197 名前: 不老長寿(千葉県)[]
投稿日:2007/03/16(金) 15:25:13.43 ID:I3vvGPhI0
- 第10章「わたしたちの、しあわせ。」
ξ゚听)ξ「逃げよう、お姉ちゃん」
川 ゚ -゚) 「え?」
ξ゚听)ξ「誰もいないところにいこう。誰も知らないところ。
そこで二人で暮らそうよ」
川 ゚ -゚) 「ツン・・・」
ξ゚听)ξ「大丈夫だよ。二人ならやっていけるって。
学校だって・・・なんとかなるよ。だからいこう。ね?」
198 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:26:51.26
ID:I3vvGPhI0
- それは甘い囁きだった。彼女の手のぬくもりは蟲惑的で、
私は我を忘れて引き込まれそうになる。
しかし。
私は首を横に振った。そんなことは無理なのだ。
この世の中で、ハタチにもならない子供が二人だけで暮らそうなんて、無謀すぎる。
彼女と一緒にいたくないわけじゃあない。
むしろ、一緒にこのまま二人でどこかへ消えて、死んでもいいとさえ思う。
誰にも邪魔のされない世界へいけるなら、それも選択肢の一つに加えられるかもしれない。
でも私たちには、私たちがどこかへ消えてしまったら悲しむ人たちが大勢いるのだ。
お父さんやお母さん、ツンのおじさん、たくさんの友達。
昔の私なら、私のために泣いてくれる人なんていないだろうと思っていたはずだ。
今は、今は違う。自分が誰かを愛したことで、わかったことがある。
誰か一人でも自分のために泣いてくれる人がいるのなら、その人のために生きなくてはいけないのだ。
その人の悲しむことをしてはいけないのだ。
199 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:27:31.53
ID:I3vvGPhI0
- 物理的な距離なんて、どうにでもなる。
私たちは心がつながっているんだから。
永遠のお別れじゃあないんだから。
いつかまた、逢えるんだから。
200 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:28:30.45
ID:I3vvGPhI0
- 私はツンを見据えた。じっと彼女の瞳を見つめて、微笑んだ。
川 ゚ -゚) 「ツン、おじさんのところへ帰りなさい。私たちはこんなに近くに
住んでるんだぞ。逢いたいと思えばいつでも逢えるんだ。
世の中にいる遠距離のカップルなんか見てみたらいい。
300〜400kmなんかザラだよ。私たちはせいぜい4〜5km。
電車で5分だ。
だから・・・早く帰りなさい。逃げたくなっちゃうだろう?」
ξ゚听)ξ「お姉ちゃん・・・」
201 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:31:33.69
ID:I3vvGPhI0
- 川 ゚ -゚) 「いくんだ、ツン。誰かを悲しませちゃいけないよ。
おじさんは君の事を愛している。キミだってきっと、おじさんのことを
愛しているはずだ。
そういう人たちを裏切っちゃいけない。私たちはこうして想いを伝え合って、
相手の想いが確かなのを知ってる。
おじさんたちはキミが愛していることを知らないんだ。きっとキミは
言ってないだろうからね。
私だって普段お父さんやお母さんに愛しているなんて言わないが・・・
私たちは揺るがないはずだよ。だから我慢するのは私たちの役目なんだ・・・
ああ、しゃべり過ぎだな、最近。今まであんまりしゃべってなかった反動がきてるみたいだ」
ξ゚听)ξ「お姉ちゃんがそういうなら、私は従う。
おじさんたちのことをは愛してるけど、一番はお姉ちゃんだからね」
川 ゚ -゚) 「ありがとう。私も一番はツンだよ」
202 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:32:13.07
ID:I3vvGPhI0
- 安心したようにツンは笑った。
それじゃあと、彼女はちいさく手を挙げた。
彼女が私に背を向けてだんだん遠ざかっていく姿を、私は直視できなかった。
人が去っていく後姿を見るのは好きじゃないんだ。
また逢えるよね、ツン。
絶対に。
203 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:32:54.26
ID:I3vvGPhI0
- 私たちはその後、逢うことはなかった。
私の受験が本格的になってきたことが理由だ。
正確に言えば、逢う暇がなかった。
一分一秒でも逢えたらと思ったが、どうにもそうはいかなかった。
204 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:33:58.06
ID:I3vvGPhI0
- 思えばこの約一年間、いろいろなことがあった。
初めての出来事があまりに多すぎて、私の脳みそはオーバーヒートしないだろうかと
不安に思ったくらいだ。
実際は意外に頑丈にできていて、自分の意思でオーバーヒートさせることが
多かったように思う。
彼女に出会ったことが、私の何より大きいことだった。
彼女と一緒に感じる何もかもは、輝いていた。
205 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:35:08.07
ID:I3vvGPhI0
- たとえば、春先の、まだ冷たい空気の中に混じるやわらかな花の匂いとか。
たとえば、夏のあの小高い丘から見たどこまでも青い空とか。
たとえば、秋の日の夕暮れに散る葉っぱとか。
たとえば、冬のキンと冷えた空気とか。
雨の後のアスファルトの匂いとか
柔らかな木漏れ日とか。
川のせせらぎとか。
強い風の音とか。
206 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:36:09.35
ID:I3vvGPhI0
ξ゚听)ξ「今年から高校一年生になるツンといいます。よろしくお願いします」
川;゚ -゚) 「は、はぁ、よろしく」
207 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:37:12.49
ID:I3vvGPhI0
川 ゚ -゚) 「それでもいいんだ。姉だって思ってもらわなくても、
私はそんなことどうだっていいんだ。
ただ私は純粋に、キミとお友達になりたい。
もっとツンちゃんのことを知りたいと思ってる。
そりゃあ、お姉ちゃんって呼んでもらいたいけど、まだ今は難しいだろう」
208 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:38:13.70
ID:I3vvGPhI0
ξ;凵G)ξ「だから私は今、クーさんのこと、好きになりそうなんです。
お姉さんだって、思えそうなんです。
でも、でも、心臓が、心臓がばくばく動いて止まらないの。
体が引きちぎれそうなの。どうしたらいいのか、わからない」
209 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:39:14.92
ID:I3vvGPhI0
川 ゚ -゚) 「ツンちゃんは悪くないんだ。全部私が悪い。
だから今は・・・放っておいてくれないか。
まだ自分の気持ちに整理がつかないっていうのも、ある」
ξ゚听)ξ「でも、私たちは・・・」
川 ゚ -゚) 「いいから、もうほっといてくれ!!」
210 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:39:37.61
ID:I3vvGPhI0
ξ゚听)ξ「私、おじさんのところへ戻ろうと思うんです」
211 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:40:08.95
ID:I3vvGPhI0
ξ゚听)ξ「お姉ちゃん!!」
212 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:41:27.32
ID:I3vvGPhI0
- 最後の入試を終えて自宅に向かう電車の中で、私は思わず涙をこぼしていた。
もう全部終わったのにいつもの癖で単語帳に目を落としていた私は、
涙の雫がページに染みを作ったときにはじめて知った。
おかしいな。
私から我慢しようって言ったはずなのに。
泣き虫になったなぁ。クーは涙を見せない強い女の子のはずなのに。
その後、入試が終わった後も逢うことはなかった。卒業して私が大学へいくことになっても、逢うことはなかった。
そんなときだ。ツンから電話があったのは・・・
213 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:42:30.81
ID:I3vvGPhI0
- 〜2年後〜
私は大学の近くで一人暮らしをしていた。
私自身が自立したいと思ったから、両親を説得して家を出た。
大学生活は至って順調で、悪い男にだまされることも、コンパで飲まされて記憶を失うこともなかった。
大学では新しい友達もできて、充実した日々を過ごしている。
もう今年で大学3年生だ。そろそろ就職活動も始まる。
なんとかなるさと、いつもの調子で構えている私だった。
ピンポンと、チャイムがなり、私は誰か確認もせずにドアを開けた。
危険じゃないかって?そんなことはないさ。
だって、誰が来るのか私は知ってるんだから。
その誰かさんは、私と違って時間にルーズだったりはしないのだ。
ドアの向こうには、何年かぶりの再会が待っていた。
215 名前: 不老長寿(千葉県)[]
投稿日:2007/03/16(金) 15:43:12.24 ID:I3vvGPhI0
- ξ゚听)ξ「お姉ちゃん、お久しぶり」
川 ゚ -゚) 「ああ、久しぶり。ちょっと、髪の毛伸びたんじゃないのか?」
ξ゚听)ξ「今は伸ばしてるの。ていうか、お姉ちゃんが私の髪の毛見たのいつの話?」
川 ゚ ー゚) 「はは、そうだったな」
216 名前: 不老長寿(千葉県)[]
投稿日:2007/03/16(金) 15:43:50.96 ID:I3vvGPhI0
- 久しぶりにみる彼女はずいぶんと大人びていて、私はドキッとしてしまった。
うちの大学には一人身の男が多い・・・彼女が犠牲になってしまわないか心配である。
ξ゚听)ξ「そういえばサークルの勧誘しつこかったから、怒鳴り散らして逃げてきちゃった」
彼女はバツが悪そうにぺろりと舌を出して笑った。くるっとした巻き毛が、ふわふわと揺れる。
・・・どうやら心配は要らないらしい。
217 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:44:52.71
ID:I3vvGPhI0
- 彼女は今年から、私と同じ大学に通うことになった。
私が一人暮らしをしたのは、このためというのもある。誰にも言ってなかった秘密だ。
そして彼女は、今日からここに住むことになる。
この計画を立案したのは、ツンだった。彼女は電話口でこういった。
ξ゚听)ξ「私、お姉ちゃんと一緒の大学に行く。それで、お姉ちゃんと一緒に暮らす。
多分これならおじさんも納得してくれると思うんだ」
218 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:45:53.76
ID:I3vvGPhI0
- 多分、彼女は思いついたままの勢いで言ったんだろう。
私がこれから一人暮らしを親に認めさせる説得をしなくちゃいけないのを、
まるで考えていなかったようだ。
でも私はそれを苦痛だとは思わなかった。
それにうちの両親はあっさり私の一人暮らしを認めた。ツンのほうの説得が難航したくらいだ。
( ・∀・)「いろいろやってみるのはいいんじゃないかな。
別に海外に行くわけじゃなし、いつでも会おうと思えば会えるしな」
J( 'ー`)し 「ちょっと心配だけど、子供は巣立っていくものだからね」
ありがとう、お父さん、お母さん。
219 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:47:01.96
ID:I3vvGPhI0
- ξ゚听)ξ「荷物は後でくるけど入るよね、この広さなら。
・・・意外にお姉ちゃんがいい家に住んでてびっくりした」
川 ゚ -゚) 「だって、そういう家を探したんだよ。かなりの掘り出し物だぞ、ここの家」
コンビニは徒歩五分、大学までは徒歩十分、駅までは徒歩五分。
まぁ住宅地の真ん中だからあまり娯楽はないけど、近くにファミレスなんかもある。
部屋の広さは2DKで、二人が住む分には何にも問題はいらない。
これで家賃が四万円ちょっと。信じられないとわが目を疑ったが、調べても特別な事情は出てこない。
多分、メインストリートから結構距離があるのと、ここの地価そのものが安いのだろう。
220 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:47:42.32
ID:I3vvGPhI0
- ξ゚听)ξ「狭くてもよかったんだけどな。だって、お姉ちゃんと近いほうがいいもん」
川 ゚ -゚) 「私は広いほうがいいなぁ。だって、のびのび暮らせるだろう」
ξ゚听)ξ「あ、ヒドい。私がいると窮屈なのね、お姉ちゃんは」
川 ゚ -゚) 「おいおい、そんなこといってないだろう」
ξ゚ー゚)ξ「ふふ、嘘よ」
私は窓を開けた。今日はとっても天気がいい。緩やかな風は温かく、春はもうすぐそこだ。
川 ゚ -゚) 「天気がいいから、あとでいろいろとこの辺を案内してあげよう」
ξ゚听)ξ「歩いてきた感じでは、何か有りそうには思えなかったけど・・・」
川 ゚ -゚) 「近くに川があるんだ。自転車でそこに行こう。すごくいい景色だよ」
振り向いて、私は微笑んだ。
221 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:48:11.42
ID:I3vvGPhI0
川 ゚ ー゚) 「さぁ、幸せになろうか」
222 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:52:01.06
ID:I3vvGPhI0
ξ゚ー゚)ξ川 ゚ ー)
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〜(,, ゝ (,,, ) 冊冊
,' ̄U' γ__/;;||ノ ノγヽ⌒ヽ
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i!wwl ゝ/__ヽノ  ̄ ゝ/__ヽノ ;wwvvi
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ヽ|/
ツンとクーは姉妹になったようです
〜Fin〜
226 名前: 不老長寿(千葉県)[] 投稿日:2007/03/16(金) 15:57:10.91 ID:I3vvGPhI0
- 以上です
以下いろいろ思ったこと
多分、勢いで書いた。反省はしていn(ryなので、かなりむちゃくちゃな部分があったと思います
それでもめげずに読んでくださった方々
なおかつそれを素晴らしいとおっしゃってくださった方々
こうしたほうがいいといってくれたヤツら
まとめの中の人
気分で投下するかしないか決めてるにもかかわらず、頑張って保守してくれた人たち
絵を描いてくれた人
本当にありがとうございました。最初は不安でいっぱいでしたが、なんとか書ききりました
あと、8章か9章で書く気が著しく減退したときにふとスレをみて、
「待ってるからな」の一言を言ってくれた人。あなたに支えられて物語はできました。ありがとう
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