53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:48:15.47 ID:Yl5tVf0pO
( ^ω^)「あの『魔界の門』の真相がスクリプトの基地だとは驚きだお」
 
『魔界の門』とは、隊員達がふざけてつけた名称だ。
不可解な現象に、このようなオカルト的な噂が広まるのは今も変わっていない。
 
( ^ω^)「で、出撃はいつだお?」
('A`)「明後日の予定だ」
( ^ω^)「けっこう急だお。さっそく機体の整備に──」
('A`)「お前は待機だ」
 
立ち上がったブーンに、ぴしゃりと言い放った。
 
( ^ω^)「へ? なんでだお?」
('A`)「お前昨日HIROYUKIに乗ってぶっ倒れたばっかじゃねーか。作戦中にまた倒れられたら困るんでな。
ま、休暇と考えれば悪くないだろ? 作戦は俺らに任せて休んでろ」

 
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:48:49.82 ID:Yl5tVf0pO
確かに休みがもらえるのはうれしい事だったが、少し残念な気もしていた。
作戦が終われば真相は全て解明されるのだが、それに立ち会いたいとも思った。
 
( ^ω^)「う〜ん……」
('A`)「お前…興味本意で参加したがってるだろ? 遊びじゃねーんだぞ」
( ^ω^)「それは否定出来ないお」
('A`)「……もういい、とにかくお前は待機だからな」
 
ドクオは呆れながら念を推し、部屋を出て行った。
ブーンはドクオと少し話したせいか気が紛れた…と言うより、医務室で言われた事など完全に忘れていた。

 
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:50:28.54 ID:Yl5tVf0pO
──深夜
q(#`д。')p「チクショーあの野郎…痛くて眠れねぇぜ…。やっぱあいつ鈴木さんにボコってもらうか…」
 
自販機の前で煙草を吹すドキュ。
その彼に近寄る一つの影。
 
q(#`д。')p「むしろ夜襲でもしてやろうかあの野郎──うわっ!」
 
いきなり背後に現れたブーンにドキュは悲鳴を上げる。
 
( ゚ω゚)「…………」
q(;`∀。')p「い、今のは冗談っスよ! へへへ…」
 
慌てふためくドキュを見ることすらせずにブーンは通り過ぎた。
 
q( `д。')p「あ…? なんだぁ?」

 
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:51:27.71 ID:Yl5tVf0pO
──作戦当日
バタバタと騒がしかった廊下も、半分以上の隊員が出払った今では静かな物だ。
ブーンはベッドに横になりながらあくびを噛み殺す。
 
( ^ω^)(そろそろ作戦ポイントに着いた頃かお…? それにしても暇だお…)
 
休みをもらっても特にする事がなかったブーンは退屈な時間を過ごしていた。
暇な時間とは非常に永く感じるもので、それに軽く苛立ちまで覚える。
あまりにも退屈なのでブーンにしては珍しく本を読み出す始末であった。
 
( ^ω^)(……これは…睡眠薬より強力だお…………)
 
3ページ程読んだ所で激しい睡魔が襲う。ただ文字を目で追うだけで内容など頭に入らない。
そしていつしかブーンの意識は深い闇に落ちて行った……。

 
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:52:46.74 ID:Yl5tVf0pO
それから何時間経過しただろうか。
 
《緊急事態発生、待機しているパイロットは至急格納庫へ急行せよ。繰り返す、緊急事態発生、待機しているパイロットは──》
 
けたたましい警報と緊急事態を告げるスピーカーの声でブーンは飛び起きた。
何が起こっているのか全く把握出来ないが、とにかく格納庫へと急いで向かった。
廊下を駆け抜けていると凄まじい振動が基地全体を襲う。
これは只事ではない。
廊下には既に人影はない。
どうやら緊急警報が鳴ってからしばらく時間が経っているようで、寝起きの悪さが悔やまれる。
ブーンが格納庫に着いた時には既にゲートが開放され、生身では機体に乗り込む事すら出来なかった。
ゲートから次々と飛び出す戦闘機。
 
(;^ω^)「これじゃ出撃出来ないお…!」
 
うろたえていると、呆然と煙草を吹す一人の男の姿が目に入った。
ドキュだ。

 
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:54:51.91 ID:Yl5tVf0pO
(;^ω^)「おまwwwww何してんだお…」
q(;`д。')p「ゲッ! 内藤先輩…」
 
ドキュはビクリと体を震わせて逃げようとしていた。
ブーンはその首根っこを掴んで捕獲する。
 
( ^ω^)「待てぃ。お前なんで出撃しなかったんだお?」
q(;`д。')p「い、いやぁ…ちょっとダラダラ歩いて来たら既にゲートが開いてて…」
 
どうせ最初からサボるつもりだったのだろう。ドキュは笑ってごまかす。
 
(;^ω^)「もういいお…」
 
ドキュを解放し、今度は指令室へ走り出した。


 
59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:56:49.91 ID:Yl5tVf0pO
指令室では人が慌ただしく動き回っている。その中にギコの姿を見つけると、叫んだ。
 
(;^ω^)「司令! 一体何が起きたんですかお!?」
(;,゚Д゚)「…! まだ出撃していなかったのか。見れば分かるだろう、我々は今襲撃を受けている。
この主力部隊が出払っている時にだ!」
 
(;^ω^)「テラヤバス……」
(;,゚Д゚)「敵は大部隊だ。このままでは防ぎ切れん…」
「敵の援軍! くそ…一体どこから湧いてくるんだ…ッ!?」
「敵部隊、尚も増加中! 数は5000を超えています!」
「敵戦闘艦、接近! エネルギーが増大している!」
「居住区の砲台、沈黙しました…!」
(;,゚д゚)「クッ…終わりなのか…? 俺はここまでなのか…!?」
 
ギコの顔には焦りが伺えた。
百戦錬磨のギコがここまで冷静を失った場面をブーンは見た事がなかった。
 
「司令! 指示を!」
(;,゚д゚)「…砲撃を中断、基地全てのエネルギーをバリアに回せ」
「了解ッ! 主砲、来ます!!」
 
戦闘艦から特大のレーザーが放出され、基地を覆うバリアに衝突した。

 
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 19:58:58.38 ID:Yl5tVf0pO
「第二派、来ます!」
 
二度目の砲撃で、基地内の電源が落ちた。全てのエネルギーをバリアに使っているのだから無理もない。
すぐに予備電源が中を明るく照らす。
 
「バリア損傷率40%を超えました! あと数回攻撃されれば保ちません…!」
(;^ω^)(本格的にヤバス…)
 
このままでは一方的に基地ごと吹き飛ばされてしまう。
だが戦力差は非常に大きく、埋めるのは不可能と思われた。
その時ブーンに一つの光明が差す。まだ未知数だが凄まじい性能を秘めた戦闘兵器。
 
( ^ω^)「司令──!」
(;,゚д゚)「HIROYUKIを、出せ」
 
どうやらギコも同じ事を考えていたらしい。ブーンの言葉を待たずとも、HIROYUKIを襲撃させるつもりだったのだろう。
 
「しかし、HIROYUKIはまだ…」
(,,゚д゚)「構わん。パイロットならここにいる。だがあと一人──」
 
今度はブーンがギコに最後まで言わせなかった。
 
( ^ω^)「パイロットの当てならありますお!」

 
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:00:09.76 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚Д゚)「なに…?
……しかしそれなら好都合だ。HIROYUKIの出撃準備を始めろ」
 
ギコはオペレーターに指示を出し、そしてブーンに頭を巡らせて言った。
 
(,,゚Д゚)「頼むぞホライゾン…!」
( ^ω^)ゝ「了解しましたお!」
 
力強く敬礼をし、ブーンは再び格納庫へと向かって走り出した。
 
(,,゚д゚)(こうなっては仕方がない…。全てを任せるぞ内藤ホライゾン)
(,,゚Д゚)「総員に告ぐッ! 間もなく我々の切り札が出撃する。
それまで何としてもこの基地を守り切れッッ!!」
 
戦闘を繰り広げるパイロットに激励し、次の指示を出す為にモニターを凝視する。
そして久しく落ち着きをなくした事に自嘲的な笑みを浮かべていた。

 
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:02:32.20 ID:Yl5tVf0pO
( ^ω^)「やっぱりいたお!」
 
ブーンの予想通りドキュは格納庫前でまだ煙を楽しんでいた。
素早く彼に近寄って一言言った。
 
( ^ω^)「出撃だお」
q( `д。')p「は?」
 
訳が分からないといった表情のドキュを無理やり連れて中へ向かう。
既にHIROYUKIの出撃準備は整っていた。
 
( ^ω^)「お前もコレに乗るんだお」
q(*`д。')p「うぇ!? マジマジ? マジかよぉ! 俺には縁のないもんだと思ってたぜぇ!」
 
一人興奮していたドキュであったが、すぐに青ざめた顔で尋ねて来た。
 
q(;`д。')p「でもこれってまだ未完成じゃ…」
( ^ω^)「実は完成してるんだお」
q(*`д。')p「マジで? 知らんかったぜー」
 
とりあえず嘘を言っておく。
出撃してしまえばこっちの物だ。
急いで乗り込む二人。
ドキュの顔は欲しい物が手に入った少年のように輝いていた。
 
『HIROYUKI、起動!』
 
HIROYUKIの中に入った途端、奇妙な脱力感に襲われた。
これは前回も同様で、身体の隅々から力を奪われるような感覚である。
それでも、すぐに身体の奥底から力が溢れ出すので─これも前回と同じだ─気に止める必要はない。

 
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:04:33.89 ID:Yl5tVf0pO
『これより射出する。我々の運命は諸君らにかかっている。幸運を祈る!』
 
( ^ω^)b
 
カタパルトで射出される数秒前にブーンは本当の事を教えた。
 
( ^ω^)「あ、さっきの嘘。本当は未完成だお」
q(;;`д。')p「…………」
 
キラキラとしていた目は澱み、顔色が面白いくらいに青くなって行くのが分かった。
 
q(#`д。')p「ふ…ふざけんなテメェ! 俺降りるからな!」
( ^ω^)「もう遅いお」
 
HIROYUKIは勢いよく加速して重力が二人を襲う。
 
q(;;`Д。')p「ギャアアアアアァ!!!! まだ死にたくねええぇぇぇぇ!! 人殺しィ〜!!!!!!!」
 
ドキュの悲痛な叫びを後方に残し、HIROYUKIは宇宙空間へと飛び出していった────

 
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:06:16.31 ID:Yl5tVf0pO
出撃した瞬間、死肉に群がる蠅のように大量の戦闘機を確認する。
しかし今はそれらを相手していられない。まずは基地を攻撃している戦闘艦の撃破が優先される。
 
『聞こえるか?』
( ^ω^)「聞こえますお。ほらドキュも返事しろお」
q(;-д。-)p「へぃ…聞こえます…」
『な…』
 
まさかブーンの言っていた当てがドキュだとは思ってもいなかったらしく、ギコは一瞬沈黙する。
だがすぐに気を取り直して指示を出した。
 
『まずは敵戦闘艦を撃破してくれ。現時点での武装はライフルのみだ。だがHIROYUKIは更に強力な攻撃が出来る。戦闘艦にはそれを使え』
( ^ω^)「どうやって使うんですかお?」
『何でもいいが…そうだな、槍をイメージしろ。頭の中で%を感じられるはずだ。100%になったら放て』
( ^ω^)「了解。ドキュ、お前に%を任せるお。それと敵の位置とかも頼むお」
q(;-д。-)p「…了解」
( ^ω^)「加速するお、舌噛むなお!!」
 
ブーンはテストの時と同じように移動のイメージを浮かべる。それは瞬時にHIROYUKIに伝わってバーニアが噴き出して推進力を生んだ。
 
q(;;`Д。')p「ギャアアアア!!!!!」
(;^ω^)「やっ…ぱ…慣れない、お……」

 
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:07:46.65 ID:Yl5tVf0pO
猛スピードで戦闘艦に接近するHIROYUKI。
ブーン集中を乱さぬように槍をイメージする。HIROYUKIの手に半透明の槍が形成されていった。
 
( ^ω^)「ドキュ!」
q(;-д。-)p「おうぅぅ…もう100%だぜ…。…あぁ? 110…115…まだ増えてんスけど…」
 
ドキュの頭の中では既に120%を超えていた。それに伴い、HIROYUKIの手が白煙を上げ始めた。
 
『いかん! 放て!』
(;^ω^)「え? えぇ!!?」
 
とりあえず言われるがままに発射する。
エネルギーの槍は高速で飛来し、戦闘艦のバリアに衝突した。
槍はいとも簡単にバリアを貫き、戦闘艦に突き刺さる。
刹那、戦闘艦が対消滅を引き起こし、近くの戦闘艦を巻き込んで爆発した。
 
( ^ω^)「テラツヨスwwwwwwwwww」
『HIROYUKIにはまだ、そのエネルギーを制御する機能はないと聞く。扱いには注意しろ』
 
いとも簡単に戦闘艦を撃破され、一番の脅威はHIROYUKIだと悟ったスクリプト軍は目標を基地からHIROYUKIに変更する。
戦闘機は集結し、戦闘艦の砲門は全てこちらを向いていた。

 
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:09:29.69 ID:Yl5tVf0pO
q(;-д。-)p「…敵…周りにたくさん…」
(;^ω^)「ちょwwwwwww適当すぎるお!!」
 
だいぶグロッキーのドキュだったが、その言葉は的を射ていた。
何せHIROYUKIを全ての方向から取り囲むように戦闘機が迫って来ているのだ。
これでは一機一機方向を伝えている内に攻撃されてしまうだろう。
ブーンは移動しながらライフルを構える。トリガーを引くとライフルから光弾が発射され、獲物に食らいつく。
狙った物に当てるイメージを浮かべるだけで、後はHIROYUKIが軌道補正してくれるようだ。
光弾は一撃で戦闘機を破壊する。
戦闘機からのレーザーはそれ程深刻な被害にはならず、注意するのは戦闘艦の主砲のみだった。
 
( ^ω^)「ここらで一気に片付けるお!」
 
ブーンは槍の生成を始めた。
その間は高速で動き回り、敵機をかく乱する。
圧力には、次第に慣れてきたのか、遅めに飛び回れば耐える事は可能だった。

 
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:10:33.45 ID:Yl5tVf0pO
( ^ω^)「…………ドキュ、もういいんじゃないかお? また──」
(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwww」
 
ブーンが横をチラリと見ると、そこには白目を剥き、泡を吹きながら気絶しているドキュがいた。
恐らく、動き回ったせいで彼の身体は耐えられなかったのだろう。折れた鼻からは血が滴っていた。
ドキュから情報が伝わってくる。
搭乗者の内の一人が思考を停止した場合、その搭乗者を介してもう一人に情報が伝わるらしい。
実質、ブーン一人で動かしているような物だった。
槍は150%に達し、HIROYUKIの手は融解を始めていた。
 
(;^ω^)「おおわあああお!!!!!」
 
慌てて槍を発射する。
槍の軌道の近くにいた戦闘機はことごとく爆発し、遂には槍自体が炸裂した。内封されていたエネルギーが解き放たれた瞬間だ。周囲を巻き込みあらゆる物が対消滅を起こす。
 
(;^ω^)「あ…危なかったお……」
 
危うく腕ごと宇宙の塵になってしまう所だった。腕だけで済めば幸いかもしれない。
今のエネルギーから考えるとHIROYUKIその物が消滅してしまうかもしれなかった。

 
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:11:34.57 ID:Yl5tVf0pO
『何をしているッ! 主砲が来るぞ!!』
 
気が緩んだせいで警戒を怠った。ドキュの思考を介して、敵艦のエネルギーが膨張しているのが分かった。
ブーンは慌ててライフルを投棄して手を前に突き出す。そして自分を守る壁をイメージした。
バリアが展開された瞬間、二方向からHIROYUKIを飲み込む程のレーザーが襲いかかる。
激しい光が視界を埋め尽す。
とても目を開けていられない…!
だがブーンは何故か目を開いたままエネルギーの奔流に見入っていた。
どこかで似たような光景を目にした事がある。デジャヴだろうか。
そして聞こえてくる不快な笑い声…。
 
仲間…VIP…くだらんなぁ…。そんな物は消してしまえ…。クカカカカカ……

 
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