41 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:26:32.87 ID:kaQLNSwA0

第四話

朝帰りした次の日は、さすがに疲れが残っていた。
でも学校に行くと、新しく出来た友達と学校生活を楽しむことが出来た。

それからは、足早に日々が過ぎていった。
友達も増え、毎日がどんどん楽しくなっていくのが分かった。

ξ゚听)ξ「まさに毎日がエブリデイ!」

そんな毎日がとても脆いものだと知ったのは、ちょうど夏休みに入る少し前のことだった。


その日、私はおばあちゃんの家でテレビを見ながらくつろいでいた。
最近は学校から帰ると直接おばあちゃんの家に寄って、本当の家には夜寝るときにだけ帰る。

・・・プルル・・・プルル

電話が鳴っていた。

ξ゚听)ξ「おばーちゃん、電話よー」

奥の部屋から、読書をしていたおばあちゃんが出てくる。

42 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:27:14.37 ID:kaQLNSwA0

('、`*川「はいはい、ちょっと待ってくださいね」

('、`*川「・・・はい・・・はい・・・ええっ!!」

('、`*川「・・・はい、すぐに参ります・・・」

('、`*川「・・・はい・・・失礼します」

ガチャリ

どうかしたのだろうか。
話をしているおばあちゃんの顔は見たこともないほど深刻そうだった。

('、`*川「ツンちゃん、出かける用意をしてちょうだい」

('、`*川「理由は後からちゃんと話すから。とりあえず急いで」

いつになくせわしなく動きながら、私にそう言って支度を始めた。

おばあちゃんの表情にただならぬものを感じて、あわてて私も支度をする。

タクシーを拾い、おばあちゃんが行き先を告げる。

43 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:27:42.92 ID:kaQLNSwA0

('、`*川「VIP総合病院までお願いします!」

語気が強くなっているのは焦っているからだろうか。

ξ゚听)ξ「・・・それでどうしたの?」

疑問をぶつける。

('、`*川「・・・そうね。ツンちゃん、落ち着いて聞いてね」

('、`*川「さっきツンちゃんのお父さんが交通事故を起こしたらしいの」

・・・まさか。

そんなことあるわけないでしょ。

頭ではそう思っていても、なぜか口には出せなかった。

('、`*川「幸い、お父さんは無事らしいの」

なぁんだ。
お父さん大丈夫だったんだ。

少し心が軽くなった。

・・・お父さん『は』?
 

45 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:28:49.40 ID:kaQLNSwA0

('、`*川「・・・でも、相手の人が・・・・・・」

('、`*川「・・・・・・とっても危険な状態らしいの」

・・・え?

ちょっと待ってよ。
どういうこと?

お父さんが交通事故を起こして、相手が危険な状態?

なにそれ?死ぬってこと?

お父さんが人殺しになる?

訳が分からなかった。


ξ゚听)ξ「・・・嫌だ。行きたくない!」

車が少し揺れた。
いきなり大きな声を出したから、運転手が驚いたのだろう。
 

46 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:29:10.29 ID:kaQLNSwA0

('、`*川「そんなこと言わないで、ねえ」

私に言い聞かせるように言った。

ξ゚听)ξ「・・・ごめんなさい」

これ以上駄々をこねたって、おばあちゃんを困らせるだけということに気がつき黙り込んだ。

それからはお互いに言葉を発することもなく、交わすこともなく沈黙が続いた。

エンジン音だけが聞こえていた時間が20分も過ぎると、目的地に着いた。

VIP総合病院。
この辺りで一番大きな病院。
余程の重症でないと、この病院に入れられることはない。

おばあちゃんは大丈夫といっていたが、お父さんもそれなりの怪我を負っているということだろう。
もちろん、相手の人は言うに及ばず。

受付でお父さんが入院している部屋を聞き、そこに向かった。

47 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:29:41.52 ID:kaQLNSwA0

お父さんは、さすがに顔は出ていたが本当に体中包帯ぐるぐる巻きだった。

まだ意識が戻っていないようだったが、それでも無事なことにかわりはない。

良かったと思った。

病室を出ると、見たことのない男の人が立っていた。

彼はこちらに気がつくと近づいてきて、口を開いた。

( ´ー`)「どうも、VIP警察署交通課のシラネーヨです」

( ´ー`)「この度は、本当にお気の毒様です」

そう言って彼は一旦目を伏せた後、言葉を続けた。

( ´ー`)「・・・今回の事故のことですが、被害者の方はちょうどあなたと同い年くらいの女の方でした」

あなた、と言ったところで私のほうを見た。

( ´ー`)「それに、どうやら原因は運転手の飲酒によるものと見られています」

( ´ー`)「酒に酔った状態で運転をし被害者を撥ねた後、驚いてハンドルを切り信号機に激突」

( ´ー`)「そうして今に至ったと思われます」
 

48 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:30:11.68 ID:kaQLNSwA0

それから「失礼」と言うと、彼はきびすを返して帰っていこうとした。

ξ゚听)ξ「・・・」

ξ゚听)ξ「ちょっと待ってよ。・・・その子はどうなったのよ」

( ´ー`)「・・・残念ながら、先ほど亡くなられたそうです」

彼は背中を向けたまま答えた。

ξ゚听)ξ「・・・その人の家族はどこにいるの。案内して」

( ´ー`)「それは出来ません」

( ´ー`)「考えてもみてください、自分の娘を殺した人間の娘が目の前に現れる」

( ´ー`)「それもちょうど同い年くらいの。・・・耐えられますか?私なら無理です」

俯いた私に優しく諭すように言葉をかける。

49 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:30:40.40 ID:kaQLNSwA0

( ´ー`)「今、あなたが被害者のご家族の方と会うのはあまりに危険すぎる」

( ´ー`)「・・・ご家族の方にとっても、あなた自身にとっても、です」

俯いたままの私をおばあちゃんが心配そうに見ていた。

ξ)ξ「・・・名前は?・・・名前ぐらいならいいじゃない・・・」

( ´ー`)「・・・名前ぐらいなら。彼女の名前はしぃ・・・。しぃさんです」

シラネーヨは最後に「ではお大事に」と言って帰っていった。

ξ)ξ「・・・・・・」

重い沈黙。

私は黙り込んだまま。
おばあちゃんもどうしていいのか分からずに黙っている。

50 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:31:00.63 ID:kaQLNSwA0

('、`*川「・・・もう遅いし、家に帰りましょうか」

私は頷いて、おばあちゃんの後に続いた。

それからは家に着くまで二人とも何も喋らなかった。

私の頭の中は顔も見たことのない、しぃという少女に支配されていた。

 

 

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