686以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:25:53.96 ID:j0xcX/jkO
(;メーдー)「貴様の…女や…連合軍は…北にある、山脈に囲まれた森の中…ゴボッ…」
 
GIKOは吐血する。血の塊を吐きだしてまた、目を閉じた。 
(;゚ω゚)「もう、喋るなお!」
 
ブーンの必死の訴えを、GIKOは無視して続けた。
 
(;メーдー)「そ…の…中に…SH…が盗賊だった頃、の、砦がある…。そこに行け…」
(;゚ω゚)「分かったから、もう喋るなお…」
 
普通なら、もう力尽きる頃だが、GIKOは強靱な精神力だけでブーンに情報を伝えた。
 
(;メーдー)「弟者のヤツに…伝えてくれ…。勝負は…あの世まで、延期…だとな…。ジョルジュには…あの世で待っ…てると…」
( ;ω;)「………」
 
ブーンはただ頷くばかりだ。
もう、ブーンの言葉はGIKOには聞こえていないだろう。
 
(;メーдー)「暗いな…。剣を…握らせて、くれるか…?」
 
ブーンはGIKOの手の近くにある剣を、GIKOの手に置く。
すると瀕死とは思えない程の力で剣を握った。
だがそれを境に、GIKOの呼吸が浅くなり始めた。
 
(;メーдー)「腰の…剣…は…弟者に…。
ついに…俺の番か…。あの世で…親父と、斬り合って、くるぜ…」
(;メーдー)「SHII…に、は…愛…………」


 
687以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:26:54.56 ID:j0xcX/jkO
( ;ω;)「GIKO…? GIKO!
目を開けるお! GIKO!
GIKO!!!」
 
ブーンの呼び掛けには彼は答えない。
 
( ;ω;)「お、お…おおおおおお!!!!!」
 
戦いに生き、戦いに死んだ漢。
炎のような激しいさを持ち、氷のように冷徹さを持った男。
 
最期まで戦いぬき、最期まで禍々しい笑みを残して彼は逝った。
彼の人生を言葉で表すなら太く短く───
そんな人生であった。

 
689以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:28:54.98 ID:j0xcX/jkO
( ;ω;)「うぅ…」
 
ブーンは血で汚れるのも気にせずに、GIKOの亡骸を背負う。
まだ暖かい身体は徐々に体温を失い、彼の死を実感させた。
 
('A`)「おい…そいつも連れて行くのか?」
( ;ω;)「当たり前だお! こんな所に放置したら可哀想だお…」
('A`)「でも邪魔に──」
( ;Δ;)「ええやないかよぉぉぉ!! そいつはきっと真の漢だったんやでぇ!?」
从*;д;)从「そうですよぉ〜! きっと、いい人だったんですよぉ!」
 
ローレンとスズが泣きじゃくりながら力説する。
スズは兎も角、この巨漢が泣くとは、誰もが予想していなかったに違いない。
 
(;'A`)「お、おお…。わ、悪いとは言ってねーよ…。
それにしてもお前ら、ブーン達が何言ってたのか分かるのか…?」
 
動揺して、拒否出来なくなってしまった。
そして、うろたえるドクオに、ローレンとスズは、更に力説を始める。
 
( ;Δ;)「あの顔はなぁ! 絶対に真の漢の顔なんやぁ!」
从*;д;)从「顔を見れば分かるんですぅ! 言葉は問題じゃないんですよぉ!
ねぇ!? 内藤先輩!?」
( ;ω;)「その通りだお! 分かってくれて嬉しいお〜!」 
(;'A`)(こいつら、何か変だ…)

 
693以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:32:22.29 ID:j0xcX/jkO
(;'A`)「おい、ショボ──!?」
 
耐え切れなくなり、ショボンに話かけるが、そこでもドクオはショックを受けた。
 
(´;ω;`)「…グスッ」
 
ショボンも、泣いている…。 
(;'A`)(な!? 俺が悪いのか? 俺が冷たいヤツなのか!?)
(;'A`)「わ…分かったよ…。連れてけ。文句は言わねぇよ…」
 
悪い事はしていないが、何か悪い事をした気分にさせられたドクオは、ついにOKを出してしまった。
 
( ;ω;)「ドクオが冷血じゃなくてよかったお〜!」
 
その言葉は、何故か、ドクオに更に深い傷を負わせた。
 
(;'A`)(てことは、俺は…冷血だったのか…)
 
自分はこんなに繊細だったか…?
そんな考えが浮かび、ズン、と落ち込むドクオを横切り、GIKOと共に外へ出るブーン。そしてそれに続くローレンとスズ。
そして小屋にはドクオとショボンだけになった。


 
696以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:33:14.88 ID:j0xcX/jkO
(;'A`)(俺は…冷血…)
 
そのセリフを頭の中で何度も反復しているドクオの肩にポン、と手が乗せられた。
 
(´・ω・`)「落ち込む事ないよ、君には僕がいるじゃないか…」
 
優しい声で慰めるショボン。
その慈愛に満ちた声は、ドクオにとって救いの言葉に聞こえたに違いない。
 
(*'A`)「ショボ…」
(´・ω・`)「さあ、みんなが待ってる。行くよ」
 
ショボンはドクオを残して小屋を出た。
 
 
(´・ω・`)「フフフ…空気の読めない人間にはなりたくないねぇ…。
まぁそのおかげで…ドゥフフフフ…」

 
698以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:35:02.24 ID:j0xcX/jkO
ブーン達は連合の人々がいるであろう砦に向かった。
その間、会話はない。
深く沈んだ気持ちのまま、森の中に戦闘機を降ろす。
 
( ´ω`)「GIKO…ちょっとここで待っててほしいお…」
 
戦闘機にGIKOを残して、砦へ向かって歩き出した。

 
700以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:37:26.02 ID:j0xcX/jkO
──盗賊の砦
砦はかなり大きい物だった。
人数で言えば20000人は収容出来るだろう。
しかし20000人程度では全ての人間を収容出来る訳もなく、外には野営の為のテントや、仮住宅の建設の跡があった。
外で暮らす人々の冷たい視線を潜りながら砦に入ろうとするブーン達。
 
「止まれ」
 
入ろうとした時、二人の兵士に止められた。
 
「見かけない顔だな。悪いが中には──」
「ちょっと待て」
 
片方の兵士がブーンの顔をマジマジと見つめ、聞いてきた。
 
「まさか…内藤ホライゾンという名前では…?」
( ^ω^)「そうだお」
「やや! これは失礼しました! どうぞお入り下さい。
我々の主達が3階の会議室に集まっています」
( ^ω^)「どうもだお」
 
一度止められながらも、すぐに通された事に疑問を持ったのか、スズが尋ねてきた。
 
从*'-')从「何したんですかぁ〜?」
( ^ω^)「顔パスだお」
从*'o')从「すご〜い!」
('A`)「ブーン様様だな」
 
ちゃちゃを入れてくるドクオに軽く相づちし、3階へ向かう。

 
701以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:38:25.75 ID:j0xcX/jkO
砦内には子供や老人の姿が目だった。どうやら女、子供、老人は、砦で暮らしているらしい。
かなり広いので、場所が分かっていても時間がかかったが、ようやく会議室の前に辿り着いた。
 
( ^ω^)「ここだお…」
 
ブーンはドアをそっと開く。
中にいた者は、目を大きく見開いて固まっていた。驚きのあまり言葉も出ないようだった。

 
702以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:41:50.22 ID:j0xcX/jkO
(;゚∀゚)「………まさかな…ハハハ…」
 
ジョルジュは目を擦ってからまた、ブーンを見る。
 
(;゚∀゚)「…ブーン、か?」
( ^ω^)「遅くなったお…」
( ゚∀゚)「ハハ…おい! ブーンのヤツが戻って来やがったぜ!」
ξ゚听)ξ「ブーン!!」
 
ツンが勢い良く抱き付いて来た。が、すぐに離れて周りを見ると、
 
ξ////)ξ「も、もっと早く戻って来なさいよ、バカ!」
 
相変わらずの調子で叱り付けた。
 
(;^ω^)「すまんお…」
ξ゚ー゚)ξ「でも…また会えて嬉しいわ…」
(´<_` )「おお…本当にブーンか!」
( ´∀`)「元気だったモナ?」
(*`ω` *)「久しぶりだっぽ!」
(><)「また会えて嬉しいです!」
(*゚ー゚)「久しぶりね♪」
 
皆から再会を祝福されて迎えられるが、伝えなくてはならない事がある。
ツラい役だが逃げる訳にはいかない。
 
( ´ω`)「再会は嬉しいけど、言わなければならない事があるお。
…GIKOの事だお」
 
その言葉に、全員の顔が強張った。

 
703以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:43:38.41 ID:j0xcX/jkO
(;゚∀゚)「GIKOがどうしたんだよ…?」
( ´ω`)「GIKOに会ったお…」
(´<_`;)「ぬ…それで、GIKO殿は無事なんだろうな?」
 
皆、薄々勘づいていた。
ブーンはGIKOと会ったのに、彼はこの場にいない。そしてブーンのこの表情…。
これらが何を示すのか、それは明らかだった。
だが、彼らは聞かねばならない。聞かずにはいられなかった。
 
(#゚∀゚)「おい! GIKOのヤツがどうしたって!?」
(´<_`;)「ジョルジュ殿、落ち着くのだ…」
 
ブーンに飛び付いて肩をガクガクと揺らすジョルジュを、弟者が制す。
 
( ´ω`)「………」
 
いざとなってみると、言葉が喉から出て来ない。紡ごうとした言葉はため息となって口から漏れる。
 
(*゚-゚)「あの人は、どうなったの…?」
 
一番聞くのがツラいはずの、SHIIが尋ねる。
今、今言わないでどうする内藤ホライゾン!
自分にそう言い聞かせ、ゆっくりと口を開いた。
 
( ´ω`)「…GIKOは、GIKOは……死んだお…」
(´<_`。)「くっ……!」
 
弟者が顔を背ける。

 
704以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:45:59.13 ID:j0xcX/jkO
( ゚∀゚)「…はぁ? 何言ってんだ…? あいつが簡単に死ぬようなタマかよ…?」
 
ジョルジュはフラフラと近付き、またブーンをガクガクと揺らした。
ブーンは抵抗せず、されるがままだ。
 
(#゚∀゚)「おい、冗談だろ…? 嘘って言えよオイ!!」
( ´ω`)「………」
 
ブーンは黙って首を横に振る。
 
(#゚∀゚)「ふざけんなよ…? だからやめろと…!
それにテメェは何してやがった!? 見殺しに──!」
(´<_`#)「やめないか!」
(#゚∀゚)「…!」
(´<_` )「ブーンにはなんの罪もないではないか…」
 
弟者が怒鳴り、ジョルジュはガックリと膝を着いた。
そして拳を床に打ち付ける。何度も、何度も…。
一方SHIIは、泣いてはいなかった。口元を引き締め、冷徹を保っている。その口元から、一本の赤い筋が生じた。
強い人だ───
ブーンを始め、全員がそう思った事だろう。
 
(*゚-゚)「そう…逝ったのね…」
( ´ω`)「会いたいかお…?」
(*゚-゚)「ええ…」

 
706以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:47:02.10 ID:j0xcX/jkO
ジョルジュはなんとか欲求を押さえ付け、歯を食いしばる。
ブーンは後ろの四人を見た。
スズとローレン、そしてショボンは場の空気から全てを察してもらい泣きをしている。
これでは案内は出来そうもない。
 
( ´ω`)「ドクオ…この女の人を僕の戦闘機まで連れてってほしいお…」
(;'A`)「お、俺かよ…マンドクセ…」
( ´ω`)「頼むお…」
 
断れる空気ではない。
 
(;'A`)「チッ、分かったよ…」
 
渋々了承し、先に部屋を出て行った。
 
( ´ω`)「SHIIさん、今出て行った人が案内してくれるお」
 
SHIIは黙って退室し、重い空気だけがこの部屋に残った。
しかしブーンは更に口を開く。
GIKOの最期の言葉を伝える為に…

 
707以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:48:20.05 ID:j0xcX/jkO
(´<_` )「そうか…そんな事を…」
 
弟者はGIKOの剣を受け取り、黙祷する。
 
( ゚∀゚)「ケッ、俺はあんなヤツと同じ場所には逝かねえぞ。一生待ち惚けてやがれってんだ…」
 
死人に一生も何もないが、それが彼なりの精一杯の強がりであった。
彼らからはいろいろ聞く事が出来た。
スクリプトの侵略が始まった時、多くの人間が連れて行かれた。やはりこれは労働力や食料と考えるのが妥当だろう。
これに、GIKOが黙っている訳もなく、連合軍を引き連れて激しく抵抗した。
それが、スクリプトの怒りを買ったようで、リヴムントを攻めて来たらしい。
先の戦いでスクリプトの脅威を知ったGIKOは、少数の兵をを連れて囮となり、SHII達を逃がせたのだ。
そして幸い攻撃される事なく、ここまで辿り着く事が出来たとの事だった。
逃げるSHII達が攻撃されなかったのは恐らく別の敵──
それもスクリプトにとって脅威となる存在、第一攻撃部隊が到着したからだろう。

 
708以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:49:27.57 ID:j0xcX/jkO
( ´ω`)「今日はあの作戦の事、話さなくてもいいかお?」
( ФΔФ)「そうやな、約束の時間まであと一日あるしな…グスッ」
 
ローレンは鼻を啜りながら答える。
いつ見てもこの巨漢に涙は似合わないが、それを笑う者はいなかった。
 
( ´ω`)「ちょっと、SHIIさんの所へ行ってくるお」
 
ブーンは頷き、戦闘機の場所へ向かって歩き始めた。


 
709以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/05/13(土) 18:50:21.16 ID:j0xcX/jkO
ブーンが戦闘機の近くまで来ると、ドクオが走って来た。何故かその顔には余裕はなかった。
 
(;'A`)「も、無理! 後は頼んだ!」
 
それだけ言い残して、猛スピードで去って行く。
訳が分からずSHIIの下へ向かうと、そこには予想外の光景があった。
SHIIが、笑っている。
それも発狂した笑いではなく、普通の笑いだ。

 
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