3章「わたしたちの、おもい。」
57 名前:愛のVIP戦士[]
投稿日:2007/03/10(土) 23:06:40.92 ID:luQOV8NK0
- やはり私の悪い予感は当たった。お父さんは部屋割りのことをまったく考えていなかった
らしい。
ツンちゃんの実家にあった勉強机とタンスが届いたのだが、それを部屋に置いただけで
私の部屋はパンパンになってしまった。
寝るところだって決まってないのに一体どうするつもりだろう。無責任にもほどがある。
私はお父さんにそういって、一人プスプスと煙を上げていた。
(;・∀・) 「や、すまない!!そのときはもうとにかく早くと思ってそこまで気が回らなかった」
J( 'ー`)し「私はちゃんと考えてあると思ったのよ!!もう、しっかりして頂戴!!」
58 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:08:05.56 ID:luQOV8NK0
- お母さんはなんとなく責任を棚に上げているような気がする。
二人のやり取りに呆れつつ、私はちらりと、自分の部屋のほうを見た。
ご飯を食べてすぐ上にあがっていってしまったツンちゃんが気がかりだった。
どことなく、彼女は私たちを避けているようなフシがある。それがなぜなのか
私にはよくわからない・・・
寝床の件は、今日はベッドを彼女に貸してあげて、私は床で布団を敷いて
寝ることにしようと思った。
そのことを知らせようと、私は自分の部屋に入ろうとドアノブを握ったところで気づいた。
ああそうだ、ノックしないと。だって、年頃の女の子の部屋に入るんだものね。
私はwktkしながらドアをノックした。「ちょ、ちょっとまって!!」なんていう声が聞こえてきたら
どうしよう、ここはお姉さんとしてしっかりしなくては、とニヤニヤしながら待っていた。
どうも彼女がこの家に来てからというもの、私は妄想をすることが多くなったようだ。
いいことなのか、悪いことなのか。
ノックして少しの間をおいて、ドアの向こうから聞こえてきたのは無機質な返事だった。
59 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:09:09.03 ID:luQOV8NK0
- ξ゚听)ξ「どうぞ」
多少ガッカリしたものの、そりゃ毎度毎度ノックするたびに
何か起こってたらこっちの身が持たないと思うことにした。
川 ゚ -゚) 「失礼するよ」
部屋に入った途端、私は軽くめまいを覚えた。自分の部屋である気がしない。
私の部屋は随分と賑やかになったものだ。ひとりだったときは広くて広くて
物を散らかしても散らかしきれなかったくらいなのに。
二人分の荷物はやっぱり多くて、勉強机に座っているツンちゃんは幾分窮屈そうだった。
でも私はこの雑多な感じがとても心地いいと思った。広々とした部屋はそれはそれで
いいものだったけど、こうして密着しているのも悪くない。
そう思ってるのは私だけだろうか。
60 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:10:05.10 ID:luQOV8NK0
- ツンちゃんは机に向かってなにやら熱心に勉強をしていた。勉強が好きなのだろうか。
私はあまりお父さんにツンちゃんについての詳しいことは聞かなかった。
だって私ばかりがツンちゃんの情報を握ってしまったら不公平じゃないか。
連れてきた張本人のお父さんも、ツンちゃんのことに関してはあまりよく知らないようだけど。
諸々の事情とともにさっき考えたアイディアをツンちゃんに伝えたら、返ってきた答えは「NO」だった。
意外な答えに私は困惑してしまった。
川;゚ -゚) 「そうすると、ツンちゃんの寝るところがなくなってしまうんだが・・・」
ξ゚听)ξ「別に私は下のリビングのソファだって構いません。それにここは
クーさんの部屋、ですよね。部屋の主人が床で寝るなんて」
61 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:11:06.25 ID:luQOV8NK0
- 川 ゚ -゚) 「それはそうだが、私はキミのお姉さんだし、ちょっとは我慢できるんだぞ?」
ξ゚听)ξ「・・・お姉さんだなんて、私は思っていません」
ぎゅっと、私は心臓がつかまれたような気がした。そうか、昨日から感じていた
余所余所しさの正体はこれだったのか。
そりゃ、そうだよね。まだ会って二日だもんね。私のことそう簡単にお姉さんだなんて思ってくれないよね。
私はもう、あなたの事が可愛くてしょうがないんだけどね。
いいたいけど、言えなかった。ツンちゃんにこれ以上拒絶されたくなくて、解ったとだけいって部屋から出た。
あの雑然とした、ほんわかとした下町の商店街みたいな雰囲気の部屋は、一瞬にしてどこかの港にある
倉庫と同じくらいの冷たさになってしまった。
ただ雑多なだけの、物を置くだけの施設である倉庫・・・
62 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:12:21.13 ID:luQOV8NK0
- パタンと、静かな廊下にドアを閉める音が響き渡る。
私は壁に寄りかかって、聞こえないように小さな声でつぶやいた。
川 ゚ -゚) 「どうしよう・・・」
本人の口から聞くとはとても思っていなかった。雰囲気でなんとなく
避けられているのかな、とは感じていた。
ご飯を食べている時だってあまりこちらの顔は見ずに、ひたすらに食べ物を
口に運んでいる様子だった。
今日はお父さんとお母さんも早く家に帰ってきて、我が家は久しぶりの団欒を囲むことになった。
二人は夢中になってツンちゃんに話しかけていたけど、ツンちゃんの返事はそれはそれはつれないものだった。
「はい」「そうです」
私が観察していた限りではこの二パターンしか返事がなかったように思える。
でもひとつだけ、わかったことがある。ツンちゃんはあまり野菜が好きじゃないらしい。
サラダにはあまり手をつけなかったのを見てしまった。
それを思い出して私は少し、顔をほころばせた。普段はツンツンしてるけど、まだまだ中身は中学生なのだ。
多分、糸口はどこかにあるはずだ。これから生活していけば、きっと・・・きっと見つかるはずだ。
63 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:12:56.02 ID:luQOV8NK0
- 川 ゚ -゚) 「私が気落ちしてどうするんだ」
パンパンと、軽く手のひらで頬を叩く。辛いのはツンちゃんのはずだ。
だってご両親がいなくなってしまったんだから。
何とかしてあげないといけないって思った。
私はしぃのように「おせっかいさん」にいつの間にか変身を遂げていた。
64 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:14:08.84 ID:luQOV8NK0
- ( ・∀・) 「ツンちゃんの様子はどうだい?」
一階に降りてダイニングに入ると、お父さんとお母さんが真剣な顔をして私を見た。
二人が向かい合ってダイニングのテーブルに座っているということは今まできっと
ツンちゃんのことについて話し合っていたのだろう。
私の言葉を待つ二人の顔色はお世辞にもいいとは言えなかった。不安と心配の色が
ありありと見て取れた。
川 ゚ -゚) 「私がベッド貸してあげるっていったら、断られた。ここのソファで寝るって」
残念ながら二人の期待に沿った答えをいうことは出来なかった。
私の答えを聞いて、両親ともにがっくりと肩を落としていた。
どうもうちの人たちはせっかちなようで、まだ会って二日の人に心を完全に開いてもらおう
と思っているらしい。
さすがにそれはムリだろう。私も人のことを言えた義理じゃないけど。
65 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:16:28.25 ID:luQOV8NK0
- ( ・∀・) 「もしかしたら、ツンちゃんを連れてきたのは失敗だったかもしれないな」
信じられないことを言い出した。おいおいお父さん、ツンちゃんの人生を弄ぶつもりか?
私が怒る前に、お母さんがお父さんを怒鳴り散らした。
J(;ー;)し「あなた・・・なんてこというの?ツンちゃんはもう私たちの娘なのよ。
連れてきたのは失敗だなんて、よく自分の娘にそんなことが
言えるわね・・・!!あなたが決めたことでしょう?あなたがツンちゃんを
自分の娘として育てるっていうから、私は賛成したのよ。
なのに、失敗だなんて・・・どういうことよ!!」
66 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/03/10(土)
23:17:15.45 ID:luQOV8NK0
- あまりの迫力に、私たちは言葉を失った。
ツンちゃんに聞こえてなければいいが・・・一番損害を被ったのはお父さんだった。
ポロポロと涙をこぼすお母さんに対し、もうこのあとはお父さんがひたすらに
謝ることで何とかなだめることが出来た。
(;・∀・) 「悪かったよ。もう金輪際こんなことはいわない。約束する。
ツンちゃんを連れてきたのは俺だからね。頑張らないといけないな」
川 ゚ -゚) 「そうだぞ、お父さん。ツンちゃんは大変な時期なんだから、「家族」である私たちが
支えてあげないといけないんじゃないか?」
J( 'ー`)し「次もしバカなこといったら、お父さんのこと追い出すからね」
自分で言って恥ずかしいが、家族という言葉は何かずしっと重いものを感じた。
頑張ろう頑張ろうといっても、一抹の不安はついて回る。
私たちは本物の「家族」になれるのだろうか?答えはまだ出ない。
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