39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:11:42.39 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「大丈夫かお?」
ξ;゚-゚)ξ「ええ…」
ブーンが手を差し出す。
しかしツンは俯いたまま起き上がろうともしない。
(;^ω^)「どっか痛い所とかあるのかお…?」
ξ;//_//)ξ「平気です…。でも腰が抜けて…」
恥ずかしそうにボソボソと呟いた。
( ^ω^)「じゃあおぶって帰るお」
ξ////)ξ「え…? い、いいわよ、そんな事…」
( ^ω^)「遠慮するなお」
ξ//д//)ξ「うぅ……」
(*^ω^)(ムホッ! おっぱいが当たるお。おっきしちゃうお)
その帰り道、ツンが不思議そうに語る。
ξ゚听)ξ「内藤さんも頼りになる時もあるんですね」
(*^ω^)「もっと頼ってもいいんだお。フッヒヒヒ」
ξ゚-゚)ξ「気持ち悪い」
( ^ω^)「…………」
ブーンはちょっとだけ悲しくなった。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:13:01.13 ID:5wxMOfu9O
ξ゚听)ξ「それにしてもなんであそこに…? この辺りは安全なはずなのに…。
しかもまだ子供でしたね」
(;^ω^)「あのサイズで子供かお…」
ξ゚听)ξ「親とはぐれたのかしら…? 親といればこの辺りになんて来ないのに」
(;^ω^)(!! たぶん僕が美味しくいただきました!)
ブーンはその事を言うのはやめた方が無難だと判断し、口を閉ざしたまま歩き続けた。
………………………………………………………………………………………………………
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:14:12.01 ID:5wxMOfu9O
それから一月程経過した。
ブーンは村の人間とも打ち解けていた。村の子供と遊んでやったりもした。実に平和な生活だ。
ツンとも次第に距離は縮まり、彼女はブーンの前で笑みを浮かべるくらいにはなった。その彼女に、ブーンは少しづつ惹かれていった。
ツンの態度は最初より冷たい物ではなくなったが、やはり時折刺のある言葉でブーンに接した。
しかしそれはいつもの事なのでブーンは気にしない事にしたようだ。
ただ、不安の種が二つある。
一つはツンだ。ツンはこの一ヵ月の間に、時折フラリと姿を消す。
そして日にもよるが青い顔で帰ってくるのだ。
ブーンは問い質したりしたがツンは答えない。
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:15:25.86 ID:5wxMOfu9O
そしてもう一つは『魔女狩り』の話。
こちらは村で聞いた話で、この星には帝国軍という強大な勢力が存在している。
その帝国軍が、若い女が周りと違った思想を持っていたり、秀でた才能を持っている場合に魔女と称し、虐殺しているのだ。
昔はそれほど横暴ではなかった帝国が変わり始めたのは役10年前…。
原因は分からないが、10年前を境に帝国は残虐性を増したらしい。
魔女にされた女性は例外なく火炙りにされた。そうする事で恐怖により支配力が増す。その際に際に強盗、強姦、殺人などが平気で行われているのも事実だった。
だがこの村は辺境の村なので『魔女狩り』とは無縁であると村人は話していた。
ツンの不可解な行動と『魔女狩り』…。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:16:34.44 ID:5wxMOfu9O
そしてモナーが言っていたが、ツンは非常に頭が良いらしい。神童と囁かれ、サイスから使者が来た事もある程だ。
サイスとは、頭が良い者が集まっている事で知られている街だという。
魔女の中に、頭が良い者は含まれるのだろうか。
杞憂であってほしいが、ブーンには何か確信めいた思いがあった。
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:18:42.82 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「ツン…どうしたんだお?」
いつものように、尋ねる。
ξ゚听)ξ「しつこいわね。何もないって言ってるでしょう?」
( ^ω^)「でも何かあるような顔だお…。まさか『魔女狩り』──」
ξ;゚-゚)ξ「…! やめて」
( ^ω^)「……やっぱり『魔女狩り』と関係があるんだお。相談なら乗るお」
ξ゚听)ξ「……アンタなんかに…!」
( ^ω^)「え?」
ξ#゚听)ξ「アンタなんかにどうにかできる問題じゃないのよ!!」
ツンはブーンを怒鳴りつけ、外に飛び出していった。
(;^ω^)「逆に怒らせちゃったお…」
それからはツンと顔を合せるのが気まずかった。
食卓でもツンは会話がなかった。話をふってみたりしたが業務的な返事のみで会話とは言えないものだった。
そして──
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:19:49.21 ID:5wxMOfu9O
彡´д`)「大変じゃ! ツンが…ワシの孫娘が…!」
村長の動揺した声で目を覚ます。
彡´д`)「ああ…ツンよ…」( ^ω^)「ま、まずは落ち着くお」
ブーンが村長を宥める。
( ^ω^)「いったい、ツンがどうしたんですかお?」
彡´д`)「机の上にこんな置き手紙が…」
『お祖父さんへ
ここ一ヵ月の私の異常には気付いていたとは思いますが、私は魔女と呼ばれる存在になったようです。私を魔女と呼んだ男は、私が行けば、帝国は村には手を出さないと約束してくれました。
この村が助かるなら私は喜んでこの身を捧げます。
内藤さん、あの時はいきなり怒鳴ってごめんなさい。そしてお祖父さん、いつまでもお元気で。
ツン子』
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:21:48.29 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「………」
彡;д;)「ああ…ツン…ツン…」
いつでも笑顔を絶やさなかった村長はおいおいと泣いている。この様子では村人も頼りにならないだろう。
力を貸してくれる人はこの村にはいない。皆、帝国を恐れているのだ。
(#`ω´)「………」
徐々にブーンの顔に怒気が広がる。もちろん、ほとんどが帝国に対する怒りではあったが。
ブーンはホルスターを着け、ドアに向かい歩き出した。村長は止めない。ただ悲しみに暮れているだけだ。
ブーンはまず聞き込みを開始した。ツンの行方がわからない今、なんでもいいから手掛かりがほしい。
だがツンが出て行ったのは早い時間だったのか、有益な情報は得られなかった。
しかし人間とはいつ、誰に見られているか分らないものである。
「あ! ブーン兄ちゃんだ! またブーンって…… !」
子供が駆け寄ってくるが、ブーンの怒気に満ちた顔を見るなり顔を強張らせて押し黙る。
ブーンは一応聞いてみた。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:23:26.82 ID:5wxMOfu9O
( `ω´)「ツンを見なかったかお…?」
「お、お姉ちゃんなら、僕が寝ぼけて外に出た時見たよ…?」
( `ω´)「本当かお!? どっちに行ったんだお!?」
子供の肩を掴み揺すりながら聞く。
「ああああっちの方だよよよあぐ…」
言い終わった瞬間、口を押さえてしゃがみ込む。揺らされながら喋ったせいで舌を噛んだらしい。
子供が指した方は、ブーンが不時着した方向とは逆の森だ。
( ^ω^)「ごめんお、帰ったら一緒にブーンするから許してほしいお」
「…うん、絶対だよ!」
今度はモナーの家を目指した。
( `ω´)「モナー! 起きるお!」
( ー∀`)「なんだモナ? てかその顔怖いモナ…」
ブーンはツンの置き手紙をモナーの顔に貼り付けた。
( ´∀`)「………」
( `ω´)「こういう事だお」
( ´∀`)「わかったからその顔をどうにかしてほしいモナ。怖いモナ」
( `ω´)「………」
( ^ω^)「正直スマンかった」
( ´∀`)「冷静にならないとなんでも失敗するモナ。とにかく中に入るモナ」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:24:56.85 ID:5wxMOfu9O
ブーンを招き入れて、機械の山から、小型の物…ちょうど大昔に普及した携帯ゲーム機のような物を取り出した。
( ´∀`)「ブーンも気付いてたと思うけど、ツンちゃんの様子がおかしい日が何度もあったモナ。そこで僕はコッソリこれを付けたんだモナ」
モナーの手には、ブーンの耳に入れた物と同じくらいの大きさの物が乗っていた。
( ^ω^)「もしかして…」
( ´∀`)「発信機だモナ。ストーカーっぽいけど何かあってからじゃ遅いモナ。念には念を入れておいてよかったモナ」
モナーはなかなか抜け目のない男だった。
( ^ω^)「じゃあツンの位置がわかるのかお?」
( ´∀`)「もちろんモナ」
モナーはゲ※ム※ーイの電源を入れる。画面には光る点が表示されていた。
( ´∀`)「……? おかしいモナ。手紙には帝国に行くような事が書かれているのに、この位置は真逆だモナ」
( ^ω^)「もしかしてツンは騙されているのかお?」
( ´∀`)「そうかもしれないモナ。あと点が動いてるって事はまだ移動中だモナ」
点までの距離は約15km。今から急げば間に合うかもしれない。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:27:17.34 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「何か…乗り物はないのかお!?」
( ´∀`)「昔作ったバイクがあるモナ」
( ^ω^)「それでいいお!」
モナーは瓦礫からバイクを取り出す。そして地下からリフトを使って運び出すと、キーを挿した。
エンジンが荒々しい唸りをあげる。
( ^ω^)「モナーも来るのかお?」
( ´∀`)「残念ながら僕はメカニックだモナ。あまり対人の戦闘訓練は受けてないモナ」
話ながらブーンのホルスターに視線を移す。
( ´∀`)「ちょっと待ってるモナ」
モナーはまた地下へと潜って行ったがすぐに出てきた。その手には銃が握られている。
( ´∀`)「そのレーザーガン、バッテリー切れしてるモナ。これを使うといいモナ」
( ´∀`)「ちなみにこの星の文明にはまだ銃はないモナ。それを利用すれば戦いが楽に進むかもしれないモナ。
それは僕が作った物だけど試し撃ちはしてあるから暴発はないと思うモナ。たぶん」
つまりブーンをこの村に導いた銃声はモナーによる物だったようだ。
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:28:30.46 ID:5wxMOfu9O
(;^ω^)「たぶんが気になるお」
( ´∀`)「そろそろエンジンが暖まってきたから行けるモナ」
( ^ω^)「このバイクは大丈夫なのかお?」
( ´∀`)「昔乗った時は問題なかったモナ。今でも問題ないと思うモナ。たぶん」
(;^ω^)「………」
ブーンは気にする事を止めた。そして発信機の示す方向にバイクを向ける。
( ´∀`)「絶対ツンちゃんを救出するモナ!」
( ^ω^)「任せてくれお!」
ゴーグルを着ける。
( 〇ω〇)「ツン…生きててくれお…!」
アクセルを捻り、ツンがいるであろう場所に向かって発車した…。
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:30:13.78 ID:5wxMOfu9O
肌に突き刺さる風が心地よい。すべての景色が高速で後方に吹き飛んでいく。
荒れた場所に出たが、多少の悪路なら平気のようだ。だが近付くにつれ、道はどんどん荒れてくる。
発信機の位置を確認する。
( 〇ω〇)「あと3km…」
道はいよいよ険しくなり、前にはそびえ立つ崖があった。バイクではこれ以上進めないだろう。
ブーンはバイクを停め、ゴーグルを外す。
岩の壁に手を掛け、一歩一歩確実に登っていく。疲労しながらも、頂上付近まで来た。
(;^ω^)「あと…少しだお…」
出っ張りに手を掛けた瞬間、ボロッと岩が崩れた。
(;゚ω゚)「うわわわ…」
出っ張りが崩れ落ちたせいでブーンはバランスを崩し、片手でぶら下がる形になった。
モナーの言葉が頭をよぎる。
(;ーωー)「そうだお、冷静にならないといけないお…」
目を閉じ、精神を落ち着かせてから視線を巡らせ、今度は崩れないであろう出っ張りに手と足を掛けた。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:33:18.05 ID:5wxMOfu9O
(;^ω^)「はぁはぁ…」
崖の上で仰向けになって呼吸を整えるブーン。空を見ると日が暮れはじめている。そして発信機の点は停止していた。目的地に着いたらしい。
(;^ω^)「休んでられないお…」
荒い呼吸のまま立上がり、今度は自身の足で走り出した。
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:35:47.02 ID:5wxMOfu9O
ξ゚-゚)ξ「来たわ…」
(;゚:ё:゚;)「ようこそ、待っていたよ…。なんだ、あんなに嫌そうな顔してたのにやっぱり来たじゃないか。君はここに来る事を望んでいたんだよ…」
ツンが断れない立場だと知って言葉を紡ぐ男。
ξ#゚听)ξ「卑怯者っ! 変態!」
(;゚:ё:゚;)「ん〜いい響きだ。もっと罵ってほしいなぁ」
ツンは嫌悪感を滲ませて身を振わせる。
ξ;゚-゚)ξ「約束通り、これで村には手を出さないのよね?」
(;゚:ё:゚;)「ああもちろんだとも。君がおとなしくしていればね…」
男は指輪をちらつかせながら言った。
ξ;゚д゚)ξ「………」
(;゚:ё:゚;)「じゃあまずは着替えてもらおうか…」
男はツンを連れて奥の扉へ入っていった。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:38:18.72 ID:5wxMOfu9O
ブーンは走っていた。いや、走るというよりは飛び跳ねているように見える。
全力疾走──流石にバイクには劣るがその速度は速い。
崖を登った場所はたいした悪路ではなく平坦な地面が広がっていた。
( ^ω^)「残り500m…見えたお!」
その建物は教会のような作りだ。昔は神に祈りを捧げる人間で溢れていたに違いない。
近付くにつれ、古ぼけてボロボロなのがよくわかった。壁には蔓が這い、屋根には黒い鳥が停っている。そして庭には動物の骨が散乱していた。
とても神に祈りを捧げる場所だとは思えない。
(;^ω^)「不気味だお…。こういうの、ちょっと苦手だお…」
( ^ω^)「でもこれなら遠慮する必要ないお!」
扉を蹴破って侵入する。
( ^ω^)「ツン! どこだお!?」
中は非常に薄暗かった。
ツンを探すが、いない。代わりにあるのは多数の剥製だ。獣から鳥まで多様にある。そして奇妙な事に、その全ての剥製は赤黒かった。
( ^ω^)「剥製に染み付いているのは……血?」
不吉なものを感じながらも周りを見渡し、すぐに奥へと歩みを進める。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:40:01.40 ID:5wxMOfu9O
足に、違和感を感じた。
( ^ω^)「…?」
何かに触れたような感覚。
足下を確認しても何もない。
気を取り直して前を見た時、恐ろしい光景が視界に入った。
(;^ω^)「!!!!」
ブーンの前には剥製だと思っていた鳥が舞っている。
背後からも風を切る音が聞こえ、振り返るとそこにも剥製が飛び回っていた。
(;^ω^)「うおおおおおお!!!!!!!!
KOEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!!」
恐怖に駆られ、ブーンは逃げ出したくなったが勇気をふり絞って前に足を踏み出した。
踏み出す、というより全力疾走。
一刻も早くこの部屋から出たかったのだ。
最初の部屋以外は剥製が動き回るような事はなかったのが幸いだった。
建物の広さからして、最後の部屋に繋がるであろう扉の前で軽く呼吸を落ち着ける。
…すると扉の向こうから人の気配を感じる。扉には鍵が掛かっていた。
( ^ω^)(きっとこの奥だお!)
迷わず扉に銃を向ける。乾いた音と共に実弾が発射され、鍵を破壊する。すかさず扉を蹴破り、中に侵入した。
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:42:32.62 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「ツン!!」
この部屋にも剥製が、それも大きな物が4体置かれていた。
しかしそんな物は目に入らない。
ブーンの目の前にはツンが、これも赤黒いドレスを着て椅子に腰掛けているのだ。
その瞳に生気はほとんど感じられなかったが、ブーンの姿を認識すると徐々に光が戻ってきた。
ξーд-)ξ「内藤…さん?」
(;゚:ё:゚;)「誰かと思ったら、やっぱり村の人間か…」
素早くツンの背後に回り込んで首もとにナイフを押しつける。
(;゚:ё:゚;)「最初の部屋で逃げ出すと思ってたんだが…。勇敢じゃないか、ヒヒッ」
(#`ω´)「ツンを放せお…」
ブーンは銃を向け、男にジリジリと近付く。だが男は銃を恐れていないようだ。と、いうよりも銃が武器である事を認識していないようだ。
(;゚:ё:゚;)「やけに強気だね…。それより見てくれよ。美しいだろう? このウェディングドレスは彼女の血で染め上げたのさ。少しづつ血を抜き取ってね…」
そう言いながら刃物の腹で首から顔をなで回す。
刃物の冷たさで意識がはっきりしてきたのか、ツンが叫んだ。
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:45:32.70 ID:5wxMOfu9O
ξ;゚听)ξ「な…なんで来たのよっ! 私の事はいいから帰ってよ!!」
ブーンも負けずに言い返す。
( `ω´)「そいつは帝国とはなにも繋がりがないんだお! ツンは騙されているだけだお!」
男の表情が強張った。これだけでは確信は持てないが、図星の可能性は高いだろう。
ξ;゚听)ξ「何を根拠に行ってるのよ!? この男の指輪は…」
(;;゚:ё:゚;)「そ、そうだ! これが見えないのか!? 帝国軍の証しだぞ!」
ブーンに指輪を見せつける。どうやら、この指輪が帝国の証のようだ。
この男はやはり帝国の人間なのだろうか。
( `ω´)「そんなの、どうにでもなるお! どうせ盗んだりしたんだお!」
(;;゚:ё:゚;)「…! お、お喋りはそこまでにしてもらおうか」
男がサッと手を上げた。
すると剥製が動き始めたではないか。
ξ;゚д゚)ξ「ひっ…」
(;`ω´)「うぅ…」
ツンとブーンは恐怖から呻く。
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:48:18.98 ID:5wxMOfu9O
(;`ω´)(こいつが操っているのかお? 魔術ってヤツかお…?)
常識では考えられない事態にブーンは恐れ、混乱した。
すると男はナイフをもう一本取り出し、ブーンの足下に放り投げる。
(;゚:ё:゚;)「それで自害しろ。剥製に殺されるのは嫌だろう…?」
ξ;゚听)ξ「あ、あの人は関係ないでしょ?」
(;゚:ё:゚;)「いいや、危険なヤツだ。ここで死んでもらう。逆らえば、分っているな…?」
ξ;゚д゚)ξ「……!」
男の言葉はツンを縛り付ける。ツンは目を閉じて脱力した。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:50:46.77 ID:5wxMOfu9O
( `ω´)「………」
(;゚:ё:゚;)「さあ早くやれよ!」
ブーンは銃をポイントしたままナイフを広う。
(;゚:ё:゚;)「そうだ…いいぞ…」
ブーンは腹にナイフを突き立てる。
(;゚:ё:゚;)「いいぞ、ズバッといけ! ヒヒヒ…」
( `ω´)「最後に聞きたいお…。ツンをどうする気なんだお?」
問いながら剥製を観察するブーン。
男はなかなか自害しないブーンに苛ついている様子だ。
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:52:03.33 ID:5wxMOfu9O
(;゚:ё:゚;)「いいから早くやれよッッ!」
ヒステリックな声で喚く。
( `ω´)「死ぬ前に教えてくれたって罰は当たらないお」
ブーンの頑固な態度に、男は痺れを切らしたようだ。
(;゚:ё:゚;)「〜〜! いいだろう、教えてやる。ここに入ってくる時に数々の剥製を見ただろ? 一度人間の剥製も造ってみたくてね…!
それも美しいのが作りたいんだ!」
ピクッ…とツンが体を揺らす。そして目を見開いた。
( `ω´)(やっぱり…)
(;゚:ё:゚;)「満足したか?満足したなら早く──」
( `ω´)「だが断る」
ブーンはナイフを落とした。カッという音を発して床に突き刺さった。
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:54:17.61 ID:5wxMOfu9O
(;゚:ё:゚;)「な…」
ξ゚听)ξ「剥 製 で す っ て ?」
男は少し考えた後、しまった、という表情になった。
( `ω´)「ツン、これでわかったお?」
ξ゚听)ξ「ええ、帝国の人間は魔女を必ず火炙りにするって聞いたわ、よっ!」
ツンの頭突きが男の顎を強打する。その衝撃で男はよろめき、ナイフがツンから遠ざかった。
ブーンはそれを見逃さない。
乾いた轟音が響き、ナイフを男の手からもぎ取った。ブーンはすかさず疾走し、男の関節を捻りあげる。
(;;゚:ё:゚;)「ヒィー、ヒィー!止めてくれぇ〜!」
男が捕らえられたというのに、剥製は動かない。ブーンはその独りでに動く剥製の正体を理解した。
これらは勝手に動いている訳ではない。そして危険はない。
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 01:59:03.04 ID:5wxMOfu9O
ツンが遠ざかった事を確認してから問い掛ける。
( `ω´)「コイツどうするお?」
ξ゚听)ξ「ちょっと質問があるわ」
ツンは男にゆっくりと近付きながら言う。
(;;゚:ё:゚;)「な、なんでも喋るから殺さないでぇ!」
( `ω´)「お前はツンを殺そうとしたのに─!」
ツンが手で制す。
ξ゚听)ξ「アンタは帝国の人間じゃないわね? その指輪はどうしたの?」
(;;゚:ё:゚;)「ち、違います! 指輪は帝国の兵士の死体から奪った物ですぅ!」
ξ゚-゚)ξ「…そう。それだけ分かればいいわ」
( `ω´)「で、コイツどうするお?」
ξ゚听)ξ「なにも命まで奪う事はないわ」
(;゚:ё:゚;)「じゃ、じゃあ助けてくれるんですね!?」
ξ゚听)ξ「ええ。でも…」
肌が弾けるような痛々しい音。
ツンの平手が男の顔に炸裂する。続けて何度も、何度も平手を打ち込んだ。
(;':ё:`;)「ひぃ、アブォ! うぁ! メメタァ! やめ─!」
ブーンはその様子を黙って見ていたが、ツンの手がどんどん腫れていくので腕を掴んで制止させた。
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:03:06.08 ID:5wxMOfu9O
ξ;゚-゚)ξ「ハァハァ、内藤さん、そいつを放してあげて」
ブーンが男を解放すると、ツンは凄まじい剣幕で怒鳴りつけた。
ξ#゚听)ξ「二度と私の前に現れないで頂戴! もうその汚い顔は見たくもないわッ!!」
(;;゚:ё:゚;)「ヒ、ヒィ〜!」
ツンの怒号に腰を抜かしたようだ。這いながら一目散に逃げて行った。
ξ;゚д゚)ξ「はぁ…はぁ…」
ツンは肩で息をしながら男の出て行った方向を見つめている。
ξ゚-゚)ξ「でも…この剥製襲ってこないわね…」
( `ω´)「これが仕掛けだお」
ブーンは床に刺さっているナイフを取り、投てきした。
刃は獣の頭部の上を通過した。すると同時に剥製は力を失って崩れた。
( `ω´)「上から吊してあったんだお。それをもう一人が動かしてただけだお」
( `ω´)「そこのお前、出て来いお」
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:05:46.66 ID:5wxMOfu9O
返事はない。
( `ω´)「今出て来ないと命はないお」
脅すと、天井からロープが垂れ、別の男が降りて来た。
(;`e`)「あ、あの、命は助けてくれるんですよね…?」
( `ω´)「死にたくないならさっさと逝けお!」
(;`e`)「は、はいぃぃ!」
ブーンの気迫に震え上がって一目散に逃げ出した。
( ^ω^)「ツン、無事でよかったお。それにしても怖くなかったのかお?」
ξ゚-゚)ξ「こ、怖くない、わよ…」
精一杯強がってみせようとしたらしいが、無理だった。
ツンの体は震え、瞳からは涙がこぼれ落ちる。
緊張の糸がプッツリと切れたようだ。
突然はらはらと泣き出したツンに、ブーンはどうするか考えた。