力を振り絞って突きを繰り出す。
これも読まれていたのか、サマリは跳躍してかわす。しかしビロードも床を蹴って追撃した。
ビロードの戦い方は基本的に受けである。相手の力を利用して攻撃していたので、この追撃は予想外だったようだ。
咄嗟に突き出した爪で斬撃を弾くが、それ以外の事は目に入っていなかった。レーザーはサマリの腹部に二つ目の風穴を開ける。
このまま止どめを刺そうとするビロード。
 
知らない訳ではなかった。既に何度か見ている。サマリの、スクリプト人のタフさを。
だがサマリの生命力は今までのスクリプト人程度ではなかった。
痛みによる動きの停滞はなく、速さや力も衰えない。
サマリは空中で器用に身をよじってビロードのサーベルをかわすと、足を振り上げる。その爪先は胸板を直撃し、サマリ自身は空中で一回転してから着地した。
床を踏み締めてもいないのに、その蹴りの威力はビロードの身体を天井に叩き付けた。
辛うじて受け身をとる事は出来たがダメージは深刻的だった。
 
(;><)「うぅ…ゲボッ…ゲボォ!」

 

咳込むと同時に血の塊を吐き出し、前を見る。
サマリはもう目前にまで接近していた。
その時!
 
( `ω´)「うオラァ!!!!」
「!!?」
 
ブーンが横から跳び蹴りを放ち、サマリを吹き飛ばした。
サマリは壁にぶち当たり、壁を破壊して瓦礫に埋まる。
壁が薄かったのか、出来た穴は隣りの部屋に繋っていた。
 
( `ω´)「必殺、ホライゾンキックだお…」
(><;)「……助かりました…ブーンさん…」
( `ω´)「少し休んでるといいお」
 
ブーンはサマリが埋まっている瓦礫に見つめながら呼吸を整えた。
薬の効果はあと数秒で完全にキマる。
 
( `ω´)(…妙だお。いくらドーピングしたからって、ここまでの力は出せないはず…)
 
ブーンはジリジリと瓦礫に近寄るが、一向に動きはない。
思い切って瓦礫を取り除いてみると、そこには身体があり得ない程に曲がってしまったサマリを発見出来た。その形は丁度くの字を押し潰したような形だ。
動かないが、息をしている事から、まだ生きているらしい。呆れる程の生命力だ。
 
(;`ω´)(…第一はドーピングまで特別製って事かお? KOEEEEEEEEE…)

 

ブーンがゾッとしていると、ビロードがヨロヨロと近付いて来た。
 
(><)「…まだ生きてますね。どうします?」
( `ω´)「当然、始末するお」
(><;)「ちょっ──」
 
ビロードが止めようとした時には、ブーンのレーザーサーベルはサマリの頭部に突き刺さっていた。
このような身体で何か出来るとは思えなかったが、回復したら厄介である為、その行動は正しい。
サマリもまた、「別格」である事は間違いない。生かしておけば復活する事も十分有り得るのだ。
 
(><)「………」
( `ω´)「次はジスプロを追うお。ビロードは管制室に行けお」
(;><)「待って下さい!」
( `ω´)「断るお」
(;><)(ブーンさん頑固だからなぁ…。どうしたら…)
(><)「ぶ、ブーンさんは…え〜と、ジスプロ…ですか? あいつがどこに行ったか分かるんですか?」
( `ω´)「…知らないお」
(><)(これだ!)
(><)「やみくもに探して見つかると思いますか?」
( `ω´)「…………」
(><)(よし、いい感じですよ…!)
(><)「自信はないんですね? ではみんなの後を追いましょう」
( `ω´)「………わかったお…」

 

管制室に行けば誰がどこにいるかは手に取るように分かる。
ビロードの言う事は最もだと思い、来た道を引き返そうとした。
 
(><)「…この音はなんでしょう?」
 
ビロードが耳をすませて不審そうな顔をしている。
それはブーンにも聞こえていた。
ガシャ、ガシャという音を立てて行進する音。時折キュイーン…という機械音も聞こえる。
生物が発する物ではない。
 
(;`ω´)「やばいお…」
(><)「どうしたというんです?」
(;`ω´)「スクリプトの殺戮機械だお。それにこの音…数が多いお」
(;><)「要は敵ですね? 僕達は二人です。まともに戦うのは危険ですよ」
( `ω´)「分かってるお。とりあえず逃げるお」
 
ブーンは破壊された壁を通って隣りの部屋に移動した。
 
( `ω´)「今度の敵はスクリプト人以上だお。完全に破壊しないと攻撃を止めないお。
あの機械に再起不能の文字はないお」
( `ω´)「聞いてるのかお?」
 
返事がなかったので振り返ると、そこにビロードの姿はなかった。
慌てて戻るとビロードが倒れている。
どうやら先程の戦闘でのダメージはかなり大きい物だったらしい。

 

(;`ω´)「大丈夫かお!?」
(;><)「は…はい。大丈夫です…」
 
とても大丈夫のようには見えない。ブーンは肩を貸してビロードを連れ出した。
 
(;`ω´)(ビロードは戦える状態じゃない…敵は多数…どうするお…)
 
もう殺戮機械はすぐそこまで来ている。
残された時間は少ない。
 
(;`ω´)(こういう時は…)
 
VIPで叩き込まれた生き残る為の知識を総動員する。
トラップは道具も時間もないので不可。
使えそうな物を利用する。周りに何もないのでこれも不可。
隠れてもセンサーで発見される。
脱出も負傷したビロードとでは不可能に近い。
投降する。相手は殺戮機械なので意味はない。
その他もろもろ考えたが不可だった。
唯一可能な事は、
「最期まで諦めない」
これだけだ。


 

(;`ω´)「…ビロードはここで待ってるお」
 
ビロードからレーザーガンを拝借して一人で戦う決意を固めた時、外から轟音が響いた。
雄叫びと爆発音が重なって聞こえる。
何事かと様子を見ると、そこには管制室に向かったと思われた部隊が交戦している。
 
(*`ω` *)「ここで負けたら私達は終わりと思えっぽ! 引くな! 進め!」
ξ゚听)ξ「ああ、まったく世話の焼ける! 会ったら怒ってやるんだからっ! だから生きてなさいよね!」
 
殺戮機械は兵士に向き合っている。
その内の一機が上半身…であろうか、上部を回転させてブーンを確認した。
それに合わせて他の数機も上部を回転させる。
ブーンも見た事のない型だった。これまでに戦った殺戮機械は二足歩行であり、
安定性に欠けているようにも見えたが、これは蜘蛛のような脚を4本持っている。
その代わりに武器は上部に砲台だけというシンプルな物だ。
脚を持った超小型戦車のような物だろうか。
その砲台から弾が発射された。
それはブーンが飛び出してから瞬時に起きた出来事だった。

 

(;`ω´)「おおおお!!?」 
かわせるタイミングではなかったが奇跡だろうか、ブーンは部屋に飛び込んで逃れる。 
(;`ω´)(実弾…? 旧式の兵器かお…?)
( `ω´)「それなら!」
 
攻撃が止むとブーンは身を乗りだし、レーザーを発射した。被弾した殺戮機械は破片を飛び散らせて機能を停止する。
 
( `ω´)「やっぱりバリアがないお!」
 
腕と頭だけを出して応戦に没頭する。薬がキマっているのか、射撃は精確だ。
防ぐ事が出来ず、しかもちんぽっぽの達を相手にしている殺戮機械は数をみるみる減らしていった。

 

(*`ω` *)「無事で良かったっぽ」
(><)「ちんぽっぽさん…どうして…?」
( `ω´)「そうだお。なんで来たんだお」
ξ#゚听)ξ「アンタねぇ! 助けに来たのにその言い草はないでしょ!」
 
ブーンだけで戦い抜くのは難しかった。旧式でも殺戮機械は恐るべき攻撃能力を持っているのだ。
 
(*`ω` *)「やっぱり心配だったっぽ。
…余計な事したぽっぽ?」
(><)「そんな! ちんぽっぽさん達が来てくれなかったら僕達はやられていました! ね? ブーンさん!」
( `ω´)「………」
 
ビロードの言葉が脳裏に響く。
口では強がりを言ったがとても一人では生存出来ないかったという認識はあった。
だがこうして生きているのは仲間が来たからだ。
最初はビロード、次はちんぽっぽやツン、そして兵士の人々。
彼らは危険も省みずにブーンの命を助けた。勝手な行動をとり、そのせいで死にそうになった時に彼らは来てくれた。
 
ξ#゚听)ξ「ホラ、なんか言いなさいよ!」
( ´ω`)「ぼ…僕は…」
 
自分の愚かさを嘆こうとした、その時ちんぽっぽが励ますように手を握った。
グローブを通して温もりが伝わる。

 

(*`ω` *)「そんな顔してちゃダメだっぽ。戦いはまだ終わってないぽっぽ!」
ξ゚听)ξ「そうよ、わかったらシャキッとしなさい!」( ´ω`)「………」
ξ゚听)ξ「………」
ξ;゚д゚)ξ(な、なによ…。しょぼくれちゃって…。
ちょっと落ち込みすぎじゃない…?)
「あれ? お嬢ちゃんさっきまで怒る気満々だったのに、どうしたんだい?」
 
兵士がからかうように言う。 
ξ゚-゚)ξ(そりゃあんな顔されたら怒る気も失せるわよ…)
ξ゚听)ξ「うるさいわね、もういいの!」
「お、俺にキレられてもなぁ…」
(;><)「それより時間がありません! 行きま──…あ…?」
 
ビロードが膝をついた。
 
(;*`ω`*)「ビロードちゃん!」
 
どうやらサマリとの戦いのダメージが足にきているらしい。
しかし心配する面々を前に、気丈にも立ち上がった。
 
ξ゚听)ξ「無理はしない方が…」
(;><)「大丈夫です! 僕ならまだ行けますよ!」
(*`ω` *)「……分かったっぽ。みんな行くぽっぽ!」
ξ゚-゚)ξ「でも…」
 
そこでツンは言葉を飲み込んだ。この基地内にいれば、いつ襲われてもおかしくはない。この場に残るより、共に来たほうが安全であるのは明らかだった。

 

ξ゚听)ξ「そうね。ほらブーンもしっかりしなさい!
ビロードを見習いなさいよね!」
(;´ω`)「了解しましたお」


──管制室前
( ^ω^)「ビロード…本当に大丈夫かお…?」
 
ブーンはロックの解除に奮闘しながら聞く。
ここまでの道程で戦闘は2回。最初が殺戮機械、次は相手であったが、それほど大きな被害もなく辿り着くことが出来た。
それには相手が旧式だという事もあったが、兵士達が薬を服用し、さらに目を見張る程のブーンの活躍があった。
自分にも信じられない身体能力が向上していたおかげで苦もなく進めたのだ。
 
(><)「はい。何故かは分かりませんが痛みはあまりないんです。力はうまく入れられませんが…」
( ^ω^)(ドーピングの効果が切れたら大変な事になりそうだお…)
 
VIPで使われている薬には痛みを緩和する効果もある。
しかし大きな怪我の場合、効果が切れた時に耐え難い苦痛に襲われるので一概には良い効力とは言えなかった。
ビロードをそのような状態に追い込んでしまったという罪悪感がブーンの胸を締め付ける。
ジスプロに挑発された時の興奮は完全に息を潜めていた。

 

( ^ω^)「……よし、解除したお」
ξ゚-゚)ξ「遅かったわね。遊んでるのかと思ったじゃない」
(;^ω^)「専門分野じゃないから大変なんだお…」
 
恐らくこちらの行動は筒抜け、室内のスクリプト人との交戦が予想された。
しかし突入したブーンの予想に反して敵はいない。
 
(*`ω` *)「誰もいないっぽ…」
( ^ω^)「きっと中にいたのが、さっき戦ったスクリプト人だお」
 
ブーンがコンソールを操作し、モニターには格納庫が映し出された。
 
(;^ω^);><);*`ω`*);゚听)ξ「!!!!!」
 
格納庫では激しい戦いが繰り広げられていた。
連合軍の人間と戦っているのはスクリプト人とあの忌まわしき殺戮機械。しかも敵の数が圧倒的に多い。こちらが手薄だったのはこの為だろう。
お世辞にも優勢とは言えない状況だった。
 
(;><)「どどどどどどどどうしましょう!!?」
(;^ω^)「お、落ち着けお…! ええと…こうして…」
 
ブーンは必死に指を踊らせる。
 
(;^ω^)「これで…こうなって…」
ξ;゚听)ξ「何やってんのよっ!? 早く助けに行かないと!!」

 

(;^ω^)「ちょ…待…」
(;^ω^)「ダメだお…! 僕じゃプログラムの書き替えは出来ないお!」
 
そう言って別のメニューを開き、そちらを弄り出した。
 
(;^ω^)「とりあえずこれで…」
 
ブーンはキーを叩く。
すると格納庫で殺戮を行っていた機械が停止した。
 
(*`ω` *)「何をしたっぽ?」
( ^ω^)「あの機械にスクリプト兵を襲うように命令を送ろうとしたけど無理だったお。
だからひとまず機能を停止させたんだお」
(><)「すごいです!
でも…」
 
確かに殺戮機械は停止したが、やはり戦況は不利に見えた。
2:3くらいの比率だろうか、スクリプト人の方が多い。
身体能力ではニューソク人を凌駕している敵が、数でも勝っているのだ。
相変わらず芳しくはない。
 
(;*`ω` *)「このままじゃ全滅しちゃうっぽ!」
(><)「なら早く助太刀しないと!」
 
だが、既にブーン達の兵力は100人を切っている。自分達が向かった所で如何なる助けになるかと聞かれれば、良い返事は出来そうもない。
しかしブーンに迷いはなかった。

 

( ^ω^)「急ぐお!」
 
基地全体が揺れた。
 
ξ゚听)ξ「……? ちょっと待って…」
 
退室しようとする者者をツンが呼び止めた。
 
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚-゚)ξ「これ見てよ…」
 
ツンはモニターを指差す。
格納庫の壁は破壊されて大きな穴が空き、そこから次々と人が侵入している様子が映っていた。
 
(><)「この人達まさか…」
( ^ω^)「ちょ、ちょっとアップにしてみるお!」
 
彼らの姿をズームにすると、その指には見覚えのある、鈍く輝く指輪で飾られていた───

 

川 ゚ -゚)「帝国は滅びても我らの魂は滅びぬッ! 行け!」
( ・∀・)「やられっぱなしは癪だからな! 奴等に俺達の意地を見せてやれ!!」
 
ときの声と共に帝国兵が雪崩込む。武骨な剣を手に、スクリプト人と衝突した。
 
「ナンダ コイツラ ハ!?」
「エングンダト…? キイテナイゾ」
 
予想だにしていなかった帝国兵の出現に、動揺が拡がる。
しかし恐怖を感じないのか、逃げ出す者は一人もいない。
まだ増え続ける帝国兵に向かっていった。

 

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