71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:08:13.80 ID:5wxMOfu9O
VIPでの友人、プレイボーイのショボンの言葉をが頭に浮かんだ。
ブーンはぎこちない動きでツンを抱き締めた。抱き締められた事で安心したのか、今度は声をあげて泣き出してしまった。
ξ;д;)ξ「うぇぇん…怖かったよぉ…」
ブーンはツンが落ち着くまで、ずっと抱き締めていた───
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:10:20.90 ID:5wxMOfu9O
二人は教会を出て、村に向かって歩き出す。
ツンは真紅のドレスを脱ぎ捨て、普段の服を着ていた。
( ^ω^)「この先の崖の下にバイクが停めてあるお」
ξ゚-゚)ξ「バイク…?」
( ^ω^)「すごく速い乗り物だお。モナーに借りたんだお」
ξ゚-゚)ξ「ふーん。………ねぇ、ブ、…ブーン?」
立ち止まって、遠慮しがちにツンが呼び掛ける。
( ^ω^)「! 今、ブーンって呼んでくれたのかお?」
ξ//_//)ξ「………」
( ^ω^)「うれしいお! で、なんだお?」
ξ//_//)ξ「……その、手、つないでいい?」
(;^ω^)「き、急にどうしたんだお?」
ξ////)ξ「か、勘違いしないでよね! 手が冷たそうだから温めてあげるって言ってるのよ!」
(;^ω^)「お願いしますお」
二人は手をつないで歩き出す。あの崖の前に来た。
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:13:28.90 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「これ降りれるかお? てかよく登ってこれたお…」
心配して聞くと、ツンの口からは、信じられないような事実が飛び出した。
ξ゚听)ξ「あっきれた…。まさかこれを登ってきたの?」
横を指さして言う。
ξ゚-゚)ξ「あっちに坂があるわよ」
(;^ω^)「!!!」
ブーンはこの崖で死にかけた事は、あえて話さなかった。
ξ゚听)ξ「バイクってこれかぁ。モナーが乗っていたのを見た事があるわ」
( ^ω^)「じゃあ話は早いお。後ろに乗ってくれお」
ブーンの後ろに座る。
( ^ω^)「しっかり掴まってるお!」
(;^ω^)「ちょっと苦しいお…」
ξ゚-゚)ξ「あ、ご、ごめんなさい!」
ξ//_//)ξ「…今のじゃ、ダメ?」
(;^ω^)「……許可するお」
絞めつけられて多少苦しいがここは耐える。アクセルを捻り、村に向かって走り出した。
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:14:01.09 ID:5wxMOfu9O
──森の奥地
(;゚:ё:゚;)「い、いい今に見てろよ…ヒヒヒヒ…」
('e')「まだ何かやるんですか…?」
(;゚:ё:゚;)「俺をこんな目にあわせやがって…。後悔させてやる…」
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:22:32.23 ID:5wxMOfu9O
時間を逆上ること約二ヶ月前
──VIP軍第三衛星基地:20Fオフィス
バンッと男が机を叩き付ける。彼の名前はドクオ。ブーンと同じVIP軍第三攻撃部隊のパイロットだ。
('A`)「なんで救助命令を出さないんだ!」
椅子には胸に勲章を付けた男が座っている。彼の名前はVIP軍第三攻撃部隊の司令官、ギコだ。昇進してから数年しか経っていないが、司令としての能力は確かな物だ。
ギコは諭すように言う。
(,,゚Д゚)「あの辺りはスクリプトの連中が巡回している。生存しているか分らない者の為に部隊を出す訳にはいかないのだ」
('A`)「だから何度も言ってるだろ! スクリプトのヤツらは俺が蹴散らしたってよ!
…一匹やたら強えぇのは逃がしちまったけどよ…。
でもブーンのヤツには指一本触れさせてねぇ」
(,,゚Д゚)「だがお前はホライゾンをロストした。それ以来救難信号もなしだ」
('A`)「それはアイツの機体が妨害電波を出したからだろ。救難信号がないのは恐らく装置の故障か何かだ」
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:25:45.55 ID:5wxMOfu9O
(,,゚Д゚)「………お前が何と言おうが、生存している確証がないと部隊は出せない。これは本部の決定だ。我々は私情では動けんのだ。
それに私は──」
ギコはそこで口ごもり、苦虫を噛み潰したような表情で眉間にシワを寄せる。
('A`)「……先輩よ、アンタは俺の憧れだった。強く、人望も厚かったよな?
アンタに憧れて俺は軍に入ったんだぜ。司令官に昇進した時、俺は心から祝福したさ」
(#'A`)「…だが結局アンタは軍の犬って事かよ!? アンタには─!」
ドクオの言葉はギコを苦しめる。彼の表情は悲痛なものだった。その表情を見てドクオは言葉を飲み込んだ。
彼もこれで良しとしている訳ではなかった。
だが、地位が上がれば見えてくる軍の大きさ。隊の者の命を預かる立場の責任の重さ。それらから彼は苦渋の選択をしたに違いない。
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:28:06.57 ID:5wxMOfu9O
('A`)「…すまねぇ。アンタの立場と責任も分ってるつもりだ。……でも俺は行くぜ。止めるなよ」
ドクオは踵を返してドアに向かった。
(,,゚Д゚)「……待て」
('A`)「止めるなと──」
(,,゚Д゚)「一人で行っても間違いなく命を落とすだろう。お前ほどの優秀なパイロットを失うのは惜しい。
…第三部隊とは別の、私の護衛部隊を貸そう」
('A`)「…! いいのか?」
(,,゚Д゚)「なに、第三部隊とは直接関係ない物だ。人道的世論もある、本部も大した事はできないはずだ。まあ始末書くらいは書かされるかもしれんがな」
喋りながら目を閉じて肩で笑う。
('A`)「…すまねぇ。恩にきるぜ」
ドクオは頭を下げるとオフィスを出て行った。彼が出て行ってから目を開き、ドアを見つめて呟く。
(,,゚Д゚)「こんな事では上に行く事は出来ん…。俺は甘いのかもな。モナーよ…」
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:30:38.97 ID:5wxMOfu9O
(´・ω・`)「…ブーンを助けに行くつもりなんだろ?」
廊下でドクオを待っていた男の名前はショボン。彼もまた、VIPのパイロットだ。
実力はドクオと並ぶ。
('A`)「ああ、ヤツは絶対生きている。ほっとく訳にはいかねぇ」
(´・ω・`)「君なら絶対そう言うと思ったよ」
('A`)「あとショボ、最初からお前は頭数に入っている。文句はないな?」
ドクオは意地の悪そうな笑みを浮かべて言った。
(´・ω・`)「相変わらず傍若無人な性格だね。OK、付き合うよ。…スクリプトにはちょっと痛い目にあってもらおうか」
ショボンは口を不敵に歪めながら言う。
('A`)「アイツが生きてるってのは信じてるが時間が経つにつれて生存率は低くなる。グズグスしてられねぇ、行くぞ」
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:32:26.13 ID:5wxMOfu9O
──格納庫
('A`)「俺とショボを含めて10人か…。チッ、やっぱり全部隊の出動は不可能ってか?」
(´・ω・`)「流石に全部は本部が許さないんじゃないかな。
でもこれだけいれば不可能ではないよ」
ドクオ達は寄り道をせずに来たはずだが、格納庫には既に8人のパイロットが待機していた。ギコの手際の良さには感嘆するものがある。
パイロットの一人がこちらに歩いてくる。
「司令官からの指令で我々が同行します。この任務の間は貴方に全指揮権が委ねられました。命令を」
生まれてから一度も指揮など執った事のないドクオは少し焦る。
('A`)「あ、ああ。みんなよく聞いてくれ。今回の作戦は第三攻撃部隊、内藤ホライゾン隊員の捜索、救助だ。捜索範囲は広範囲に及ぶ。長期間の任務になるかもしれない。
それと、大部隊ではないが敵機の確認もされているから交戦する事になるだろう。覚悟は──」
('A`)「失礼、愚問だったな」
ギコ直属の護衛部隊は精鋭ばかりだ。まさにその質問は愚問だろう。
85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:34:06.48 ID:5wxMOfu9O
('A`)「説明は以上だ。グズグスしている猶予はない、質問は機内で聞こう。総員、出撃準備にかかれ!」
ドクオ達は戦闘機に乗り込む。
ドクオの乗り込んだ戦闘機には、ポップなタッチで女神の絵が描かれている。これは彼自身が入隊した頃に描いた物で、ギコに見つかった時はキツい灸を据えられたりもした。
ドクオとショボン、護衛部隊で戦闘機は8機。補給艦には二人が搭乗していた。
発艦士官から通信が入る。
『搭乗者IDを確認します。…………確認完了』
今度はスピーカーから音声が流れた。
《これよりゲートを開きます。作業員は速やかに退避して下さい。繰り返します。作業員は速やかに……》
作業員が退避し、ゲートが開く。
('A`)「ブーン…待ってろよ。これより発艦、作戦を実行する」
『了解!』
ドクオ達はブーン救助に向けて、ゲートから飛び出して行った────
86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:36:14.30 ID:5wxMOfu9O
⊂二ニニ( ^ω^)ニ⊃ブーン
「僕もやる!ブーン!」
村に着いたブーンは子供と戯れていた。二人は手を広げて駆け回る。
その様子をポカンと眺めていたツンの前に、驚愕した顔の村長が現れた。
彡´д`)「おお…、ツン…!」
ξ゚听)ξ「お祖父さん…」
二人は駆け寄り、抱擁しあう。ツンは村長の胸に顔を埋めて涙を流す。
ξ;д;)ξ「ごめんなさい…もう二度と勝手に出て行ったりしないわ……」
彡´д`)「ツンや…、いいんじゃよ。お前が生きててくれただけでワシは嬉しいよ…」
暴れる子供を押さえ付け、二人の様子を少し離れた場所から見ていたブーン。その後ろにいつの間にかモナーが立っていた。
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:37:54.08 ID:5wxMOfu9O
「変わり者の人だ! 逃げろぉ!」
(;^ω^)「モナーは良い人だお。そんな事言っちゃダメだお」
「でもお母さんが近寄っちゃダメって…」
( ´∀`)「もう慣れたから平気モナ」
モナーは笑みを浮かべて言う。
「…でも、ホントは遊んでほしかったんだ! 面白そうな物作ってるし。……内緒にしてくれる?」
( ^ω^)「内緒にするお」
ブーンは子供と指きりをする。
「絶対内緒だからね!」
子供はブーンしながら家に帰って行った。それを見届けてから、モナーは労をねぎらうように言う。
( ´∀`)「二人とも無事で良かったモナ。お疲れ様、よくやったモナ」
( ^ω^)「モナーの発信機とバイクがなかったら間に合わなかったお。感謝するお」
改めて、礼を言う。そしてツン達に目線を移して言った。
88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:39:00.19 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「今日はモナーの家に泊めてくれないかお?」
( ´∀`)「別に構わないモナ。二人に気を使うなんて、なかなか気が利くモナ」
( ^ω^)「昔からゴマすりだけだけは得意だお」
(;´∀`)「自慢するような事じゃないし
それはゴマすりとは言わないモナ…」
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:39:46.33 ID:5wxMOfu9O
それからは、いつも通り平和な村に戻った。村人はツンが失踪しかけた事を知る由もなかったので、村に変化はない。
いや、一つだけ細やかな変化があった。ブーンの存在により、子供達がモナーを避ける事がなくなったのだ。
やはり村は平和であった。
だが、その平和は唐突に打ち壊される事となる。
90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:41:28.58 ID:5wxMOfu9O
ブーンとツンは薪を拾いに森に来ていた。ついでに食べられる野草なども採ったりと、普段と変わらない日常。
ξ゚听)ξ「だいぶ薪も集まったし、そろそろ帰えろっか?」
( ^ω^)「野草もたくさん採れたし、ツンの料理が楽しみだお」
ξ゚ー゚)ξ「ふふふ、楽しみにしててね」
ブーンは幸せだった。このまま過去の事は全て忘れてこの星で暮らすのも悪くない、そんな考えも浮かでいた。この暮らしが続くなら…。
しかし二人が村に戻ると、なにやらいつもと様子が違う。村人が一ヵ所に集められ、その前には鎧の上からマントを羽織った人間が数人。
剣や槍を所持しているのを見ると穏やかな相手ではなさそうだ。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:43:07.58 ID:5wxMOfu9O
ξ゚听)ξ「……?」
ξ;゚-゚)ξ「!!!」
( ^ω^)「なんだお?アイツらは…」
ツンはガクガクと震え出す。そしてその場に座り込んでしまった。
(;^ω^)「どうしたんだお? 具合でも悪いのかお?」
ξ;゚听)ξ「帝国軍…!」
震える口から搾り出された言葉はブーンにも衝撃を与えた。確かに彼らの指には光を反射する物がはめられている。
(;^ω^)「なんで帝国のヤツらがこの村にいるんだお?
とにかく、森の奥に隠れるお!」
二人が引き返そうとした時、村人の中から一人の男が立ち上がった。
ξ;゚听)ξ「お祖父さん…!」
92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:44:29.67 ID:5wxMOfu9O
彡´∀`)「ワシが村長じゃ。そんな女などこの村にはいない。お主らの勘違いじゃろう」
「隠しても無駄だぞ。数日前、この村の存在と、ここに魔女がいる事を我々に伝えた者がいる。この村が実在した以上、魔女の存在もあながち嘘とは思えぬ」
彡´∀`)「だからそれはお主らの勘違いじゃろうて」
「フン、まあよい。あくまで隠し通す気ならこちらにも考えがある」
帝国兵は手で合図を送る。すると後ろに控えていた者が村長を取り押さえた。
彡´д`)「な、何を…」
「貴様は見せしめという言葉を知っているか…?」
仮面の奥では残虐な笑みを浮かべているのだろう。
楽しげな声で、また合図を送る。すると今度は獲物を引き抜いた。
その様子に、村長の顔からはサッと血の気が引いていく。
93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:46:42.06 ID:5wxMOfu9O
ξ;;)ξ「いやぁ! お祖父さモゴ…!」
(;^ω^)「大声出すと見つかるお!」
ブーンは必死でツンの口を押さえつける。尚も暴れるツン。
(;^ω^)「ちょ、おとなしく……ハッ!」
ξ )ξ「ヒャッ…」
一瞬で落とされたツンを抱えて、ブーンは森の奥に駆け出していった。
彡ーдー)(ツンよ…生きておくれ…)
彼らが本気なのを悟った村長は目を閉じた。
その体を三本の剣が刺し貫く。傷口から血を吹き出して崩れ落ちる村長。
村人の悲鳴と子供たちの泣き声がこだました。
帝国兵は騒然とする村人を黙らせる為に、大きな声で伝える。
「どうだ! 我々が本気なのが分かったか?
隠しても良い事はないぞ。大義は我々にある。次に来る時までにどうする事が賢明かよく考えておけ!」
そう言い残し、帝国兵は去って行った…。
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:48:49.81 ID:5wxMOfu9O
──その夜:村長家
村中の男達が集まっていた。
村長の遺体は手厚く埋葬され、墓が立てられた。ツンは悲しみに暮れていた。しかしブーンが休むように言っても自分に責任があると、この集会には出席していた。
「クソッ!帝国の奴等ふざけやがって!」
「俺達が何をしたっていうんだ!」
「チクショウ…!」
「でも、どうするんだ…?」
一人が怒号をあげると次々と帝国を罵倒する言葉が飛び交ったが、最後の一言で皆静まってしまう。
「……あいつらが言ってた女って、ツンちゃんの事だよな…?」
一人がそう言うと、その場の全員がツンの方を見た。
ツンはここまで事が大きくなったのでは話さない訳にはいかないと、あらかじめ数日前の事を話していた。
たくさんの視線を浴びてツンは俯いてしまう。
「こんな良い子が魔女のはずないじゃないか…」
「ああ、真面目だし器量も良いし…」
ツンを気遣う言葉に頷く村人。だが、
「でもどうするんだ?」
さっきと同じ言葉にまた、黙り込んでしまった。
95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:50:39.32 ID:5wxMOfu9O
「……やっぱりツンちゃんを差し出すしか…」
( ^ω^)「!」
「それしか方法はないよな…」
「可哀想だけどしかたないよ…」
一人がツンを差し出す提案をすると、その考えは次々と広がっていく。広がれば広がるほど、皆その提案を決定的な物にしようとしていた。
どこの世界でも知的で集団行動を取る生物の愚かしさは同じらしい。
多数の意見に賛同する集団心理はここにも存在した。そして尤もらしい理由をあげて自己を正当化するのだ。
確かにこの場合は最も合理的とは言えなくもないが…。
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待ってくれお!」
だがブーンは違った。
( ^ω^)「なんでツンが犠牲になるんだお? ツンにはなんの罪もないお! おかしいお!」
「そうは言ってもなぁ…」
「なぁ?」
「ああ、しかたない事だ」
ξーдー)ξ「………」
(#^ω^)「………」
96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:53:21.73 ID:5wxMOfu9O
ツンは俯いたまま黙っている。
村人の頭の中ではもうツンを差し出す事は決定したようだ。今度はブーンを説得するように言う。
「他に方法はないだろう?」
「村の為に小さな犠牲は──」
(#`ω´)「お前らいい加減にしろお!!」
ブーンの怒鳴り声に村人は言葉を飲み込む。
(#`ω´)「なんで言いなりになってるんだお? なんで戦おうとしないんだお!? お前らみんな馬鹿だお!」
「な、なんだと!?」
「そんな事言ったって帝国に敵う訳ないじゃないか!」
(#`ω´)「やってみなきゃ分らないお!」
「こんな小さな村だぞ! 敵うはずがない!」
「そうだ! それによそ者のお前に何がわかるってんだ!」
「なにか方法があるなら言ってみろ!」
確かにこの村の人数だけでは帝国に敵うはずがない。ブーンは歯ぎしりをしながら黙ってしまう。
「やっぱり何もないんじゃないか。適当な事を言うな!」
ξ;;)ξ「もうやめて!」
ツンが泣きながら言った。
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:55:37.81 ID:5wxMOfu9O
ξ;;)ξ「私が行けば全ては丸く治まるんでしょう? いいわ、私が──」
(#`ω´)「まだそんな事言ってるのかお! ツンも馬鹿だお!」
ξ;;)ξ「私だって…! でも他に方法はないじゃない!!」
(#`ω´)「ツンは死にたいのかお!? みんなはツンを殺したいのかお!?」
ξ;;)ξ「死にたい訳ないじゃない! でもどうする事もできないのよ…」
「俺達だってツンちゃんを助けてやりたい気持ちは一緒だ! だからといって帝国と戦う事は…」
( ´∀`)「一つだけ帝国と戦う方法があるモナ」
「!」
( `ω´)「!」
今まで部屋の隅で沈黙を続けていたモナーが口を開いた。
「変わり者が何を考えてるか知らないが
滅多な事言うな。そういえばお前もよそ者だったよな?」
さっきから一番喚き散らしていた若者がモナーを睨み付ける。だが、
「……待て。ここでいがみ合っても意味はない。話を聞こうじゃないか」
興奮している若者を制して、モナーの話を聞こうとする者が現れた。
( ´∀`)「その前にブーン、ちょっと頭を冷やすモナ。前にも言ったけど冷静になれモナ」
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:57:16.32 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「…分かったお」
ブーンは怒りを押さえ込む。それを見届けると、モナーは語りだした。
( ´∀`)「この大陸、特にこの地域にはまだ帝国の息がかかってない街や村がいくつかあるモナ。それらの街村に応援を呼び掛けるモナ」
( ^ω^)「それはつまり…」
( ´∀`)「連合軍を結成するモナ」
モナーの提案にざわつく村人。だんだんとやる気に満ちた顔をする者、難しい顔をしている者など、様々な感情が渦巻く。
恐らく戦う事など考えた事もなかったのだろう。他の街や村と協力して軍を結成する事に、可能性を見出だしている者が多数を占めてした。
「確かに、それなら協力者の数次第で勝てるかもしれない!」
「ああ! 大きな街が協力してくれれば勝機はある!」
「戦争で手柄を立ててやるぜ!」
勝機があると知った若者はほとんどがやる気のようだ。
だが齢を重ねている者はまだ不安があるようだ。
「しかし帝国は強大だぞ。協力を得たとして、勝てるものなのか…」
99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:58:34.43 ID:5wxMOfu9O
( ´∀`)「まだ策はあるモナ」
( ´∀`)「ブーン、君が乗ってきた戦闘機がある場所を覚えているモナ?」
( ^ω^)「だいたいの位置は覚えてるお。修理するのかお?」
( ´∀`)「完全には無理だと思うモナ。だから戦闘機の部品を借りて新しい兵器を作るモナ」
「せんとうき…? なんだそれは?」
( ´∀`)「君達に説明しても理解できないと思うモナ。簡単に言えばすごく強い武器だモナ」
「……わかった。君に任せよう。後は協力を求める為の使者だが…」
話し合いの結果、大きな街に行くのはブーンに決まった。よそ者ではあるが、ツンを救い出した事実から、なにか漠然とした期待を抱いているのだろう。
そして同行者は、一言も喋らずにいた、この村で最も頼りになるとされる若者が選ばれた。
100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 02:59:27.89 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「ええと、君は…」
(´<_` )「弟者だ。よろしくな。兄者でもよかったんだが、知っての通り兄者は引きこもりだ。
帝国の奴等が来た時だって家から出なかったしな」
(;^ω^)「確かにあの場にいなかった気がするお…」
この場にも、いない。
(´<_` )「ああ、ある意味かなりの強者だ」
そしてもう一人、帝国兵が来た時の事を考えると、村を離れるのが一番だという結論からツンも行く事となった。
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 03:00:42.74 ID:5wxMOfu9O
──翌日
( ^ω^)「どうだお?」
ブーンとモナーは戦闘機が不時着した場所に来ていた。
( ´∀`)「大きな傷もあるけど大丈夫モナ。たぶん。
でもなんで分解した跡があるんだモナ?」
ブーンは救難信号を飛ばす装置を指さす。
( ^ω^)「あれを作る為だお」
( ´∀`)「救難信号の機能が故障したのかモナ。
………それ、作りが甘いモナ」
(;^ω^)「僕の技術じゃこれが限界だったお」
( ´∀`)「まあいいモナ。この様子じゃ飛べないモナ。その装置、分解してもいいかモナ?」
これを分解してしまうと自分の位置を知らせる事ができなくなってしまう。
ブーンは悩んだが、これ以上電波を飛ばしても無駄だと自分を納得させ、了承した。
( ´∀`)「ちょっと待ってるモナ〜」
モナーは袖を捲り、作業に取り掛かる。その様子を見ていたブーンは息を飲んだ。
露出された腕には痛々しい火傷の跡が残っていたのだ。
( ^ω^)「…火傷かお?」
( ´∀`)「ん〜? そうモナ」
モナーは話ながら喜々として分解を始める。機械をいじるのがよほど好きなようだ。
102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 03:02:00.65 ID:5wxMOfu9O
( ^ω^)「この星に来てから火傷したのかお?」
( ´∀`)「違うモナ。第三にいた頃に負ったモナ」
(;^ω^)「なんで皮膚移植しなかったんだお?」
( ´∀`)「………これは、絆モナ」
( ´∀`)「この話は終わりモナ。ちょっと静かにしててほしいモナ」
モナーの顔に一瞬影がかかったように見えた。しかしそれは束の間で消えてしまい、すぐに喜々とした表情に戻っていた。
バラバラにされた部品を今度は戦闘機に組み込んでいく。
ブーンも驚く程の手際の良さだった。
( ´∀`)「終わったモナ」
( ^ω^)「テラハヤスwwwwww」
ブーンならこれの3倍は時間がかかっただろう。
( ´∀`)「ちょっと動かしてみるモナ」
メインコンピュータを起動させ、状況を確認する。
被害状況は以前と変わらないが、航行は可能だ。
( ^ω^)「飛べるお」
( ´∀`)「じゃあ村に戻るモナ」
モナーも乗り込み、村に向けて飛び立った。
突然降りてきた戦闘機に村人は恐怖したが、今はそんな事は気にしていられない。
モナーは早速、戦闘機の分解を始め、ブーンは出発の準備に取り掛かった。
103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 03:04:34.31 ID:5wxMOfu9O
──出発当日
村の入口には馬車がある。ブーン達の為に用意された物である。ブーンの知る馬より、一回り大きな生物が二頭、出発を待っている。基本的にこの星の生物は大型らしい。
馬車を操縦するのは弟者だ。彼の手綱捌きは相当な物らしい。この為の弟者でもあった。
( ´∀`)「これを持っていくといいモナ。即席で作った物だから範囲は狭いけど、帝国領土まで行かなかったら大丈夫モナ」
モナーの手には通信機が握られていた。
( ´∀`)「なにかあったら連絡するモナ。助言くらいはできるモナ」
「気をつけて行けよ! 良い結果を期待してるからな!」
村人達は揃ってブーン達を見送る。
( ^ω^)「ありがとうお」
「帰ってきたらまた遊んでね!」
( ^ω^)「約束するお」
ξ゚-゚)ξ(お祖父さん…行ってきます)
(´<_` )「ではそろそろ出発するぞ」
その時、弟者の家の扉が開いて男が出てきた。