177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:02:01.17 ID:5wxMOfu9O
ξ;゚听)ξ「見てたけど、大丈夫?」
派手に転がる弟者を見ていたのか、心配そうに尋ねる。
(´<_` )「擦りむいた程度だ。それより馬が一頭になってしまったな…」
ツンは馬車に戻り、手当ての為の道具を持って来た。
傷口を消毒薬で洗い、包帯をする。手当てが終わると、ブーンに道具を渡して言った。
ξ゚-゚)ξ「ブーンは自分でしてね」
(;^ω^)「わかりましたお」
時折見せるツンの刺のある態度だったので、ブーンは渋々と消毒を始めた。
(´<_` )「馬が一頭では馬車を引くのは無理だな。必要な物だけ積んで歩いて行こう。幸いリヴムントまでは後少しだ」
ξ゚听)ξ「そうね。ほらブーンも早く手当てして手伝って」
手当てを終えたブーンは二人に続いて馬車から荷物を下ろし始めた。
そしてリヴムントに向けて歩き出した。
178 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:03:52.68 ID:5wxMOfu9O
あれから途中、襲われる事もなく夕方には到着できた。
人通りは多いが、ティーグルとは別の活気があった。
三人が街に入ろうとした時、通信機から呼び出し音が鳴り響いた。
( ^ω^)「こちらブーンだお。何かあったのかお?」
『悪い報告モナ…』
モナーの声は沈んでいる。
( ^ω^)「どうしたんだお?」
『サイスは協力してくれなかったモナ…』
ξ゚听)ξ「そんな…きっと力になってくれると思ったのに…」
『設計図を見せたら、「この設計には欠陥がある、これでは勝つ事など不可能だ」と言われたモナ…』
( ^ω^)「なんでもっと粘らなかったんだお?」
『僕だって頑張ったモナ! 最後までお願いしたんだモナ!』
突然大きな声を出されて驚くブーン。
(;^ω^)「わ、分かったから落ち着くお」
『とにかく報告はこれだけだモナ…。こっちも忙しいから切るモナ…ハァ…』
通信が切られ、ブーン達の間にも重い空気が漂う。
(´<_` )「まあ、この計画にサイスは最初から入っていなかったのだし、いいではないか」
ξ゚-゚)ξ「そうね…。リヴムントが協力してくれればとりあえずは成功よね」
179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:05:53.27 ID:5wxMOfu9O
──荒くれ者の街:リヴムント
ξ゚听)ξ「噂には聞いた事があるけどかなり大きな街ねぇ」
(´<_` )「外から見るのとは全然違うな」
街の規模はティーグル以上だろう。実際、この地域で最も大きい街である事は疑いようがない。
ツンは歩きながら語る。
ξ゚-゚)ξ「この辺りは昔、五つの街があったそうよ。街同士の争いは絶えなくて、どんどん荒れていったわ。
でもある時、一つの街の領主が五つの街を併合したの。その人は戦いに出て亡くなったらしいわ。そしてその跡を追うようにお母さんも病死。
残された子供が今の領主って訳。
荒れてはいるけど、傭兵の街として機能してるみたいね」
( ^ω^)「ツンは物知りだお! すごいお」
ξ゚ー゚)ξ「本をたくさん読んだからね。これくらい普通よ」
そう言いながら、少し得意気に鼻を鳴らす。
183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:29:45.28 ID:5wxMOfu9O
(´<_` )「しかし広いな。これでは領主邸を探すのも一苦労だぞ」
大体は街の中心にあるのだが、こう広くてはどこが中心なのかも分からない。
( ^ω^)「こういう時は酒場で聞くのがRPGの基本だお」
(´<_` )「RPGとな?」
( ^ω^)「RPGとは僕の星での…」
ξ゚听)ξ「はいはい、そこまで。酒場なら横にあるわよ」
ツンは既に酒場に入ろうとしている。
話の鼻を折られ、少々不満気なブーンだが、文句は言わずに酒場に入る。
184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:32:40.72 ID:5wxMOfu9O
(´・ω・`)「………」
厳つい男達の睨みに怯みながらもカウンターに座る三人。
( ^ω^)「聞きたい事があるお。領主邸はどっちだお?」
(´・ω・`)「……まずは一杯、それが礼儀だろう? サービスはない。さぁ注文を聞こうか」
不機嫌そうな声で言う。
(;^ω^)「じ、じゃあミルクを頼むお」
ξ;゚-゚)ξ「私もミルクを…」
二人の注文を聞き、更に不機嫌そうな顔になる。すぐにも子供は帰れと言われそうだ。
それを察知したのか、
(´<_` )「俺はウィスキーを頼む」
弟者が酒を注文した。
(´・ω・`)「……そこのテーブル席で飲んでるのが領主様だ」
ミルクとウィスキーを出しながら教えてくれた。
後ろ姿なので顔は確認できないが、どこかで見た事ある後ろ姿だ。
しばらく観察していると、視線に気付いたのか後ろを振り向いた。横に座っている女性もそれに釣られて振り返る。
そして目が合った。
186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 08:36:01.40 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚Д゚)「なんか俺に文句でもあるのか?」
(*゚ー゚)「ちょっと、喧嘩はやめてよね」
(;^ω^)「ブッ! ギ、ギコ司令!? それにしぃ婦人も!?」
ブーンは思わずミルクを吹き出す。領主の顔には傷があるものの、ギコと瓜二つだった。
しかしよく見ればこちらの方が随分若い。司令とは10歳は離れていそうだ。
(,メ゚Д゚)「…確かに俺の名はGIKOだ。それくらい知っているだろう。それとも領主が酒場で酒を飲むのはおかしいか?」
(;^ω^)「い、いや、知り合いに似てたんだお…」
(;^ω^)(スゲー、あの夫妻が揃うなんて…宇宙の神秘だお…)
194 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 09:08:18.67 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚д゚)「名前まで同じだと? そんな事があるか。怪しいヤツだな、捕らえろ」
(;^ω^)「ちょwwwwwww」
GIKOの前に座っていた者が立上がり、向かって来た。
ブーンの成り行きを見守っていたツンがたまらず声をあげる。
ξ;゚听)ξ「ちょっと待って下さい! 私達は貴方と争う為に来たのではありません。これを読んで下さい」
ツンはジョルジュからの紹介状を手渡す。
(,メ゚д゚)「ジョルジュからだと? 久しく会ってないな」
GIKOは紹介状を読む。本来ならここで顔色が悪くなるはずだが、GIKOは違った。
(,メ゚Д゚)「ク、ククク…ハッハッハ! お前ら帝国とやり合う気か! こいつぁ面白ぇ!」
( ^ω^)「笑い事じゃないお!」
(,メ゚д゚)「ああ、すまねぇ。俺も帝国の奴等はいつかぶっ殺してやろうと思ってた所だ。そんな時にコレだ。
これが笑わずにいられるかよ。ハッハッハ!」
GIKOは紹介状をヒラヒラ揺らしながら言う。
( ^ω^)「じゃあ協力してくれるのかお?」
(,メ゚д゚)「いいや、ダメだ」
(´<_` )「何故だ? 戦う気があるなら断る理由はないではないか」
(,メ゚д゚)「断るとは言っていない」
GIKOの矛盾している答えに、弟者は首を傾げる。
215 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:39:13.94 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚д゚)「俺が力を貸すのは俺が認めた者だけだと決めているんでな」
ξ゚-゚)ξ「では、どうしたら認めてもらえるのですか?」
(,メ゚д゚)「今の所貴様らを認める気はない」
冷たく言い放つ。
ξ゚听)ξ「そんな! どうかお願いします!」
この街が一番兵を抱えている事もあり、更に傭兵が集まっているので経験は豊富だ。どうしても協力が必要だった。
ツンは必死に懇願するが、GIKOはそれを無視して背を向けた。
ξ;゚听)ξ「せめて何か…何かチャンスを下さい!」
ツンが言い終わると同時にGIKOが振り返り、いつの間に抜いたのか剣を突き出す。
切っ先がツンの喉元に突き付けられた。
(;^ω^)「おまwwwwwいきなりなにやってんだお!」
(´<_`;)「抜いた動作が見えなかったぞ…」
GIKOは二人を無視して凄みのある声で囁く。
216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:41:40.94 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚д゚)「うるせぇぞ女…」
GIKOは切っ先をツンの喉に食い込ませる。喉元から赤いすじが生まれた。
ξ;゚-゚)ξ「…お願いします」
ツンは喉に剣を突き付けられながらも、強いまなざしを向けて再度懇願する。
(,メ゚д゚)「……ふん、気の強い女だ。貴様は合格だ」
ξ゚听)ξ「…え?」
(*゚ー゚)
「今のが彼流のテスト。女の子限定だけどね。よかったね、合格だって」
呆然とするツンを余所に、GIKOはブーンと弟者を見る。
(,メ゚д゚)「さて残りの貴様らだが…」
GIKOは腰の剣をブーンの前に放り投げた。甲高い音を立てて床を跳ねる剣。
(,メ゚д゚)「貴様はこれだ。俺と戦え」
(;^ω^)「…マジかお」
217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:43:44.87 ID:5wxMOfu9O
まさか領主と決闘するとは思ってなかったブーンは恐る恐る剣を拾う。
(;^ω^)「重っ…!」
重力が小さいとはいえ、この環境に慣れ始めているブーンには些か重たい。
ブーンが剣を構える頃にはいつの間にかギャラリーが集まっていた。マスターは平然とした様子で成り行きを見守る。
(,メ゚д゚)「…行くぜ」
GIKOは疾走し、一気に近付く。間合いに入った瞬間、ブーンの視界からGIKOが消失した。
(;゚ω゚)「!?」
下からの殺気。
咄嗟に上半身をのけ反らせる。GIKOの突きが下から、元ブーンの上半身があった場所を貫いた。
ブーンに突きをかわされて、すぐに縦に剣を振り下ろす。
(;^ω^)「〜〜〜〜〜〜ぉっっ!!!!!」
金属のぶつかる甲高い音。
ブーンはこれを何とか受け止めたが、GIKOの剣撃は重く、手が痺れる。
そのまま剣を落してしまった。
(,メ゚д゚)「…貴様、剣を持った事がないのか?」
(;^ω^)「ある訳ないお! 持った事があるのはレーザーサーベルだけだお!」
早口に言って、口を押さえる。
218 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:47:14.15 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚д゚)「??? まあ貴様が剣を持った事がないのは分かった。
だが今の動き、こっちなら大丈夫だろう」
GIKOは剣を床に突き刺して拳を作り、ファイティングポーズを取る。
( ^ω^)「それならおk。VIP流総合格闘術の餌食にしてやるお」
(,メ゚д゚)「御託はいい。来い」
今度はブーンが疾走する。間合いに入るとGIKOの拳が繰り出される。ブーンはこれを頭を少し傾けてかわす。
そして伸び切った腕を自分の腕で外側から巻き取り、封じ込めた。
GIKOは即座に膝を打ち込む。
ブーンは手を放して一歩下がる。GIKOは膝打ちの動作から蹴りに変更する。下がった所に、足が伸びてきた。
ブーンは足が伸び切るのを待つ。そして伸び切った所に拳を打ち込んだ。
伸び切った膝は脆い。
(;メ゚д゚)「うぐ…!」
GIKOはよろめきながら体勢を立て直す。その隙に、ブーンは後ろに回り込んで首を取った。
219 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:50:49.65 ID:5wxMOfu9O
一気に落そうとするがなかなかキマらない。ブーンが躍起になって力を込めると、GIKOの体が沈んだ。
そして次の瞬間ブーンは宙を舞う。
GIKOに投げ飛ばされたのだ。
ブーンがぶつかった机は派手な音を立てて爆砕した。
頭を強く打ち視界が明滅する。
意識がしっかりしてくると、ギャラリーからの歓声が聞こえた。
「兄ちゃんやるじゃねぇか!」
「惜しかったな! あとちょっとだったぜ」
「しかしGIKO様の強さは本物だな」
GIKOはギャラリーを無視して言う。
(;メ゚Д゚)「ハァハァ…なかなかやるじゃねぇか…、合格だ…」
( @ω☆)「でも負けたお…」ξ゚ー゚)ξ「いいじゃない。認めてもらえたんだし」
(´<_` )「うむ。次は俺か…」
(,メ゚д゚)「貴様で最後だな。貴様は何が得意だ?」
(´<_` )「最も得意なのは乗馬だが…」
(,メ゚д゚)「よし、それで勝負だ」
(´<_` )「いいのか?」
(,メ゚д゚)「ただし俺流のルールでやらせてもらう」
GIKOは不敵な笑みを浮かべた。
220 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:53:47.75 ID:5wxMOfu9O
(´<_` )「そのルールとは?」
(,メ゚д゚)「ルールは簡単だ。仲間の援護とコースを外れる事以外、何でもありだ」
この時のGIKOの顔が、レース中に攻撃する事を物語っていた。
(´<_` )「それはつまり、馬に乗ってゴールを目指しながら戦う、という訳だな?」
(,メ゚д゚)「察しがいいな、その通りだ。公平な勝負の為に武器は俺が用意しよう。何が欲しい?」
弟者が悩んでいると、
(,メ゚д゚)「おっとルール追加だ。矢はナシにしよう。すぐに終わってはツマランからな」
(´<_` )「ぬぅ…」
弟者は矢を使う気だったのか、舌打ちをする。
(´<_` )「…そうだな、槍を貰おうか。軽い物を頼む」
(,メ゚д゚)「わかった。馬はどうする?」
(´<_` )「乗ってきた馬がある。それで戦おう」
(,メ゚д゚)「よし…。今日は暗いから無理だ。明日の昼、闘技場で待つ」
(´<_` )「了承した」
弟者が頷くとGIKOは大きな声で言う。
(,メ゚Д゚)「宿屋の主人はいるか!」
221 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 12:57:21.09 ID:5wxMOfu9O
「へい、ここに」
奥の席にいたいかつい髭男が立ち上がった。
(,メ゚д゚)「こいつらを泊めて明日、闘技場に案内しろ」
「仰せのままに…」
(,メ゚Д゚)「今日はお開きだ! マスター、代金は弾んどくぜ。修理にでもまわしてくれ」
GIKOは懐から革の袋を取り出して放り投げる。ズシンと音がした事から、中身は大金が入っているに違いない。
(´・ω・`)「いつもありがとうございます」
「いつもより袋が大きくねぇか…?」
「余程機嫌が良いんだろ」
「こりゃあ俺達も見に行くしかねぇな!」
(,メ゚д゚)「ククク…楽しみだ…。SHII、行くぞ」
(*゚ー゚)「じゃあねぇ〜♪」
GIKOはニヤリとしながら出て行った。SHIIも脳天気な挨拶をしてGIKOに続く。
残されたブーン達、特に弟者はギャラリーに激励を送られていた。
222 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:00:27.26 ID:5wxMOfu9O
──宿:バロス
( ^ω^)「治安が悪いって言ってたけど、そうでもなかったお」
(´<_` )「そうだな。しかしあそこでGIKO殿と出会えなければ、どうなったかは分からんが」
いくら荒くれ者と言っても、やはり人の子である。自分が認めた者には心を許してくれる。
まあこの街にも完全に腐っている者はいるだろうが。
ξ゚д゚)ξ「それより明日のレース、かなり危険なんじゃないの?」
(´<_` )「危険は承知だ。だが俺達馬乗りはいつも命を賭けて乗っている。落ちたら死ぬ事もあるしな」
ξ゚-゚)ξ「そう…」
そう言っても心配そうな顔をする。
(´<_` )「心配するな。俺は死なんさ。兄者との約束もあるしな」
(´<_` )「必ず勝ってみせるさ。必ず…!」
223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:05:15.17 ID:5wxMOfu9O
──闘技場
(,メ゚д゚)「約束の物だ」
GIKOが合図すると側にいた者が槍を弟者に手渡す。
(´<_` )「ふむ、軽くて良い槍だ。あと自分の剣を使うがよいか?」
(,メ゚д゚)「ああ問題ない。俺は剣を二本使わせてもらおう」
そう言って腰にまとめて挿してある剣を軽く叩く。
二人は馬に乗り、入場門から出た。
『ウオオオオォォォ!!!!』
『ワアアアアアア…』
歓声が響く。
( ^ω^)「弟者ー! 負けるなおー!」
ξ゚听)ξ「頑張ってー!」
特等席にいたブーン達に手を振り、スタートラインに向かう。
スタートラインに着いたGIKOも、手を上げていたが、弟者の方を見ると鬼気迫る表情で言った。
(,メ゚д゚)「俺は貴様を殺すつもりで戦う。貴様も殺す気で来い。俺が死んだ時はSHIIに全てを任せるように言ってある」
その表情に、背中に冷たい物を感じたが、
(´<_` )「もちろんだ。遠慮はしない」
自分を奮い立たせるように言い放った。
224 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:06:52.76 ID:5wxMOfu9O
旗が揚げられ、レースはスタートした。二人は距離を取って並んで走る。
二人共、後ろが有利な事は知っているようだ。
四分の一程、並んで走った時、GIKOが仕掛けてきた。
剣を抜いて馬を寄せ、斬りかかろうとしてくる。それに気付いた弟者はGIKOの間合いに入る前に槍を突き出した。
GIKOに迫る槍。GIKOはそれを弾く。間合いに入られた弟者も手綱を放し、剣を抜いた。カーブは足で馬を蹴り、何とかする。
銀の刃が突き出され、弟の剣がそれを弾く。すぐに二本目の剣が前から迫る。弟者は身をかがめてこれをかわす。
このままでは不利だ。
弟者は距離を取る為に馬を操る。
(´<_`;)「槍を選んだのは失敗だったか…」
槍は間合いに入られたらアウトだ。間合いに入られないようにするには、GIKOの剣捌きは上手すぎる。
レースは中盤だ。仕掛けるのは今しかない。
(´<_` )「よし!」
今度は弟者が馬を寄せて攻撃を仕掛けた。
槍を突き出し、自分から相手の間合いに入る。やはりかわされたが、槍の柄をGIKOの奥の肩に押しつけ、一気に薙払う。
槍の柄がGIKOの顔面を殴打し、のけ反る。
そして力が緩んだ時を見計らって剣を打ち払った。
225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:09:30.03 ID:5wxMOfu9O
(;メ゚д゚)「ぐっ…!?」
宙を舞い後方に吹き飛ぶ剣。だがGIKOも空いた手で槍を掴み放さない。
互いに槍を握りあったまま剣を振るう。
鋼の塊は打ち合い、擦れ、弾かれるが、音は歓声に飲み込まれて二人にしか聞こえない。
レースは間もなく終盤に差し掛かる。
四分の三に来た時に、二人は同時に槍を放した。
空いた二人の手には鞭が握られている。鞭を入れながら振り落とされまいと踏ん張る。
踏ん張りながら剣を振る。
(,メ゚Д゚)「やるな…!」
(´<_`;)「GIKO殿も…!」
弟者の剣が閃き、GIKOの胴を斬り裂こうと迫る。GIKOはこれを弾いて弟者の二の腕を斬りつけた。
(´<_`;)「ぐあっ…!」
その時、幸か不幸かバランスを崩した弟者の剣がGIKOの馬の背を斬り裂いた。
GIKOの馬は突然の痛みに呼吸を乱される。弟者が一歩前に出た。
226 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:11:31.96 ID:5wxMOfu9O
(;メ゚Д゚)「クソッ! 落ち着け!
……よし、いいぞ…」
GIKOは馬を撫で、落ち着かせる。弟者との距離は一場身程だ。
(,メ゚д゚)(後はこの距離をどう埋めるか…剣を投げるか…? しかし、かわされたらそれまでだ…)
これ以上距離が開いてはGIKOの敗北は必至だ。しかし距離は少しづつ、確実に広がっていく。GIKOは脳をフル回転させ、この状況を打破する方法を考える。
「お、おい、このままだとGIKO様負けちまうぞ…」
「あの無敗の王者がか? GIKO様が負ける所なんか見たくねぇよ…!」
ゴールまでもう僅かな距離しか残っていないが、弟者は気を抜かない。最後の最後まで全力を尽くすつもりだった。
だが…
「チクショー! お前に勝たせてたまるか!」
一人が酒のビンを投げ付ける。
その一人が起爆剤になり、観客が次々と物を投げ始めた。
「落ちろ! 死ねぇ!」
「よそ者がふざけるんじゃねぇぞ!」
石から酒ビン、挙句の果てにはナイフまで飛んで来る。
(´<_`;)「ぬ…これがアウェーというものか…」
227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:13:38.05 ID:5wxMOfu9O
(#メ゚Д゚)「貴様らやめろォ!」
GIKOは叫ぶが、観客には聞こえない。
弟者があと100m程でゴールする所で、拳大の石が弟者の頭に命中した。
(´<_`;)「ぐああぁ…ッ!」
よろめき落馬する弟者。地面を転がり、動かなくなった。
GIKOは目を見開き、そして目を細めて歯を軋ませる。そのまま弟者の横を駆け抜けてゴールした。
会場は一斉に沸き起こる。
すぐにゴールしたGIKOは馬から降り、観客を睨みつける。そして、
(##メ゚Д゚)「貴様らァッッッ!!!!!!」
凄まじい形相で怒鳴りつけた。沸いていた観客はその一言でピタリと静まり返った。
(##メ゚Д゚)「俺が、俺がこんな勝ち方で喜ぶとでも思ったかァ!!! ふざけるな!!!!」
静まる会場に、ブーンとツンの声が響く。
(;゚ω゚)「弟者! 大丈夫かお!? 生きてるかお!? 死ぬなおぉ!!」
ξ;;)ξ「死んじゃ嫌ぁ! 目を開けなさいよ!!!」
その様子を見ているGIKOはやりきれない表情だ。
228 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:16:21.00 ID:5wxMOfu9O
(´<_`;)「…勝手に、殺すな…」
頭から出血しながらも、弟者が起き上がった。
GIKOはそれを見るとホッと胸を撫で下ろすが、またすぐに怒りの形相へと戻っていった。
そして剣を乱暴に引き抜いて叫ぶ。
(##メ゚Д゚)「物を投げた奴等全員出て来いッッ!!!!
この場で叩き切ってやる!!! 死んで詫びろッ!!!!!」
興奮しているGIKOに弟者がふらつきながら近寄る。
(´<_`;)「GIKO殿…俺は気にしていない。殺す事はないだろう…」
(#メ゚Д゚)「いいや、奴等には当然の罰だ。俺と貴様の神聖な決闘を邪魔した。死んで当然だ」
(´<_`;)「勝負はまたやり直せるではないか。だが殺してしまった命にやり直しはない。頼む…」
怒りが治まる様子がないGIKOに、弟者は負傷しながらも懸命に頼み込んだ。
(,メ゚д゚)「………分かった。貴様がそこまで言うなら奴等の命は一時的に助けよう」
(´<_`;)「一時的とな?」
(,メ゚д゚)「ああ。奴等の命は帝国との戦いで使ってもらう事にする」
(´<_`;)「それでは…!」
(,メ゚д゚)「認めよう、貴様の力を。だが今回の勝負は貴様に預ける事にする。
戦いが終わったら必ず俺と戦え」
229 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:18:33.85 ID:5wxMOfu9O
(´<_`;)「ああ、約束しよう。……すまない、もう、意識が…保t……」
弟者はその場に倒れ込み、意識を失った。GIKOはすぐに医者を呼んで運ばせる。ブーンとツンもそれに同行した。
それを見届けると、怒りの形相ではないが迫力のある顔で叫ぶ。
(,メ゚Д゚)「あの者に感謝しろッ!!! 貴様らの命はヤツによって救われた!!!
だが俺は貴様らを赦すつもりはない!!! その命ッ! 帝国と戦って散らせッ!!!!」
GIKOが言い終えると静かだった観客がざわつき始めた。
(,メ゚Д゚)「貴様らもいい加減帝国には腹が煮えたぎる思いだろう!! 存分に戦えッ!!!!
リヴムントは、ここに帝国と戦う事を宣言する!!!!!」
今日、一番大きな歓声が轟いた。
230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:21:03.60 ID:5wxMOfu9O
──GIKOの屋敷
(,メ゚д゚)「様子はどうだ?」
( ^ω^)「今はぐっすり眠ってるお。命に別状はないって言ってたお。
今はツンが看病してるお」
(,メ゚д゚)「ならいい。さっそく本題に入ろうか」
GIKOは椅子に座り、ブランデーを注ぐ。ブーンにも進めたがブーンは丁重にお断りした。
(,メ゚д゚)「リヴムントは戦える者を全て出すつもりだ。そうだな…33000〜35000くらいは出せるだろう」
(;^ω^)「さ、さんまんご!? テラスゴスwwwwwww」
(,メ゚д゚)「この街の規模を甘く見るな。ジョルジュのヤツはいくつ兵を出すと言っていた?」
( ^ω^)「そういやその辺は何も言ってなかったお…」
(,メ゚д゚)「ふん、あいつの事だ。俺達の出方を見るつもりだったんだろう。せこいヤツだからな」
( ^ω^)「で、どれくらい出してもらえると見てるお?」
(,メ゚д゚)「俺が兵を全て出すならヤツも出来る限り出してくるだろう。
あの街の規模だと…16000が限界だろうな。商人に参加を呼び掛ければ+3000くらいは何とかなるかもしれんが…」
( ^ω^)「最低ラインで考えるとティーグルが16000人、オズンが4000人、ここが33000人、各地の村で2000人くらい…。55000人だお」
231 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:22:15.08 ID:5wxMOfu9O
(,メ゚д゚)「55000か…厳しいかもしれん。帝国は80000〜90000は出してくると俺は睨んでる。
貴様の言う兵器が余程凄まじい物でないと勝ち目はないぞ」
GIKOは難しい顔をする。
( ^ω^)「モナーが言うくらいだから、それは大丈夫だと思うお」
ブーンは多少自信なさげに言う。大丈夫という根拠がないのだから当然だ。
(,メ゚д゚)「そうだ、こっちにも秘策があるぞ」
( ^ω^)「なんだお?」
(,メ゚д゚)「それは会議で発表しよう。さっき使者を送った。三日後にティーグルで会議をする」
( ^ω^)「わかったお」
232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
:2006/05/12(金) 13:24:44.09 ID:5wxMOfu9O
──その夜:ブーンに用意された部屋
ブーンがドアを開けると、中にはツンがベッドに腰掛けていた。
…寝る時の格好なのか、なかなか際どい服装だ。ブーンはドギマギしながら尋ねる。
(;^ω^)「ど、どうしたんだお?そんな格好で…。お、弟者の様子はどうだお?」
ξ゚-゚)ξ「暑いのよ…。弟者は隣りの部屋でよく眠ってるわ…」
ツンは立上がってブーンに歩み寄る。ブーンにはその歩き方も妖艶に見える。
ツンに合わせてブーンは後退する。
(;^ω^)「と、とにかく服を着るお…」
ξ////)ξ「……いいの」
ツンの絞り出したような恥ずかしげな声。その声に、ブーンの喉はゴクリと唾を飲み込む。
(;^ω^)「よ、よく、ない…お…」
そう言ってる間に壁まで追い詰められる。そして腕を握られた。
ツンの潤んだ瞳を見て顔を強張らせるブーン。目が泳いでいる。
ξ////)ξ「ねぇ…」
(;^ω^)「た、確かに暑いお。ちょっと外で涼んでくるお!」
ツンの手を振り払い、一目散に部屋から飛び出した。
一人残されたツンは今はいないブーンに向かって呟いた。
ξ//_//)ξ「せっかく二人きりだったのに…。意気地なし…」