5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 14:12:27.57 ID:NCk8rjnQ0
 

ここから先はまとめて下さったので、今から新しい方張り。



(´∀`)「私が受ける試練などあるモナか?」
自身たっぷりの言葉をモナ丸が投げかける。
確かに、すでに歴戦の強者として君臨していたモナ丸には技術関係の試練は必要は無い。
またショボ之介のように容易く欲望に飲まれることもない彼に、必要な試練などあるのだろうか?
しかし精霊は困らなかった。
――勿論あるさ。君の中の唯一の弱点、それを克服するための試練がね……。
(´∀`)「弱点?」
どこか子供っぽい声をしている精霊は指を鳴らした。
やはり他の者達と同じように風景が変わる。
そこは――

(´∀`)「ここは……殿の城モナ!?」
すでに見慣れたいつもの風景がそこに広がっていた。間違いない。ここはジョルジュ城の応接間だ。
――幻だけどね。君にはここで、多分君が倒せないであろう相手と戦ってもらうよ。
再び精霊が指を鳴らす。部屋の中央辺りに、煙が立った。
そしてそこにいたのは……

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 14:13:10.73 ID:NCk8rjnQ0

 

( ゚∀゚)「………」

(;;´∀`)「殿!?」
死んだはずのジョルジュだった。一瞬試練だということも忘れて近づこうとするモナ丸。
しかし精霊の声がそれを妨げた。
――むやみに近づかない方がいいよ。そのお殿様はこの部屋と同じように僕が作り出した幻さ。今から君には、彼と戦ってもらう。
(;´∀`)「何ぃ!? 馬鹿言うなモナ、私に殿を殺せと言うのか!」
モナ丸は激怒するが、精霊は心底楽しそうに笑っていた。
――ほら、やっぱり倒せない、倒せない。アハハハハ……。
実に嫌な精霊だ。しかし倒せないのも事実。
ジョルジュに絶対の忠誠を誓っていたモナ丸にとって、主君を殺せと言うのは自分を殺せと言うのと同じことだ。
「ひ、卑怯モナ……。幻とはいえ殿を殺すなんて……!」
――せいぜい頑張ってねぇ〜。アハハハハ、アハハハハハ!
最後まで不快な思いをさせ、精霊の声は消えていった。
残されたのはゆっくりと刀を構えるジョルジュと愕然としているモナ丸だけ。
( ゚∀゚)「参るぞ、モナ丸。死にたくなければ余を殺すのだな」
(;;´∀`)「くっ……やはり戦えと言うのかモナ……」
ゆっくりとジョルジュはモナ丸に近づいてくる。
しかしモナ丸は、ただその場に立ち尽くすことしか出来なかった……。

 

9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 14:17:44.09 ID:NCk8rjnQ0


( ^ω^)「次の相手はだれだお!」
ようやくスカルチノフを倒すことに成功したブーン。
精霊は驚いたような口調でそれを褒めた。
――へぇ〜。絶対無理だと思ったのに、よく出来たわね。すごいすごい。
( ^ω^)「えへへだお。早く次を始めるお!」
徐々にブーンに自信がつき始めていた。この訓練を始めてから4時間。驚くべきスピードでブーンは成長している。
――そうね。次は、この人よ!
三度影が現れた。今度の相手は誰なのか。緊張して待ち構える。
影はまとわりつく煙を払いながら、ゆっくりと出てきた。
それは、ブーンにとってはあまり見たくない顔。
( ゚д゚ )「なんだ、君が相手か」
( ;^ω^)「!? 君はギコの弟! こっち見るなお!」
( ゚д゚ )「失礼だなぁ。僕にだってコッチという名前があるんだよ。あと、いい加減そのこっち見るなってのやめてくれない?」
ちょっとイラつくコッチ。本物の彼も内心はこっち見るな、という言葉をよく思っていないのだろうか。
しかしいきなりこんな化け物が出てくるとは。
( ;^ω^)「ちょっと精霊さん! いきなりレベルが上がりすぎてないかお!?」
抗議をするが、精霊は聞く耳を持たなかった。
――言ったでしょ? あなたの腕前に応じて相手も強くなるって。恨むのならいきなり強くなったあなた自身を恨むことね。
そうとだけ言って声は止んでしまう。やるしかないらしい。
( ;^ω^)「そんなひどいお……。でも、コッチが出てくるということはそれだけ僕も強くなってるんだお、自信を持つお」
自分に言い聞かせるブーン。だが頭の中には荒巻で殺されたあの兵士のことが常にあった。
あんな運命になるのはご免だ。
( ゚д゚ )「やるなら早くしようか。いくら幻でも感情はあるんだよ」
自分で幻ということを分かっているらしい。中々やってくれる幻だ。
( ^ω^)「わかったお……。いくお!」
刀を構えた。一方コッチの手にはバチバチと放電が駆け巡る。
( ゚д゚ )「いい度胸だね。3分で感電死させてあげるよ!」
コッチの手から、猛烈な電撃が向かってきた。
 

14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 15:00:52.27 ID:NCk8rjnQ0

 

( ゚д゚ )「僕に近づくなんて100年早いよ!」
閃光と爆音がし、暗黒の地面が抉れる。
連続で放ってくる電撃はその一発一発がひどく正確な狙いで、強力だった。
一撃でももらえば終わりだろう。
( ;^ω^)「ここここ、怖いお!」
攻撃などする暇が殆どなく、ただ逃げることしかできないブーン。知らずのうちにギコとの戦いを思い出す。
あの時もあまりの攻撃の激しさに最初は逃げることしか出来なかった。木像を倒すことで何とかピンチを乗り切ったが、今回はそれができない。
( ;^ω^)「実力で戦うしかないのかお……」
かといってそのまま飛び込むのは自殺行為。何とかして隙を見つけなければ。
( ゚д゚ )「来ないのかい? それならこっちから行くよ」
( ;^ω^)「すでにやってるお!」
( ゚д゚ )「そうだったっけね」
冗談を言うほど余裕なコッチ。一方ブーンは冗談に応じながらも余裕はない。
( ^ω^)「(あんまり逃げてると疲れてしまうお……。今度は休む場所もないし……やばいお)」
早いところ勝負をつけなくては。だがどうする?
( ゚д゚ )「まだまだこんなものじゃないよ」
コッチは容赦なく撃ち続けてきた。
いずれはコッチも疲れて電撃が止まるかもしれない。しかし、それまで逃げ切れるか。
( ^ω^)「逃げてばかりじゃ始まらないお……行くお!」
ブーンは駆け出した。最初から彼の足は速いが、今までの戦いを乗り越えて更に速くなっていた。
コッチもこれには怯む。
( ;゚д゚ )「!? は、速い!」
それでも落ち着いて狙う。しかしブーンはそれを次々と避けていく。

 

15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 15:01:29.52 ID:NCk8rjnQ0

 

しかし、
「うわ!」
何発目かで電撃が微かに当たってしまった。近づきすぎたため避けきれなくなったのだ。
( ゚д゚ )「今だ!」
コッチは少しの間目を瞑り、やがて特別でかい一撃を放ってきた。やばい。
「そう簡単にはやられないお!」
だん、と跳躍する。それで何とか避けることができた。
しかしコッチは驚きもせずに、空中にいるブーン目がけ撃ってくる。どこまでもやれる男だ。
だが幸いこの攻撃はブーンが落下する速度の方が速く当たらなかった。もう少しブーンが高くジャンプしていたらやられていただろう。
「走れば何とか避けれるお。でも近づきすぎると無理になっちゃうお。でも離れてたら刀は届かないし……」
何とかして一気に近づけないか。ジャンプをすれば可能かもしれないが、飛んでいる間が無防備となってしまう。
「(あいつの集中力を乱せないかお……)」
ここでブーンはある言葉を思い出した。それは、“こっち見るな”。
コッチはこの言葉を嫌がっていたようだった。尤も何度も言われていたために少しは耐性があるらしい。
だけど、何度も言われたら?――おそらく怒るだろう。
「(よし……これだお!)」

 

17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 15:18:35.91 ID:NCk8rjnQ0

 

ブーンはすかさず実行した。悠長なことは言ってられない。
( ^ω^)「やいコッチ、こっち見るなお!」
( ゚д゚ )「……ふん」
少しだけ怒っているらしい。いける。
( ^ω^)「まったく何度言ってもこっち見て、いい加減にするお!」
(♯゚д゚ )「………(ビキ」
( ^ω^)「何度こっち見るなって言えばいいんだお、こっち見るな。こっち見るなだお!」
何度も繰り返すブーン。ついにコッチが切れた。
(♯゚д゚ )「ええ加減にしろやこのタコ介があぁぁぁ!」
電撃を先程以上に連発してくる。だが、その狙い正確ではなくなった。
( ^ω^)「よし!」
ブーンは再び駆け出す。電撃の嵐が来るが、彼の足なら避けれた。
しかし近づくにつれやはり避け辛くなる。だがここでブーンは跳躍した。

怒りに我を忘れていたコッチはほんの少しだけ、反応が遅れた。そしてその少しが運命を開けた。
コッチが慌てて狙いをつけようとしたときには、すでに目の前にブーンが立っていた。
( ;゚д゚ )「しまっ……!」
( ^ω^)「覚悟するお!」
刀が煌いた。続いて鈍い音がする。そして最後に、血。
( ;゚д。 )「ぎゃあぁぁぁぁ!」
腹から胸にかけてを切り裂かれたコッチは、絶叫を上げながら倒れた。

 

31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 18:02:18.76 ID:NCk8rjnQ0
 

煙となり消えていくコッチ。
しかしブーンも力を使い果たし、その場に倒れてしまう。
「うぅ……」
――あらら、やりすぎたようね。
精霊の声が響く。
――仕方がないわ。少しだけ休ませてあげる。
しかしその声も既に、ブーンには聞こえていなかった……。

( ゚∀゚)「むぅん!」
ジョルジュの斬撃がモナ丸を切り裂こうとする。
しかしその動きはさほど速くはなく、簡単に避けることができた。
しかしモナ丸は攻撃しない。
( ゚∀゚)「どうした……。そちほどの腕前ならば余など簡単に滅ぼせるであろう……!」
(;´∀`)「しかし……! 殿を斬ることなど……!」
( ゚∀゚)「余は余であり余にあらず。ただの幻だ」
そういわれても、モナ丸は斬ることが出来ない。忠誠心が強すぎるのが仇となった。
( ゚∀゚)「……もうよい。斬る気がないのなら、こちらが斬るまで」
ゆらり。ジョルジュが動いた。
モナ丸はただ動揺するのみ。斬ろうとはしない。

――やれやれ。どうしようもないね。アハハハ!

精霊の声がして、消えた。

 

32 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 18:02:57.43 ID:NCk8rjnQ0
 

(´ω`)「も……もう駄目ぽ……」
とにかくいい男A「………」
とにかくいい男B「………」
とにかくいい男C「………」
あれから何度も己の欲望を斬ってきたショボ之介。
しかし欲望の化身は一向に消える気配を見せず、次々と現れてきた。
流石にこれにはまいり、半分気絶状態となってしまう。
――流石に無理をさせすぎたか……? こいつ、相当欲望に忠実だな。
様子を見ていた精霊が呟く。
かといって試練を中止するわけにも行かず、しばらく様子を見ることに。

数十分後、やっと起き上がるショボ之介。
(´-ω-`)「ぬぅ……なんかとんでもない夢を見たような………」
目を開けると、目の前に広がるいい男の畑。
とにかくいい男A「………」
とにかくいい男B「………」
とにかくいい男C「………」
(*´・ω・`*)「ウホッ」
完全に試練であることを忘れている。すかさず精霊が注意した。
――これは試練だ。欲望に手出しすれば失敗とみなすぞ。
直後、硬直するショボ之介。何やらわけのわからぬことを呟いた後、絶叫する。
(;;´゚ω。`)「ウソダドンドコドーン!」
己を完全に見失っているようだ。
――………。
精霊は、黙って様子を見ていた。
 

 

40 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 19:45:45.85 ID:NCk8rjnQ0
 

――安土城

???「我等の計画を邪魔する者か。面白いな………」
薄暗い部屋の中、静かながらも豪快さを秘めた声が聞こえる。
( ゚Д゚)「あんたは天下のことさえ考えてくれればいい。面白さなんて感じなくていいんだよ」
別の声が答える――ギコだ。
豪快な声の持ち主は不思議そうに首を傾げた。
???「では何故我にそれを教えた?」
ギコは俺にもわからないといった後、こう付け加えた。
( ゚Д゚)「しぃが言ったんだ。お前にも教えておけ、ってな」
???「しぃ? ……あぁ、あの女か」
男は納得したように頷く。
そしてガチャガチャと音を立てながら立ち上がった。
???「しかし何故、お前達は我に協力するのだ?」
男は尋ねた。
いい加減聞き飽きたぞ、と前置きしながらギコはその質問に答える。
( ゚Д゚)「あんたの利益が、俺等の利益さ」
しばらくの沈黙。やがて男は大笑した。
???「フハハハハ!」
( ゚Д゚)「何がおかしい?」
???「我はお前達が来るまで一人で天下統一を夢見てきた。仲間などおらぬと思っていた」
男は続ける。
???「それがどうしたことか。ここ最近、お前達のその言葉を聞くだけで、1人ではないのか、と思えるようになったのだよ」
男は再び大笑。今度はギコも笑っていた。
( ゚Д゚)「あんたも面白い男だな、信長。得体の知れぬ俺達を仲間と思えるとは」
男――織田信長はギコの言葉には何も言わずに、ただ笑っていた。

 

43 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 20:06:39.52 ID:NCk8rjnQ0
 

???「ブーン……ブーン……」
( -ω-)「……お……? 誰だお、精霊さんかお?」
暗闇の中、ブーンは誰かが自分を呼ぶ声を聞き取り、目を覚ました。
しかしそこは目を閉じていたときと何も変わらない暗黒の世界。
???「ブーン……ブーン……」
声は止むことなく聞こえてきた。よく聞いてみると精霊のものではなかった。
( ^ω^)「誰なんだお?」
当てもなくさまよう。自分の姿は見えるが、それ以外は何も見えない。
???「私はここだ……見つけておくれ……」
見つけてくれと言われても、どうしようもない。
辺りを探ってみる。しかし何も見つからなかった。
( ^ω^)「何も見つからないお! 出てきてくれお!」
しかしその声は暗闇へと呑まれていく。
その後暫く静寂が続いていたが、やがて返答がきた。
???「やれやれ。君もまだまだだな」
ぼう、と暗闇の中に白い影が現れてきた。それは少しづつ形を形成し、1人の男の姿となる。
ブーンは驚いた。その男は自分と瓜二つの姿をしていたのだから。

 

44 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 20:07:17.57 ID:NCk8rjnQ0
 

( ;^ω^)「誰なんだお!?」
唖然とするブーンに、男は優しく話しかけてきた。
( ^ω^)「君は何を驚いているんだい?」
男は笑う。よく見てみると、その男は確かにブーンに似ていたが結構年老いていた。
( ;^ω^)「何をって……あなたが僕に似すぎているからですお」
その言葉を聞いた後、男は笑った。その笑い声も和やかさを伴っている。
( ;^ω^)「?」
何故笑うのか、さっぱりわからないブーン。男は笑いを抑えきれないといった様子でこう言った。
( ^ω^)「似ているのは当たり前だろ? 私は君、君は私なのだから」
( ;゚ω゚)「え!?」
この男が僕? 余計に混乱してきた。
( ;゚ω゚)「でも僕はそんな年取ってませんお!」
再び男は笑った。
( ^ω^)「そりゃそうだね、君はまだ若い。中学生だっけ? でもね、君だっていつか年をとるだろう」
( ^ω^)「え……?」
ブーンはやっと男の正体がわかったような気がした。
恐る恐る、確かめる。
( ^ω^)「もしかして、あなたは未来の……僕?」
男は穏やかな笑みを浮かべて、頷いた。
 

 

49 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 20:41:58.26 ID:NCk8rjnQ0
 

( ^ω^)「そう、私は未来の君。もっとももうブーンではなく、“内藤ホライゾン”と呼ばれてはいるがね」
未来の自分? この男が。
にわかには信じられない言葉。しかし、ブーンが中学生であるということを当てたことが全てを物語っていた。
しかし問題は、何故その未来の自分がこんな所にいるか、である。
( ^ω^)「あなたも幻なんですかお?」
ブーンの問いに男は頷いて返す。
やはり装置が作った幻であるようだ。ではこれも試練の相手か?
ブーンの気持ちを予想してか、未来のブーンは先に答えた。
( ^ω^)「そう、私は君の試練の最後の相手。だけど、その前に幾つか話をしておこう」
男がそう言うと、辺りの景色が急に変わった。だけどこの程度ではもう驚かない。
そこは何かの研究室のようだった。白衣をきた男女が忙しく動き回っている。
( ^ω^)「ここは、私の研究室だ」
研究室? 科学者だったのか。
「私はここで様々な発明品を開発をしていた。この装置もその1つ」
( ^ω^)「この装置が?」
成程、道理でこんな都合のいい装置が未来にあったわけだ。未来のブーンが今のブーンのために作ったのだろう。
( ^ω^)「そう、現に今役立っているこの装置が。……さてここからが本題だ」

 

50 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 20:44:13.29 ID:NCk8rjnQ0
 

急に、男の表情が悲しそうなものに変わる。何かを悔やんでいるようだった。
( ^ω^)「私には1人、お気に入りの助手がいた。私は“彼女”に全てを教えようとした」
ブーンは男の悲しそうな表情から、何か問題が起こったのだろうと予想した。しかし実際はもっと深刻なことだった。
( ^ω^)「だけどね。私は罪を犯したんだよ。彼女は、私からの知識をもらっていくうちに邪な心を持つようになってしまったのだ」
続ける。
( ^ω^)「私がいけなかったのだ。時空間移動の可能性やそれに伴う危険性。場合によっては世界を手中に収めることのできるような危険なことを教えたこの私が」
男は自分の手を見た。沢山の皺が刻まれた、細い手を。
( ^ω^)「そして彼女はついに己の心に負けた。彼女は私を殺し、研究室と私の持っていた資料を自分のものとした」
そこから彼女が何をしたかは殺された私には分からない。だけど、今の彼女の正体なら知っている。
( ^ω^)「……それは?」
完全に男の話に聞き入っていたブーン。先を促した。
( ^ω^)「彼女の名はしぃ。そして恋人の名はギコ。……彼女はバニッシュの総統となった」
( ;゚ω゚)「ギコっ……!?」

 

54 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 21:19:50.07 ID:NCk8rjnQ0
 

思わぬところで思わぬ名前を耳にすることとなった。更に続きを求めるブーン。
だが少し疑問ができる。だが男はそれにも先に答えてくれた。
( ^ω^)「何故私は死んだのに彼女がバニッシュの総統となったか聞きたいのだろう? ……それは簡単なことだよ」
一息ついてから再び男は続けた。
( ^ω^)「何故なら私も中学時代のころ、この戦国の世でバニッシュの総統となったしぃを見ているからさ」
( ゚ω゚)「あっ……」
そう言えばそうだった。だがそれならば、しぃがテロリストとなることを知っていたのなら、防ぐことが出来たのではないか?
男はこの質問にも答えてくれた。
( ^ω^)「ブーン君。過去は未来を変えられる。だが、未来は過去を変えられないのだよ。残念なことだがね」
あぁそうか。ブーンは納得した。
男は、内藤ホライゾンはすでに中学のころ、戦国の世でテロリストとなったしぃを見た。
そこですでにしぃがテロリストとなることは決定してしまったのだ。
あとは、いかに足掻いてもその事実を変えることはできない。
( ^ω^)「僕も……すぐにそのしぃを見られるんですおね」
( ^ω^)「……あぁ。できれば見て欲しくないが……無理な話だ」
暫くの間、お互い黙っていた。
やがて内藤ホライゾンが喋りだす。
( ^ω^)「ブーン君。最後にお願いがある」
( ^ω^)「え?」
内藤は空を仰ぐ。終ることのない虚無がそこには続いていた。
( ^ω^)「バニッシュ、それに信長を必ず滅ぼしてくれ。先程も言ったように過去は未来を変えることが出来るのだ」
( ^ω^)「だからもし君が失敗してしまったら……そのときこそ世界は崩壊する」
さっきまで内心、ブーンは未来のブーンがいることに安堵感を持っていた。僕は必ず帰れるんだ。世界は救われるんだ、と。
だが今の言葉を聞きブーンはそう上手くいかないことを知った。再び気を引き締める。
そして内藤は言った。
「さぁブーン君、そろそろ時間だ。試練を始めるとしよう」

 

58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 21:58:07.96 ID:NCk8rjnQ0
 

虚無の世界の両端に、2人のブーンが立った。
内藤はギコと同じような光る剣を持っている。だがギコのそれより遥かに巨大で、強そうだ。
( ^,ω,^)「準備はいいかね」
( ^ω^)「……はい。でも最後にちょっとだけ質……」
( ^,ω,^)「あぁ、私がブーンという名をやめて内藤と名乗ったのはね。今日君が混乱しないようにするためさ」
ちょっと驚いて内藤を見つめるブーンに、彼は微笑んだ。
( ^ω^)「全て、お見通しですかお」
ブーンは笑った。そして内藤も笑った。
だがすぐにブーンも刀を構える。試練は始まった。
だが、果たして勝てるのだろうか自分は。
しかしすぐに、勝てると確信した。現に目の前にこの試練を制覇した男がいるではないか。彼に出来て自分に出来ないわけがない。
( ^,ω,^)「……行くぞ!」
内藤が地を蹴り駆け出す。年老いても全く衰えていない強力な足で瞬く間に距離を縮める。
( ;-ω-)「うあっ!」
とてもじゃないが避けきれなかった。ガードをするが、吹き飛ばされる。
だがすぐに体勢を立て直しこちらから立ち向かう。あの攻撃をそう何度も受けるわけにはいかない。ならば攻撃をさせないまでだ。
袈裟切り、逆袈裟切りと技を繋ぎ、更に突きをくらわせようとする。しかし内藤はそれら全ての攻撃を大剣で防いだ。
( ^,ω,^)「動きは中々だ。でも、それだけでは勝てない」
落ち着いた口調の内藤。戦闘中に相手の落ち着いた言葉を聞くのは嫌なものだ。こちらは焦ってしまう。
( ;^ω^)「わかってるお!」
回転をつけて斬りかかる。だがこのかなりの威力を持つ技ですら、簡単に防がれてしまった。
( ^,ω,^)「技に頼るな、自分自身をもっと鍛えろ!」
戦闘中に鍛えろとは悠長なことを言ってくれるものだ。だが試練を乗り切った相手の言う言葉、ちゃんと聞いておいて損はない。
自分を鍛える。その言葉の意味を内藤は考えた。
技も自分を鍛えた結果によるものではないのか? しかし内藤が言うには違うらしい。
ならば一体――

 

59 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 21:58:35.34 ID:NCk8rjnQ0
 

( ^,ω,^)「ボーっとしている暇はないよ」
内藤の声がしたのを聞き、慌てて防御姿勢をとる。
目の前に剣を振り下ろしてくる内藤の姿が見えた。
まずい、重力を加えられて叩かれたら確実に剣が折れる。
( ;^ω^)「逃げるお!」
幸い比較的動きは遅かったので、後ろに飛ぶことで避けることができた。
そのまま地に剣をたたきつける内藤。衝撃が虚無の世界を揺らす。
だがそのとき、隙が出来ていた。
( ^ω^)「……! チャンスだお!」
そう思ったときには、すでにブーンは内藤の懐へ飛び込んでいた。当然、内藤は避けれない。
( ^,ω,^)「!」
( ^ω^)「うおぉぉぉぉお!」
思いきり刀を振るった。確かな手応えを感じる。続いて何か温かいものが頬に当たるのを感じた。
内藤は、その胸を切り裂かれていた。鮮血をあたりに撒き散らし、ゆっくりと倒れる。
その最中、ブーンは内藤の最期の言葉を聞いた。

「初恋の人を、大切にしてあげたまえ」
と。

 

60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/07/21(金) 22:01:41.64 ID:NCk8rjnQ0
内藤とブーンのAAを少し区別してみました。
口の周りの『,』←これですが、一応皺のつもりです。
全然そうは見えませんけどね( ゚∀゚)ァハハハハハハ八八八/ \/ \/ \

 

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