151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:36:52.67 ID:Yl5tVf0pO
(・3・)「まずは姉の方からDA。やれ、僕が許SU」
 
優しい口調で発せられたその一言は、彼の鼓膜を振動させ、脳の奥に深く刻み込まれる。するとどうだろうか、あたかも洗脳されたかのように、部長はレーザーガンを抜き、銃口を向けた。
 
(#,;Д;)「やめろ!! やめてくれぇ!」
 
ギコは目からの液体で顔をぐしゃぐしゃにして叫ぶ。
だがその叫びは届かない。
彼はゆっくりと引き金を引いた。
レーザーが迸り、肉体に突き刺さる。
彼は引き金を引き絞ったまま放さない。
レーザーは肉体を貫き、炭化させ、肉片を飛び散らせた。
 
ギコはその惨殺を目を見開き、喘ぎを漏らしながら見入っていた。
 
(;^o^)「うわぁっ! 俺は何を……」
 
正気に戻った部長は、目の前にある、原形をとどめていない物体を見、そしてそれを成したのは自分だという事を認識した途端、先程よりも激しく震えだした。
その時、また爆発が起こる。
 
「暴走が止まらない!!」

 
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:38:26.84 ID:Yl5tVf0pO
(;・3・)「な…なんだTO!?」
 
ぼるじょあはコンソールで原因を調べ始めた。
 
(;・3・)「どうなって…………なるほDO…。部長! 妹も始末しRO!」
(;^o^)「え? なんで…?」
 
ぼるじょあが命令した時、部長は既に獲物を投棄して後退りしていた。
 
(;・3・)「妹自体が増幅器になっていRU! 他にも姉の死に際に発生した膨大なエネルギーが妹にフィードバックしTA!」
(;^o^)「どういう事…?」
(;;・3・)「そんな事も分からんのKA!?
装置と妹、二つの増幅器をエネルギーが巡回していると言えば分かるだRO!
このままエネルギーが蓄積されれば…」
(;^o^)「ど、どうすれば…」
(;^o^)「どうしようどうしよう…」
(;;^o^)「ああ! 訳が分からなくなってきた!」
 
こうしている間にもエネルギーは蓄積され、もはや強い刺激は与えられない状態まで膨れ上がった。

 
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:40:59.40 ID:Yl5tVf0pO
(;・3・)(チッ…これ程使えない男だとは思わなかったZE…)
(;・3・)「退避するZO」
 
ぼるじょあは再びコンソールを操作、バリアを解除し、ガラスの壁を開く。
雪崩込むようにに研究者が外に向かって走り出す。その様子を、ギコは半ば放心状態で見つめていた。
 
「君! モナーさんを連れて早く退避しなさい!」
 
いつの間にかギコの横には白衣を着た男女が数人立っていた。ギコは、彼らを睨みつける。
 
「勘違いしないでくれ、我々はモナー派の者だ! それより早くッ! 私達も手を貸すから!」
(,,゚д゚)「…! そうか。ならモナーを頼む、俺はあいつを…」
「やめなさい! もう手遅れよ!」
 
女性の研究者が引き止める。
 
(#,゚Д゚)「まだ分かんねぇだろ!」
「いいえ、私達はあなたよりよく分かっています。あれは末期状態、喩え装置を外しても助からない」
(#,゚Д゚)「く…畜生…っ!!」
 
ギコは歯ぎしりをしながら低く唸る。
だが彼も助からないと分かっていて突っ込む程馬鹿ではない。後ろ髪を引かれる思いで踵を返し、モナー運ぶ。
部屋から退避した時、ぼるじょあの姿が目に入った。

 
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:43:01.62 ID:Yl5tVf0pO
(・3・)「バリア最大出力でこの部屋を完全閉鎖…と」
 
シャッターが降りて来た。
あの時、あと少しギコがもたついていたら彼らごと閉じ込められていたかもしれない。
ぼるじょあは部長に歩み寄り、言った。
 
(・3・)「3名と2匹が死亡、重軽傷者12名。更に生体実験室の崩壊…。
アンタが直接手を下したのは事故として隠蔽出来るだろうが、それ以外は全てアンタの責任DA.
どちらにしても首が飛ぶ事には変わらなかったNA」
(;^o^)「…………」
\(^o^)/「人生オワタ」
(・3・)「さあ、ここも危険DA.退避しましょう尾渡SAN…」
(・3・)(プログラムの再構築が必要だNA…。今回も含め、今までのデータは失われたが、あの2匹は良い事を教えてくれTA……これからが楽しみDA…)
 
がっくりとうなだれる部長を残してぼるじょあは歩いて行った。
 
(##,゚Д゚)「あの野郎…!」
「待ちなさい、ここも危険な事は変わらない。モナーさんを医務室に運ばないといけないし、今は耐えるんだ」
 
警報と共にアナウンスが流れた。この地区を閉鎖するらしい。
早急に避難する必要がある。
ギコはしぶしぶ聞き入れて、退避を開始した。

 
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:45:21.97 ID:Yl5tVf0pO
──ギコの部屋
(,,゚д゚)「俺だ…。……こないだの話だが………ああ、やっぱ分かってたか…」
 
相手の発する楽しそうな声とは真逆に、ギコの声は重い。
 
(,,゚д゚)「実はその件だが、なかった事にしてくれ。
…………………………………違う!」
 
ギコは怒鳴るように否定する。
しばしの沈黙。女の嗚咽が漏れる。
 
(,,゚д゚)「違うんだ…………聞いてくれ……………嫌いになったとか、他に女ができたとかじゃない……………しばらく、いや、数年になるかもしれん、戻れそうにないんだ。
だから…………………………なに? ……………待つって…………何年かかるか分からないんだぞ? …………そうか………」
 
あの時と同じように、しかし今回は一度だけブザーが鳴った。
 
(,,ーдー)「……ああ……これ以上うれしい事はない………ああ…………………ありがとう」
 
二度目のブザーが鳴った。


 
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:48:14.28 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「………客が来た。また連絡する」
 
通信を切り、ドアを開けた。
 
(,,゚д゚)「よう…具合はどうだ…?」
( ´∀`)「だいぶ善くなってきたモナ」
 
モナーの腕には包帯が巻かれていた。その下には火傷が拡がっているだろう。
 
(,,゚д゚)「で、話ってなんだ?」
( ´∀`)「実は……VIPを辞めようと思うモナ…」
 
その告白にギコの顔が強張り、口を開きかけたがすぐに閉じられた。
 
( ´∀`)「もう…VIPのやり方に耐えられないモナ…。もうあんな酷い光景は見たくないんだモナ…」
(,,゚д゚)「そうか…」
 
モナーは開発部長となっていたが、研究者の多数はぼるじょあに従っているので、その地位はただの飾りになっている。
ぼるじょあが指示を出せば彼らはモナーが行う研究をボイコットするだろう。
既にモナーに権限はない。
 
( ´∀`)「逃げる僕を嘲笑ってくれてもいいモナ」
(,,゚д゚)「どこに行くんだ…?」
 
ギコは彼を嘲笑もしなければ、非難もせずに問い掛ける。
 
( ´∀`)「実はかなり昔に、まだVIPに確認されていない惑星を発見したんだモナ。そこに行くつもりモナ。
…もしよければギコも──」

 
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:50:17.64 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「俺は、行かねぇ」 
恐らくそう来るだろうと予測していたギコは、ぴしゃりと言い放つ。
 
(,,゚Д゚)「俺は、上を目指す」
( ´∀`)「それってつまり…」
(,,゚д゚)「まずは第三の司令官、最終目標は──総帥だ」
( ´∀`)「総帥…」
(,,゚д゚)「そうだ。もう奴等の好きにはさせねぇ」
 
ギコは事故の真相をマスコミに伝え、VIPの闇を公けにしようとした。だがギコが行動に出た時には既に証拠は抹消、隠蔽工作と圧力によって完全に黙殺されてしまった。
VIPの権力は彼の思っていた以上に強大だったのだ。
そこで彼は権力には権力で対抗するしかないと、この考えに至ったのであった。
 
( ´∀`)「辛い道程になるモナ」
(,,゚д゚)「覚悟は出来ている。
ぼるじょあの野郎がふざけた真似しようと、俺は心を鬼にするぜ」
 
モナーは何も言えなかった。
ギコが悩みに悩んでこのような結論を出した事は容易に想像が出来る。
モナーに考え直せなどと言える訳がなかった。

 
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:52:41.79 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「そういえばお前、その腕の火傷跡を消さなかったんだってな」
( ´∀`)「手は作業の妨げにならないように移植したけど、腕はしてないモナ。
この醜い腕がある限り、三人を忘れる事はないモナ」
 
いつものギコなら、それがなければ忘れるのか、と突っ込んでいた所だが、軽く頷いただけだった。
 
( ´∀`)「もう辞表は出したモナ。………たぶん、もう会う事はないモナ」
(,,゚д゚)「そうか。元気でな…」
( ´∀`)「ギコも……」
 
その日、モナーは第三基地を、VIPを去った。
 
ギコにはそれから苦難の日々が続いた。休暇の日も自ら進んで任務を受けた。
死亡率の高い作戦にも積極的に参加した。
その間、ぼるじょあの行った残酷な実験には、歯を食いしばって見て見ぬふりをして過ごした。
 
数年後、ギコは昇進を重ね、司令官となる。
彼が司令となった結果、ぼるじょあは思うような研究を行えなくなり、本部から声がかかっていた事もあったので移籍を決めた。
そして現在に至る……。

 
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:53:47.83 ID:Yl5tVf0pO
(,,ーдー)「……………」
 
ギコはゆっくりと目を開けた。どうやら転寝をしていたらしい。時計を見ると、二時間以上眠っていたようだ。
ハッと息を飲み込んだ。眠気は消え失せ、鼓動が高鳴る。
 
生体実験室に急行したギコが見た物は、ベッドにぐったりと横たわるブーンの姿だった───

 
161以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:55:40.41 ID:Yl5tVf0pO
(#,゚Д゚)「ボルジョア…貴様ホライゾンに何をしたァッ!!」
 
怒鳴るギコだったが、ぼるじょあは冷静に返す。
 
(・3・)「アルェー 戻って来ないから僕に任せるんだと思ってたYO.もう次が最後だZE」
(#,゚Д゚)「何をした? 答えろッッ!」
(;'A`)「ちょ、頭冷やしたんじゃないのかよ…。実はだな…」
 
また掴み掛かりそうになったギコをドクオが諭す。
一般的な精密検査はすぐに終了し、結果は異常なし。
では何故ブーンが不可解な行動をとったのか。
 
それを調べる為に行われたのが、五感に様々な刺激を与えるというものだった。
これまでにブーンが変貌した任務のデータから、現場で感じられるであろう全ての刺激をブーンの身体に与えた。
その結果、精神が錯乱して凶暴性が増した事もあった。
だがそれは一時的な物であり、ブーンは肉体的、精神的にかなり消耗してしまい、今は身体を休めている所だという。

 
162以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 22:58:10.02 ID:Yl5tVf0pO
(,,゚д゚)「把握した。だが何故ホライゾンがこの状態になるまで中断しなかった?」
('A`)「ブーンのヤツがよ、大丈夫だから続けてくれって…。で、続行したらこの有様だ」
(・3・)「すぐに僕を疑うのはやめてもらいたいNE.
ピリピリしすぎだZO.
僕の開発した鎮静剤、『博士の愛したカルシウム1号』でも注入してやろうCa? 本来は飲む物だがNA! HAHAHAHAHA!」
('A`)(なにそのふざけたネーミング)
 
ぼるじょあの馬鹿にしきった笑いに、ギコは鼻を鳴らして聞き流す。
 
(・3・)「おや、被験者が目を覚ましたZO」
 
身を起こすと頼りない足取りで検査用の椅子に戻っていくブーン。
 
('A`)「おい、無理すんなよ」
(;^ω^)「心配いらんお…」
JJ・д・)し「内藤君、気持ちは分かるけど、もう少し休んでた方が…」
 
呆れたような顔をして腰に手を当てる。
しかしブーンも一歩も譲らなかった。
 
(;^ω^)「どうせ最後だし、無問題だお」

 
163以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 23:01:15.57 ID:Yl5tVf0pO
あ…>>161ミスった…orz
ぼるじょあがカタカナになってる…

 
164以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 23:03:46.37 ID:Yl5tVf0pO
(・3・)「彼もこう言ってるし、再開するZO」
JJ・д・)し「しかし博士」
(・3・)「君は黙って従ってればいいんDA」
JJ・д・)し「……分かりました。再開します」
 
ルミナは片方の手を額に押し当て、ディスプレイの方へ向かった。
再開のプログラムを入力するとブーンの身体が拘束具で固定される。
そして重力発生装置の中へと椅子ごと収容された。
中の様子はモニターに映し出されている。
 
JJ;・д・)し「最後は…HIROYUKIでの戦闘ですわ」
 
ぼるじょあを除く一同に緊張が走る。ドクオもその時の話は聞いていたので同様だった。
ブーンが最も暴走した時の再現…。身震いせずにはいられなかった。
だがぼるじょあはうっすらと笑みを称え、待ち切れないといった様子だ。
 
(・3・)「物事には順序があるから最後に回したが、実はこれが一番やりたかった実験DA…。
未完成にも関わらずHIROYUKIを完全に操った男、内藤ホライゾン…」
 
ぼるじょあが初めて被験者を名前で呼ぶ。
 
(・3・)「楽しみDA」
JJ・д・)し「始めるわよ」
( ■ω■)「おk」
 
ブーンの目に光が送られた。

 
166以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 23:07:25.52 ID:Yl5tVf0pO
記録から当時ブーンの眼に映っていた物とほぼ同じ映像がブーンに伝えられる。身体には圧力がかけられ、圧迫感にブーンは喘ぐ。
そして主砲を受けた時と同じ光度の光も断続的に送り続けた。
 
ある程度まで出力を上げるとルミナは警告する。
 
JJ・д・)し「これ以上は視力が低下する恐れがありますわ」
(・3・)「構わん、続けRO」
(;'A`)「おいおい…」
(#,゚Д゚)「貴様…容赦はしないと──」
JJ#・Д・)し「あなたねぇ、人の体を何だと思ってるの!ッ!」
 
三度目のギコの怒鳴り声を聞く前に、ルミナが叫んだ。
 
(・3・)「愚問だNA.そんな物、ただの──」
JJ#・д・)し「はいはい、何言おうとしたかは分かります。全く、あなたの考えは医者には理解し難いですわ。とにかくこれ以上は拒否! だいたい──」
 
ルミナはそこでハッとして手で口を塞ぎ、つい感情的になり言葉が乱雑になった事に頬を染めた。
そして軽く咳払いをした。
 
(・3・)「君にその権限は───ん? ちょっと待TE…脳波に変化が現れたZO」
JJ・д・)し「また一時的なもので──あら?」
 
モニターに映っているブーンは先程とは違い、暴れようともしない。拘束されているので動ける状態ではなかったが、彼の筋肉は伸縮さえもしていなかった。

 
167以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/14(日) 23:09:21.74 ID:Yl5tVf0pO
JJ・д・)し「さっきとは違うみたいね…。睡眠状態…ともちょっと違うし…。
博士、これをどう考えます?」
(・3・)「………ホライゾンの中には別人格…まぁ人格と呼べる物かは分からんが、ホライゾンの意識とは独立した何かがあるのは分かっていRU.
ただこれは今までとは別物と考えていいだろU…」
 
顎を撫でながらブーンの様子を観察する。
この事自体には関心がなさそうだが、新たな謎に頭の中は猛スピードで回転している事だろう。
 
(,,゚д゚)「それより貴様、本来の目的を忘れてはいないだろうな…?」
 
ギコの問い掛けに、ぼるじょあは顎を撫でる手を止め、数秒考える。
そしてしれっとした態度で答えた。
 
(・3・)「ああ、すっかり忘れてTA」
(#'A`)(この野郎…)
 
ギコとドクオは苛立ちを覚えながら拳を握る。
この男にとっては敵だろうが裏切り者だろうが、ただの研究対象にしか映らないのか、この検査の目的が頭から抜け落ちていたようだ。

 
inserted by FC2 system