突き当たり。
ドクオ達が通ったモノと同じようなドアを、怒りに燃える兄者が通過した。

 

172 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:48:06.42 ID:n2ds+5v10

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「……」

ドクオは未だジョルジュの死を嘆いていた。
鉄パイプを握る手に力がこもる。
そしてジョルジュを見殺しにして助かろうとした、自分の汚さに憤りを感じていた。

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「……行きましょう」

('A`)「ツン……?」
 
173 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:48:22.41 ID:n2ds+5v10

ξ゚听)ξ「こんなトコでいつまでも座ってらんないわ」

('A`)「そうだけど……ジョルジュさんが……」

ξ゚听)ξ「情けないわね!! しっかりしてよ!!」

ξ゚听)ξ「ジョルジュさんはまだ死んだと決まったわけじゃないでしょ!!」

('A`)「……!!」
 
174 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:48:51.06 ID:n2ds+5v10

ξ゚听)ξ「しっかりしてよ……!! 頼れるのは……ドクオだけなんだから……!!」

('A`)「ツン……」

唇を噛み締め、ドクオを見据えるツン。
いままで気丈に振舞ってきたツンの本音が見えた気がした。

('A`)「……よし、行こう!!」

ξ゚听)ξ「ええ……またジョルジュさんにもきっと会えるわ」

ξ゚听)ξ「今は前に進まないと……!!」

思いを新たに、ドクオとツンが立ち上がった。
 
175 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:49:19.00 ID:n2ds+5v10

('A`)「廊下には戻れないよな」

ξ゚听)ξ「ホラ、向こうにドアがある」

('A`)「とりあえず行ってみよう」

この部屋にはもう収穫がなさそうだ。
武器はドクオが持つ鉄パイプだけ。
ツンを後ろに庇い、ゆっくりとドアを開ける。
 
179 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:57:01.84 ID:n2ds+5v10

('A`)「……梯子……?」

ドアの向こうは一畳ほどの狭い空間だった。
壁に梯子がかかっている。
上を見上げると、天井が空いており、梯子が天井裏までつながっているようだ。

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「助かったわ。行き止まりだったらどうしようかと思っちゃった」

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「さ、行きましょう」

('A`)「……」

ξ゚听)ξ「ドクオ?」

 

180 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:57:21.55 ID:n2ds+5v10

('A`)「……これきっと天井裏につながってるんだよね」

ξ゚听)ξ「? まぁそうでしょうね」

('A`)「……天井裏って、狭いよね」

ξ゚听)ξ「???」

('A`)「俺、狭いトコ苦手なんだよね……」

ξ;゚听)ξ「……」

 

181 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 20:57:51.69 ID:n2ds+5v10

ツンが呆れたような顔でドクオを見やる。
そしておもむろに右手を差し出した。

ξ゚听)ξ「鉄パイプ。頂戴」

('A`)「え?」

ξ゚听)ξ「あたしが見てきてあげるから」

('A`)「え!? いやいや!! 一人で行かせらんないよ!!」

ξ゚听)ξ「怖いんでしょ? はぁ……今更何を言ってるんだか……」

('A`)「ぐ……」
 
182 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/04(金) 21:00:55.18 ID:n2ds+5v10

('A`)「わかった!! 行きます!! 行けばいいんでしょ!!」

ξ゚听)ξ「っていうか行くしかないのよ馬鹿」

('A`)「ぐぐ……」

ドクオはしぶしぶと梯子に手をかけた。
震える足を必死に押さえる。
さっき垣間見たツンの女の子らしさが、ガラガラと音を立てて崩れていくように思えた。
 

 

back < >

inserted by FC2 system