59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:07:30.32 ID:rJzYmFlF0

( ^ω^)「な、なんだお!?」
ξ゚听)ξ「内藤、あれ!滑走路が・・・」

ツンの指を辿った先の滑走路。
そこには、派手に燃え上がる戦闘機の残骸があった。
よほどの高速で墜落したのか、滑走路に半ばほど突き刺さっている。
騒然とした滑走路に向かうため外に出ようとした内藤とツンは、地面にさす影に気付いた。
上を見ると、墜落直前にペイルアウトしたらしいパイロットが降りてきている。

('A`)「いんやー・・・危ねぇな。まさかこの俺が落とされるとは・・・エースコンバットの全国優勝者だぞ俺は?」
( ^ω^)「ドクオ!!」
ξ゚听)ξ「あんたがあれに乗ってたの?」
('A`)「おー、内藤にツンじゃねぇの。そうそう、いやー墜落するってんでこう、頑張ってだな・・・なんt」
( ^ω^)「なんて間の悪いことしてくれるお!おかげで滑走路が使えないお!」
ξ゚听)ξ「お手上げね、私帰るわ。空気読んでよね、まったく」

内藤とツンは食堂から出て、すぐ近くに着地したドクオに近寄った。
話し終える前にいきなり文句をいわれ、ドクオは唖然とした表情を浮かべる。

('A`)「いやあの・・・俺が滑走路に落とさなかったら食堂に落ちるとこだったんだけど・・・」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:10:10.65 ID:rJzYmFlF0

ドクオの戦闘機が墜落してから、はや三日が過ぎた。
最初は空から崑崙を超えるつもりだった内藤たちだったが、ドクオの話からするとそれも無理らしい。
戦闘機を使っての太平洋横断に成功したドクオと各国プレイヤーは、そのままチベット上空への侵入を試みたそうだ。
だが、設置された膨大な数の機銃によって進入ままならず、あえなく全機撃墜されたとか。

('A`)「だから空は無理だって。ほかに無いのか、地下とか水路とか」
( ^ω^)「うーん・・・けど登山も無理、水路なし。地下ってどうやって行くんだお」
ξ゚听)ξ「いっそ遠回りすれば?」
( ^ω^)「南はアルプス山脈に北はこの崑崙・・・東は横断山脈。となると・・・」
('A`)「西からの中国経由か・・・大分遠いな。ロシアから来る奴ら待ってみたらどうだ?」
( ^ω^)「んん・・・そうするかお・・・?」


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:10:29.61 ID:rJzYmFlF0

さらに4日後、ロシアから山を越えてきたプレイヤーたちが村にたどり着いた。
その一団の中に、荒巻の姿もある。

( ,' 3 )「情報ね。生徒割引で20万」
( ^ω^)「・・・やけに高くないかお?」

わざわざロシアから来るプレイヤーの一団を待ってまで手に入れた情報。
それはとある単行本の全巻セットだった。
題名を、封神演技という。

('A`)「20万でこれね・・・どうしろってんだ?」
( ^ω^)「とりあえず読むお」
ξ゚听)ξ「普賢ハァハァ」
( ^ω^)('A`)「腐女子乙www」

内藤たちは荒巻を信じ、ひたすら単行本を読んだ。
何度も何度も繰り返して。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:12:19.68 ID:rJzYmFlF0

そして気付いた。
単行本をじっくり読んだ後、もう一度開いた地図。
崑崙山脈の一部に、何のためにあるのかわからない道がある。
内藤たちは村人の静止をふりきり、その道を進んだ。
道の先にあるだろう、ひとつの山を目指して。

( ^ω^)「・・・あったお、操縦室」
ξ゚听)ξ「動力確認。生きてるわ」
('A`)「操縦は俺がやろう」

水路もなく、空からも進入できない最終目的地、チベット。
中国からの陸路以外では到達できないと思われたそこに行くもう一つの手段。
移動要塞・崑崙。
荒巻に20万を払わなければ、存在に気がつかなかっただろう。

( ^ω^)「崑崙発進!」

内藤たち三人はテストのゴールに思いを馳せ、崑崙山を飛び立たせた。


64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:16:07.76 ID:rJzYmFlF0

数日前、アメリカ大陸というゴールから最も離れたスタート地点から、太平洋を越えて一気にチベット行きを狙った集団がいた。
200を超える参加者のうち、50人ほどがチベット上空にたどり着いたが、彼らは対空機銃で撃墜されることになる。
チベット周辺でそれを見ていたプレイヤーは、山越えの難易度を知っていた。
その上最後の手段だった航空手段も目の前で無力化されたため、彼ら全員が中国西部からのルートを進むことになる。
しぃとつーもその中の一組だった。

(*゚ー゚)「力加減はよろしいですかー?」
(,,゚Д゚)「あ゛−・・・天国。もうずっと走ってたからさ、しんどくてしんどくて・・・」
(*゚∀゚)「私達が通りかかってよかったねぇ」

中国西部には山脈の変わりにジャングルが生い茂り、侵入者を篩いにかける。
中国西部からチベットまで流れる川にはピラニアやワニが生息し、ジャングル内には未知の猛獣が待ち構えている。
しぃとつーは道中で広ったギコを仲間に加え、ボートでジャングルを進んでいた。

(*゚ー゚)「それにしてもなんでジャングルになってるのかしら」
(*゚∀゚)「きついわー・・・あ、みてみてピラニア」
(,,゚Д゚)「んん、ピラニアって食えるかな・・・」

しぃ達三人以外にも、川にはたくさんのボートが浮かんでいる。
中には大型クルーザーで優雅にお茶を楽しんでいる者もいて、ジャングル河ルートを行くプレイヤーはとても平和だった。


65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:18:12.99 ID:rJzYmFlF0

その平和を打ち砕いたのは、轟音と共に空から降ってきた岩。
その岩はしぃ達のすぐそばでお茶を楽しんでいたクルーザーに直撃し、数人のプレイヤーがリタイアする。

(,,゚Д゚)「うお!?何事だ!?」
(*゚ー゚)「トムさんのクルーザーが!」
(,,゚Д゚)「あ、あるまげどん!」
(*゚∀゚)「ちょ、まだふってくるよ!回避回避!」

ほんの1秒前まで平和だった一団は騒然となり、何人ものプレイヤーが岩の下敷きになってリタイアしていく。
大きく小回りがきかない船から岩を避けきれずリタイアされていき、なんとか生き延びたプレイヤーもピラニアの餌食となり脱落していった。
チベットまで直通、もっとも安全なはずの中国西部からの河越えルートは阿鼻叫喚の地獄絵図となる。
蛇行運転をするボートから空を見上げたギコの目に、浮遊する巨岩と多数の戦闘機が見えた。

(,,゚Д゚)「・・・山が・・・浮かんでる」
(*゚∀゚)「わぉ。あ、ビーム撃った」
(*゚ー゚)「あれもチベットに・・・?誰かが動かしてるの?」
(,,゚Д゚)「いったいどこの馬鹿だ!」

はるか上空でビームを撃つ山を見上げながら、しぃ達三人は先を急いだ。


66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:20:49.96 ID:rJzYmFlF0

( ^ω^)「右舷!弾幕薄いお!何やってるんだお!」
('A`)「バリア損耗率70%突破。破損した装甲が地上に落ちてるが・・・」
( ^ω^)「それどころじゃねーお!機銃群を黙らせたと思ったらなんだお!?」
ξ゚听)ξ「機銃を無力化したせいで各地から航空機を使ってプレイヤーが集まってきたみたいね・・・チベット上空が安全になるまで待ってたなんて・・・」

崑崙のレーダー上に表示された光点は約20。
機器が正確なら、現時点でリタイアしていないプレイヤーは地上のジャングルにいる200人ほどと、チベット上空の内藤たちをふくめた20数人。
山脈越えに挑んだプレイヤーは全てリタイアしたようだ。
つまり、ゴール目的でないプレイヤーを除いた全員がチベットに集まったことになる。
そしてその全員は、チベットの中央にある宮殿を目指していた。

('A`)「ち・・・図体がでかいからって俺らばっかり狙ってきやがる」
ξ゚听)ξ「高度が下がってる・・・内藤、このままじゃ落ちるわよ!」
( ^ω^)「落下予想地点は?」
ξ゚听)ξ「チベット宮殿から東に2キロ。けど・・・攻撃が続くようならわからないわ」
( ^ω^)「・・・宮殿に降りるお」

( ^ω^)「いや・・・宮殿に、この崑崙を落とすお。そのつもりで着陸だお」


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:32:02.06 ID:rJzYmFlF0

崑崙は動力のほぼ全てをバリアに回し、緩やかに落下していった。
チベット上空の戦闘機の中で、唯一崑崙を狙わなかった一機がそれを見守っている。

(´・ω・`)「降りるつもりか・・・手助けしてやろうかな、少しだけ」

たった一機だけ崑崙を狙わなかったショボン機は、反転して生き残った10機ほどの戦闘機に向かっていった。
適当に時間を稼いだ後、ショボンも内藤たちの乗る崑崙に続いて宮殿近くに着陸する。
河を登ってきたプレイヤーの生き残りと、戦闘機組の生き残り。
そして内藤たちは、最後の舞台である宮殿にたどり着いた。


69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:36:53.65 ID:rJzYmFlF0

(,,゚Д゚)「・・・門とかないんだな」
(*゚ー゚)「ご自由にお入りくださいって事かな?」
(*゚∀゚)「中はどうなってることやら・・・」

( ^ω^)「近づいてみるとかなり広いお・・・」
('A`)「ああ・・・ドーム状になってるみたいだな」
ξ゚听)ξ「この先が中央ね」

(´・ω・`)「・・・これは・・・何かの会場か?」

この宮殿にたどり着いたプレイヤーはどれくらいいるだろう。
100人くらいだろうか。
正確な人数はわからないが、宮殿中央に設けられたドーム状の空間には、大体プレイヤーの人数分くらいの座席が用意されていた。
それぞれの席の前にはアーケードゲームの筺体のような装置が取り付けられている。

( ^ω^)「高校生クイズみたいだお・・・?」
 

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:41:13.57 ID:rJzYmFlF0

ドームに着いたプレイヤーは、それぞれ椅子を調べたり話し合いを始めた。
さっきまで争っていたとは思えない空気だが、これも仮想現実ならではなのだろう。
やがてドームの入り口が閉まっていき、アナウンスが流れる。

「最終関門へようこそ。テスト段階でまだまだ荒削りなシステムですがお楽しみ頂けたでしょうか?さて・・・」

かなり長いアナウンスだったが、要約するとこうだ。
内藤の予想通り、最終関門はクイズ大会。
ここまでたどり着いたプレイヤーがクイズで点数を競い合い、最高得点を獲得したプレイヤーが優勝となる。

( ^ω^)「本当にクイズだったのかお・・・僕の席はどこだお?」

内藤は自分の名前が書かれた席を見つけ、準備万端椅子に座る。
その隣に座ったのは、どこか見覚えのある人物だった。

(´<_`  )「よこっらせー、と」
( ^ω^)「!?・・・兄者さん?」
(´<_`  )「ん?・・・俺は弟者だが。兄者を知ってるのか?」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:46:11.12 ID:rJzYmFlF0

(´<_`  )「なるほど。途中まで兄者と一緒だったのか」
( ^ω^)「兄者さんには世話になったお・・・けど、レースでリタイアしちゃったお」
(´<_`  )「ははは、まったく兄者は俺がいないとダメだな」
( ^ω^)「ブロッケンGに乗ってさえいなければ、兄者さんはきっとここまで来れたお」
(´<_`  )「どうかね・・・お、始まるみたいだな。せいぜい兄者の分まで頑張るとしよう」

ドーム中央を取り囲むように座ったプレイヤーが見つめるのは、中央の大スクリーン。
クイズの開始を告げるBGMと共にスクリーンにソニーの宣伝映像が映し出される。
ソニーの宣伝映像が流れ終わると、さっそく第一問が出題された。

Q1
伊藤左千夫の作品はどれ?

1、野菊の墓
2、坊ちゃん
3、赤光

( ^ω^)「・・・はぁ?」
(´<_`  )「伊藤左千夫って誰よ」
( ^ω^)「・・・三択だから適当に選ぶお!」


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 00:52:22.42 ID:rJzYmFlF0

どうやらクイズはジャンルごとに区切られているようだ。
各ジャンルそれぞれ10問、一つ正解で1点。
この最終関門までたどり着いたのは大抵が日々ゲームばかりしている者や、肉体労働者、スポーツをしている者だった。
よって、半数以上のプレイヤーは問題の意味もわからないまま、勘で答えを選ぶことになった。

(´・ω・`)「ふん・・・歴史教師をなめるなよ!多分答えは1、と」
ξ゚听)ξ「答えは1ね」
('A`)「・・・2、と」
( ^ω^)「これはずばり・・・3だお」

「答えは1、野菊の墓でした。ただいま問題の正答率、37%」

(;^ω^)「・・・」


74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 01:06:50.61 ID:rJzYmFlF0

その後も国語の問題が続く。
問題が進むにつれて少しずつ難易度が上がっていき、正答者も減っていった。

Q7
【 明白 - 歴然 】と同じ関係の言葉の組み合わせはどれか。
1、勝敗 - 惜敗
2、 勝敗 - 惜敗
3、 沿革 - 変遷
4、安静 - 安全
5、豆腐 - 納豆
6、壮健 - 病弱

( ^ω^)「はいはい、3だお3」

内藤ははやくも問題を見ずに答えを選択していた。
問題どころか答えすら見ていない。
それでも内藤は平均的な点数を維持していた。

「答えは3、沿革-変遷です。ただいまの問題の正答率は15%」

適当に答えても、存外当たるものらしい。


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 01:13:59.55 ID:rJzYmFlF0

国語のクイズが終わり、内藤の保有点は5点。
ジャンルの切り替えが行われ、その際の保有点によっては失格となる。
ドームにいるプレイヤーのうち2割ほどが、座っている椅子のしたに空いた落とし穴へと消えていった。

('A`)「おーちーるー・・・2点だって良いじゃんかよチクショー・・・」

国語の次のジャンルは社会。
ここでさらに残ったプレイヤーの3割が減り、早くもプレイヤーの数は半分にまで減ってしまう。
全4ジャンルのクイズ大会は中盤にさしかかった。

(;^ω^)「・・・弟者さんも残ったかお」
(´<_`  )「9点でな・・・いや、まさか落とし穴とは・・・」
( ^ω^)「次のジャンルは・・・お、ゲームクイズかお!ここで点数稼ぐお!」


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 01:15:31.47 ID:rJzYmFlF0

「ロマンシングサガ3で、最初の主人公中最もLPが高いのは?」
( ^ω^)「全員同じ」
「グゥエイン(竜)の親で、かつて聖王とともにビューネイを倒した竜の名前は?」
( ^ω^)「ドーラ」
「ワイルドアームズで、破壊されたアーデルハイドの町を復興させるのに必要な寄付金の総額は?」
( ^ω^)「221500ギャラ」

ジャンルがゲームになったとたん、内藤の点数は凄まじい速度で上がっていった。
ゲームが得意なプレイヤーは国語、社会で脱落したのか、内藤ほどの正答率を誇るプレイヤーは他にいない。
中堅よりやや下といった順位にいた内藤は、一気に順位を上げていった。

(´<_`  )「げ、不正解か・・・にしてもお前なんなんだその正答率は・・・」
( ^ω^)「ゲームなら僕のもんだお。伊達にゲームばっかりしてないお!」
(´<_`  )「さすがオタク大国日本・・・流石だな」


79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 01:38:49.08 ID:rJzYmFlF0

Q10
「クロノクロスで、盗み系の固有エレメントを持つキャラクターは、「キッド」「ファルガ」とあと一人は?」

(´<_`  )「・・・このままではリタイアになってしまう」

弟者は苦渋の決断の末、そっと隣の内藤の席に視線を移した。
内藤は弟者の視線に気付かず、少しだけ考えて答えをかいていく。


80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2006/04/17(月) 01:39:10.38 ID:rJzYmFlF0

(´<_`  ) (メル、か・・・)

弟者が視線を戻し、答えを書こうとパネルに手を伸ばす。
その瞬間、弟者の足元に、ぽっかり穴が開いた。

(´<_`  )「!?ノォォォォォッ!!」

カンニング対策は万全。
試験官などいなくても、現実世界のたくさんの観衆が弟者のカンニングを目撃していた。

( ´_ゝ`)「おお弟者よ、カンニングとは情けない・・・」
(´<_`  )「む・・・兄者は岩に突っ込んだらしいじゃないか。そりゃリタイアするわ」
( ´_ゝ`)「・・・まぁお互い馬鹿なリタイアをしたと。流石だな、俺ら」
(´<_`  )「ああ、流石だよな俺達」

141 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:13:30.69 ID:Fkc+4o1p0

(;^ω^)「・・・弟者さんが突然落ちていったお?誤作動かお?」

弟者の悲鳴で隣を見たが、すでに床の穴はしまっていた。
周囲を見渡すと随分人が減っている。
現在21点で順位が9の内藤を含め、落とし穴に消えていないのはわずか11人だった。
その11人が挑む最後の問題。ジャンルは数十種類の中からルーレットで決められる。

(;^ω^) (・・・アニメあたりになってくれたら勝ち目はあるけど・・・数学にでもなったら落とし穴確定だお)

ルーレットは勢い良く回転をはじめ、プレイヤー達はじっとルーレットを見つめていた。

(´・ω・`) (さぁ何がでる?無難に雑学にでもなってくれれば良いが)
ξ゚听)ξ (ここまで残りはしたけど、そろそろ自信ないわ・・・)
(*゚∀゚)  (ギコもしぃもリタイアしちゃったしなぁ・・・保健ならいけそうだけど、もういいかな?)

11人と、現実の会場にいる観衆が見守る中、ルーレットの回転が遅くなっていく。
ルーレットはまるでプレイヤーをじらすようにゆっくり回り、ようやく止まった。
止まった問題は、軍事。


142 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:19:12.41 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^) (・・・勝った・・・!)
(´・ω・`) (軍事か・・・もう一回ルーレット回らないかな)
ξ゚听)ξ (このテスト終わったら何時くらいかなぁ・・・)
(*゚∀゚)  (そういえば今日何曜日だっけ?)

最後の10問は早押し形式。
アナウンスが問題を読み上げていく。

「可変であるプロペラピッチをマイナスの位置に設定し、通常推進とは逆方向の推力を得ること。双発以上のターボプロップ機のほぼ全てがこの機構を」

( ^ω^)「・・・リバーサルピッチ!」

「たちかぜ型の後継となる海上自衛隊の第3世代ミサイル護衛艦。RIM-66を同時に2つの目標へ」

( ^ω^)「はたかぜ」

(´・ω・`)「むぅ・・・20億が・・・」
ξ゚听)ξ「内藤きめぇw」


145 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:24:39.54 ID:Fkc+4o1p0

内藤は次々に正解していった。
選択なら点がはいるだろうが、早押し形式のため他プレイヤーには点がはいらず、内藤の一人舞台になる。
内藤の点はすでに28点。現在トップのショボンの28点に並んだ。
つまり、次の10問目で勝敗が決する。

「ヘリコプターのテイルローターを、垂直尾翼に内蔵したもの。形状が換気扇に似ていることから、その名が」

ボタンを押した音が鳴り、現実会場にいる全員が内藤に視線をむけた。
だが、内藤の手はボタンを押す直前で止まっている。
驚愕の表情で内藤が見つめる先にカメラが動く。

(´・ω・`)「ふふ・・・わかりません」


147 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:32:26.70 ID:Fkc+4o1p0

(;^ω^)「なっ!?ちょwwwおまwwww」
(´・ω・`)「これで内藤の勝ちは消えたな」
(;^ω^)「あーぉ・・・もう言葉もでないお」

問題を打ち消された結果、内藤とショボンの点数は同点のまま。
おそらくは、一問だけ本当に最後の問題が出題されるはず。
得意な軍事の問題が消されたことで、内藤の勝ち目はなくなったといえるだろう。

(´・ω・`)「悪いな、内藤。でも先生どうしても車のローン払いたいんだ」
(;^ω^)「あ、そう・・・ですかお・・・」

ショボンのあまりに大人気ない行動に、会場に来ていた校長及び学校関係者が眉間を揉む。
最後の問題が出題される前に、一応ショボンに注意が下される。
わからないのに答えるなと。
ショボンの了承を確認し、ようやく問題が出題される。

「最後の問題です。耳掻きについているフサフサの部分の名前は?」


150 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:40:56.29 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^)「・・・僕は綿棒派だお」
(´・ω・`)「あれか、知ってるぞ・・・なんだったか、えーと・・・」

耳掻きについているフサフサの部分。
20億の運命を左右する問題にしては簡単な気がするが、急に言われても思い出せない。

ξ゚听)ξ「ああ・・・あれね」
(*゚∀゚)「なぜか立派な名前がついてるんだよねぇ」

答えが分かっていても、内藤とショボンのどちらかが答えないと意味がない。
世界中の関係者が見守る中、さきにボタンを押したのはショボンだった。

(´・ω・`)「・・・もふもふ・・・」
「不正解です」
(´・ω・`)「・・・ですよねー?」


154 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:49:32.24 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^)「うーん・・・見当もつかないお」

内藤はとりあえず持ち物を確認してみた。
当たり前だが、耳掻きもない上に答えが書かれていそうな物もない。
そもそも内藤の持ち物の中でまだ使えるものは一つしかない。
どう考えても役に立たないだろう大海の王しか。

( ^ω^)「リヴァイアたんかもーん」
リヴァイアたん「なんじゃい」
( ^ω^)「耳掻きのふさふさって何ていうか知ってるかお?・・・って、聞いたらカンニングになっちゃうかお」
リヴァイアたん「いや、自分のアイテムなら大丈夫。けど、耳掻きのふさふさなんか知らんぞ?もふもふで良いではないか?」
( ^ω^)「それ不正解だお」
リヴァイアたん「・・・ふむ。会場の人間に聞いてみるか?それくらいなら出来るぞ?」

内藤がリヴァイアたんと相談している隙に、またショボンがボタンを押す。
どうやら何度間違っても良いようだ。

(´・ω・`)「あー・・・荒巻?」
「不正解です」
(´・ω・`)「ええ、わかってます」

VIPシステム内でも、クイズの様子はTV放送されている。
ロシアで豪邸を購入しVIP長者番付1位になった荒巻は、買ったばかりの豪邸でショボンの珍回答を見ていた。

( ,' 3 )「・・・んなはずないだろうに。必死だなショボン先生は」


157 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 00:58:20.62 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^)「で、リヴァイアたん。会場の人に聞くってどうやるんだお?」
リヴァイアたん「テレフォンといってな。フィギアに戻った私を耳に当てれば会場の人間と30秒だけ話せる。やってみる?」
( ^ω^)「・・・お願いするお」
リヴァイアたん「うむ、任せるが良い。これで3回だな。ご利用ありがとうございました☆これからも召喚ドールをごひいきに♪」
(;^ω^)「・・・最後はちゃっかり営業かお」

最後に営業台詞を残し、リヴァイアたんはフィギアに戻った。
ショボンはまだ頭を捻っている。
内藤はすぐにフィギアを耳に当てた。

( ^ω^)「トゥルルルルルル・・・」
リヴァイアたん(F)「阿呆、顔を口のほうにするな!キモイ!!」
(;^ω^)「ご、ごめんだお・・・まだ喋れたのかお」

今度はちゃんとリヴァイアたんの顔を耳に当て、内藤はフィギアの股間の辺りに向けて声をかけた。
現実世界の会場に内藤の声が流れ、観客が思い思いに声を張り上げる。
そんなことなど露も知らないVIPシステム内の人間は、内藤を可哀想な子を見る目で見た。

ξ゚听)ξ「・・・内藤が壊れた」
(*゚∀゚)「可哀想に・・・」


158 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:07:51.41 ID:Fkc+4o1p0

「もふもふー!」「まふまふー!」「もこみちー!」
「フサしぃ!」「フサぎこ!」「羽毛布団の中身の羽!」

(;^ω^)「ちょ、まともな奴はいないのかお!?あと10秒しかないお!」

会場では観衆が適当な答えを叫びあい、とんでもない騒ぎになっていた。
中には正解を言っている人もたくさんいるだろうが、とても聞き取れない。
内藤が諦めかけたとき、やけに聞き取りやすい声が聞こえた。

('A`)「あーあー、内藤?今プレイポッド通して話してるんだが、聞こえるかー?」
( ^ω^)「お?ドクオかお?」
('A`)「ちょっとこっちはうるさくてお前の声聞き取りづらいんだが、答え言うぞー」
( ^ω^)「は、はやくしてくれお!あと4秒しかないお!」
('A`)「答えはあれだ、梵天」
( ^ω^)「ぼんてん!?マジかお?ありg」

内藤が返事を返す前に時間が過ぎ、リヴァイアたんは正真正銘ただのパテの塊になる。
ドクオのいっていた言葉が正解かはわからないが、ここはドクオを信じるしかない。

( ^ω^)「ふ・・・先生、残念だけど僕の勝ちだお」
(´・ω・`)「なんだと?答えがわかったのか・・・!?」
( ^ω^)「僕は、ニュー速市の神になるお・・・!」


161 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:12:20.92 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^)「ずばり。答えは梵天だお」
「・・・」
(;^ω^)「・・・いや、梵天だお?」
「・・・」
(´・ω・`)「・・・間違ってるんじゃないか?」

ξ゚听)ξ (え?梵天じゃないの?)
(*゚∀゚)(なにこの沈黙?たもさん?)

長い沈黙。
プレイヤー達だけでなく、会場の観客も全員が声を出さずにアナウンスを待っている。
会場にいる担当者ですら故障かと慌てだしたとき、ようやくアナウンスから声が流れた。

「・・・正解!」


165 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:20:55.64 ID:Fkc+4o1p0

( ^ω^)「フゥーハハァー!僕が優勝者だお!」
(´・ω・`)「・・・負けたよ、内藤。おめでとう」
( ^ω^)「おお。ありがとうだお先生。なんで最後は爽やかなんだお?」
(´・ω・`)「いやなに、一応教育者だからな。で・・・実は先生言い忘れてたんだが、今度学校のほうで大規模な集金があってだな」

( ^ω^)「ツーン、やったお、優勝しちゃったお」
ξ゚听)ξ「そうね。優勝したらどうなるのかしら?」
(´・ω・`)「内藤、集金があってだな・・・」
( ^ω^)「さぁ・・・会場に戻るんじゃないk」

内藤の視界が突然真っ暗にある。
もういい加減慣れてきた。これから会場に戻されるのだろう。
なすがままにしていると意識も消えていく。
目を覚ますと、予想通りプレイポッドの中だった。

( ^ω^)「・・・うん。きっと外に出れば表彰式だお」


167 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:30:48.69 ID:Fkc+4o1p0

盛大なファンファーレの音と、どこに隠れていたのかわからないほどの人数の聖歌隊。
内藤はプレイポッドから伸びた赤い絨毯の上を担当者の前まで歩いていった。

担当者「優勝おめでとうございます。これが20億の小切手です」
( ^ω^)「どうもですお。これが小切手っていうものかお・・・はじめてみたお」
インタビュアー「内藤さん、優勝おめでとうございます!この20億を何に使われるおつもりですか!」
( ^ω^)「ん・・・そうだおね・・・」
(´・ω・`)「内藤、集金があるんだって。それで少しばかり先生に」
( ^ω^)「半分は恵まれない子供たちに。もう半分はニュー速市に寄付するお」
インタビュアー「本当ですか!?聞きましたかみなさん!」
市長「おぉぉぉぉ!!」

内藤の超善人的な発言で、会場は歓声につつまれる。
市長や市議会役人たちが駆け寄り、内藤は散々もみくちゃにされた。

(´・ω・`)「・・・ローン・・・」
(╬☉д⊙) 「ちょっと、ショボン先生?」
(´・ω・`)「おや、校長先生・・・なにやら顔色が優れないご様子ですな」
(╬☉д⊙) 「てめぇ何ウチの学校のイメージ下げてるんだよ。記者会見でもされたらどうすんだ?星狐学園の教員生徒に金をせびるってよぉー!?」
教員「校長先生、落ち着いてください!顔が変わってます!!」
FOX「む・・・おほん。失礼。でですね、ショボン先生はとりあえず減俸させていただきますのであしからず」
(´・ω・`)「はい?はっはっは、またまたご冗談を。あれは単なる冗談ですよ」

(╬☉д⊙) 「・・・」
(´・ω・`)「いや・・・すいません」


170 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:47:08.55 ID:Fkc+4o1p0

こうして世界最初のVIPシステムの稼動テストは成功し、やがて全世界にVIPシステムが普及していった。
ニュー速市は内藤の優勝賞金寄付などの話題のおかげで観光収入が増え、また日本で最初にVIPシステムの実装機が配備された都市として、一気に日本有数の観光都市になる。

( ,' 3 )「ふーぅ。やはりこの家は良い。現実世界になど戻りたくないねぇ・・・」

後にVIPシステムの弊害として、仮想現実への引きこもり。
通称ヴィッパーと呼ばれる人々が生まれ社会問題になっていったが、それは瑣末なことだろう。


171 :蕎麦屋 ◆SOBAYAmrcU :2006/04/18(火) 01:50:33.54 ID:Fkc+4o1p0

( ´_ゝ`)「弟者よ、次はどこにいく?」
(´<_`  )「そうだな・・・富士火口へD型耐熱スーツでダイビングなんてどうだ兄者」

なぜなら、世界の人々はVIPシステムを心底楽しんでいたから。
そこには無限の可能性があった。

(´・ω・`)「悪いが、ロイヤルストレートフラッシュだ。これで賞金は俺のものだな?ふふ・・・ローンともこれでおさらば、か」

プレイヤーたちはそれぞれが思い思いに新しい遊びを生み出し、現実とリンクさせ遊びの幅を広げていった。
現実での賞金が出るカジノ、レース、格闘技の大会。
VIPシステム内の危険な洞窟を巡る旅行会社。

( ^ω^)「お、ツン見るお。あれが噂の未確認海洋生物だお」
ξ゚听)ξ「あれが七色鯨・・・綺麗ね・・・」
( ^ω^)「いやー、VIP親善大使になってよかったおー」

そして、次々に発見される魔境秘境に、神秘的な生物。
人類はVIPシステムによって、また新しい交流の形を獲得した。
各国首脳が偶然VIPシステム内で出会い本音を語り合うなどで、数々の外交問題が解決されたとか。
VIPは、世界を幸せにしたのだ。

( ^ω^)「VIPシステムはみんなを待ってるお。いつか君も僕と一緒に遊ぼうお!」

めでたしめでたし、と。

 

 

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