222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:08:30.83 ID:VUBrtBMOO
俺は今、親父と取引兼、顔見せの為にリヴムントに来ている。
なんでも此所の領主が初めて表舞台に出るんだと。
今までもリヴムントとは取引をしてきたが、先代はほとんど顔を出さずに夫人が全てを取り仕切っていた。
何度かティーグルにも来たけど、この人がまたえれぇ美人でしかも巨乳でよ………まあ、この話はいいか。
その先代と夫人が死んでからは残されたガキが親の跡を継いだんだが、流石にまだガキだけあって実務は部下が行っていたみたいだ。
ところが今回、そいつが直接商談に応じるって言うんで親父がわざわざ出向いた訳だ。
ま、俺はその領主を一目見たくて着いて来ただけだがな。名は確かGIKOだったかな?

 
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:11:56.39 ID:VUBrtBMOO
話には聞いていたがひでぇ街だ。
つまんねーから親父とその部下の目を盗んで抜け出したんだが、ゴロツキが絡んで来やがる。それならまだいいが娼館の客引きがガキの俺にまで声をかける始末。
妙な活気はあるんだが馴染むには時間がかかるな、こりゃ。
 
(;゚∀゚)「完全に迷っちまったぜ…。デカすぎなんだよこの街はよ…」
 
傭兵の派遣で利益を得ているらしいが広すぎだぜ…。此所の兵力は計り知れねぇな。
おまけに裏路地に出ちまったしよ…。
 
( ゚∀゚)「さぁ〜…て、どうすっかな──お!」
 
俺好みの巨乳姉ちゃんを見つけたぞ。しかもいかつい野郎に絡まれている。
2人か。帯剣してるが…いけるな。何か武器になりそうなもんは──
よし、あの角材を使おう。
パッと助けて道を聞くとするかね。ついでにさり気なく乳でも揉ませてもらおうか。
 
( ゚∀゚)「あ、あの〜…」 
 
俺は懐に手を入れ、身を竦ませながらいかにも弱々しい子供を装って近寄る。

 
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:13:19.13 ID:VUBrtBMOO
「なんだこのガキ…」
「ガキが首を突っ込むとろくな目に合わないぜ?」
 
よしよし、完全に油断してるな。馬鹿め。
しかしコイツら頭悪いな。
気の弱いガキが自分からお前らみたいなのに声かけるかっての。
 
「子供は帰んなッ! 余計な事すると痛い目見るよ!」
 
気の強そうな姉ちゃんだな。こんな街に住んでるから当然か。
 
( ゚∀゚)「いえ、僕は御二人にお話がありまして…」
 
俺は怪しまれない程度のスピードで立て掛けてある角材へ近付く。懐の手はコインが握りしめていた。
 
「俺らに話だと?」

( ゚∀゚)「はい、実は──」
 
角材が手に届く範囲に入った途端、俺は懐の手を引き抜いた。抜いた時に手を開くのも忘れない。
十数枚のコインが散らばって派手な音を奏でる。
男共は反射的に下を見た。
視線が逸れた顔面に爪先が突き刺さった。俺の渾身の一撃だ。
男は鼻血を撒き散らしながら後ろに倒れる。
想定外の攻撃に、残った男は倒れる男を目で追う。そして俺の方に顔を向ける。
その時には角材は俺の手の中だ。

 
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:14:44.67 ID:VUBrtBMOO
「このガ──!」
 
言い終える前に側頭部を角材で強打。横倒しになって動かなくなった。
楽勝! 俺にかかればこんなもんだぜ。
散らばったコインは勿体ねぇが治療費としてくれてやるか。
 
( ゚∀゚)「姉ちゃん怪我はないかい?」
「驚いた、アンタ強いんだねぇ! お姉さんびっくりしたよ!」
( ゚∀゚)「ヘヘッ、まあな。それより姉ちゃん、道を聞きたいんだが──」
「この糞ガキィィ…!」
 
ゲッ、鼻を砕いた野郎が起き上がって来たぞ。俺の力じゃ一発で昏倒させるのは無理って事か。
しかも剣を抜きやがった。
 
「あ、アンタ子供相手に物騒な物出すんじゃないよ!」
「うるせぇ!」
 
この野郎、貴重な巨乳を殴りやがった。最低なヤツだな。
ってなに冷静に観察してるんだ、このままじゃ俺もやべぇぞ…。
 
「糞ガキが…ぶっ殺して──」

 
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:18:26.50 ID:VUBrtBMOO
(,,゚д゚)「貴様何をしている」
(;゚∀゚)「うおぉっ!」
 
いきなり後ろに立つんじゃねぇ! ビビっただろうが!
てかなんだコイツは…? 年は俺と同じくらいに見えるが…。
 
( ゚∀゚)「誰だよお前。わざわざ厄介事に巻き込まれに来たのか?」
(,,゚д゚)「人目を忍んで弱い者いじめか? 良い趣味とは言えんな」
 
この野郎、シカトしやがった…。
やたらと尊大な態度だしよ。何か気に食わねぇな。
それよりあの男、静かになりやがったぞ。
でも鼻血垂らしながら突っ立ってる姿は笑えるなw
 
「お、俺らはまだお前を認めた訳じゃないんだぞ。デカい顔するんじゃねえ」
(,,゚д゚)「ふん…まあいい。
認めざるを得なくしてやろうとも思ったが、生憎俺は貴様と殺り合う気は今の所ない」
 
なんだ何だ? ただのガキと大人の会話じゃねぇぞ?
コイツ、マジで何者なんだ?
 
(,,゚д゚)「ジョルジュ、貴様の相手だ。最後までケリをつけろ」
( ゚∀゚)「そうは言ってもこっちは丸腰だし……ってちょっと待て、お前なんで俺の名前知ってんだ?」
(,,゚д゚)「この剣を使うといい。思う存分殺れ」
(#゚∀゚)「シカトすんなよ!」

 
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:21:14.74 ID:VUBrtBMOO
(,,゚д゚)「子供に負けては傭兵の名が泣くな」
 
またも無視かい。
 
「俺があんなガキに負けると思ってやがるのか!? ナメるんじゃねえ!」
(,,゚д゚)「という訳だ。こいつはやる気だぞ。ジョルジュ、貴様も腹くくれ」
 
マジかよ…。
俺もそれなりに剣の稽古はやらされてるが、実戦は始めてだぞ…。
それよりこの野郎、楽しんでやがる。どこまでも気に食わねぇ野郎だぜ…。
 
(;゚∀゚)「ったくよ、やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」「ジョルジュといったね、アンタ本気でやる気かい…?」
(;゚∀゚)「やりたかねぇけどあのオッサンは完全にやる気だしな…」
 
さて…どうすっかな…。
なんか使えそうな物は──
ねぇな…。
まあ、一人くらいなら何とかなるだろ。
 
( ゚∀゚)「よっしゃ、来いよオッサン。相手してやるぜ」

 
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:22:52.16 ID:VUBrtBMOO
俺が挑発する前にオッサンは走り出した。
相当頭にキテるらしい。
第一刀は袈裟斬りだった。まぁこれくらいなら受けるのは楽勝…と思ったのは間違いだ。
弾いたと思えば次には一閃が迫る。これも受けれた。
またすぐに突きが来やがった。
かわす。
弾く。
受け止める。
手が痺れる。
現役の傭兵だけある。流石に速ぇな…。
そこらのヤツなら倒せると思ったが、コイツ強ええじゃねぇか!
 
(;゚∀゚)「ちょ、ちょっと待て、待てって! タイムだっつーの」
「この糞ガキ…! 今更謝っても遅いんだよォ!」
(;゚∀゚)「いい大人が子供相手に本気になんなよ! カッコ悪いぜ」
 
「カッコ悪い」が効いたのか、動きを止めた。
バーカ。
俺の渾身の一振りが肩口を斬り裂いた。
 
「ぐああぁッ! 汚いぞ…!」
 
一刀両断とはいかなかったがしばらく剣は握れないな。
 
( ゚∀゚)「俺は汚いぞ。だいたい戦いの最中に待ったがあるかよ」
「クソ…!」
 
怪我に慣れてるのか、痛みでは喚かないな。我慢強い事で。
さて、止どめを刺す気分でもねぇし、どうしてくれようか。

 
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:24:41.77 ID:VUBrtBMOO
「ああ!? 親分!!!」
 
悩んでいるとひょろそうな男が血相変えて走って来た。
1人だけじゃない。
何人もゾロゾロと集まってきやがる。30人はいるな。
…ん? 親分?
 
「親分! 大丈夫っスか!?
そこのガキ! よくも親分を…!」
 
な〜るほど、傭兵のリーダー格か。どうりで強えー訳だ。
…昼間っから女に絡んだり戦いの最中に手を止める傭兵がリーダーってのもどうかと思うがな…。
てかあの姉ちゃんいつの間にかいなくなってるしよ。しっかりしてるな。
なんて考えてる場合じゃねぇ。あのオッサンよりはいくらか弱いだろうが、この人数はやべぇ…。
例によってコイツらもやる気満々だ。
どう切り抜けようか…。
 
(,,゚д゚)「ふん、てこずりそうだな。手を貸そう」
 
そうだ、こいつを忘れてた。
この人数を見て怯まねぇって事は相当腕に自信があるのか?
 
(;゚∀゚)「ちょ、マジでやる気か? この数は無謀だろ」
(,,゚д゚)「問題ない。行くぞ」
 
…1人で突っ込みやがった。あいつ死んだな…。

 
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:27:15.27 ID:VUBrtBMOO
俺が冥福を祈ろうとした時、信じられない光景が広がった。
 
(,,゚Д゚)「どうした! それでも貴様ら傭兵師団の人間か!!!」
 
あの野郎、たった1人であの人間と対等に渡り合ってやがる。
あいつ、マジでまぢで何者なんだ?
傭兵共が弱すぎるのか、あいつが強すぎるのか──
ああ、でもあの人数は無茶だ。ホラ、もう囲まれてやがる。所詮ガキだしな。
…気に食わねぇヤツだが、元々俺の問題だし助けてやるか。
 
( ゚∀゚)「数十人で1人を囲んでんじゃねぇぞ!」
 
俺はあいつを背後から斬ろうとしている、男の背中に剣を振り降ろした。
人ってヤツを初めて斬ったがそこらの獣よりは柔らかいな。
 
( ゚∀゚)「オイ! 無理すんなって! 一旦──」
(;;゚∀゚)「──うおおぉぉぉ!!!?」
 
コイツの身体が回転したと思えば同時に剣まで来やがった。
切っ先は2人の喉を裂き、あやうく俺までくたばる所だった。
 
(;;゚∀゚)「あ、あ…危ねぇじゃねーかこの野郎ッッッ!!!」
(,,゚д゚)「ククク、貴様ならかわせると思っていた」
(;゚∀゚)「な──」

 
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:30:31.15 ID:VUBrtBMOO
コイツ、俺がいるのを知ってて今の一撃を放ったってのか! ふざけやがってッ!
あー! 余計な事考えてる場合じゃねぇ!
まだ20人くらい残ってるしな。
 
( ゚∀゚)「オイ! 一旦引くぞッ!」
(,,゚Д゚)「なんだと? いい所で──」
 
いい所だと? 何を抜かすんだコイツは──
 
(#゚∀゚)「い い か ら 来 い ッ !」
(;,゚Д゚)「ぬ…」
 
俺はこの戦闘馬鹿を引っ張って走った。
当然、奴等は追ってくる。
 
(,,゚д゚)「何か考えがあるのか? 恐ろしくて逃げてるだけなら承知しねぇぞ」
(#゚∀゚)「黙って付いて来い!」


 
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:31:45.53 ID:VUBrtBMOO
来た道を走る。
念の為に使えそうな路地を確認しておいてよかったぜ。
…見えた。
俺達は細い路地に入った。
 
(,,゚д゚)「…! なるほどな」
( ゚∀゚)「ここなら──」
 
「GIKOはそこを曲がったぞ! 追え!」
 
……………。
なに…?
 
( ゚∀゚)「今、GIKOって聞こえたんだが…」
(,,゚д゚)「俺の名だ」
( ゚∀゚)「………」
(;;゚∀゚)「なにぃ!!?」
 
コイツが? コイツが若きリヴムントの領主かよ!?
マジでまぢでmjky!!?
ああ、そうか。なるほどな…。
俺は半狂乱しながら考えた。
確かにコイツが領主ならさっきの会話も納得がいく。
随分と嫌われてるじゃねーか。

 
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:34:29.29 ID:VUBrtBMOO
「追い詰めたぞ!」
 
来たな。
今はコイツについて考えるのは止めだ。
コイツ──GIKOと俺なら何とかなるかもしれねぇし、戦いに集中しよう。
 
思った通りだ。この狭い通路なら一度に襲えるのは2人ないし3人までだ。
迫る敵を俺とGIKOは迎え打つ。
3人同時に襲ってきた奴等は馬鹿だ。狭くて剣を上手く振るえない。それに奴等は剣を振り回すだけだ。
恐らくこんな通路で戦った経験はないんだな、むろん俺もだが。
でも俺は戦い方を知っている。
こういう場所では突きが有効だぜ。
 
( ゚∀゚)「オラオラァ! どんどん来やがれ──」
(;;゚∀゚)「──ぬおおおおお!!!!」
 
またGIKOの切っ先が俺の頭をかすめやがった。コイツも突きが有効という事を知らないらしい。力ずくでぶん回しやがる。
身をかがめなければ首が跳んでいた。
 
(##゚∀゚)「コラァッ! おま、お前またかよッ!!?」
(,,゚Д゚)「当たらなかったのなら、別にいいだろう」
( ゚∀゚)「………」
 
コイツが領主って事は、当然付き合いも長くなる。俺はいつかコイツに殺されるんじゃないだろうか?

 
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:37:10.84 ID:VUBrtBMOO
嫌な想像をしながら湧いてくる敵を突き刺す。
あと少しだな…。GIKOのやる事は目茶苦茶だが結果は出ている。
俺も何人も屠っているが、ほとんどはGIKOが斬り裂いていた。
残りは5人か…。
 
( ゚∀゚)「GIKO、剣を降ろせ」
(,,゚д゚)「何を言っている? 敵に情けなど──」
( ゚∀゚)「ちょっと黙ってろ」
( ゚∀゚)「オッサン方、もう止めねぇか?」
 
俺の提案に攻めるか引くかをためらっていた男達は動きを止めた。警戒しているのか、剣は構えたままだ。
今回は不意打ちなんかしねぇって。
 
(,,゚д゚)「貴様血迷ったか? 敵は徹底的に叩き潰すのが俺の流儀だ。それを──」
( ゚∀゚)「オッサン方、ちょっと待っててくれ」


 
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:40:08.69 ID:VUBrtBMOO
GIKOを引いて少し下がる。
これくらい離れれば聞こえねぇだろ。
 
( ゚∀゚)「お前の今の立場は何となく把握した。確かにこんなガキがデカい態度をとってたら腹立つもんな」
(,,゚Д゚)「だったら力でねじ伏せるまでだ」
( ゚∀゚)「話は最後まで聞けよ。あいつらだって一応市民だろ? だったら無暗に殺してんじゃねぇよ」
(,,゚д゚)「俺はたかってくる虫を追い払っているだけだ」
( ゚∀゚)「だぁから、それじゃダメだっつーの。お前もいずれはリヴムントを背負って立つ身だろ。その時になって住民がバラバラじゃあ話にならねぇ」
(,,゚д゚)「ならどうしろというんだ?」
( ゚∀゚)「まずはあいつらを逃がす。幸いリーダー格のヤツも生きてるんだ、まずはあの辺りから従えていけよ。
お前の実力は見せつけた事だしよ」
(,,゚д゚)「………」
( ゚∀゚)「いいか? 奴等の心を利用しろ。最初は上辺だけでもいい。奴等がお前に従えば周りも変わってくるはずだ」
(,,゚Д゚)「ふん、いいだろう。…しかし貴様、嫌な性格をしているな」
 
それはお互い様だろ。

 
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/15(月) 00:41:48.79 ID:VUBrtBMOO
( ゚∀゚)「そうと決まれば戻ろうぜ。
…そういや、俺の名前は誰から聞いた? 親父か?」
(,,゚д゚)「そうだ。俺は貴様を探しに来たのだ」
 
嫌〜な予感がするぜ…。
 
(;゚∀゚)「親父、怒ってたか?」
(,,゚д゚)「烈火の如くな」
 
やべぇ、殺される。
このまま逃げちまうか…?
 
(;゚∀゚)「こんな所来なきゃよかったぜ…」
 
こうして俺達は危機を乗り切った。
あいつらが子供に負けたという、みっともない出来事を周りに話すとは思えんが、何とかなるだろ。ある意味弱みを握ったようなもんだしな。
 
それより剣の訓練を増やす事にしよう。
これからの付き合いでGIKOに殺されるのはゴメンだからな…。
              完

 
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