6 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:30:22.66 ID:Zbnq7RaI0

第五話

病院から帰った日は、そのままおばあちゃんの家で眠りについた。
朝起きると体中が痛かった。
やっぱりソファーはベッドじゃない。

その日は学校に連絡して休んだ。
他人の前で普段通りに振る舞える気がしなかったから。

起きだしたソファーの上で、しぃという少女のことを考えた。

私と同年代の少女。
これから先の未来を、突然失ってしまった。
否、奪われてしまった。
・・・私のお父さんに。

暗い気持ちに支配されて、どんどん気持ちが沈んでいく。

これ以上考えていると、本当にもうどこまでも落ちていく気がした。


7 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:30:44.39 ID:Zbnq7RaI0

ξ゚听)ξ「・・・これからどうしようか」

学校は休んだので、時間は有り余っている。
ありすぎる時間が恨めしい。

ξ゚听)ξ「・・・お父さんのお見舞いに行こうかしら」

もしかしたら、しぃのことをもっと知れる機会があるかもしれない。
それにお父さんが飲酒運転なんかをした理由も。

おばあちゃんに一言声をかけて家を出た。

病院につくと、受付の看護婦さんに挨拶してお父さんの病室に向かった。

お父さんは相変わらず包帯ぐるぐる巻きでベッドに寝かされていた。


8 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:31:10.04 ID:Zbnq7RaI0

私が病室に入っていっても一言も口を利かなかった。
相当ショックを受けているのだろう。
もとからあまり口数の多いほうではなかったが、それでもここまで口を開かないのも初めてだった。

ずっと私のことを追っていた目を決心したように閉じると、それからまたゆっくりと目を開いた。

「お父さんが轢いてしまった人はどうなった?」

まだ誰からも事件の話は聞いていないらしい。


しぃのこと。


しぃが死んでしまったこと。


素直に事実を告げることは出来なかった。
本当のことを言ったとして、何か得になることがあるだろうか?
たとえ結果を先延ばしにするだけだとしても、私にはお父さんを傷つけるだけにしか思えなかった。


10 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:32:13.34 ID:Zbnq7RaI0

ξ゚听)ξ「・・・ごめんね。私もまだ知らないんだ」

「そうか・・・」

そう言うと目を伏せて続けた。

「すまない。本当にすまない」

「こんな風に迷惑をかけることしか出来ないなんて」

ξ)ξ「そんなこと言わないでよ。・・・謝ってもどうにもならないじゃない」


気まずい沈黙。

少し言い過ぎたかも・・・。

お父さんは下を向いたままだった。

 


12 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:32:51.14 ID:Zbnq7RaI0

次の日からは登校し始めた。

待っていたのは酷い現実。
お父さんが事故を起こし、結果として人が死んでしまったのは噂として広まっているようだった。
私はヒトゴロシの娘らしい。
学校の門をくぐってから何度も言われた。

教室まで行くのが辛かった。
でも教室に行けば自分の居場所がある、そう感じられた。

教室に入った時から集中する視線。
コソコソと話をする声が聞こえる。

それでも気にしなかった。
信頼できる友達がいるから。

川 ゚ -゚)「やぁ、ツン。おはよう」

( ´_ゝ`)「おお、ツンじゃないか。なんか大変らしいな」

( ´_ゝ`)「だが、俺たちは何も気にしちゃいないぜ。友達だからな」

(´<_` )「流石兄者だな。言うことがかっこいい」

マイペースだけどいいやつら。
 


13 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:33:58.35 ID:Zbnq7RaI0

ξ;;)ξ「ありがとう・・・」

私は幸せだと思う。
本当に恵まれた。

川 ゚ -゚)「なんだ泣いているのか?」

川 ゚ -゚)「気持ち悪いな。ヒトゴロシの娘のくせに」

・・・え?

クー、今なんて?

川 ゚ -゚)「ヒトゴロシの娘と言ったんだ。このクズが」

・・・何でそんなことを

( ´_ゝ`)「おまえがキモいからに決まってんだろ」

(´<_` )「正直、初めて見たときから嫌いだったんだわ」

でも、さっき友達だって・・・

( ´_ゝ`)「は?俺たちが友達だって?本気で言ってんのかよ」

(´<_` )「ヒトゴロシの娘と友達とかねーよwww」

 


14 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:34:50.61 ID:Zbnq7RaI0

一気に傷つく心。
一言一言が私を抉る。

耐えられなくなった。

気づいたときには足が動き出し、走っていた。
後ろのほうで笑い声が聞こえたがもう気にならなかった。

行くところなんか一つしかない。

おばあちゃんはやさしく迎えてくれた。
泣いている理由も聞かなかった。
ずっとそばで微笑んでくれていた。

でも、本当のことは言えなかった。
お父さんの事故のせいなんて言えるわけがなかった。
 


15 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:35:45.50 ID:Zbnq7RaI0

あれ以来、学校にはもう何日も行っていない。
このまま学校に行かず夏休みに入りそうだ。

学校に行かないとなるとなぜだか無性に罪悪感を感じる。
それでも待ち構えていることを考えると、どうしても学校へは行けなかった。

少しの時間、机に向かう。
これでは不十分かもしれない。
でも、これから学校に戻ったとき一人だけ置いてけぼりというのは嫌だった。

昼食を食べた後、病院へ向かう。
最近の生活パターン。

お父さんは相変わらず無言だった。
私もあえて話しかけることはしない。

沈黙ではあるが以前ほどの気まずさはない。

慣れ・・・だろうか。
何か違う気がする。


16 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:36:16.45 ID:Zbnq7RaI0

お互いが心を閉ざしたからか。
お父さんは心の奥に後悔の念を閉じ込め、私は少しでもお父さんを責める気持ちを閉じ込めた。

病室を出たところで呼び止められた。

( ´ー`)「ちょっと待ってください」

ξ゚听)ξ「・・・あ、この前の」

ξ゚听)ξ「何しにきたのよ」

( ´ー`)「まぁ、もう少し落ち着きましょう」

( ´ー`)「ほら、ちょうどあんなところにベンチがある」

そういって私に座るよう促した。

( ´ー`)「あ、そうだ。のど渇きませんか?」

( ´ー`)「コーヒーでいいですよね」

独り言のようにつぶやいて、自動販売機まで歩いていった。
 


17 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:36:52.54 ID:Zbnq7RaI

ξ゚听)ξ「・・・何の用なの」

( ´ー`)「用ってほどではないのですが、ちょっとお伝えしたいことがありましてね」

ξ゚听)ξ「・・・・・・」

( ´ー`)「単刀直入に言いましょう。明日しぃさんのお葬式が行われます」

( ´ー`)「それに出席していただきたい」

ξ゚听)ξ「・・・なんで」

( ´ー`)「しぃさんのご家族が望まれているからです。どうしても、あなたに会いたいと」

疑問が生まれる。
自分の娘を轢いた相手の子供に会いたい?
何を考えているのだろう。
訳が分からない。

( ´ー`)「まぁ、それだけです。お葬式が行われる場所は簡単な地図を持ってきましたので」

四つ折にされた紙片を手渡された。


18 名前: 番組の途中ですが名無しです(大阪府)[] 投稿日:2007/03/19(月) 16:37:59.77 ID:Zbnq7RaI0

( ´ー`)「・・・あ、そういえばこれ飲む暇がありませんでしたね。」

手に持った缶コーヒーを私に差し出すと、「それでは」と去っていった。

明日・・・。
あまりにも突然すぎる。

これからどうしようか。
明日のことを考えると、どうしようもない感覚に襲われた。

 

 

back < >

inserted by FC2 system