96以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:46:26.26 ID:Yl5tVf0pO
一つは父親の存在。
ブーンが生まれた時には既に行方不明になっていた。
しかしこのような境遇の人間など珍しくはない。これについては深くは考える必要はないだろう。
 
気になったのはHLA抗原については「不明」と記されてあった事だ。
存在する全ての型にあてはまらず、しかも一致せずとも手術は成功していた。
これはどういう訳か?
ギコは更に詳しく記録を閲覧し、ブーンのHLA抗原は未確認の型で、血液検査の結果、全ての型の臓器でも免疫抑制剤なしでも移植出来る貴重なサンプルとして血液が保管されている事までを知った。
この事は治療や手術に不都合がある訳もなく─逆に良い事である─問題とされていない。
しかし身体データと出撃記録と照らし合わせると、惑星ニューソクから二度目の帰還後、同一人物とは思えない程に身体能力などが向上していた。
 
そこに興味を持ったギコはこれも詳しく調べる。
ブーンが指揮を執って遂行された任務の中に、彼の部下からの報告、簡単に言えば任務の感想だ。
そこに「敵と交戦中、内藤隊長の様子が異常であった」と記されている物が多数あり、それらには例外なく「戦闘能力が格段に向上した」との内容、中には「恐怖を感じた」などの言葉もあった。


 
97以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:48:26.21 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「そうだ」
('A`)「でもブーンが──」
 
内線がコール音を響かせた。
 
(,,゚д゚)「どうした? ………………………そうか。……うむ……すぐに向かう」
(,,゚д゚)「ホライゾンが目を覚ましたようだ」
('A`)「ホントか!?」
(,,゚д゚)「嘘を言って何になる。それよりも何か言おうとしたな?」
('A`)「あ、ああ…。ブーンのヤツが無意識に行動してるって話だが、どうも信じられねぇ。別にアンタを疑ってる訳じゃないんだけどよ…」
(,,゚д゚)「…通信記録に不審な音声が記録されていた。暗号化されていてまだ内容は未確認。
我々の基地ではなく、お前達の向かった場所に発信された物だ。その日の深夜、ホライゾンの目撃情報もある。

それに推測だと言ったろう? それを今から確かめに行く。来るか?」
('A`)「当然だ」
 
仲間が目覚めたというのに、ドクオの顔には影がかかっていた。
ブーンは白だと期待しつつも、嫌な予感だけがどんどん大きくなっていった。

 
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:50:12.76 ID:Yl5tVf0pO
──医務室
JJ・д・)し「……そういう訳なの。承服してくれるわね?」
( ^ω^)「……………わかりましたお……」
 
ギコとドクオが医務室に着いた頃には、既にルミナが説明を終えていた。
これからブーンは精密検査を受ける。検査と言えば聞こえはいいが、実質上は人体実験と拷問のような内容だった。
しかし事情を説明されたブーンは首を縦に振るしかない。
断ろうにも、自分に容疑がかかっている以上、拒否権はなかった。
ならば早く検査を受けて身の潔白を証明しよう、そう考えていた。
尤も、この時ブーンに自信は全くなかったのだが。
 
(,,゚д゚)「早速で悪いがホライゾン、来てもらおうか」
('A`)「今回ばかりは俺にもどうする事も出来ない。悪ぃな…」
 
ブーンは黙って頷き、ドクオには弱々しく微笑んだだけでギコと共に生体実験室へと歩き出す。
検査に関わる者もそれに続く。

 
99以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:51:42.03 ID:Yl5tVf0pO
生体実験室とは第三基地に限ってではあるが、開発部の中で最も異質な場所だった。
医療が発達した今では大きな実験は行われていない。
 
しかし、使用されないのには、他に理由があるように感じられる。
なぜなら、実験を行っていないのは第三基地だけなのだ。
残された大規模な設備はほとんど使われずに次の活躍を待っていた。
ブーンは歩きながら尋ねる。 
( ^ω^)「そうだ……ドキュはどうなったんだお?」
JJ・д・)し「ふぅ〜…。ドキュ君ね……。彼の状態はひどい物よ。筋肉の断裂、内臓は目茶苦茶、目の血管も損傷してたし、視力も落ちてるかもねぇ…。
脳が奇跡的に無事なのが幸いかしら。ま、頭が悪いのはしょうがないけど。
今は無事手術も終わって眠ってるわ。完全に復帰出来るかは…難しいかもしれないけど、望みはあるわ。まぁ結局はあの子次第ね……」
( ^ω^)「そうですかお…」
 
ブーンは一言礼を言い、前に向き直る。

 
100以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:52:53.86 ID:Yl5tVf0pO
今回、ブーンが受ける検査は第三の設備だけで事足りるので、わざわざ本部まで出向かなくてもいいようだ。
しかし、何故か本部からある人物が派遣されていた。しかも要人である。
 
実験室と各機械は、あまり使われていないにも関わらず、埃一つ被っていない。新品同様に清潔感が漂っていた。
だがそれが反ってブーンを不安にさせる。
室内か機械のどちらかが多少汚れていた方が安心出来たかもしれない。
 
初めてメスを持った医者に手術される、十分なテストをしていない機械の実験台にされる、そんな感覚であろうか。
その美しい空間に、彼はいた。

 
101以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 20:54:49.87 ID:Yl5tVf0pO
(・3・)「久しぶりだNA」
(,,゚д゚)「ふん、俺─…私は貴様の顔など見たくもなかったがな」
 
ギコの眼の奥に憎悪の色が輝いた。
それはスクリプトに向けられる物より激しく感じられた。 
VIP軍本部、開発部顧問ぼるじょあ。彼はギコと面識があるようだ。
 
(・3・)「アルェー 今では僕の方が立場は上だZE? そんな口の聞き方でいいのかYO?」
('A`)(なんだコイツ…こんなヤツが開発部の顧問かよ…)
 
ドクオも名前くらいは聞いた事があった。過去に第三に所属し、ドクオが入隊してから少しの期間は同じ第三の仲間だったが
若き頃のドクオは隊員以外とは関わろうとはしなかったので、意識して見るのはこれが初めてであった。
 
(,,゚д゚)「そんな事はどうでもいい。貴様が私の部下をモルモットのように扱った時は──」
 
ギコはボルジョアに歩み寄り、鬼のような形相で睨みつけて怒鳴った。
 
(#,゚Д゚)「その時は容赦しねぇぞゴルァ!!!!!!!」

 
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:31:51.57 ID:Yl5tVf0pO
(;・3・)「な、なに怒ってんだYO.まさかまだ、あの2匹の事を根に持ってんのKA? それとも逃げ出した弱虫の事かYO?」
(#,゚Д゚)「貴様…!」
(・3・)「死んだ奴等の事なんか忘れろYO.
それに僕があいつらを使ったからこそ、HIROYUKIの開発に関わるヒントを得られ、こんなにも早く基礎が完成したんだZE?
あいつらも喜んでるはずSA! HAHAHAHAHA───」
 
嘲笑が途切れた。
ギコがボルジョアに掴みかかり、床に叩き付けたのだ。
そしてそのまま伸し掛かって殴り付けようとしている。
見事な早業だ。
──拳はボルジョアに突き刺さる事はなかった。
突然の暴挙に唖然としていたドクオやブーンが彼の身体や腕を掴んで放さなかったからだ。咄嗟に動けたのはこの二人だけだった。
 
(;^ω^)「ちょwwwwwww落ち着いて下さいお!」
(;'A`)「アンタらしくもねぇ…どうしたんだよ?」
 
ギコの腕から力が抜けたのを確認し、念の為に十分な距離を置くまで拘束する。


 
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:36:39.43 ID:Yl5tVf0pO
(;,゚д゚)「……すまない、取り乱したようだな…」
('A`)「いくらアンタでも顧問を殴ったら始末書じゃ済まないぜ? 何があったか知らねぇが、落ち着いてくれよ」
(;^ω^)「ビビったお…」
(,,゚д゚)「分かっている。よく止めてくれた、礼を言う」
 
ギコは戻るまでには普通の検査は終えるよう指示を出し、頭を冷やすと言って退室する。
ボルジョアはその姿を憎々しげに見送った。
 
JJ・д・)し「あの人があんなに取り乱すのは何年ぶりかしら…驚いたわ。
さ、気を取り直して検査を始めましょう」
 
ブーンの頭から爪先までの立体ホログラムが出現する。その横には脳や臓器のホログラムが映し出された。
 
JJ・ー・)し「じゃあまずは内臓から調べるから、ちょっと息止めてねぇ…」
 
 
 
 
 
ギコは滅多に吸わない煙草を咥えながら苦い過去に思いを寄せる。因縁の始まりと終わりである、忌まわしい記憶を───

 
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:40:13.53 ID:Yl5tVf0pO
──12年前
( ´∀`)「お疲れ様モナ!」
 
モナーは機嫌良くギコと、二人の姉妹を出迎えた。彼女達は瓜二つ。
一卵性の双生児だった。
 
(,,゚Д゚)「おう! 今回は約50機墜としてやったぜ! 作戦時間、約30分! 俺最強かもな!」
 
ギコは自慢気に言う。彼には自信と闘志、そして若さのエネルギーが漲っていた。その瞳は未来への希望や情熱が爛々と輝いている。
 
( ´∀`)「間違いなくギコは第三で最強モナ。第一で、しかもトップクラスの隊長が務まるくらいすごいモナ。
まあ、それも僕の整備のおかげだモナ」
(,,゚Д゚)「なに言ってる、俺の腕がいいからに決まってるだろ」
( ´∀`)「いやいや、僕の……」
 
(*´・ω・)「その辺でやめといた方がいいと思うんだけど…」
(・ω・`*)「やめといた方がいいと思うんだけど…」
(*´・ω・)「どうせまた喧嘩になるに決まってるよね」
(・ω・`*)「いつもそうなるよね」
(*´・ω・)(・ω・`*)「ネー」
(,,゚д゚)「黙れ腐女姉妹」
( ´∀`)「ギコ、それは言い過ぎモナ」

 
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:42:47.74 ID:Yl5tVf0pO
基地内では彼女達の事をギコと同じく腐女姉妹と呼ぶ者もいたが、多くはネー姉妹と呼んでいる。
彼女らはギコの侮辱を軽く聞き流してモナーに歩み寄る。
 
(*´・ω・)「機体の整備、ありがとうございます」
(・ω・`*)「おかげでたくさん敵機を墜とす事が出来ました」
( ´∀`)「何機墜としたんだモナ?」
(*´・ω・)「ええと…」
(・ω・`*)「確か二人で…」
(*´・ω・)(・ω・`*)「私達も50機くらいだったよね?」
 
彼女達のコンビネーションはVIP全体でも群を抜いていた。
彼女達は双子の能力なのかは分らないが、お互いの思考が分るらしい。通信は不要、そして二つの視点から物事を観察している事と同様である為、二人の死角はグッと小さくなる。
通信面では、電波障害が発生しても彼女達の妨げにはならなかった。
 
(,,゚д゚)「そのハモるのやめろ…」
(*´・ω・)「いいでしょ」
(・ω・`*)「いいじゃない」
(*´・ω・)(・ω・`*)「ネー」
(#,゚д゚)(うぜぇ…)

 
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:44:21.28 ID:Yl5tVf0pO
ギコは顔をしかめていたがモナーは既に彼女達との会話で盛り上がっている。
一人取り残された気がしたので無理やり三人の入って行った。
しかし三人の会話は、ギコにとって全く興味の湧かない話題だった。疎外されている訳ではないが面白くはない。
そこで、ギコから話をふる事にした。
 
(,,゚д゚)「なあモナー、お前こいつらの機体の整備もしたんだろ?」
( ´∀`)「したモナ。何か問題でもあるモナ?」
(*´・ω・)「問題ないと思うよ」
(・ω・`*)「ある訳ないじゃない」
(,,゚д゚)「いや、問題っつーか、例のプロジェクト、始まったんだろ? お前、第三プロジェクトチームのリーダーじゃないか」
(*´・ω・)(・ω・`*)「プロジェクト?」
 
モナーは若くして開発部門でNo.2の位置にいた。
次期開発部長のポストは確定していると言っても過言ではない。
モナーは僅かに顔を歪めたが、それはすぐに普段の表情に埋もれていく。
モナーとは入隊からの付き合いであるギコは気付いていたが敢えて追及はしなかった。

 
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:46:17.65 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「リーダーならやる事が有り余るくらいだろ。遊んでていいのか?」
( ´∀`)「む、遊びとは失礼モナ。僕にとって機械を弄る事は──」
(,,゚д゚)「あー…、その話はやめてくれ。長くなるからよ」
(*´・ω・)「別に聞いてあげてもいいじゃない」
(・ω・`*)「聞いてあげようよ」
(*´・ω・)(・ω・`*)「そうだよ聞こうよ聞こうよ──」
(#,゚Д゚)「だーっ! うるっせぇ!! ちょっと黙ってろよ!!」
(*´・ω・)「何その高圧的な態度」
(・ω・`*)「感じ悪〜い」
(*´・ω・)(・ω・`*)「ネー」
 
そろそろギコの我慢も限界に近付いている頃だ。こめかみに血管が浮き上がり、ピクピクと動いている。
ギコは、感情を押し殺して口を開いた。
 
(,,゚д゚)「………モナー、俺の部屋で話そうか」
(*´・д・)(・д・`*)「エー」
 
不満気な二人を置いて、ギコとモナーはそそくさと退散した。

 
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:49:16.18 ID:Yl5tVf0pO
──ギコの部屋
モナーは上機嫌。
一方ギコは今にも爆発しそうな様子だ。
 
(#,゚д゚)「さて、まずは何故ここにいるかを聞こうか」
 
ギコは出来る限りの自制心でゆっくりと尋ねた。
 
(*´・ω・)「それは着いて来たからだよ」
(・ω・`*)「当たり前じゃない」
 
ギコは何度も追い払ったが、全ては徒労に終わった。結局、追い出す訳にもいかずにこの有様である。
 
(*´・ω・)「ギコ君はお客さんにお茶も出さないのかな?(ボソ」
(・ω・`*)「お茶菓子も欲しいよね(ボソ」
 
チクチクと催促しながら棚に飾ってある写真を手に取る。写真にはギコの他に女も写っていた。
 
(*´・ω・)「前とは違う写真だね」
(・ω・`*)「でもギコ君の写真はいつもムスッとしてるね」
(,,゚Д゚)「おい勝手に触れんじゃ──」
(*´・ω・)(・ω・`*)「いつもこんな顔してたらいつか彼女に逃げられるよネ」
(*´・ω・)「それもまた一興」
(・ω・`*)「そしてまた発狂」
(##,゚Д゚)「て…てめぇら……!」
( ´∀`)「まあまあ…」
 
怒りに震えるギコをモナーが宥める。

 
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:50:40.05 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「相手すんのも馬鹿馬鹿しいな…」
 
脱力しながらそっぽを向いたギコだったが、モナーは手慣れた様子でグラスに茶を注いでいる。棚から菓子も取り出してテーブルに置いていた。
このような事は日常茶飯事だったので、本当はそれ程不快にならなくなっていた。慣れ、だろうか。
 
ただ、何か愚痴を言わなければ彼の気が済まないのも事実で、事あるごとに憎まれ口を叩いていた。
 
(,,゚д゚)「まあ、こいつらは措いといてさっきの話だ」
 
はやり気にはなっていたらしく、再び問う。大きな計画がある度に毎回モナーから聞いていたので、情報を最も早く知る者の一人になっている。
しかし、新プロジェクトの件はモナーが話そうとはしなかったので全くの無知だった。
 
ギコが簡単に他言するような性格ではないのも、モナーが彼に研究内容を教える理由の一つなのかもしれない。
しかし、いつもならモナーからペラペラと喋り出すのに今回だけは自分からは語ろうとはしなかった。計画の内容よりも、むしろその理由の方がギコは興味を持っていた。

 
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:53:20.29 ID:Yl5tVf0pO
( ´∀`)「………実はこのプロジェクト、あまり気が気が乗らないんだモナ…」
(,,゚Д゚)「お前がぁ? 珍しいな」
 
ギコは眉を上げて尋ねる。そして煎餅をボリボリと噛み砕いた。
 
( ´∀`)「まあ……ギコに隠すつもりはないし、教えるモナ」
 
モナーは淡々と述べた。
脳から直接電気信号を送り、動きを反映させる技術が確立していた。VIPはこの技術を軍事利用しようと考える。
どれ程訓練しようと、脳から身体、身体から機体に動きを連動させるには0.4〜0.5秒の遅れが生じる。
しかしこの技術を使えば0.1秒以下のタイムラグで済む。
僅かな時間ではあるが、それが生死を分ける事もあるのが戦場だ。特に光学兵器が主流の今日、このタイムラグを無くす技術に皆、大きな期待を寄せているらしい。
VIPはこれを実用可能にする為に様々な実験を行った。
動物実験は成功、残すは人体実験のみとなっている。
 
(,,゚д゚)「なんだよ、すげぇ事じゃねぇか。お前が悩むような事は一つもねぇぞ?」
( ´∀`)「これは一般向けに用意された説明なんだモナ…」

 
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 21:54:29.12 ID:Yl5tVf0pO
モナーは続けて語り出す。
事実は恐ろしい物であった。
 
動物実験では8割が成功、そして人体実験は既に行われていた。
そのシステムは脳を自在に操る事も可能とされ、必要ならばリミッターを解除する事も容易だという。
ある実験では、人体の持つ治癒能力を促進させ、傷は驚異的な速度で完治した。
またある実験では肉体の持つ本来の力を発揮し、こちらも凄まじい力を引き出す事が出来た。
 
問題がなかった訳ではない。
このシステムには精密な操作が必要とされ、中には廃人となってしまった者や、脳の制御装置を完全に破壊されてしまった者、身体に障害が残った者もいた。
脳に負担を掛けすぎて死亡した者までいるらしい。
 
この事実にギコは絶句した。
昔からVIPは影で人道に反する研究を行ってきたと聞く。それはあくまで噂であったが、今の話を聞くとあながち全くのデタラメではなさそうだった。

 
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