20 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:12:23.28 ID:kaQLNSwA0

第二話

今日もまた、目が覚めると朝だった。
差し込む光に目がくらんだ。

まだふらふらする感じは抜けないが、それでも昨日と比べると意識はハッキリしていた。

本当なら、もう目が覚めることは望んでいなかった。

( ,,゚Д゚)「目が覚めたかゴルァ!」

ベッドのそばから声が聞こえる。

ξ゚听)ξ「うるさいわね。見ればわかるでしょ」

上半身だけ起こして答える。

看護婦は私を無視して続けた。

( ,,゚Д゚)「これからは、ニダー先生がいいって言うまで俺がお前のそばに付いてるんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「だから、また変なことしようとなんか思うんじゃねーぞゴルァ!」

それだけ言うと、看護婦はベットの横に置いてある丸いすに座り、雑誌を読み始めた。

本当に24時間つきっきりなのだろうか。
いや、さすがにそれはないだろう。
 

21 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:12:53.81 ID:kaQLNSwA0

ただ本当に実行されたとしても、今の私にはそれをどうにかできる気はしなかった。
どうにかしようとも思わないだろう。

隣からは、ぱらぱらと雑誌をめくる音が聞こえる。
もうすでに雑誌に集中しているようだ。
こちらのことなど全く気にしていないように見えた。

軽く伸びをする。
体中に酸素がいきわたり、落ち着いた気分になる。
手首に軽い痛み。
心にも軽い痛み。
一度助けてもらった命を、もう一度投げ出そうとしたという事実。
後悔。
後ろめたさ。

自分はバカなことをしたと思う。
こんなことをしても内藤はよろこばないだろう。
むしろ怒るかもしれない。

自分で言うのもなんだが、彼はいつも私のことを考えくれていた。
やさしくて。
あったかくて。
笑顔がとても素敵だった。
でも、私は恥ずかしがってきちんと思いを言葉にしたことはなかった。

少しでも何も考えない時間があるとすぐに内藤のことが頭に浮かんでくる。
その人がいなくなってから、大切さに気づく。

24 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:13:18.81 ID:kaQLNSwA0

ふと、ぱらぱらと雑誌がめくる音がしなくなっていた。
何かと思い、看護婦の方を見ると目が合った。

( ,,゚Д゚)

( ,,゚д゚ )

( ゚д゚ )


ξ゚听)ξ「こっちみんな、キメェ」

( ,,゚Д゚)「なんだとゴルァ!」

( ,,゚Д゚)「何回呼んでも無視したのはそっちだろうがゴルァ」

どうやら感慨に浸りすぎて、私を呼ぶ声に気づかなかったようだ。

ξ゚听)ξ「それでなによ」

( ,,゚Д゚)「うるせぇゴルァ!もういいんだゴルァ」

自分から言っていておいてなんなのだろう。
 

25 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:13:48.93 ID:kaQLNSwA0

ξ゚听)ξ「なによ、気になるじゃない」

( ,,゚Д゚)「気にしなくていいんだゴルァ」

ξ゚听)ξ「いいなさいよ」

( ,,゚Д゚)「何にもないんだゴルァ」

何だこいつ。
自分から言ってきたくせに。
こういうやつが一番頭に来る。

ξ♯゚听)ξ「い い な さ い よ」

首も絞めにいこうとしたが、反撃されるのは目に見えているので諦めた。

( ,,゚Д゚)「分かったんだゴルァ!そこまで言うなら話すんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「でも、そこまでたいした話じゃないんだゴルァ」

そう言って彼女はいきなり、服の袖を捲り上げた。

( ,,゚Д゚)「これを見ろゴルァ」

私の目の前に差し出された腕の手首辺りに、横に走る傷があった。
私はこれに似た傷を見たことがある。
自分の手首に刻まれたものと同じ種類のものだった。
 

26 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:14:11.63 ID:kaQLNSwA0

なぜ、彼女の腕に?
まだ彼女と出会って本当に少しの時間しか経っていない。
でも、そんなことをする部類の人でないことは分かる。

それは今現在の彼女がそうであるだけで、昔はそうではなかったのかもしれないが。

( ,,゚Д゚)「お前が今見たとおり、実は俺も死のうと思ったことがあるんだゴルァ」

なんで?とは聞かなかった。
いくらなんでも、そんなことを聞くほど常識外れではないから。

( ,,゚Д゚)「気を使わなくてもいいんだゴルァ」

私の顔色を読んだように言った。

( ,,゚Д゚)「俺が死のうとしたのは、たった一人の妹が死んだからなんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「俺に似てとっても可愛かったんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「親は居たけど居ないも同然だったから、俺にはそいつがすべてだったんだゴルァ」

そう言った顔には、特に何の表情も浮かんでいなかった。
彼女なりに心の中で整理がついているのだろうか。
私が、そこまで辿り着くにはまだまだ時間がかかりそうだと思った。

28 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:14:54.94 ID:kaQLNSwA0

( ,,゚Д゚)「交通事故だったんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「学校の帰り、横断歩道を渡っているときに横から突っ込んできたトラックにはねられて即死だったんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「トラックの運転手は昼間から酒飲んで運転してたんだゴルァ」

嫌な感じがした。
途中で他人事には感じられなくなり、両手で耳を覆い目を固く閉じた。
過去の思い出がフラッシュバック。
思い出したくなかった。

ξ;;)ξ「いやぁぁぁああぁぁ」

( ,,゚Д゚)「ど、どうしたんだゴルァ!大丈夫かゴルァ」

驚いている。
無理もない、いきなり目と耳塞いで叫ばれたら誰だって驚くだろう。
傍から見ればただのヒステリーだ。

でもそこからは何も言わず、私が落ち着くまで黙って見守ってくれていた。

( ,,゚Д゚)「落ち着いたかゴルァ!」

そういうと彼女は立ち上がり、出て行こうとした。
その背中に声をかける。

29 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:15:25.90 ID:kaQLNSwA0

ξ゚听)ξ「ちょっと、どこ行くのよ!」

ξ゚听)ξ「ずっとここにいるんじゃないの?」

( ,,゚Д゚)「俺もお前も、もう少し落ち着くんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「辛いのはお前だけじゃないって教えたかったんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「でもいきなり、患者に死んだ妹の話をするなんて俺もどうかしてたんだゴルァ」

( ,,゚Д゚)「一時間もしたら帰ってくるんだゴルァ」

そう言って出て行ってしまった。
 

30 :愛のVIP戦士 :2007/03/03(土) 23:15:50.91 ID:kaQLNSwA0

また一人になった。
一人になるとまた性懲りもなく、今にも内藤がいつもの調子で

( ^ω^)「おっおっおっ、ツン大丈夫かお?」

なんて言いながら入ってくるのでは?と考えてしまうから困る。

することもなくなったので、横になった。

本当に駄目だ。
さっきの交通事故の話もあって、内藤に会う前のことやそれからのことを思い浮かべてしまう。



忘れたい記憶。


忘れたかった記憶。


忘れたくない記憶。



それらが頭の中でぐるぐる回る。
まどろんできた意識の中で、私は内藤と出会った頃にタイムスリップしていた。

 

 

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