6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:46:27.21 ID:Yl5tVf0pO
──宇宙空間
『報告を待っていた』
「まずは例のAIシステムから報告しましょう…。あのシステムはまだ改良の余地はありますな。私を完全にはコピー出来ませんでした…。
破壊はされましたが奴等にとって私は死に、また姿を隠せる訳です」
『ほう…。VIPもそれなりにはやる、という事か。作戦はどうなった』
「それですが、残念ながら任務は失敗…恐らく惑星ニューソクはVIPの監視下に置かれるかと…」

『……! 貴様とあろう者がなんたる失策だ。貴様は毎回そうだ。
貴様の能力は認めるが遊びすぎる傾向があるようだな』
 
「…それについては弁解の余地はありませんな。
しかし御安心を。本来の目的は遂行しました…」
『そうか、よくやった。これで残りはVIPの保有する物だけ、という訳だな』
「ええ…。それと、一つ駒を手に入れました」
『……駒だと? それは信頼していい物か?』
「少なくとも次の奴等の大きな動きは分かるかと…」
『ならばいい。早急に帰還して次の作戦にあたれ』
「了解しました、総帥…」
 
戦闘機を操縦する者は通信を切る。
 
「ふん、私がいつまでもお前のような屑に従うものか。いつかはこの私が……」
 

そして機内に不気味な笑い声が響いた。
 
「内藤ホライゾン……お前の働きに期待しているぞ…。
クカカカカカカカ……」

 
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:50:16.65 ID:Yl5tVf0pO
──第六宇宙域

ブーン達が作戦領域に到達した時には、戦闘艦駆逐作戦は終局を迎えていた。 
 
(,,゚д゚)「フン、スクリプトの雑魚共が虫のように沸いてくるな」
 
ギコはスクリプト機を撃破しながら呟く。
背に数機着かれた場合も器用に攻撃をかわし、機体を反転させると上からの一撃で一機を破壊、そのまま後ろに回り込んで残りを撃墜する。
戦闘艦が相手でも冷静だった。
戦闘艦にはバリアが装備されていたが、主砲を発射する時に生じる穴に魚雷を撃ち込み、または仲間と協力して撃破する。
複数の戦闘艦にはFOXで対処した。発生したブラックホールが近くにいた戦闘艦を引きずり込む。
そして最後には惑星その物にFOXを撃ち込んで巨大なブラックホールへと変えた。
ブーン達の出番はなかったといえよう。
 
(,,゚д゚)「作戦は終了だ。全軍帰還せよ」

 
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:51:20.56 ID:Yl5tVf0pO
当然といえば当然だが、作戦の指揮はギコが執っている。
彼の指令でそれぞれの基地に帰っていく戦闘機の中で、ブーン達は賛辞を贈った。
 
『やっぱアンタはすげぇよ。俺はアンタの部下である事を誇りを思うぜ』
『数年のブランクがあるとは思えない強さですね。感服しました』
『司令ってすごい人だったんですねぇ!』
『テラツヨスwwwwwwwこれから司令には絶対服従するおwwwwwwwww』
 
(,,゚д゚)「ホライゾン」
 
口々に褒め称えていると、ギコがブーンに語りかけた。
 
(,,゚д゚)「帰還し次第オフィスに来い。理由は分かるな?」
『おっ……』
 
穏やかだが有無を言わさぬ口調だ。

 
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:52:39.58 ID:Yl5tVf0pO
──オフィス前
('∀`)「お、出て来たぞ」
 
ブーンの完全に憔悴しきっている様子を見ると、中で何があったか想像するのはたやすい。
命令に背いて惑星ニューソクに向かった事や今後の処分、そして長々と説教をされたに違いない。
 
(ヽ´ω`)「もう…寝る…お……」
('∀`)「ハハハ、何言ってんだよ。せっかく長い休みを貰えたんだ、飲みに行こうぜ」
(´・ω・`)「ほらほら、しっかり歩きなよ」
从*'ー')从「愚痴なら私が聞きますよ。ではバー行きましょ〜」
 
嫌がるブーンを引きずってバーに向かう三人であった。

 
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:53:56.89 ID:Yl5tVf0pO
2年程月日が流れた。
惑星ニューソクはVIPの監視下に置かれ、丁重に保護されていた。
ニューソクでいう三つの月に施設が建造されて日々巡回を行っている。
スクリプトとの戦闘もあったが特に今のところ問題はない。
 
ブーンは既に何度も隊長を任されるようになっていた。
ニューソクから帰還後、ブーンの身体能力は向上し、作戦中にもその力は発揮された。
空戦、白兵戦共に以前のブーンとは思えない動きをする事もしばしばで、そのおかげで昇進出来たのだ。
ただ、時折脳裏に響く不気味な声に苛まれ、時には作戦終了した途端に困憊してしまう事もあるのが悩みだった。

 
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:55:01.99 ID:Yl5tVf0pO
( ^ω^)「はぁ…ツンに会いたいお…」
('A`)「ツンって、あのかわいい娘か? チッ、俺は彼女も出来ねーってのによ…」
( ^ω^)「それはドクオが奥手すぎるんだお」
('A`)「ん…、まあその話はいい。それよりお前、HIROYUKIは知ってるよな?」
( ^ω^)「HIROYUKIってあのロボの事かお?」
 
汎用人型戦闘兵器HIROYUKI───
FOXに継ぐ期待の新兵器である。
HIROYUKIの開発はブーンが入隊する前から行われており、最近になってその全貌が明らかになってきた。能力は未知数だが、これまでの兵器とは比べ物にならないくらいの性能を持つと囁かれている。
 
( ^ω^)「それがどうしたんだお?」
('A`)「HIROYUKIのテストパイロットにお前が選ばれた」
(;^ω^)「ちょwwwwwwww唐突すぎだおwwwwwwwwwwwww
てかなんで僕…?」
('A`)「お前、自分の身体能力検査の結果知ってるか?」
 
健康以外は気にしないブーンは首を横に振る。

 
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:56:12.54 ID:Yl5tVf0pO
('A`)「なんでもお前の筋肉や骨格、それと神経や血管…まあ、全身だな。それが異常なくらい頑丈なんだってよ」
( ^ω^)「それとHIROYUKIと何の関係が…?」
('A`)「HIROYUKIのプロトタイプは身体への負担がかなりデカいんだと。
そこで長時間耐えられると思われたお前が選ばれた訳だ」
 
ブーンはそんな物に乗せるな、と思ったが口にはしなかった。
 
('A`)「まあ作戦は俺も同行するから気楽にやろうぜ」
 
そう言うとブーンの肩を叩き、ドクオは去っていった。
 
(;^ω^)(FOXといいHIROYUKIといい、いつも僕が実験するのはなんでなんだぜ?)

 
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 18:58:42.08 ID:Yl5tVf0pO
『調子はどうだ?』

( ^ω^)「スキャン感度良好、特に問題ないお」
 
ブーンが乗っている人型兵器は全長30mにも達する巨大な物だ。
ブーンの横にはもう一つ、席がある。
HIROYUKIは精神感応システムが採用されており、脳から直接電気信号を受け取って動作する。また、外部の情報も直接脳に反映される。
ただ、このシステムは搭乗者への脳への負担が非常に大きかった。
全ての情報を単独で処理しようとすれば、常人の精神は破壊されてしまう危険も伴っていた。
そこで開発されたのが 「Share The HIROYUKI System」通称STH'sである。
二人のパイロットが情報処理を分担して行い、負担を減らそうとしたのだ。
ただし、今回はテストである為にブーン一人で搭乗していた。
同行者はドクオとショボンだ。

 
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:00:53.90 ID:Yl5tVf0pO
『じゃあまず動作からだ。手足を動かしてみて』

( ^ω^)「こう…かお?」
 
ブーンは自分の手足を動かすようなイメージを浮かべる。
するとHIROYUKIの手足も動いてくれた。
 
『OK.次は移動だね。…そうだなぁ、後ろにある大きな彗星を一周してから破壊してみようか』
 
ブーンは今度も言われた通りに想像する。
瞬間、HIROYUKIはバーニアを噴射、高速で移動を開始した。
 
(;^ω^)「ちょ…ま……うげぇ……」
 
一気に加速した為、ブーンに伸し掛かる重力は大きい。
あまりの苦しさに吐きそうになると、HIROYUKIはコントロールを失って明後日の方向に吹っ飛んでいった。
そしてこれも巨大な彗星に衝突して停止した。
大きく集中力を乱すとダメらしい。
 
『オイ、なに遊んでんだ?』
(;^ω^)「おま、遊んでないお! 乗ってみるかお!?」

『あー、わかった分かった。とにかく攻撃してみてくれ。
そのぶつかった彗星でいいからよ』
 
少々苛立ちながら付きを繰り出すイメージを浮かべた。
同時にHIROYUKIの拳が彗星に突き刺さり、岩の破片となって四散した。

 
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:02:29.72 ID:Yl5tVf0pO
『うお…これもすげぇ威力だな』
『そうだね。次で最後だよ。精神感応から半手動に切り換えて、両腕を突き出してくれるかい?』
( ^ω^)「ちょっと待ってお………おk」
『よし、赤いボタンがあるだろ、それを押せ』
 
ボタンを押すとHIROYUKIの手を中心に、機体全体を覆うような半透明の膜が発生する。
これは反物質と呼ばれる物を利用しており、これを利用して攻撃も可能という物だった。
 
『これからお前に魚雷を撃ち込むぜ』
『死んでも化けて出ないでね』


 
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:03:41.42 ID:Yl5tVf0pO
ショボンは冗談めかして言うが言われた方は堪らない。
不安を抱えながら攻撃を待つブーン。
まずはドクオの魚雷だ。
着弾と同時に衝撃波が発生し、辺りを吹き飛ばす。
HIROYUKIは無傷だった。
続いてショボンの魚雷。
吹き飛ばされた物が一ヵ所に集まる。
間違いなくFOXだ。
小規模のブラックホールが発生したかと思うとHIROYUKIを引きずり始めた。
HIROYUKIはバーニアを逆噴射させて耐えている。
だがそれは数十秒の間だけであった。
展開していたバリアは吸い込まれ、HIROYUKI自体も飲み込もうとする。
 
(;^ω^)「や、やばいお! このままじゃ…!」
『ブーンッ! 実験は中止だ! 何とかして脱出するんだ!!』
(;^ω^)「そ…そんな事言ったって…!」
 
ブーンは必死に脱出しようと試みる。だがHIROYUKIは少しづづ引き寄せられている。
 
(;^ω^)「ヤバス…!」

 
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:05:04.00 ID:Yl5tVf0pO
このままでは飲み込まれて押し潰されてしまう。
そんな考えが脳裏によぎった時だった。
 
ここで終わりか……?
 
誰かの声が脳裏に響いた。
 
(;`ω´)「う…おおおおあああああああ!!!!!」
 
ブーンの心臓が激しく鼓動し、血液が全身を駆け巡った。五感が敏感になり、力が湧き上がる。
ブーンは半手動から精神感応に切替える。引きずられていたHIROYUKIはピタリと動きを止め、そして今度はブラックホールから遠ざかり始めた。
 
( `ω´)「おおおおおお──ッ!!!」
『おい……ショボ…見ろよ……』
 
焦燥に駆られていたドクオは、唖然としてショボンに問い掛ける。
声は震えていた。
 
『故障じゃないよ…すごい、すご過ぎるエネルギー反応だ…』

 
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:06:13.31 ID:Yl5tVf0pO
ショボンの声も震えている。
無理もなかった。
HIROYUKIから発せられるエネルギー反応はスクリプトの戦闘艦が主砲を発射する時の物より遥かに大きい物だったのだ。
その反応のせいで二人の機内には、味方であるに関わらず緊急退避の警報が鳴り響いた。
 
『こんな事って…』
『HIROYUKIがすげぇのか…? それともブーンのヤツが…?』
 
慄然たる思いの二人の前でHIROYUKIから不可視のエネルギーが叩き込まれる。
ブラックホールは消滅、そして重力から開放された。
その瞬間、HIROYUKIが消滅する。
実際には消滅したのではなく、超高速でHIROYUKIが急速に離れて行ったのだ。
HIROYUKIは眼前に拡がる岩を次々と破壊して遠ざかる。
数秒も経たない内にブーンは意識を失い、それに伴ってHIROYUKIも力を失った。
 
『ブーンのヤツ、あんな離れた所にいやがる…。なあ……』
『君の言いたい事は分かるよ…。この事は内密に、だろ?』
『ああ……』
 
直感であろうか。
何故かは分からないが、二人は隠さないといけない気がしていた。
それからドクオとショボは暗闇に浮かぶブーンとHIROYUKIを回収し、基地へと帰還した

 
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:08:10.54 ID:Yl5tVf0pO
基地に戻った二人は、意識は戻ったが足下がふらつくブーンを医務室に運び、それからギコに報告をした。
報告内容はあの凄まじいエネルギー反応以外はありのままに伝えた。
 
もちろん、ブーンが意識不明になった事も。
そして退室する為にドアへと向かう。
しかし、
 
(,,゚д゚)「待て。他にも報告する事があるんじゃないか? それも最も重要な事が」
 
二人はギクリと顔を強張らせ、ゆっくりとギコの方に向き直る。
口元を引き締めて突っ立っている二人に、ギコから言葉が投げられた。
 
(,,゚д゚)「報告にはお前達の作戦領域から観測された膨大なエネルギー反応がなかったが、これはどういう事だ?」
(;'A`)「それは…」
 
大きな反応であった為、第三基地でも観測出来たらしい。これでは弁解のしようがない。
 
(,,゚д゚)「あの大きさならスクリプト戦闘艦が十機…もっと出現してもおかしくはない。それも同時に主砲を発射する為にエネルギーを増幅した事になる。
しかもお前達は無事だ。戦闘艦を全て撃破したか、もしくは撤退したとしても報告しない理由がない。よってこの推論は否定される。
残るは此処にいない者…内藤ホライゾンだ」

 
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:09:57.11 ID:Yl5tVf0pO
ドクオは心の中で舌打ちをした。確かにあの反応なら基地まで届くのは当然だ。
そしてブーンが此処にいないから、少し考えればエネルギーの正体がブーンである事は誰にでも想像がつく。
隠し通す事など、始めから不可能だったのだ。
 
(;'A`);´・ω・`)「………」
(,,゚д゚)「どうした。私が間違っているなら納得のいく説明をしてもらおうか」
('A`)「…分かったよ。隠そうとして悪かった」
 
ドクオは観念して全てを話した。
 
(,,゚д゚)「ふむ…非常に興味深い話だな…。それも一人でか。
報告書を見た限りではまだHIROYUKIにそこまでの出力は出せないはずだが…」

 
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:12:51.68 ID:Yl5tVf0pO
('A`)「まだ…と言ったか?」
ドクオがすかさず口を挟む。それに対し、ギコは特に隠すつもりもないらしい。
極秘事項ではないようだ。
 
(,,゚д゚)「そうだ。知っての通りHIROYUKIは物質を対消滅させる事が出来る。対消滅で得られるエネルギー効率はほぼ100%だ。
本来なら、そのエネルギーを有効利用して出力に変換する事も可能だと聞く。
だが現時点では不可能なはずなのだ」

(´・ω・`)「報告書に誤りがある可能性はないですか? ほら、開発部門の連中っていい加減ですし…」

(,,゚д゚)「それはないだろう。如何にずぼらな性格でも、そこまでの記入ミスは考えられん。ましてや報告書には『エネルギー変換は不可』と記載されている」
 
ギコは自分に宛てられた書類をドクオに手渡した。
二人が目を通すと、自分達が受け取った物とは若干異なるが、基本的には同じ物だった。

 
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:14:39.43 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「だが不透明な点が多い。詳しい事は開発部長に聞くとしよう」
(´・ω・`)「その件は宜しくお願いします。しかし問題は…」
(,,゚д゚)「なんだ?」
('A`)「おい惚けんな、ブーンだよ。アンタの事だ、まさかブーンを被験者として扱ったりしないとは思うけどよ、開発部門の奴等が黙っちゃいないんじゃないか?」
 
これがあの時感じた直感だった。それを感じた時は、深く考える事は出来なかったが咄嗟に脳に浮かんだ事、それは不安だった。
現段階で出せるはずのない力を引き出したブーン。
その時は開発部門の怠慢で、間違った報告書を受け取ったのだ、ブーンが特別な力を持っているはずがない、と心の隅では思っていた。
しかしそれはギコの話を聞いている内に、その考えは所詮妄想だったと感じるようになっていた。
もしブーンに異能の力があるとすれば彼らはブーンを放っておく訳がない。
均衡状態だったVIPとスクリプトの戦力バランスが崩れかけている今、ブーンを被験体として、非人道的な実験が行われる可能性は十分に考えられる。
いや、喩えVIPが圧倒的に優勢であったとしても、技術的に可能な事であれば、誰かが必ずやるだろう。
研究者の持つ探究心とはそういうものだ。

 
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:15:25.15 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「その点は心配しなくていい。内藤ホライゾンの事は巧く丸め込むとしよう」
(´・ω・`)「ありがとうございます」
('A`)「いつもすまねぇな。頼むよ」
 
ギコは二人を安心させるように力強く頷く。
それを見届け、ドクオとショボンはオフィスを退室して医務室へと向かった。


 
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:17:20.72 ID:Yl5tVf0pO
('A`)「お、ドキュじゃねーか。確かお前、今日は巡回の任務じゃなかったか?」
 
医務室に入った時、最初に飛び込んで来たのは若い看護士にちょっかいを出しているドキュの姿だった。
看護士はというと、いつもの事なのか慣れた態度で軽くあしらっている。
 
q( `д。')p「ドクオ先輩じゃないスか。怪我でもしたんスか?」
('A`)「お前な…質問を質問で返すなよ…」
 
この男とではまともな会話が期待出来なかったので、看護士の方に尋ねるような視線を送る。
 
「またこの人は具合が悪いと言って──」
 
ドクオはそれだけ聞いて察した。
仮病だ。
素人目には彼に悪い所など見当たらず─とはいえ実際にどこも悪くないのだが─、誰がどう見てもそれは明らかである。
ドキュは煙草を咥えて火を点けようとしている。そこに早足で歩み寄って来た中年女性に煙草を取り上げられていた。
この女性は、この医務室長である。名はルミナといった。
整った顔からしても、若かりし頃は美人だったに違いない。
責任感が強くて気のいい、教師のような人である。それでも決して堅い性格ではなかった。
しかし怒らせると怖いとの噂もある。

 
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:20:15.01 ID:Yl5tVf0pO
煙草を取り上げられたドキュは、それでも懲りずに新しい煙草を咥えようとしていたが、その喉に彼女の手刀が突き刺さる。
オエッという声と共に彼は悶絶した。
 
q( xд。x)p「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
JJ・Д・)し「医務室は禁煙だって言ってるでしょッ!」
 
ルミナは腰に手を当てて叱る。
 
(;'A`)(こんな事ばっかやってるから昇進できねーんだよ…。てかコイツに常識はねーのか…?)
('A`)「全く…少しは同期のスズを見習えよ…。なぁ、ショボ──」
 
ため息をつきながらショボンに会話を振ると、横にいたはずのショボンが消えている。
代わりに別の看護士の横に出現していた。
 
(´・ω・`)「勤務が終わったら食事でもどうだい?」
「ショボンさんに誘われるなんて感激です!」
 
('A`)「おま……」
('A`)(コイツはコイツで次から次へと手を出してるしよ…。しかも何で上手くいくんだよ…)
 
ドクオは心の中で一人毒づく。
ショボンを視界の隅に追いやり、再度深いため息をついてから本題を持ち出した。


 
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