86 名前: 産科医(東京都)[]
投稿日:2007/03/21(水) 00:30:39.35 ID:zx+/qYTa0
- >>85
俺もそう思ったんだけど、意外とわからないものでw
でけた!!投下します。
病室にたどり着いた僕らを待っていた光景は、
全身をチューブで機械に繋がれ、
顔に何に使うのかわからないマスクをつけられたショボンさんの姿。
聞けば模試の最中に突然倒れたとの事だった。
(;;^ω^)「ショボンさん!!」
ξ ;;)ξ「いやぁぁぁ!!ショボンさん!!」
川;゚ -゚)「おい医者!この人の容体はどうなんだ!」
クーが今までに見せた事のないような剣幕で、側にいた白衣の男に詰め寄る。
ミ,;゚д゚彡「そ、それがですね…」
(#*゚∀゚)「大丈夫じゃないとか言ったら承知しないかんねっ!!」
ミ,;゚д゚彡「いえ、だから…」
(=;゚ω゚)ノ「しょ、ショボンさん、嘘だヨゥ…」
87 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:32:01.28
ID:zx+/qYTa0
- そんな…この前まではあんなに元気だったじゃないか…
まだ、まだ教わってない事だって沢山あるのに…
僕は痛々しいショボンさんの有様から目を背け、俯いて拳を握りしめた。
震える僕の右肩に、ツンがそっと手を置いてくれる。
今はその温もりも、上手く僕の中に浸透していかない。
何故なら、彼女のその手も震えているから。
そして更にもう片方の肩に誰かの手が置かれ、
耳元に生暖かい吐息と、低く野太い声が響いた。
(´・ω・`)「や ら な い か」
( ゜ω゜)「アッー!!!!」
12時限目:「昔」
88 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:33:33.51
ID:zx+/qYTa0
- ξ#゚听)ξ「で、一体どういう事なのか説明してもらいましょうか」
(#*゚∀゚)「返答によっては…」
川#゚ -゚)「本当に病人になって頂く」
(´#)ω(#`)「ひゅへにふぉこふぉこへす」
ベッドの上に仁王立ちする鬼神三人娘と、床でぼろ雑巾のように横たわるショボンさん。
とってもシュールな光景だ。
それにしても、さっきのこの三人によるジェットストリームバルスはスゴかった。
まさか僕を踏み台にするとは。
ミ,,#)д(#彡「ひゃんでほふまへ…」
川#゚ -゚)「演技に加担した貴様も同罪だ」
医者が病室に転がっているのも、普段中々見れない光景ではある。
(;‘A`)「(今初めて…自分が…どれだけ綱渡りの毎日を…送っているか理解した…)」
89 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:34:56.91
ID:zx+/qYTa0
- (; ^ω^)「と、とにかく一旦話を聞こうお(これ以上やったらマジでショボンさん死ぬお)」
未だ怒り収まらぬ様子のツン達をなだめ、
僕はショボンさんを抱き起こしてベッドに座らせた。
(;´・ω・`)「あ、ありがとうブーン…」
(=゚ω゚)ノ「で、本当はショボンさんはどうしたんですかヨゥ?」
(´・ω・`)「あぁ、実は情けない話で疲れが溜まってしまってね、
軽い貧血を起こして病院に運ばれたってワケさ」
90 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:35:45.40
ID:zx+/qYTa0
- 彼特有の、包容力のある暖かい笑顔で受け答える。
だけど僕は、その笑顔にどこが違和感を感じずにはいられなかった。
( ^ω^)「(医者は…)」
ミ,;゚д゚彡「……ハッ」
ミ,;゚3゚彡「ピ〜ピピピ〜♪」
…怪しい、僕の視線に気づいて目をそらして口笛を吹き出したあたり、もの凄く怪しい。
もう一度追求してみようとした瞬間、つーの言葉が僕を遮った。
(*゚∀゚)「…合宿の時の事に関係あんだろ」
91 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:36:32.84
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「…」
(*゚∀゚)「答えろよ」
(´・ω・`)「…せっかく隠してたのに、言っちゃったら台無しじゃないかもう」
取り繕ったような笑顔を脱ぎ去り、どこか諦めの色が伺える表情でショボンさんは呟く。
僕にはその顔が、彼の歳以上に老けて見えた。
(‘A`)「合宿の時の…事?」
(*゚∀゚)「説明してもいいね?」
無言で頷いたショボンさんを見て、
つーは僕らに合宿最終日に何があったのか教えてくれた。
92 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:37:18.24
ID:zx+/qYTa0
- 僕らがぐでんぐでんに酔った事、
ショボンさんをふざけて父親のように呼んだ途端彼の様子が急変した事、
それを内緒にしてくれと頼まれた事…。
ξ;゚听)ξ「知らなかった…」
(*゚∀゚)「そりゃ隠してたからね、当然さ」
それを聞いて一つ思い出した事があった。
( ^ω^)「あの結婚指輪も…何か関係あるんですかお?」
(´・ω・`)「…こりゃ参ったね、たまたまつけてた時に見られちゃってたとは…」
93 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:38:19.40
ID:zx+/qYTa0
- 彼は、観念したように両手を投げ出し、そのままベッドに仰向けに倒れ込む。
じっと天井の方を眺めている彼の瞳は、蛍光灯とか染みとかじゃなく、
もっと先の方にあるものを見ているような気がした。
(´・ω・`)「君たち」
その体制のまま首だけを動かし、こちらを向いてショボンさんが口を開く。
(´・ω・`)「つまんないオッサンの昔話とか聞きたい?」
僕らは一瞬顔を見合わせた後、揃って縦に首を振る。
94 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:39:15.99
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「…しょうがないか…」
退屈しても僕のせいじゃないからね、と一度だけ念を押し、彼は語ってくれた。
悲しい過去と、それに未だ縛られている己の話を。
95 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:40:09.90
ID:zx+/qYTa0
- ―――僕には昔、妻がいた。
名をペニサスと言ってね、僕にはもったいないくらいのいい女だったよ。
優しくて、気だても良くて、何より美人だった。
そして愛すべき子もいた。
シャキンと名付けたその子は、すくすくと育ってくれた。
僕に良く似た眉毛が特徴的で、良く近所じゃそっくり親子なんて言われてたなぁ…。
96 名前: 産科医(東京都)[]
投稿日:2007/03/21(水) 00:40:39.10 ID:zx+/qYTa0
- 僕とペニサスは高校の同級生で、卒業して大学に行かずそのまま結婚した。
結婚と言っても双方の親の同意が得られたちゃんとしたものでなく、
半ばヤケになった駆け落ちみたいなものだったけどね。
今振り返ってみると、若かったなと思うよ。
97 名前: 産科医(東京都)[]
投稿日:2007/03/21(水) 00:41:21.18 ID:zx+/qYTa0
- 19の時にシャキンが産まれ、僕らは幸せの絶頂にいた。
でも、妻と子供を満足に養えるだけのお金はどうしても高卒の僕には稼げなかったんだ。
そこで僕は両親に土下座して金を工面してもらい、
自分は大学に行って立派な職に就こうと思い立ったワケだ。
とりあえずシャキンが4歳になるまで待って、それから僕は猛勉強を始めた。
その時僕は22だった―――
98 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:42:05.54
ID:zx+/qYTa0
- ・
・
・
(´・ω・`)「ふぅ…こんなもんかな…」
僕は鉛筆を置き、机に広がった参考書を眺める。
複雑な数式と難解な解説、これは天下のVIP大の過去問集だ。
(´・ω・`)「試しに解いてみたけど、こりゃ駄目だ。全くわからん」
VIP大の問題を脇に押しやり、もっとレベルの低い中堅大学の問題を棚から出す。
もっともこれでも、長年勉強などしていない僕にとってはかなりの挑戦なのだが。
99 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:42:59.14
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「頑張らないとな…」
椅子に思い切りよりかかり、裸電球が一つ吊るしてあるだけの天井を見つめる。
ほんのりと光る電球が影を作る。
光と影の境界線がゆらゆらと不安定に蠢くのを、僕はただじっと眺めていた。
('、`*川「お茶できたよ」
ドアが開く音に振り返って見れば、お盆を抱えた最愛の人がそこにいる。
(´・ω・`)「ああ、ありがとう。そこに置いといてくれ」
('、`*川「あなた大丈夫?あんまり根つめちゃ駄目よ?w倒れられたら元も子もないんだから」
(´・ω・`)「ははっw確かにそうだね」
100 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:45:07.35
ID:zx+/qYTa0
- ペニサスが入れるお茶は美味い。
ごくごく普通の市販のパックティーなのだが、何故か彼女の手にかかると、
英国王室御用達ばりの絶品に変わるのだ。
(´・ω・`)「君には迷惑をかけるね」
('、`*川「何言ってるのよw結婚する前からかけられっぱなしよ全くw」
(;´・ω・`)「そ、そんなにかい?」
数秒顔を見合わせた後、二人で笑い出す。この空間が、たまらなく好きだ。
ひとしきり笑った後、もう一度見つめ合い今度は真剣な表情で彼女の顔が近づいてくる。
目を閉じた彼女に習って、僕もまぶたを降ろした。
しかし、僕らの唇が後少しでお互いに触れると言ったところで、ちょうど邪魔が入る。
101 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:46:17.31
ID:zx+/qYTa0
- (`・ω・´)「父ちゃん母ちゃん!見てみてお絵描きしたの!」
もう少しだったのにと口だけで言ってみせた僕に苦笑して、
彼女はその侵入者、僕らの宝物の方に向き直った。
('、`*川「どれどれ…?あら、上手に書けてるわね。これはキリンさん?」
(`・ω・´)「違うよそれはバナナだよ」
('、`*;川「あ、あれ…?じゃあ、これはうさぎさんかな?」
(`・ω・´)「それは鏡餅だよ母ちゃん」
(;´・ω・`)「(息子が下手なのか彼女がセンスないのかどっちなんだ…)」
問題の絵を見せてもらったところ、どっちもどっちと言ったところだった。
102 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:46:53.73
ID:zx+/qYTa0
- ('、`*川「じゃあ、お父さんの邪魔しちゃいけないから、
あっちでお母さんと一緒にお絵描きしましょうね」
(`・ω・´)「え〜」
彼女に手をひかれ、ずるずると床を引きずられていくシャキン。
しかし彼はその手を振り切り、走って向かってきて僕の膝の上にちょこんと乗った。
(`・ω・´)「父ちゃん、これなあに?」
息子の小さな指が指す先には、先程僕が完膚なきまでに叩きのめされたVIP大の過去問集。
幼い息子には、こんな分厚い本が珍しくて仕方ないのだろう。
103 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:47:40.71
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「これはね、今この国で一番スゴい大学の問題なんだよ?」
(`・ω・´)「へぇ〜、父ちゃんもここを受けるの?」
(´・ω・`)「いや、僕はここは無理だからもっと簡単なところを受けるんだ」
(`・ω・´)「え〜そんなのやだ〜、一番のとこに入って欲しいよ〜」
そう言って僕の膝の上で駄々をこねて暴れ回る息子を、
ペニサスがひょいと抱き上げる。
('、`*川「お父さんに無茶言わないの、あなたのお父さんはそんなに頭よくないのよ?」
(;´・ω・`)「ひどい事言うなぁ」
104 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:48:33.31
ID:zx+/qYTa0
- (`・ω・´)「ん〜…でもやっぱり父ちゃんには一番になってほしいよ僕」
('、`*川「どうして?」
(`・ω・´)「だって僕の父ちゃんはスゴいんだ!
かけっこだって他の子のお父さんより速いし、からだだっておっきいもん。
父ちゃんはいつも一番だから、今度も一番がいいな…」
そうだった。
僕はシャキンの幼稚園の他の子達の親より圧倒的に若いため、
運動会などではいつもヒーローだったのだ。
105 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:49:14.35
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「そうだな…じゃあ父さん頑張ってここに入ってみせるよ」
(`・ω・´)「ホント?約束だよ??」
しゅんと落ち込む息子を見て、思わず口走ってしまった。
側ではペニサスが心配そうな顔をしてこちらを見ている。
(´・ω・`)「本当だ、約束だよ」
まだ小さな小さな小指と、僕の小指をからませて、僕らは男と男の契りを交わした。
この少し力を入れれば折れてしまいそうなこの手、これを護るためならなんでもやってやる。
106 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:49:48.74
ID:zx+/qYTa0
- ('、`*川「あんな約束、しちゃってよかったの?」
(´・ω・`)「ん?僕はいつ入るかなんて一言も言ってないよ?w」
('、`*川「もう…またあの子怒るわよw」
(´・ω・`)「約束は守る、いつかは入ってみせるさw」
シャキンが寝た後、ソファーに座り二人だけの時間を楽しむ。
一日のうちでもっとも騒がしくない時間帯だ。
会話が途切れたところで、そっと口づけを交わす。
僕らは、本当に幸せだった。
108 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:51:32.08
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「ふぅ、一旦休憩しようか」
少し疲れた様子のショボンさん。
そりゃ一人であんなに喋ってれば疲れもするだろう。
知らなかった、ショボンさんに息子がいたなんて。
まぁ、この歳ならいてもおかしくはないのだけれども。
109 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:52:20.62
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「ところでツンとブーン、
君らさっき見た時スゴい親密そうだったんだけど、もしかして付き合ってる?」
(; ^ω^)「な、な、何をおっしゃいますやら…」
ξ///)ξ「そ、そうですよ、あたしとブーンはまだ…」
(´・ω・`)「まだ?」
ξ///)ξ「あ….」
…バカ。
(=;ω;)ノ「う...う...うわーん!!」
(=;ω;)ノ「ブーンのアホー!!死ねヨゥー!!」
バッチリ聞いていたイヨウが大粒の涙を流して病室を飛び出していく。
病院は走っちゃ駄目なのに。
111 名前: 産科医(東京都)[] 投稿日:2007/03/21(水) 00:53:53.61
ID:zx+/qYTa0
- (´・ω・`)「ちょうどいいや、イヨウが帰ってきたらまた話す事にしようか」
( ゚∀゚)「男ノ嫉妬ハuglyデスネー」
(*゚∀゚)「ホントホント、みっともないったらありゃしないよ」
かくして僕らは、実質二度精神的ショックを受けた男が帰ってくるまで待つ事になったのだった。
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