301 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:00:09.57 ID:C/Td//rO0
- 午後六時
荒巻の情報を巡って会議は淡々と進んだ。
まだ捜査から帰って来ていない要員もいた為、余計にそう感じられたのかもしれない。
高岡の母の証言により、荒巻はニューソク郊外の別荘地に潜伏している事が明らかになった。
ただ、その場所が本当に荒巻の根城かどうかはわからなかった為、
即座に特別対応チームが組織され、別荘地に向かう事になった。
特別対応チームには銃器が与えられ、ドクオもメンバーに選ばれた。
ドクオはブーンに目で合図を送ると、他のメンバーと共に荒巻の根城に向かった。
302 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:03:31.71 ID:C/Td//rO0
- ブーンとクーは、しぃの自殺の理由めいたものを報告したが、
その突飛すぎる意見は捜査に反映されなかった。
最初からこの意見が取り入れられるとは思っていなかった二人だが、
実際に一蹴されると、どうにもやりきれないものがある。
荒巻捜索は、対応チームの報告を待ちつつ、各自引き続き行うよう指令がでた。
勿論分室メンバーは遊軍なので、例の如く独自の捜査会議を開いた。
渡辺が用意したサンドイッチを頬張りながらブーンが話す。
304 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:06:47.78 ID:C/Td//rO0
- ( ^ω^)「荒巻の居場所が掴めましたから、この事件ももうすぐ終わりですお」
川 ゚ -゚)「そうだな。後の事は対応チームに任せば済むだろうし」
从'ー'从「上手くいけばいいんですけどねぇ」
( ^ω^)「室長は心配なんですかお?」
从'ー'从「心配していますよ。死んだ人間が生き返る事自体、私はまだ信じられません。
まだこの一件には裏がありそうな気がしてならないのです」
川 ゚ -゚)「荒巻の死亡は確実なのですよね」
从'ー'从「はい。先ほど去年の資料に目を通したのですが、間違いなく殺害されています」
( ^ω^)「捕まえてみればわかりますお。室長は心配しすぎですお。
きっと何かカラクリがあるんですお」
从'ー'从「杞憂に終ればいいのですが」
306 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:10:45.49 ID:C/Td//rO0
- 渡辺の不安そうな顔を見ていると、ブーンまで不安に駆られてしまう。
( ^ω^)(ドクオは大丈夫かお・・・)
なんとなく発言しづらい空気が分室を覆った時、やにわに廊下が騒がしくなった。
何事かとブーン達は廊下に顔を出す。
( ^ω^)「何があったんですかお?」
丁度廊下の向こうからジョルジュが走ってくるところだった。
( ^ω^)「ジョルジュさん、何かありましたかお?」
( ゚∀゚)「何かあったかじゃねぇよ。荒巻確保に向かったチームからの連絡が途絶えたんだ。
定時になっても連絡が来ないし、こちらの呼びかけにも答えない。
何かが有ったのはのは確実だ。今から兵隊見繕って出動だよ」
そう捲くし立てると、ジョルジュは廊下を走っていった。
307 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:14:29.74 ID:C/Td//rO0
- 从'ー'从「やはり何かありましたか。杞憂で終って欲しかったのですが」
( ^ω^)「室長、僕に現場入りの許可をお願いしますお」
从'ー'从「ブーン君?」
( ^ω^)「対応チームには僕の親友がいますお。じっとなんかしてられませんお」
从'ー'从「それは許可できません。何があるかわからないのですよ、危険すぎます」
川 ゚ -゚)「頭を冷やせブーン。渡辺室長、ちょっとブーンの頭を冷やしてやります」
そう言ってクーは半ば引きずるようにブーンを引っ張っていく。
渡辺はそれを見てため息をついた。
从'ー'从「仕方ありませんねぇ・・・事後承諾ですが、また局長に掛け合いましょうか」
308 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:17:26.23 ID:C/Td//rO0
- クーはブーンを引っ張って駐車場にまで来ていた。
( ^ω^)「こんなところに来てどうするんですかお」
川 ゚ -゚)「荒巻のアジトに行くぞ。独断専行だが、渡辺室長なら察してくれるだろう」
( ^ω^)「!! わかりましたお!ありがとうございますお」
川 ゚ -゚)「礼なら無事戻ってきてから渡辺室長に言うんだな。
さぁ、対策本部が追加要員を出さないうちに行こう」
二人は車に乗り込みエンジンをスタートさせる。
向かう先には何が待ち受けているのか。
全くの手探りのまま、二人は刑事局を後にする。
ブーンはドクオの無事を祈るばかりだった。
309 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:20:46.73 ID:C/Td//rO0
- 午後七時十五分。
クーのナビにより、ブーン達は荒巻のアジトであろう別荘地に到着した。
路上には特別対応チームのものであろう車両が横転していた。
特別対応チームのメンバーらしき人物が二人倒れている。
ブーンとクーは倒れている人間に近づいた。
( ^ω^)「大丈夫ですかお?ここで何があったんですかお」
返事は無かった。
僅かに呼吸をしているので死んではいないようだ。
外傷が激しく、出血もかなりの量がある。
川 ゚ -゚)「ブーン!こっちは意識が無い。そっちはどうだ」
( ^ω^)「こっちも似たようなもんですお。救急呼びますお」
ブーンはそう言って携帯で救急車を呼び出した。
クーも携帯を取り出して刑事局に連絡をつける。
ここで何があったのだろうか。
ブーンは救急に電話をかけながら膨大する不安を抱えた。
その不安を払拭するようにクーが言った。
310 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:23:41.04 ID:C/Td//rO0
- 川 ゚ -゚)「対策本部からは増援が来るらしい。
それまで待機しろとの事だが・・・この場合は、」
( ^ω^)「勿論潜入ですお。ドクオも見つかりませんですお」
川 ゚ -゚)「よし、行こう」
クーが唇を引き締めた。
荒巻のアジトと思われる別荘には明かりがついている。
中からは何の音も聞こえてこない。
ブーンは渇いた唇を舐める。
別荘の入り口まで来た時、銃を握ったまま頭から血を流して倒れている男がいた。
( ^ω^)「だ、だいじょうぶですかお?」
ブーンは男を抱きかかえるが、脈もなければ息もしていない。
( ^ω^)「死んでるお・・・」
川 ゚ -゚)「私達は丸腰だ。今ならまだ引き返せるが・・・」
311 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:26:26.22 ID:C/Td//rO0
- クーの言葉を遮るようにブーンが言う。
( ^ω^)「それじゃ何の為にここまで来たのかわかりませんお。
ドクオの安否も確認せずに帰れませんお」
その言葉を聞いて、クーは遺体の手に握られていた拳銃を取り上げ言った。
川 ゚ -゚)「私は訓練以外で銃を持ったことが無い。ブーンが持っていてくれ」
( ^ω^)「僕も訓練以外では撃った事はないですお・・・。」
そう言いつつも、ブーンはクーの手から銃を受け取った。
安全装置と弾倉を確認し、大きく深呼吸をした。
そして、決意の言葉を口にする。
( ^ω^)「行きますお」
313 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:29:30.70 ID:C/Td//rO0
- 屋敷の内部に侵入した二人は、惨状を目の当たりにした。
廊下には対応チームメンバーが転がっていた。
皆重傷を負っているか死亡している。
それを目印にするかのように二人は進んでいった。
二人とも口をきけるような余裕は無い。
心拍数が跳ね上がり、呼吸が苦しい。
二人は広間へと続く、開かれたドアの前までやってきた。
弱弱しくうめく者。完全に動かなくなっている者。その間を抜けて二人は進む。
そして、ブーンが恐る恐る広間を覗き込むと、
数名の対応チームメンバーと共に倒れているドクオが確認できた。
( ^ω^)「ドクオ!?」
ドクオは広間の床にうつ伏せで倒れこんでいた。
ブーンの位置からはドクオの状態ははっきりと把握できない。
しかし、そのままドクオに駆け寄った。
( ^ω^)「ドクオ!しっかりするお!」
315 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 15:32:49.55 ID:C/Td//rO0
- 銃を上着のポケットに突っ込み、ドクオを抱きかかえてその名を連呼するブーン。
何度目かの呼びかけに、ドクオは反応した。
('A`)「ブーンか・・・何故こんなところにいるんだ」
( ^ω^)「ドクオ!無事だったんだお」
('A`)「無事じゃねー。アバラと右足をやられた。動けねぇ」
( ^ω^)「一体何があったんだお?皆酷い怪我してるし、死んでる人もいるお」
('A`)「あぁクソッタレ。荒巻はバケモノを飼ってやがった。
一匹のバケモノのおかげでこの様だ。」
( ^ω^)「バケモノ?ひょっとして・・・」
('A`)「あぁ、ご推察の通りだと思うぜ」
―――身体強化者だ。
ドクオは忌々しく吐き捨てる様に言った。
323 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:11:57.53 ID:C/Td//rO0
- ('A`)「弾ははじき返されるわ、一撃で行動不能にさせられるわ、まさにバケモノだったぞ。
去年を思い出したぜ」
クーが警戒を解いて側にやってきた。
川 ゚ -゚)「ここにいたのはそのバケモノと、死んだはずの荒巻だけだったのか?」
('A`)「あぁ。荒巻め、地獄から舞い戻ってきやがった。奴らはもうここにはいないだろう。
俺らが全滅したのを確かめてから、ここを出て行きやがった」
( ^ω^)「荒巻は取り逃がしたんだおね。まぁ、命があっただけ儲けものだお」
('A`)「糞!忌々しい!」
326 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:15:11.50 ID:C/Td//rO0
- ドクオが悪態をついていると、遠くから刑事局車両のサイレンが聞こえてきた。
増援部隊だろうが、もはや無意味である。
増援部隊のリーダーはジョルジュだった。
ジョルジュはドクオから事のあらましを聞き、本部に連絡を入れた。
丁度その時、今度は救急車のサイレンが聞こえた。
ドクオを始め重傷者は救急車でニューソク刑事局病院に運ばれた。
到着した増援部隊は別荘中を捜索したが、荒巻の姿はすでに無かった。
また、荒巻の逃亡先も皆目見当がつかないので、
間抜けな事に増援部隊は数名の刑事を残して引き上げる事となった。
ブーンとクーも、分室に戻る事にした。
327 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:18:52.82 ID:C/Td//rO0
- ( ^ω^)「荒巻に続いて身体強化者まで・・・一体この先どうなるんだお・・・」
荒巻とその配下の身体強化者、そして殉職した刑事達を思ってブーンは悲嘆に暮れる。
川 ゚ -゚)「悲観しても仕方が無いぞ。今は荒巻の尻尾を掴む事に専念しよう」
( ^ω^)「そうですおね。落ち込んでる暇は無いですお」
ブーンは無理やり自分を奮い立たせるが、身体の芯が痺れたような感覚に陥っている。
( ^ω^)「でも、今回の件は麻薬班だけでは処理しきれないかもしれませんお」
川 ゚ -゚)「そうだな・・・重犯罪課が出てくることになるだろうな」
( ^ω^)「そうなったら益々僕たちの出番は無くなりますお」
川 ゚ -゚)「もはや出番とか手柄とか言っている場合じゃないぞ」
( ^ω^)「・・・おっしゃる通りですお」
328 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:22:41.12 ID:C/Td//rO0
- 重犯罪課は強盗や殺人、また武装した犯罪者に対応する能力を持った課である。
準軍隊とも言われるほどの武力を持ち、独自の戦闘体系を備えている。
去年のキャンディ一斉摘発時には、軍と並んで前線で奮闘した、
刑事局の戦闘スペシャリストが重犯罪課なのだ。
( ^ω^)「荒巻の目的は何でしょうかお。
地獄から舞い戻ってまで何がしたいんでしょうかお」
川 ゚ -゚)「本人に聞いてみるしかないだろうなぁ。
生き返ってみたり、子供に薬を流したり、何がしたいのかわからん」
クーがため息をついて呟いた時、ブーンの携帯が鳴り出した。
携帯「何処から見てもスーパマンじゃないスペースオペラの主役になれない」
ブーンは車を路肩に寄せた。
331 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:26:50.67 ID:C/Td//rO0
- ( ^ω^)「もしもしブーンですお。何か進展がありましたかお?」
从'―'从『たった今本部から連絡がありました。
荒巻と思われる人物から高岡さんの携帯に電話があったそうです。
発信元はVIPホテルからですよ』
( ^ω^)「VIPホテル!目と鼻の先ですお!」
从'ー'从『増援部隊と重犯罪課もチームを編成して現場に向かっています。
非常に危険ですが、貴方達の随行許可が取れました。向かいますね?』
( ^ω^)「また魔法を使ったんですかお?
もちろん行きますお。ここまで来たら最後まで見届けたいですお」
从'ー'从『くれぐれも前線には出ないでくださいね』
333 : ◆K/ms5.N0fc :2007/03/06(火) 16:30:39.15 ID:C/Td//rO0
- ( ^ω^)「わかりましたお。
ところで、荒巻は何故高岡さんに電話したんですかお?」
从'ー'从『高岡さんの死はまだマスコミには公表されていません。
恐らく荒巻は更なるキャンディの受け渡しを考えたのではないかと思われます』
( ^ω^)「なるほど、わかりましたお。
ではこれよりVIPホテルに向かいますお」
从'ー'从『本当に気をつけてくださいね』
( ^ω^)「了解ですお」
ブーンは電話を切って車を発信させた。
運転しながら渡辺との電話の内容をクーに伝える。
―――今度こそ終わりにしたいものだ
と、クーは呟いた。
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