520以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 00:52:53.08 ID:j0xcX/jkO
Fear is human race's oldest feelings.
─恐怖は人類の最も古い感情である─
        H.P.L
 
 
 
 
 
 
──VIP軍衛星基地
(;^ω^)「か、身体が重いお…。それに呼吸が苦しいお…」
 
ブーンは手すりに掴まりながら歩いている。
 
('A`)「すっかりあの星の環境に慣れちまったみたいだな。おいショボ、どこ行くんだよ?」
(´・ω・`)「女の子漁りに行くのさ。報告は君達でやってよ。指令はオフィスにいるからさ」
('A`)「あ? ふざけんな。
お前も来いよ」
(´・ω・`)「めんどいから断る。それとも今夜…」
 
ショボンがドクオを舐め回すように見る。ドクオはその視線に顔を歪めた。
 
(;'A`)「チッ、分かったよ。行け行け」
 
追い払うように手を振ってオフィスに向かった。


 
524以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 00:55:55.56 ID:j0xcX/jkO
──オフィス
(,,゚д゚)「任務ご苦労。それと内藤ホライゾンの帰還を祝福しよう」
( ^ω^)「ありがとうございますお。GIKOも御変わりもなく…」
 
そこでブーンは口を押さえる。が、遅かった。
 
(,,゚Д゚)「…上官を呼び捨てにするとは偉くなったものだな」
 
怒ってはいなさそうだが、威圧感がある。すっかり怯んでしまったブーンは素直に謝罪する。
 
(;^ω^)「失礼しましたお…」
(,,゚Д゚)「まあよい。さて、報告をしてもらおうか」
 
ギコに促され、報告を始めるドクオ。あの星にたどり着くまでの期間、スクリプト軍との交戦、その際に仲間が死亡した事、そしてブーンを助ける為にやむを得ず攻撃した事…。
 
('A`)「報告は以上です」
(,,゚Д゚)「どうした、改まって。
私の部下が殉職した事を引きずっているのだな?」
( ´ω`)「それには僕も──」
('A`)「黙ってろ。今回の件の責任は隊長の俺にある」
 
ドクオは厳しく言い放つ。


 
526以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 00:57:41.69 ID:j0xcX/jkO
(,,゚д゚)「…指揮官の立場がどういったものか少しは理解出来たようだな。
殉職した部下はその覚悟は出来ていた。あまり背負い込むな。
死んでいった者の分まで戦い、生きろ」
 
ドクオはこの時初めて気付いた。指揮など執った事のない自分に、何故隊長という立場を任せたのか。
ギコは、ドクオに経験させる為にわざと自分の部下を出し、隊長を務めさせたのだ。
 

('A`)「…アンタには敵わねぇよ」

(,,゚д゚)「お前は器のある男だ。いずれ…」
 
そこまで言って話を切る。あまり褒めても天狗になる事を危惧したのだろう。
そしてドアをチラリと見る。
話は終わった。行け、という事らしい。
 
( ^ω^)「あ! 報告がありますお!」
 
退室しようとしていたブーンが思い出したように、モナーの事を語った。
ギコは珍しく冷静を乱してその話を聞き入る。
 
(,,゚д゚)「そうかモナーはそこに…。
帰って来ないのは残念だが、生きているならそれで十分だ」

 
528以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 01:00:06.02 ID:j0xcX/jkO
ギコは懐かしむように語るが、そこにもモナーが見せた痛みのような物があった。
それが気になってはいたがブーンとドクオは今度こそ、退室した。
 

(,,゚д゚)「モナーよ…安心しろ。俺は順調だ…」


 
530以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 01:02:29.31 ID:j0xcX/jkO
あの星の名前は、惑星ニューソクというらしい。
ブーンは感覚を取り戻す為に多数の簡単な作戦に参加していた。
そしてあの日から一年が経とうとしていた。
いつでも会える、と言ったものの、辺境の星だ。
実際には簡単に戻れはしなかった。

 
531以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 01:03:05.21 ID:j0xcX/jkO
ブーンはいくつもの作戦をこなし、今ではすっかり感覚は戻り、ドクオ、ショボンに続くエースパイロットとも囁かれた頃、ブーンは夢を見る。 
 
飛び交う戦闘機、人々の悲鳴。爆音と共に倒壊する建物。
あの夢だ。随分久しぶりにこの夢を見た。
だが、何かが違う。
確かに飛び交う戦闘機はスクリプトの物だ。
いつもならここで母が登場するはずだ。
それにこの景色は…いつもと違う。
 
『ス…テ…』
 
声が聞こえた。
母の声ではない。
 
『タスケテ…』
 
徐々に声は鮮明になってくる。
 
『助けてブーン!!』
 
(;゚ω゚)「……!」
 
ブーンは飛び起きた。汗が酷い。喉がカラカラだ。
時計を見ると3時過ぎ…
起きるには早過ぎる時間だ。

 
533以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 01:04:06.09 ID:j0xcX/jkO
ブーンはベッドから抜け出ると、冷蔵庫へ向かう。
そして中からボトル入りの水を取り出して、一気に飲み干した。
 
(;^ω^)「あの声は確か……いいや、そんな訳ないお」
 
頭を軽く振ってその考えを消そうとする。
だが胸騒ぎを止める事が出来なかった。
ベッドに戻り、目を閉じるが一向に眠れる気配はない。
また冷蔵庫に向かい、今度は滅多に飲まないビールを取り出した。
 
( ^ω^)「ニューソクは帝国も滅びて平和になったはずだお。所詮は夢だお…」
 
それからブーンは眠りにつくまでにビールを4缶開ける事となった。

 
592以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 15:55:21.76 ID:j0xcX/jkO
('A`)「起きろブーン」
 
ドクオに蹴飛ばされて目を覚ました。
頭がズキズキと痛む。慣れない酒を多量に摂取して完全な二日酔いだ。
 
(;^ω^)「頭が痛いお…」
('A`)「風邪か?」
(;'A`)「う、臭ぇ…二日酔いかよ。今日の作戦に支障が出るなら休め」
 
ドクオの言葉で今日は任務の日だと思い出した。
任務と言っても惑星間の巡回だが。
 
(;^ω^)「大丈夫だお…」
('A`)「大丈夫には見えないがな…。
まあいい、飯食ったら格納庫に集合だぞ」
 
そう言うとドクオは出て行った。最近、ドクオは隊長として指揮を執る事が多くなっている。近々昇進でもするのではないだろうか。
ブーンはノロノロと着替えて食堂に向かった。


 
594以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 15:58:41.98 ID:j0xcX/jkO
( ^ω^)「食欲ないお…」
 
食欲が起きないのでサラダとミルクだけ注文する。
 
「あら、いつもは豚のような食いっぷりなのに珍しいねぇ!」
(;^ω^)「ほっといてくれお…」
 
食堂のおばさんがからかってくるが、今は相手にする気も起きなかった。
進まない手で野菜を口に運んでいると一人の女性が前に立って言う。

 

ξ゚-゚)ξ「あの…」
 
(;^ω^)「ツン!? なんでここに──!」
从*'o')从「ツンて誰ですか?」
 
トレイにパスタを乗せた女は小首を傾げる。ツンとは似ても似つかない彼女を見間違えるとは、なかなか重傷らしい。
ブーンが目をこすっていると、
 
从*'ー')从「相席いいですかぁ?」
 
ブーンが了解する前に前に座ってきた。
 
( ^ω^)「え〜と、君は…」
从*'ー')从「まだ名前覚えてくれてないんですか? スズです」
 
彼女は最近VIPに入隊した新人だ。ブーンにいつも気軽に話しかけてくる、良き後輩といった所か。
今日は訓練も兼ねて任務は彼女も同行しる事になっていた。

 
595以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 15:59:26.21 ID:j0xcX/jkO
彼女の間延びした態度はいつもなら気にならないが、今はそれさえもこの上なく鬱陶しい。
 
从*'ー')从「サラダだけですか? そんなんじゃ持ちませんよ?」
( ^ω^)「ほっといてくれお…」
 
パスタを巻き取るスズを、おばさんに言った事と同じセリフで一蹴する。
しかし彼女は怯んだ様子もなく話しかけてきた。
 
从*'-')从「なんか今日は冷たいですね。今日は初めて一緒の任務なのに」
 
スズは僅かに頬を膨らまして見せる。ブーンはさっさとサラダを胃に納めて席を立った。
後ろから抗議の声が届くが無視する。そしてそのまま、格納庫へ向かった。


 
596以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:00:47.13 ID:j0xcX/jkO
──格納庫
今回の任務はスクリプトの出現記録も少ない場所の調査である為に三人で遂行する事になっていた。
 
('A`)「全員集まったな。今回の任務はヒヤデス星団、アルデバラン周辺の巡回だ。

巡回だからといって気を抜くな。特にスズ、お前は新人だ。
スクリプトを発見したら単独では行動せずにすぐに知らせろ」
 
流石に隊長だけあって新人の名前も把握しているようだ。
 
从*'o')从「はぁ〜い、質問でぇ〜す」
 
スズが脳天気な声で手をあげる。
 
('A`)「なんだ」
从*'o')从「もし何らかの事態で、通信が不可能の時はどうするんですかぁ?」
('A`)「お前の場合は間違っても自分からは手を出すな。
ただし、やむを得ない状況…俺達に知らせる事が出来ずに、且つ逃げ切れない場合は交戦を許可する」
从*'ー')从「了解でぇ〜す」
 
また間延びした声で応答する。軍をナメているのではないのかと、そんな考えさえ沸いてきそうだ。
 
('A`)「説明は以上だ。各自機体に乗り込め」
( ^ω^)「………」
('A`)「おいブーン、聞いてんのか!?」
( ^ω^)「あ、ああ…聞いてるお…」
 
ずっと上の空だったブーンは、ドクオの喝で現実に引き戻された。
 
('A`)(大丈夫か? コイツ…)

 
597以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:02:25.88 ID:j0xcX/jkO
任務は滞りなく進んだ。
調査の甲斐なく、特に不審な反応は見られない。
このまま任務は終了…そう思われた。
しかしスズからの通信で事態は急変する。
 
『あの〜、見慣れない反応があるんですけど…。データ照合してもヒットしません。
スクリプトですかねぇ?
気付かれてはいないみたいですけど…』

『了解。データを遅れ。
お前はそのまま気付かれないよう航行しろ』
 
ブーンの機体にもデータが送られてきた。
ブーンはブロック型の携帯食料をかじりながらそれを見る。
データには大きな影が映り、エネルギー反応は小さい。
 
( ^ω^)「確かに見た事ない反応だお。なんだお?」

『分からん。気付かれる危険があるがスズの所に行くぞ。
これが何か調べなきゃならん』
( ^ω^)「了解したお」
 
各々がスズの戦闘機に近付く為に方向を変えると、またスズから通信が入った。
 
『補足しました。だいぶ大きいですねぇ。映像、送りますか?』
『な!? 近付きすぎだ! 勝手な行動は執るなと──』
『でも気付かれてないし攻撃もしてませんよ?』
 
怒鳴るドクオにスズはどこかからかうような口調で応答する。

 
598以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:04:24.57 ID:j0xcX/jkO
『…映像、送れ』
 
屁理屈を言われて舌打ちするドクオ。それでもとりあえずは指示を出す。
 
『了解でぇ〜す』
 
送られてきた映像に二人は息を飲んだ。戦闘機を数十機、楽に格納出来そうな大きさ。
そしてそれは明らかに戦闘機を格納する為の物ではない。
 
『無数の砲台と…真ん中のは主砲か? …って事はありゃあ戦闘艦だな。あんな物、VIPにゃねぇぞ…』
(;^ω^)「スクリプトの新兵器かお…」
『だろうな…。だがエネルギー反応が小さいのが気になる。本当に戦闘艦か?』
( ^ω^)「実はただの輸送艦だったり…」
 
それが何なのか、見極めようとするドクオとブーン。
しかしそれには情報が少な過ぎる。
 
『これは非常事態だ。スズ、お前は帰還しろ』
 
万が一に備え、ドクオが帰還命令を出すとスズは僅かに緊張した声で返してきた。
 
『あ、ダメです。気付かれました』
『なにぃ!?』
(;^ω^)「ちょwwwwwとにかく逃げろお!」
『逃げてますよぉ!』


 
599以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:05:52.62 ID:j0xcX/jkO
無数の砲台からレーザーが発射され、スズの機体を墜とそうと飛び交う。
 
『被弾しました! バリア20%破損!』
 
流石にこの時は緊迫した声で伝える。
 
『待ってろ! もうすぐ着くッ!
攻撃エネルギーを全てバリアにまわせ!』
 
ドクオが励ましながら怒鳴る。
そこにブーンが到着した。
 
( ^ω^)「援護を開始するお!」
 
ブーンは果敢にも戦闘艦へと向かう。砲台にエネルギーが集まるのを感知してレーザーを避ける。
そして砲台にレーザーを撃ち込んで破壊した。
だがこれは数ある砲台の一つに過ぎない。砲台を全て破壊するか戦闘艦自体を破壊するか。
ブーンは後者を選んだ。
魚雷の発射準備をする。
この魚雷は重力魚雷と呼ばれ、空間に干渉して瞬時に爆発的な破壊エネルギーを発生させる、非常に強力な兵器である。

 
600以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:07:14.88 ID:j0xcX/jkO
あとはどこに撃ち込むか…
 
どの場所に攻撃するのがベストなのかを推し量っていると、砲台にレーザーが撃ち込まれで破壊された。
 
『待たせたな、どうする!?』
( ^ω^)「砲台を相手にしたら切りがないお! 本体を沈めるお!」

『了解した。…場所は主砲にでも撃ち込むか?』

( ^ω^)「それがいいお!」
『敵艦、エネルギー増幅! さっきとは比べ物になりません!
主砲に集まっています!』

『回避行動──!!』
 
ドクオが喋り終える前に、戦闘艦の主砲から戦闘機などたやすく飲み込むほど極太のレーザーが放出された。
約10秒間放出され、レーザーの通った場所には塵一つ残っていない。

 
601以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:08:22.36 ID:j0xcX/jkO
『無…ピーか!? 無事ザザザ…答しろ!』
 
電波障害が起こっているのか、モニターが波打ち通信が荒れる。
 
(;^ω^)「回避したお。危なかったお…」
『左翼が一部…ピザー…飛びました…。航ザザ…は可能、危ジ…ベルC…す…』
(;^ω^)「まだ離れてなかったのかお! 早く離脱しろお!」
『ジジ…解で…』
 
この間も絶え間なく砲台からレーザーが発射される。発射の瞬間を感知出来ないのは絶望的だ。ブーン達はがむしゃらに飛び回るしかない。
幸い、映像と通信が回復するまでドクオは被弾はしなかった。ブーンは一発、被弾したがバリアのおかげで機体に影響はない。
 
『あれが艦隊で攻めてくると厄介だな…』
 
ドクオの声には焦りが感じられた。それもそのはず、艦隊で一斉射撃されれば、例え衛星基地でも甚大な被害は免れない。あるいは灰燼に帰すかもしれなかった。
なんとしても生存してデータを持ち帰らないといけない。

 
602以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 16:09:14.95 ID:j0xcX/jkO
ドクオは危険な役を買って出た。
 
『ブーン、俺がおとりになって主砲を撃たせる。あれがエネルギー集めだした時、頼むぞ』
( ^ω^)「了解したお!」
 
ドクオは正面から突っ込む。そして主砲の弾道上を飛び回りながらレーザーを発射する。
レーザーは戦闘艦に正面から突き刺さる。だが大きさが違いすぎる。大した損傷になっていないだろう。
ドクオは魚雷を発射し、急速に後退した。
命中した瞬間、重力により空間が圧縮され、近くの物を押し潰す。そして一気に解き放たれた。
それは衝撃波となり後退したドクオの機体にも襲いかかった。
 
(;^ω^)「大丈夫かお!?」
『俺の心配してんじゃねぇぜ…』
 
直撃を受けた戦闘艦は正面部分が半壊していた。それでも尚、主砲を発射しようとエネルギーが増幅する。
ブーンが魚雷を発射しようとした時、さっきと同様の衝撃波が発生した。
増幅されたエネルギーが暴走を起こす。
そして戦闘艦が爆発した。
 
『ブーン、今撃ったか…?』
(;^ω^)「僕じゃないお…」

 
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