65 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:05:15.56 ID:4V7XNvxn0
- 頭から手を離し、泣き止んだブーンに告げる。
川゜-゚)「はっきり言おう。ブーン君は半年後に死ぬ。
これは悪意でもなんでもない。
辛いだろうがまずそのことを事実として認識してくれ。」
半年病と判明してから初めて人の口から聞いた。
友達同士で言う「死ね」とはまったく違う言葉。
しかし1週間ずっと死ぬことを考えていたブーンは
それを受け入れる土壌が偶然にもできていた。
自分よりも不幸な人はいないと思い込んでいたため死は当然のことと思った。
( ;ω;)「はいですお。」
涙目ながらも返事をする。
思いのほかしっかりした返事だったのでクーは少し驚く。
そして、その驚きは喜びへと変わった。
これならしっかりした話ができると。
68 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:12:37.96 ID:4V7XNvxn0
- 日記を見つめるブーンに説明する。
話を聞いて成る程と思うがある疑問を口にする。
( ^ω^)「でも僕は日記なんて書いたことないですお。
なにを書けばいいんですかお?」
川 ゚ -゚)「君の好きなように書いたらいい。」
と言い少し黙るクー。そして言葉を変える。
川 ゚ -゚)「いや、好きに書けといわれても困るな。
そうだなとにかく、その日1日で一番思い出せることを書いてみろ。
そしてそれに自分の意見を書き込んでみろ。
それだけでいい。それと書いてはいけないなんてことは何一つないから
書きたいと思ったこと、整理したい考え事、自分の気持ち、なんでも書けばいい。
そして自分の気持ちに嘘をつかず書けばいい。」
ブーンはそれを聞きとにかくやってみようと思った。
頭の中だけで考えるだけじゃなく、考えを独立させるということに興味を持ったから。
川 ゚ -゚)「それじゃ。また明日。」
それだけいい部屋を後にする。
69 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:15:58.22 ID:4V7XNvxn0
- 午後六時、ブーンは早速日記を書き始めた。
半年病のこと、そしてそれに対する自分の気持ち。
クーのこと、今日話した内容。そして、なんでそんなことを話したかの理由。
自分の立場、小さいころの夢、宇宙の成り立ち、親に対する思い。
すべてに誰が見ても納得できるようにと心がけて書いた。
本を読むのが好きだったし、論理的に考えるということと数学が得意なブーンにはこの作業は向いていた。
そして書けば書くほど、頭の中が整理されていくのがわかった。
気づけば十数ページにみっちり書いていた。
そして何か充実感を得たブーンはふと眠くなり布団に入った。
71 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:18:55.90 ID:4V7XNvxn0
- ブーンが日記を書き始めるのと同時ぐらいに
クーはトーチャンとカーチャンに話をした。
川 ゚ -゚)「ブーン君は今半年病を自分で認めている最中です。
話によると、まだご両親はブーン君にきちんと親として
どう思っているかを言ってませんね。
息子さんが半年病なのは事実です。ですからまず頼れる存在である
お二人がブーン君をどう思っているのかを言ってあげてください。
そんなことを言うのは照れくさいと思うかもしれませんが、
ブーン君が死んでからは何も言えなくなります。」
トーチャンとカーチャンでも死や半年病といった単語を発しなかったのに対し
平然と口にするクー。
だがそれを認めなければ事態は何も変わらない。
トーチャンが一言わかったといい、カーチャンはそれに頷いた。
川 ゚ -゚)「当事者でない私がえらそうに言って申し訳ありません。
では私は帰ります。」
それだけいい、玄関で見送られながら帰っていった。
72 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:20:16.16 ID:4V7XNvxn0
次の日昼過ぎぐらいにトーチャンとカーチャンがブーンの部屋の前まで来た。
引きこもったブーンと話し合うのはこれがはじめてであった。
(`・ω・´)「ブーン起きてるか。」
扉は開けず話しかける。
中からブーンの声が聞こえた。
( ^ω^)「起きてるお。」
久しぶりの親子の会話、二人とも少し照れた。
75 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:24:51.48 ID:4V7XNvxn0
(`・ω・´)「そのままでいいからとにかく私の話を聞いてくれ。
お前が半年病に罹ったと聞いたときどうすればいいかわからなかったよ。
そんなこと想像したことはあったが、それは私にとって都合よい想像だったよ。
しかしそれが現実に起きてその事態に向き合うことが私は怖かった。
都合のいい想像と違い何もかもうまくいかないんだからな。
ブーン聞いてくれ。私はそのときこう思ってしまったよ。
面倒くさいことになったな、って。
今までの日常をなんで壊すんだって感じたよ。
お前に対して怒りまで感じたよ。
今思うとずいぶん自分勝手な話だと思う。
だが本当にそう感じたんだ。」
トーチャン話が続く中、ブーンは冷静だった。
トーチャンの声はしっかりしているものの、自分を責めるような声だった。
それに昨日、日記に書いたことにトーチャンのことがあり、
ブーンが考え想像したトーチャンの気持ちとほとんど一緒だった。
76 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:27:44.20 ID:4V7XNvxn0
(`・ω・´)「だがお前が部屋に篭ってから考えたんだ。
これが現実なんだってな。」
一呼吸おき、自分に言うかのようにまた話し始める。
(`・ω・´)「お前は後半年後にいなくなるんだ。
私はそのときああすればよかったこうすればよかったと思いたくない。
あわよくばお前に感謝されたいとも思ってるよ
だけど、いまのままじゃ絶対にそんなことにはならない。
でも行動しなきゃ何もかわらないと知ったよ。
自分勝手さは変わらないが、お前のために何かしてやりたいんだ。
だからブーン、してほしいことがあったらなんでもいい
私たちに言ってくれ。
いまさら遅いが、お前にはこの家の子でよかったと思ってほしいんだ。
お前が死に向かうことでようやくそれがわかったよ。」
77 名前: 映画館経営(愛知県)[]
投稿日:2007/03/13(火) 15:29:10.16 ID:4V7XNvxn0
ここまで言い、扉の前から離れていった。
ブーンはその言葉を聞いている途中で泣いていたが、
布団にくるまり嗚咽の声を隠していた。
そんなことまでは想像していなかったから。
だが、嬉しかった。ついに自分を認めてくれた気がした。
半年病になった自分を受け入れてくれた気がした。
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